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コラム | 2020.11.23

「キャブレター」って何?キャブレター搭載がなくなった理由とは?

Posted by 菅野 直人

今では旧車やバイク系のショップでないと、メンテナンスできる人もめっきり減ってしまった燃料供給装置「キャブレター(気化器)」。国産自動車では、2003年に搭載車が絶滅、それ以前からメーカーによっては全廃されていたため、若いメカニックでなくとも「学校で習ったきりでサッパリわからない」という人は少なくありません。一方でキャブレターのフィーリングを好むマニアもいますが、なくなった理由は何でしょう?

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国産車では2003年に生産終了!電子制御燃料噴射に取って代わられた「キャブレター」

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本体への燃料供給をコンピューター制御にしていた電子制御キャブレターは、2003年3月まで販売されていた三菱のライトバン「リベロカーゴ」で、よりアナログな機械式キャブレターは、1999年11月まで販売されていたスズキの軽トラック、10代目「キャリイ」初期型の生産終了によって、日本車からキャブレター式のエンジンは姿を消した、と言われています。

キャブレターの仕組みは単純で、燃料チャンバー(燃料室)へ送られ、「ベンチュリ」という部屋へ負圧で細い管(ジェット)により吸われた燃料が吸気(空気)と混合、エンジンの燃焼室へ混合気が送られます。

チャンバーへ燃料を送るにはエンジンの動力を使用した機械式、または電気式の燃料ポンプを使うか、キャブレター直上に置かれたタンクからの自然落下で、電気式燃料ポンプの動作を電子制御化した「電子制御式キャブレター」も1980年代には増えましたが、前述のように、もっとも単純アナログな機械式キャブレターも1990年代末まで残っていました。

チェーンソーなど産業用エンジンではまだ電子制御キャブレターを中心に残っていますが、多くはトヨタやダイハツの「EFI」などに代表される、コンピューター制御式の電子制御インジェクション(燃料噴射装置)に置き換わっています。

なぜキャブレターは自動車用エンジンから消えたのか?

今や原付自転車用エンジンでさえ、電子制御インジェクションに置き換わっており、乗り物用エンジンのキャブレターなど、ごく簡素な極小排気量エンジンくらいにしか残っていないはずです。

そうなった原因は、ひとえに「環境問題」で、排ガスをキレイにするにせよ、低燃費を実現するにせよ、走行状況やエンジンの状態に応じて適切な燃料供給をキメ細かに行い、高効率で最大限の出力を絞り出し、かつミッションや各種走行装置とコンピューターで統合制御可能な電子制御インジェクションに、根本的には単純極まりないキャブレターがかなうわけもありません。

それでも1970年代の「マスキー法」(大気浄化法の1970年改正法)に対応する手段のひとつとして、それまでの機械式キャブレターや機械式インジェクションに代わって「電子制御インジェクション」が広く採用された頃は、まだコンピューターが高価な割に性能が未成熟、その他の部品もまだ高価であったため、キャブレターからの移行は段階的でした。

とにかくキャブレターへ送る燃料だけでも制御しようと考えられた電子制御キャブレター、キャブレターを一本のインジェクター(燃料噴射器)に置き換え、そこから各気筒へ燃料を送るシングルポイントインジェクション(セントラルインジェクションと呼ぶ場合もあり)が安価な車で採用され、各気筒ごとにインジェクターを持つマルチポイントインジェクターは、1990年代まではまだまだ高値の華でした。

とはいえ、排ガス規制も低燃費の要求も年々厳しくなり、自動車メーカーや部品メーカーの努力で採用車種を増やしていった結果、量産効果で電子制御インジェクションの構成部品も増えたため、日本車では1990年代末に機械式キャブレターが、2003年には電子制御キャブレターも全廃されました。

現在は、軽トラでさえも一昔前であれば高性能車用と思われた、電子制御インジェクション・DOHC4バルブの可変バルブ機構つきエンジンが当たり前になっていますが、全ては環境性能向上のためです。

なぜキャブレターでは環境性能向上に対応できなかったのか?

その後も、キャブレターの中身をシングルポイントインジェクターに変えただけのようなエンジンは残っていましたが、そのような簡素なインジェクションでもキャブレターよりはマシ、というくらいキャブレターでの環境性能向上は困難でした。

基本、自動車用キャブレターであれば、アイドリング用の「スロージェット」、基本的な走行用の「ニードルジェット」、全開加速時など多量の燃料を必要とする「メインジェット」で燃料を送るわけですが、アイドリングを最適化するためスロージェットを調整し、巡航時の燃料消費を最適化するためニードルジェットを調整するくらいです。

ましてや気温や気圧、湿度によって最適解は異なり、「何となく標準的」にはできても、とてもではありませんが「最小の燃料で最大のパワー」など普通の人には調整しきれません。

昔であれば、異なるジェットを何本も持っていて、プラグの焼け方やエンジンの調子など、状況に応じてジェットを変える人もいましたが、そんなマニアックなことをするよりコンピューター任せの方がよほど楽ですし、間違いをやらかしてエンジンの調子を落としたり、最悪壊したりすることもないため、キャブレターなどなくなるのが当たり前でした。

名人芸があれば、キャブレターもまた楽し

しかし、現在の熟成が進んだコンピューター制御ならいざしらず、黎明期の自動車用コンピューターなどに比べれば、キャブレターより自分の方が、よほど優れていると、電子制御でもない機械式キャブレターを好む人もいました。

実際、初期の電子制御インジェクション用コンピューターは、かなり安全マージンを大きく取っていたようで、同時期に電子制御インジェクション車と機械式キャブレター車が併売されていた場合、カタログスペック上は前者が勝っても、実際のフィーリングは「踏めば踏んだだけパワーが出る」後者の方が上ということもあります。

筆者にも覚えがありますが、同じ1990年(平成2年)式ダイハツ・ミラTR-XXでも、EFIターボ(電子制御インジェクション・64馬力)よりキャブターボ(機械式キャブレター・50馬力)の方が、レブリミッターもなくレッドゾーンまでガンガン回せて楽しかったものです。

それにデュアルキャブや3連キャブ、6連キャブなど多数のキャブレターを意のままにジェッティング(ジェット選択)する名人芸が加われば、「とにかく燃料をどんどん注ぎ込んで踏めば踏むほどパワーを絞り出す」こともできたため、AE86の4A-Gなど電子制御インジェクションのエンジンを、あえて機械式キャブレター仕様にしてレースへ挑む人もいました。

ただ、そういう楽しみ方ができる人は本当に限られますし、やったとしても今や燃費や排ガスの面でも、パワーの面でもインジェクションに及ばず、キャブレターの調整ができるショップもほとんどないため、仮にそういう車に憧れて買ったとしても、車検に通すだけでかなり苦労することでしょう。

自動運転や電動化どころか、全てがコンピューターに全く介入されない解放感は機械式キャブレター式エンジン独特のものですが、それも時間とともに、遠い日の思い出ということになりそうです。

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