コラム | 2021.05.11

5バルブエンジンとは?流星のように現れ散った、技術の過渡期に生まれた徒花か

Posted by 菅野 直人

気づけば、ほとんどの車のエンジンは、「可変バルブ機構付きDOHC」で、1気筒あたりの吸気/排気バルブが2つずつある「4バルブ」になりました。日本ではライトバンでも軽トラでもほとんどそんな感じですが、かつては一部に「5バルブ」のエンジンもありました。4気筒エンジン車であれば、誇らしげに「DOHC20VALVE」などと貼られていましたが、すっかり消えたのは一言で言えば「コストパフォーマンスが悪くて無用」になったためでした。

最新売却前に見たい、編集部一押し!一括査定サイトまとめ

以下の文中の買取査定額は、投稿日時点での目安になります。実際の査定額については相場状況や車両の状態によって大きく変動しますので、あくまで参考金額としてご覧ください

メカ好きの心をくすぐる響き、「5バルブ」はなぜ生まれたのか

本来、近代的な工業製品に搭載された内燃機関で多用される4サイクルエンジンは「空気と燃料の混合気を吸って、ピストンで圧縮して、点火して燃やし、燃焼後のガスを吐き出す」という4つの工程で「吸う」吸気バルブと「吐き出す」排気バルブの2つがあれば十分です。

しかし、燃焼効率を上げたい、パワーを出しつつ実用トルクも燃費も確保したいといった、さまざまな要望からバルブの数を増やす「マルチバルブ化」の試みはかなり昔からあり、20世紀はじめ頃には、限られた重量で最高発揮が求められる航空機やレーシングカー用エンジンに4バルブエンジンが登場します。

戦後には、主にスポーツカーなどで市販車にも使われるようになり、日本でも初代日産・スカイラインGT-R(PGC10・1969年)へ国産市販車初の直列6気筒DOHC4バルブエンジン「S20」が搭載され、1980年代になると、そこまで特殊ではない量販車用エンジンにもDOHC4バルブやSOHC3バルブ、または4バルブが主流になってきました。

しかし、当時の技術では闇雲に吸排気の効率を上げたからといって、効率や性能に優れたエンジンをつくれたわけでなく、特に高回転・高出力と低回転・大トルクを両立するために低回転時は吸気側のバルブを片方閉じ、あえて吸気経路を細くして流速を上げるなど対策して低回転のトルクを確保しました。

しかし、これでは高回転時はともかく、低回転時の燃焼効率は悪く、燃料噴射での洗浄効果もないため、可変バルブ機構にカーボンが詰まって故障しやすいなど、デメリットも目立ちます。

そこで自社製エンジンを開発している自動車(バイクも含む)メーカー各社は、さまざまな対策を研究していき、その中の答えのひとつが「DOHC4バルブエンジンの5バルブ化」でした。

低回転から高回転までの高効率エンジンを目指した5バルブエンジン

世界で初めてDOHC5バルブエンジンを市販車へ搭載したのはヤマハで、1985年に発売された同社のスポーツバイク「FZ750」用に1気筒あたり5バルブの749cc直列4気筒DOHC20バルブエンジンが初登場しました。

4輪では三菱が、548cc直列3気筒の軽自動車用エンジン「3G81」にDOHC15バルブ版を開発、1989年に550cc時代末期のミニカダンガンSi系/Ri系へ自然吸気仕様を、同ZZ系へターボ仕様を搭載し、ターボ仕様は同社の軽自動車初の64馬力自主規制値に達したエンジンでした。

さらに三菱は、660cc軽自動車時代(1990年1月規格改定)に入って、3G81の657cc版「3G83」でもDOHC15バルブ版を、後継として1993年に登場した上級グレード用4気筒エンジン「4A30」では4気筒DOHC20バルブ版を開発し、3G83は自然吸気/ターボ仕様の双方、4A30はターボ仕様をつくって、ミニカダンガンやミニカトッポ、パジェロミニに搭載、あるいは贅沢なDOHC20バルブターボエンジン搭載の軽1BOX車、ブラボーGTも生み出しました。

国産車でもうひとつの流れはトヨタで、名機4A-Gへ可変バルブ機構VVTとの組み合わせで1981年にAE101カローラレビン/スプリンターや、同じくカローラGTなどカローラ系の上級グレードやカリーナGTへ搭載していきました。

AE86の中古車選びの注意点は?相場金額とおすすめグレード・維持費について

これらに共通しているのは、「スポーツ走行などで求められる高出力と、低速トルクの両立が定評ではなかった、あるいはそう予想されるエンジン」ということで、たとえば4A-Gなど、低速トルクがあるスーパーチャージャー仕様の4A-GZEは16バルブ仕様のままです。

5バルブエンジンといえば「吸気バルブ数を増やして空気を多く吸い、大出力を出すエンジンだ」と思われがちですが(一部には排気バルブを増やし排気効率を高めた例もあります)、それよりは吸気バルブ1本あたりを細くして、吸気量だけでなく流速も稼ぎ、低速トルクを増やして日常域から高速域まで気持ち良く走ることができるのを理想としており、採用エンジンはいずれもそれに成功しています。

他の対策が成功すれば不要になる運命であった5バルブエンジン

しかし、三菱4A30もトヨタ4A-Gも、2002年から厳しくなった排ガス規制を乗り切ることなく生産終了、ヤマハも最後の5バルブエンジン搭載バイクであったYZF-R1を2007年式から4バルブエンジンへ切り替えてしまいました。

根本的な理由はどれも同じで、5バルブエンジンは吸排気バルブの数が均等でなく、吸気バルブの数が多い場合は、混合気がきれいな渦を巻けるよう燃焼室形状を最適化するのが難しく、市販車であれ、レーシングカーであれ、開発コストと時間がそれなりにかかる代物だったためです。

それでも他に方法がなければ採用され続けたかもしれませんが、そもそも他メーカーを見れば、ホンダは有名な可変バルブ機構VTECで、スズキやスバルは、最初からDOHC4バルブだけで優れたエンジンをつくっており、ダイハツなど550cc時代には、SOHC2バルブのままマルチインジェクション(気筒ごとの燃料噴射)やブーストアップで64馬力を達成し、その後はやはりSOHC/DOHC4バルブに進み、どこも5バルブエンジンなどつくっていません。

DOHC4バルブの優れたエンジンといえばVTEC!

NAでリッターあたり100馬力超!ホンダVTEC搭載の名車4選

考えてみれば、三菱も可変バルブ機構MIVECを開発して市販車に搭載しており、トヨタも4A-G以外はDOHC4バルブに可変バルブ機構VVT-iなどを組み合わせていて、1990年代後半にはすっかり「5バルブなど開発コストが潤沢だったバブル時代の遺物に過ぎない」と結論が出ていました。

もちろん、あらゆる対策を組み込んだ上で5バルブ化を続け、手間ひまをかければさらに究極のエンジンができたかもしれませんが、レーシングカーや海外の高級スポーツカー、プレミアムカーならともかく、販売台数を稼ぐ必要のある国産市販車で、そのようなことをやっている場合ではありません。

レーシングエンジンですら「セッティングが面倒」と嫌われたくらいで、ちょっとばかり速くするために多大な苦労を強いられる5バルブエンジンより、確実な4バルブエンジンへと回帰していきました。

こうして「ちょっと贅沢な寄り道」は終わった

かくして、コスト優先でエンジンの種類を絞り込み、派生エンジンをつくるにしても可変バルブ機構や燃焼制御技術、タービンでの過給を全てDOHC4バルブに最適化してソフトウェアで制御してしまう方が開発も生産も完成した製品もよほど効率的で、わざわざ面倒な5バルブエンジンをつくる必要性など、どこにもなくなっていました。

メカ好きの人であれば、「5バルブ」というだけで「バルブの数が多くて強そう」という心のトキメキはありますが、それだけのためにメーカーがコストをかけても、大した性能差がなければユーザーの心も冷めていきます。技術的にもコスト的にも不要、ユーザーは他の技術で満足しているとなれば、5バルブエンジンの居場所はどこにもなくなりました。

そもそも車のエンジンというのは、社会やユーザーからの要望に応えるため、あらゆる手段を講じてコストの許容範囲内で進化していくものであり、できるのであれば、SOHCやOHV2バルブのままで要望に応えることができれば、部品も少なく単純軽量、生産に手間がかからずコストも安く済んで最高なくらいで、部品点数や加工の手間ばかり多いわりに、報われないDOHC5バルブエンジンは、「ちょっと贅沢ができた時代の寄り道」で終わったのです。

ただ、自動車のあれこれというのは、性能だけで語れるものではなく、時には「カッコイイ」とか「響きがイイ」というのが製品としてとても重要な場合があります。

少なくとも5バルブエンジンには、「4バルブとは違うのだよ!どうだいこの精密さは!」と胸を張れるだけのインパクトがあるのは事実で、実際の採用例がなくなっただけに今後も「失われた夢の技術」として語り継がれていくことでしょう。

↓合わせて読みたい↓

一度は所有したい!伝説のFRスポーツ、トヨタ「AE86」を手に入れる方法とは!?

愛車の下取り、売却で損をしないためには?

買い替えの場合、ディーラーにそのまま下取りに出してしまうと数十万の差がつくこともあります。

直接買取店へ持ち込まれる場合も1店舗だけの査定だと適切な金額でない可能性があります、なぜなら買取は店舗によっての需要や、オートオークションの相場などの状況で金額が大きく変わるからです。

下取りに出す前に、お車の買取相場と最高買取額をナビクルで調べてからから交渉することが、 愛車の売却や、中古車購入で損をしないための近道です。

ナビクルなら買取相場や
複数社の査定額が
一目でわかる!

  • 172万
  • 130万
  • 112万
  • 97万
  • 121万
  • 99万

たった一度依頼を出すだけで、複数の中古車買取店へ査定依頼が可能。
ナビクルは超優良の買取業者のみと提携、業者同士が競争しながら査定するので、一番高い査定額がわかります。

優良店のみ一括査定サイトの「400万件以上の実績!」のナビクルをオススメしています。 ほんの45秒の行動が、将来失うことになるかもしれなかった「車の価値」を守ることになるかもしれません。

通常の査定と比べ20~80万高く売れる可能性があります。 さらには申し込み後、相場額実際の取引額に基づいて算出した概算価格も、24時間いつでもスグにWeb上で確認できます。

400万件以上の実績!
優良買取店のみ
全国のリアルタイムの査定相場を配信中!
400万件以上の実績!まずは愛車の
査定相場を見る
04月26日 00:41:08現在の
全国のリアルタイムの査定相場を配信中!

買取の査定事例

  • 2019/10に査定

    ランドクルーザープラド TX Lパッケージ

    3,998,500
    2015年(H27)41千km

  • 2019/10に査定

    WRX STI STI タイプS

    3,814,800
    2015年(H27)32千km

毎日500台入荷する非公開車、見ませんか?

たとえば、特定の車種や、モデル、また、将来的なモデルチェンジや型落ちの可能性、年間20万台以上を買い取るガリバーしか知らない最新の再販、リセールバリューの動向情報も無料で相談、提供可能です。

ガリバーの「中古車ご提案サービス」は市場に出る前の70%の「非公開車両」から中古車の提案があり探す幅が大きく広がる中古車探しの際は最もおすすめするサービス。

ネット、市場に出ていない車や絶版車、マニアック車などの希少価値の高い車、一般にはまだ出回っていない車を探せます。
ネットなどで欲しい車を探し、実際の相談、購入は「中古車ご提案サービス」で非公開車両から吟味するという中古車探しが賢く中古車を選ぶ最良の手段とも言えます。

サービスは10年保証+返品OK 最短で即日で連絡、専任の担当者付き。 「今は買うか分からない」でももちろん歓迎してくれます、思っていたより思わぬ掘り出し物に出会えるかもしれません。

市場に出る前の
非公開車両を見る