カスタム・アフターパーツ | 2021.05.11
ローダウンは車検に通る?やり方と目安工賃について
Posted by 菅野 直人
チューニングでもドレスアップでも使われる手軽で奥深いクルマイジリの手法「ローダウン」ですが、やり方を間違えると車検に通らなかったり、期待した効果を得ることができなかったりする場合もあります。今回は車検に通る正しい方法と、工賃の目安についてご紹介しましょう。
以下の文中の買取査定額は、投稿日時点での目安になります。実際の査定額については相場状況や車両の状態によって大きく変動しますので、あくまで参考金額としてご覧ください
SUMMARY
カッコよく仕上げたはずのローダウン、車検に通らないと悲しいですよね?
今でこそ、どのような車でも当たり前のようにやっているローダウンですが、1990年代半ばの規制緩和で、多少車高が上下しても問題なくなる以前は、ローダウンだけでも車検証の記載事項変更で面倒な改造申請が必要になる、いわゆる「マル改」でした。
ジムカーナなど古い競技車が現役で走っているモータースポーツの場合、型式の後に「改」がつく車が今でもあるのはその名残で、ノーマルではない車に乗るには面倒な改造申請を通すか、違法なのを承知で車検の時だけノーマルに戻したり、少しごまかしたりする必要がありました。
今はローダウンスプリングや車高調を組んだくらいで改造申請が必要になることはありませんが、それでも好き勝手にやって良いものではなく、いくつか車検を通すためのハードルがあります。
車検適合ローダウンに必要なこと、その1「最低地上高は9cm以上」
特に車高調を組んだ場合に注意せねばいけないことですが、車高調の構造上調整できる範囲だからといって目一杯車高を下げてしまうと、大抵は保安基準で決められた「最低地上高9cm以上」をクリアできません。
では、「最低地上高はどこで計測するのか?」というと、車が走行する際に動くアーム類やタイヤに関わるハブやブレーキなどは計測対象外で、多くの場合は前輪と後輪の間の車両中央部分でもっとも低いところ、実際にはその前後も含むため、スタビライザーやサブフレーム、デフやミッション、マフラーのタイコ(消音器)が該当してきます。
意外なのは、前後のアンダースポイラーやサイドスカートなどのエアロパーツでも、樹脂製やゴム製の外装パーツは、ただそれだけであれば最低地上高9cmではなく、5cmに緩和されるため、街中でいかにも路面スレスレのエアロパーツが違法なように見えても、案外適法であったりするわけです。
しかし例外もあり、フォグランプやウィンカーなど灯火類が含まれるエアロパーツに限っては、最低地上高9cmに含まれるため、油断してそのようなパーツをつけたまま車高を下げると、車検に通らないことになります。
エアロパーツの規制が緩いのは、樹脂製やゴム製路面に接触しても壊れたり歪んだりして、車体構造にダメージを与えにくいことと、灯火類については壊れた場合に機能不全に陥る可能性が高いためと考えられます。
なお、車検に通るからとむやみに車高を下げると、路面の段差にエアロを引っ掛けて壊したり、車を載せる台の中央部が出っ張っているタイプのタワーパーキングで、スタビライザーやマフラーのタイコを引きずってしまったりする場合もあるため、使い勝手を考慮してホドホドにすることをオススメします。
車検適合ローダウンに必要なこと、その2「スプリングが遊ばないこと」
ローダウンスプリングではなく、バネをぶった切って短くする「カットバネ」や、そもそもスプリングをつけない「アブノミ(ショックアブソーバーのみ)」は車検不適合ですが、本来であれば車検適合なはずのスプリングでも、スプリングシートを調整するタイプの車高調で車高を下げ過ぎた場合など、スプリングの自由長不足で遊んでしまう場合があります。
車が接地した状態ではもちろん、ジャッキアップした場合でもバネの遊びは許されないため、どうしてもその車高調でギリギリまで車高を下げたい場合は、もっと自由長の長いローダウンスプリングを選びましょう。
車検適合ローダウンに必要なこと、その3「車高調コントローラーは外しておく」
エアサスなど車内のスイッチで車高調整が可能なサスペンションを装着している場合、大抵は「車高調整コントローラー」がついてきます。
車内から車高を上げ下げできて便利な反面、車検に適合した車高にも、最低地上高が明らかに不足するペタペタの車高にするのも自由になってしまい、車検で見られた場合は厳密には「車検NG」のため、車検の際はコントローラーを外しておきましょう。
もっとも、車検というのは保安基準を1から100まで全てチェックするわけではなく、車検ラインの機械で簡単に計測できるもの以外は、あくまで検査員のサジ加減ひとつです。
厳格であったり、その日の機嫌が悪い検査員であれば「ダメ!」と言うかもしれませんし、「どうせ車外のエアサスなんだし、外しててもいつもはついてるんでしょ?」と、チェックすらしない検査員もいます。
そのため、車検を受けた経験者からは「ウチのはコントローラーつきでも通ったよ?」という話はよく出ますが、たまたまそういう検査員に当たっただけのため、一発車検通過を目指すのであれば、コントローラーは外しておいた方が無難ですし、エアサスの説明書にも車検時の扱いとして「最低地上高9cm以上を保持してコントーラーは外しておくように」と書いてあるはずです。
車検適合ローダウンに必要なこと、その4「光軸やアライメントは調整しておこう」
ローダウンで車高を落とすということは、ノーマル状態からヘッドライトの照射範囲が変わってしまうため、光軸は調整し直さないければいけません。
また、交換後にアライメントを取り直さないと、4輪リジッドサスのオフローダーでもない限り独立懸架サスは、タイヤの向きがバラバラになっていて操縦性の悪化やタイヤの偏摩耗に繋がったり、キャンバーも変わるため、場合によってはタイヤがフェンダーからハミ出す「ハミタイ」になってしまいます。そのため、フェンダーの加工かタイヤを細くしたり、インセットの違うホイールが必要になったりする場合もあります。
いずれも車検の検査ラインでは簡単にNGを出されてしまうため、ローダウン後は光軸とアライメントをしっかり取りましょう。
車検適合ローダウンの費用
このように、ローダウンはただ車高を落とせばそれで終わりではなく、車検に通すために手間をかける必要があります。
ローダウンそのものは何を使うかによって、あるいは車種によっても千差万別のため、ここでは割愛しますが、ローダウン後の費用についてはアライメント費用が4輪で約1万~1万5,000円程度、光軸調整はおおむね3,000円程度、合計で1万5,000円から2万円以内と考えておけばよいでしょう。
光軸は方法さえわかれば自分でできる場合もありますが、テスター屋や予備車検場でもそう高いものではないため、自分を信じてやってみる!というよりプロのお墨付きをもらった方が確実で、よほど調整方法が特殊な車でもない限り、業者任せにしてしまった方が安心です。