コラム | 2021.05.11
フォーミュラからラリーまで種類で分かるレースのおもしろさとは?世界や国内で繰り広げられるレースをご紹介‼
Posted by KAKO MIRAI
世界中で行われているレースには、誰もが名前を聞いたことがある大きなものから、規模の小さいものまでさまざまです。車の形状が異なれば、スピードやハンドリングに大きな差が生まれます。サイドバイサイドになった時の緊張感や、コーナーでの駆け引き、市街地を疾走する雄姿は圧巻です。レースによって種類があり、楽しみ方も異なります。そんなレースのあれこれをご紹介していきましょう。
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レースの歴史
・レースの起源
自動車競技としての起源となるのは、1887年にフランスのパリで行われた蒸気自動車レースで、2㎞を走行するというものでした。1894年にはフランスで『フランス自動車クラブ』が設立されるなど、欧州でレース人気が高まっていきます。
1895年になって、アメリカで87.48㎞という長丁場のレースが初開催され、翌年には競馬場を利用したレースが定期的に開催されるようになっていきました。
・初の国際レース
国際レースが初めて開催されたのは1900年の『ゴードン・ベネット・カップ』です。6回の開催のうち4回の優勝を飾ったフランスは、圧倒的強さを見せました。1901年にフランスのポーで開催されたレースで、初めてクラス分けという取り組みが行われています。
・グランプリの由来
『ゴードン・ベネット・カップ』では、軽量クラスに「グランプリ・デュ・パレ・ドール」、重量クラスに「グランプリ・ド・ポー」という賞が与えられました。この大会で初めて「グランプリ」という言葉が使われ、現在でも最高位のレースに使用される権威があるとレースになっています。
・初のサーキット
レースが開催されていた場所は、公道がほとんど。市街地を走るレースはスリルと同時に危険も大きいものです。沿道の整備もままならず、第一にマシーンの性能にブレーキや操縦性が追い付いていなかったため、観客を巻き込む事故も後を絶ちません。
そこで、以前から始まっていた競馬場を使用したレースに目を向けるようになります。1907年にイギリスで競馬場を利用した初のサーキットが誕生しています。『ブルックランズサーキット』は、一周4.43㎞でバンク角30°の広大で完全舗装されたサーキットでした。
現在も当時の路面を一部残した美術館として営業を行っているため、当時のサーキットをそのまま見ることができます。
・フォーミュラの誕生
1904年には現在の『国際自動車連盟』の前身となる「国際自動車公認クラブ協会」が設立され、レースの人気は高まっていきました。そして第二次世界大戦終了後には「グランプリ」として親しまれてきた競技に新しい「規格(Formula)」を導入することが決定します。
その名も「Formula(フォーミュラ)」。最初の規格としてエンジンの性能差をなくすため、1.5Lのスーパーチャージャー付または、4.5LのNAエンジンどちらかを使用するというレギュレーションが設定されました。
フォーミュラカーは、シングルシーターの比較的短い距離を走行するスプリントレースです。1949年に『フォーミュラ1』で初めて、年間の成績を競う世界選手権方式が採用されました。
フォーミュラの設立は、以後に開催されるレースに、大きな足掛かりとなる躍進をもたらしたといえるでしょう。
・その後のカテゴリー誕生
運転席だけでなく、助手席もある市販車を前提にしたレースも開催されるようになっていきます。自動車製造を行う団体が主催し、性能や耐久力をアピールする絶好の機会として使用されていましたが、そのレギュレーションは整っていませんでした。
1953年には『スポーツカー選手権』が発足され、耐久レースなどほとんどのカテゴリーで統一されることになります。そして1973年には『世界ラリー』が誕生。現在では、どのカテゴリーも大変高い人気を誇っています。
レースの種類
・フォーミュラ系
フォーミュラの最高峰は、『F1(フォーミュラワン)』のこと。マシーンにはさまざまな規格が適用されています。タイヤがカウルで覆われておらず、コックピットがシングルシーターで、オープンな車体を指します。
『F1』までの道のりは相当険しく、「FIA-F4」を皮切りに、「F3」を通過点とし「フォーミュラ3.5 V8」「GP3」「GP2」と制覇していくことになります。その後、世界で約20人という、有数のトップドライバーに君臨することが許されるわけです。
そのほかに、日本独自となる「スーパーFJ」や「スーパーフォーミュラ」などの日本シリーズも行われています。日本人の『F1』 ドライバーには、日本人初となった中島悟さんを始め、鈴木亜久里さん、片山右京さん、小林可夢偉さんなど国内のトップドライバーが勢ぞろい。
では、なぜF1マシーンは速いのでしょうか。現在は電気モーターを備えたハイブリッドマシーンとなっています。排気量1.6Lのターボエンジンからは1,000ps以上を発揮。一般的なコンパクトカーの10倍のパワーです。
またダウンフォースにも工夫をこらし、ウィングやディフューザーといった空力デバイスを巧みに利用し、路面に吸い付くコーナリングを可能にしています。そこに世界最高峰のドライビングテクニックを持つトップレーサーが加われば、究極の速さとなることは十分に理解できるでしょう。
例:F1・F2・インディカー・スーパーフォーミュラなど
・スポーツカー系/プロトタイプ系
F1マシーンとの大きな違いは、タイヤがフェンダーで覆われている点です。また助手席が設けられたものもあるほか、ヘッドライト、テールランプ、ブレーキランプなどの灯火類を装着することが義務付けられています。
スプリントに特化したフォーミュラとは異なり、長距離のレースを行う耐久レースのマシーンです。このタイプを「プロトタイプレーシングカー」といい、『世界耐久選手権』や「ル・マン24時間レース」で活躍しています。
スポーツカー系には、プロトタイプのほかにGTカーが含まれます。GTはGrand Touringの略称のことで、市販車に大きな改造を施したレースカーのこと。日本では非常に人気の高い『SUPER GT』もこのカテゴリーに含まれます。
1994年にスタートし、国内のみならずタイやマレーシアでも開催されてきました。GT300とGT500の2つのクラスが混在するめずらしいレース形式。ハコレースの最高峰といわれる『SUPER GT』ですが、実際には「皮を被ったフォーミュラ」ともいわれています。
車体やエンジンに至るまでメーカー系のワークスが製作を手掛けており、市販車ベースとは少し異なる趣といえるでしょう。その点から見ると耐久レースは市販車ベースで改造も限られた中で行われているので、より身近に感じられるかもしれません。
つまり一般車に装着可能なパーツを使用しているところも見どころの一つです。自分の車をドレスアップさせる参考にできるため、観戦も楽しみになるでしょう。
例: プロトタイプ-WEC(FIA世界耐久選手権)・ル・マン24時間レース
スポーツカー-全日本スポーツカー耐久選手権・SUPER GT
・ツーリングカー系
市販車をベース車両とし、改造を施した車を使用するツーリンカーレースでは、GTカーと同じような車を使用しています。日本では車検証の車型欄にセダン、クーペ、ハードトップは「箱型」に分類。そのためハコ車と呼ばれることもあるようです。
このカテゴリーでは、主催側で改造範囲が規定されています。改造範囲が少ないものから、無制限のものまでさまざま。外見のみで中身は全く市販車と異なるレースとして有名なのは『NASCAR』のスットクカーです。
ツーリングカーレースの見どころは、「サーキットの格闘技」と呼ばれ、白熱したバトルが展開される点にあります。スタート直後のクラッシュは定番となっており、いかに上手い立ち上がりができるかドライバーの腕の見せ所です。
例:WTCC(世界ツーリングカー選手権)・スーパー耐久
・ラリーカー
サーキットではなく公道レースとなるラリー競技は、舗装路から砂利道、荒れた荒野など悪路走行を市販車両で走行するレースです。一般的には考えられないスピードでさまざまな路面を疾走するため、頑丈な補強が必要になります。
ラリーに使用される車は一度、完全に分解。その後ロールゲージを組み込み、車体剛性を高めると同時に、ドリフト走行をしやすい設定を施します。ラリーでは低速の状態で高回転に回すことも必要となります。
またボンネットには熱対策、オイルパンやデフを保護する対策としてアンダーガードの装着がされることが特徴です。ラリーと特徴には、助手席にコ・ドライバーを乗せ、資料となるペースノートや資料を読み上げ、ドライバーはそれを頼りに走行を行うという点が挙げられます。
先の見えない峠道やコーナーに、ありえないほどの速さで突っ込むところは、目を離す瞬間もないくらいではないでしょうか。F1などのようにパワフルな走行はできませんが、道幅が狭く、コンディションも変わりやすい道路を走らせる難しさがあります。
ドリフトやジャンプなどを駆使するなど、他のレースには見られないドライバーのテクニックが、観客の心を掴んで離さない魅力といえるでしょう。
例:WRC(世界ラリー選手権)・JRC(全日本ラリー選手権)
・ドラッグレース系
約0.4㎞の直線でタイムを競うドラッグレースは、アメリカで生まれました。通称「クリスマスツリー」と呼ばれる電光スタートのシステムを使用し、最初からフル加速。フィニッシュ時にブレーキは役に立たないため、パラシュートを開き減速させるというもの。
燃料にはニトロメタンが90%の特殊な燃料を使用しているため、スピード感がたまらない魅力となっています。アメリカでは『インディカー』や『F1』と並ぶ非常に人気の高いレースです。
日本でも1990年代にかけて公道で行われていた「ゼロヨン」が、谷田部のテストコースや『富士スピードウェイ』で大会として開催されていたこともあります。その後『JAF』公認団体として『ロードランナーレーシングクラブ(RRC)』が公認競技として開催されました。
しかし近年では国内でのドラッグレース人気は下火になっており、海外との温度差が明確となっています。
例:NHRA(全米ホットロッド協会)
・ドリフト系
ドリフトは日本発祥のスポーツです。後輪を滑らせながら華麗なドリフトをするカッコよさが人気となっています。2001年には『全日本ドリフト選手権(通称D1グランプリ)』が初開催されました。
2003年からは海外でも開催されるようになり、速さを追求するモータースポーツとはまた違う、車の迫力や芸術性が高い評価を呼んでいます。その後2017年には『国際自動車連合(FIA)』が公認するドリフト世界一決定戦が日本のお台場で行われました。
全米のサーキットを周りながらドリフトチャンピオンを争う『フォーミュラドリフト』も行われており、たいへんな盛り上がりを見せています。カッコよさが勝敗のすべてという分かりやすさも受け、現在では40ヶ国以上で大会が開かれているほどです。
例:全日本プロドリフト選手権・フォーミュラ ドリフト
世界三大レースだけじゃない!レースの開催いろいろ
世界三大レースといわれているそれぞれのレースには、長い歴史と絶大なる人気を誇るものばかりです。
・モナコグランプリ
1929年に初開催された市街地レースの元祖。モンテカルロ市街地コースを平均時速150㎞/hで走行するものです。シケインやタイトなコーナーが連続するテクニカルコースで、セーフティーカーの出動率が52%にも上り、いかに危険かを物語っています。
グランプリ開催中は約20万人の観客が訪れ、華やかな雰囲気に一変。F1マシーンが最も遅く旋回するローズヘアピンにはたくさんの観客が集まります。表彰式ではモナコ皇室からトロフィーの授与があるなど見どころ満載のレースです。
・インディ500
アメリカの『インディアナポリス・モーター・スピードウェイ』で1911年から開催される耐久レース。総走行距離は806㎞に及び、350㎞/hを超えるスピードで走りぬける、迫力に圧倒されるのではないでしょうか。
そのためクラッシュも後を絶たず、リスタートが何度も繰り返されます。そのため最後まで誰が勝つのかわからない、」手に汗握る展開になることも。サイドバイサイドやオーバーテイクに見どころ満載のレースです。
・ル・マン24時間レース
フランスのル・マンにあるサルト・サーキットで1923年に初開催された最古の耐久レース。文字通り24時間走破するためには、5,000㎞以上を走行する必要があります。参加するのはプロばかりではなく、趣味で参加するチームも多く『偉大なる草レース』と称されることもあるようです。
24時間という長丁場の中、全長13㎞の中には一部公道を使用。かつては6㎞のストレートで最高速を極めるかが重要でしたが、現在ではシケインも2つ設けられており、ストレートが早いだけでは勝つことが難しくなっています。
エンジンやサスペンションへの負荷も大きく、またドライバーの疲労からくるミスでマシーンにトラブルが発生することもあるため、早急に修理を行う技術力も重要なポイント。
このレースには毎年25万人を超える観客が訪れ、24時間のレースの行方を見届けています。
その他のレース
・デイトナ500
『NASCAR(ナスカー)』はNational Association for Stock Car Auto Racingの略称。かつては市販車をベースに改造していましたが、現在ではレーシングカーを使用して行われるアメリカ独自のレースカテゴリーです。
アメリカンスタイルのオーバルコースを使用し、超高速で周回。時速300㎞以上にもなる世界でも稀な超高速レースです。日本からはトヨタが唯一の参加メーカーとして参戦。2006年には初のタイトルを獲得し、2016年までに9度のタイトルを獲得しています。
また2019年にも最終戦を制する圧倒的な強さを誇ってきました。国内では見ることができないレースですが、一度は見てみたいレースのひとつではないでしょうか。
その他にも「電気自動車のF1」といわれる『フォーミュラE』や、自動車技術分野を学ぶ学生が技術力を競う『学生フォーミュラ』、女性だけの本格的レース『KYOJO CUP(競走女子選手権)』など、あまり知られていないレースも多く開催されています。
まとめ
ひとくちにレースといっても車の性能が全く異なるものから、同じハコ車でもレギュレーションが違うものまでさまざまです。高速性能を競うものから、ドリフトのようにスピード以外を競うものまであります。
好きなレースのカテゴリーを見つけて観戦してみるのも楽しいでしょう。もしかするとレースに参戦しようという気持ちになるかもしれません。車とのかかわりを今以上に楽しんでみてはいかがでしょうか。