コラム | 2021.05.11
一度は乗ってみたい左ハンドル!でも日本ではちょっと…な、あるあるとは?
Posted by KAKO MIRAI
カッコいい車に乗ってみたいと考えるのは誰でも同じです。輸入車といえども右ハンドル仕様が増えてきましたが、まだまだ左ハンドルしか設定がないものも存在します。でも日本で左ハンドルは不便じゃないかと躊躇する気持ちもあるでしょう。実際に左ハンドルを所有しているオーナーたちのリアルな声をご紹介していきます。
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日本はなぜ左側通行なの?
左ハンドルに優しくない国、日本では左側通行が基本となっています。1945年から1978年の沖縄では右側通行でした。左ハンドルの『三菱・ミニカ』が走っているなど、今では考えられない時代を過ごしていたのです。
沖縄が日本に返還されてから、左側通行に切り替えられました。『730(ナナ・サン・マル)』キャンペーンといわれ効率よく行われたということですが、県民の戸惑いは大きかったのではないでしょうか。
日本はいつから左側通行だったのかというと、1960年に『日本誌』を執筆したドイツ人医師ケッペルの中に書かれています。長崎街道や東海道を旅した際に左側通行が徹底されていたというのです。
つまり江戸時代の初期には左側通行であったことが分かります。その理由として当時の日本の道は狭く、対面で右側を歩く武士たちの刀を入れる鞘がぶつかってしまうことが多かったようです。これが喧嘩の種となり無駄な争いが絶えませんでした。
武士のルールとして左側通行が定着したのではないかという説が有力視されています。明治に入り、英国との友好関係を深めるため、左側通行が決定的となったのではないかと考えられているようです。
「武士の刀説」には多少正当性が欠けているようで、刀を持たない町人や農民には関係がありません。また将軍のおひざ元である江戸の道で、刀が触れ合うほど狭い道が多いとは考えられないのではないかという声もあります。
そのためもう一つの有力な説としては、神社の参拝では左側通行をしていることです。参道の中央は神様の通り道です。そして左手は不浄の手であるという考え方に基づくと、神様とは反対側にするという考え方があります。諸説あるようですが、文献などが現存してないため分かっていないというのが、実際のところです。
イギリスは欧州の中でも唯一、日本同様に左側通行を採用しています。そのルーツは馬車にあるとか。馬に乗る時は、自転車に乗る時と同様に左から左脚を掛けて乗り込みます。馬車への昇降は左側から行うため、左端に寄せて馬車を止めるようになりました。
停車している馬車を追い越していく馬車は、当然右から追い越していきます。停車している馬車が注意を払うのは右後方から走ってくる馬車です。馬車を目視して危険を回避するために、右側に運転席を設けるようになったといわれています。
車の誕生は蒸気自動車にまで遡りますが、1886年に『ベンツ』や『ダイムラー』によって開発されています。つまり馬車文化を持つ欧州で広がりをみせたため、右ハンドルが一般的でした。
左ハンドルを広めたのは『フォード』だという説もあります。右側通行にすることで、助手席の人を安全に歩道側に下ろすことができる配慮から作られたのではないかということです。
左ハンドルが選択できなくなってきた現状
日本を含む世界の道路の歴史が見えてきて、余計に日本には左ハンドルが不向きのようにも思われます。そして追い打ちをかけるように、現在左ハンドルの輸入車が減ってきているという状況です。
左ハンドルの需要がなくなってきているというほうが正しいのかもしれません。『ベンツ』や『BMW』 だけでなくスポーツカーメインの『フェラーリ』や『ポルシェ』などでも右ハンドル仕様の需要が高まっています。
『日本自動車輸入組合(JAIA)』では、2019年の新規登録台数が約33万台となっており、10年前と比較すると2倍ほど増えているということです。今までに比べるとより輸入車が身近になったということができます。
国産車の高騰で、高価だった輸入車との価格差がなくなってきており、すこし頑張れば購入できる選択肢に輸入車が入っているといえるでしょう。80年代では考えられなかったような高嶺の花といったイメージではありません。
車検費用などのメンテナンスにかかる費用も、正規ディーラーが増加し、部品の流通も格段に増えています。さまざまな要因が輸入車の購買意欲を高めているのではないでしょうか。珍しくなくなった輸入車は、断然右ハンドルに人気が集まっています。
現在の自動車メーカーは右、左のハンドルを選択できるところが多くなっているようです。
例えば『BMW』では左ハンドルの割合は10%以下だといいます。そのためスポーツタイプで左ハンドルを導入することがあっても、左ハンドルのみを入れることはないと語っていました。
また『ルノー』は比較的左ハンドルのイメージが強いメーカーですが、スポーツモデルの限定車で導入することはあったようです。しかし今は在庫のみとなっていて、左ハンドルの導入を停止しているといいます。
左ハンドルファンには、なかなか厳しい現実が突き付けられてくるようです。
左ハンドル設定を右ハンドルに変えている?
もともと左ハンドル仕様として作られている車を、輸出に伴い右ハンドル仕様へと変更している場合にはアクセルやブレーキが左側にオフセットしていることがあります。そうするとドライビングポジションに違和感が生じることもあったようです。
またステアリングは車の向きを変えるための重要なシステムで、「ラック&ピニオン式」と呼ばれるものがあります。その場合ステアリングシャフトの先端にピニオンギアという小さな歯車が付いており、シャフトの歯車とかみ合わせてタイヤの方向を変えるというもの。
左ハンドル仕様の場合には、直線でシャフトとステアリングラックを接続することができます。しかし右ハンドルの場合には、ハンドルが右側に設置される分、シャフトが斜めになりかつ長い距離が必要です。
そのためハンドルやステアリングラックとの継手となるユニバーサルジョイントへの負荷が増すことが考えられるでしょう。そのほかにはワイパーの位置が左ハンドル仕様のままという場合もあります。
右から左に動くということは運転席側の拭き残しが多くなるというもの。左ハンドルを右ハンドル仕様に変更するということは、メーカー側も苦労があるようです。同時にあまり影響がないと思われる点は左ハンドル仕様のままで変更しないということが分かります。
輸入車には右ハンドルがあるのだから、左ハンドルなんてかえってダサいといわれることもあるようです。しかし左ハンドル仕様に作られた車をそのまま乗ることのメリットはあるのかもしれません。
左ハンドルあるある
そんな左ハンドル最高と思っている数少ないユーザーたちのあるあるをご紹介していきます。
・右折が厳しい
交差点で右折時に対向車の右折にトラックがいるとアウト。そのトラックが右折するま
で、または矢印信号が出るまでは、石のように動かないことを余儀なくされます。
・発券機問題
高速道路のETC普及は、小躍りするほど喜んだ昔。今は駐車場だけになった気がします。助手席に誰かいると助かりますが、大抵車を降りて発券、精算をすることに。後ろの車に会釈しつつ、速攻を心がけます。
あまりにも狭い駐車場で、降りることができなかったため、運転席から助手席に移動して精算をしたことも。
・車検、自動車保険、ガソリン代はちょっと高め
・ワイパーとウインカーを間違える
・ディーラーの人から聞いた話ですが、特に並行輸入車の車検は、審査官の指摘が厳しい。
・左ハンドルはマジックハンドとよく聞く話ですが、使ったことはありません。それどころか持ってもいないです。
・左側から眺める景色は、ちょっと見やすくて嬉しい。
・左ハンドルの面倒なところが愛おしい。
つまり、いいところはもちろんのことですが、面倒くさくて使いづらいところは気にならないということです。それは左ハンドルだからというよりも、その車種に思い入れがあり、一緒の時間を過ごすことが楽しくてたまらないと言い換えることができるのではないでしょうか。
例えば『トヨタ・スープラ GR』は、もちろん右ハンドルですが、ウインカーは左側です。『BMW・Z4』と共同開発が行われ、生産はオーストラリアで行われています。ウインカーの位置が反対でも、欲しい人は購入するでしょう。
ちょっと例えとしてはピンとこないかもしれませんが、欲しい人にとってそれはとても小さなことにすぎません。つまりは慣れで、慣れてしまえばどうということのない問題なのです。
“慣れ”といえば、イギリスを代表する『ロールス・ロイス』は左ハンドルの割合が8割に達しています。購入する人の収入を考えれば、少し次元の違う話ではありますが、なぜ左側通行のイギリスで、乗りにくいといわれる左ハンドルが売れているのか、気になりませんか。
それは慣れてしまっているところにあるといます。90年代以前の『ロールス・ロイス』で、高価格帯においては右ハンドルの設定は少なかったようです。そのためオーナーたちは左ハンドルに乗るようになったといわれています。
そして多くのオーナーたちは長年乗り継いでいるという状況から、左ハンドルに慣れてしまい、愛用され続けています。左ハンドルに慣れ親しんだ人たちからすると、右ハンドルは怖いという人も少なからずいるようです。
左ハンドルに見栄を張るということではなく、右ハンドルが怖いという安全性や趣向の問題から、国産の高級車に興味がわかないという人もいます。そのため『レクサス』では輸入車のオーナーの乗り換えに期待できないという声もあるようです。
まとめ
左ハンドルのことを、さまざまな方向からご紹介してみました。結局のところ自分にとってカッコいいかどうかの物差しは、自分の中にしかないということではないでしょうか。左ハンドルに乗ってみたいと思うなら、やはり一度乗ってみたほうがいいのかもしれません。
そのうえで、「なにこれいい感じ」と思うのか「やっぱり右ハンドルだ」と思うのかは人それぞれ。左ハンドル愛好者からみれば、文句を言うのは一度乗ってみてからにして欲しいということでした。
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