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カスタム・アフターパーツ | 2021.05.11

サーキットでは命を守るフルハーネス、でも公道では使用厳禁!そのワケとは?

Posted by KAKO MIRAI

サーキットで万が一に備えて取り付けるものには、フルハーネスが挙げられます。競技用だけに体をホールドしてくれる性能は高いはず。それなのにフルハーネスで公道を走行すると違法になります。シートベルトの良し悪しはどこで決まるのでしょうか?早速ご紹介していきましょう。

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2点式から始まったシートベルトの歴史

シートベルトのルーツを辿ると、1903年にフランスで開発された「防御用ベルト」から始まっているといわれています。世界で初めてシートベルトを搭載した車が誕生したのは、アメリカの自動車メーカー『タッカー・トーピード社』による2点式シートベルトでした。

この2点式シートベルトですが、日本では1994年まで普通乗用車の後部席に使用されており、長い間使用されてきたことが分かります。この年の道路運送車両の保安基準改正で全ての座席に3点式シートベルトの設置義務が定められることとなりました。

2点式シートベルトの弱点といえることは、腰の両側で支えるものだったため、上半身の拘束する性能が低いといわざるを得ません。衝突時に大きく体が揺さぶられ、頭部を損傷する危険性が高まります。この問題点を改善したのは『ボルボ社』でした。

両腰のホールドと、肩の支点を加えた3点式シートベルトを開発。市販車両『PV544』に搭載されたのは1959年のことです。以来3点式のシートベルトが主流となっていますが、『ボルボ社』は、「安全は独占されるべきものではない」と、この特許を無償公開しました。

『ボルボ』といえば、安全というイメージの一端はここからきているのかもしれません。そのほかには1972年には後ろ向きのチャイルドシート、1991年にはサイドエアバッグシステムなど安全のスタンダードを作り出していった『ボルボ社』の功績は高く評価されている結果といえるでしょう。

日本でシートベルトの着用が義務付けられたのは、世界から見て遅れること10年。1969年のことでした。当時は運転席のみ、着用義務が課せられていたようです。続いて助手席の着用義務が課せられたのは、1971年と最近のことになります。

シートベルトの種類

体を固定する視点の数によって種類が異なっています。

・2点式シートベルト

下腹部を通して両側の腰に装着するかたちです。上半身を支える機能が乏しく、衝突時に

は体が激しく揺さぶられてしまうことがあります。観光バス、飛行機などの座席に設置されていることが多いものです。

 

・3点式シートベルト

2点式の両腰に加えて肩にも支点を置いています。実用的で保護性能にも優れており、現在の自動車の主流となっているシートベルトです。

 

・フルハーネス式

腰を拘束する1本のベルトに、胸を拘束する2本以上のベルトで構成されています。4点式、5点式、6点式などがあり主に自動車競技で使用されるものです。衝突時に体をホールドする拘束性が最も高いといえるでしょう。

 

4点式…3点式は一方の肩から胸、おなかを通してホールドする形。それに対して4点式は両方の肩とお腹をホールドしています。

 

5点式…4点式の両肩に加え、股間に1本のベルトが追加されてよりホールド感を強めた設定です。

 

6点式…5点式に加え、もう一本股間のベルトが増えた形となっています。そのため5点式をさらに体を頑丈に固定することが可能です。

サーキットはフルハーネスじゃないと走れない?

サーキット場の規模や種類によって異なる点はありますが、3点式以上のシートベルトを装

着する義務は変わりません。例えば、『富士スピードウェイ』のような国際コースを例にと

って、みてみましょう。

ショートサーキットの走行枠は、3点式以上のシートベルトが設置されていれば走行可能です。しかし本格的なレーシングコースを使用する場合には、ラップタイムごとに走行枠が決められているため、4点式以上のシートベルトの設置が義務付けられています。

規模の小さなサーキット場や走行会においては3点式シートベルトで走行できるところは多いでしょう。ではなぜ、サーキット走行にはフルハーネス、といわれるのでしょうか。それは身体のホールド力の高さにほかなりません。

3点式の場合であっても、縦方向の慣性力にはロック機能が働き、足で踏ん張ることも可能です。しかしコーナリングなどの横方向には、身体は大きく振られてしまいます。ドライビングポジションが安定していないということは、素早いステアリング操作を行えないだけでなく、恐怖さえ感じることになるでしょう。

フルハーネスは前後左右すべてに対して高いホールド力を発揮するため、動かせるのは頭と手と足のみ。通常には感じることのない横Gや減速Gなどの恐怖心も軽減されるのです。このような理由からサーキット走行では4点式が普及することになります。

しかし4点式では衝突時にカバーできなかったケースがあり、5点式や6点式が誕生します。腰の位置を変えずに支えることができるため、長時間の耐久やラリー、ダートなどといった悪路走行のラリーレースにはもってこいのフルハーネスということができるでしょう。

サブマリン現象って?

『JAF』の2020国内競技車両規則第4編細則には4点式のフルハーネスで、サブマリン現象防止の観点から、5点式、6点式を推奨すると書かれています。このサブマリン現象は、前方からの衝撃を受けたときに起こるものです。

衝突によりシートの座面から滑り落ち、ダッシュボードの下などに滑り落ちてしまう現象のこと。支点が多くなれば、その分装着も手間がかかります。しかし4点式以上の性能を発揮するのは6点式といえそうです。

サブマリン現象は、サーキットに限ったことではありません。通常の事故でも起こりうるものです。寝かせ過ぎたシートや着座位置が浅すぎることは、サブマリン現象を引き起こしかねません。正しい姿勢で運転することは、サーキットに限られたことではないのです。

公道で使えない本当の理由

国内を走行する車両には車のほかに原動機付き自転車や軽車両などがあります。車両が常に安全なものであるためには、いくつかの規定が設けられておりその基準に沿って確認しなければなりません。その基準となる法律を定めたものが、「道路運送車両法」です。

車の構造や装置はもちろんのこと、排気ガスや騒音、他人に危害を与えない形状、さらには前照灯やバックミラー、ホーンの仕様まで詳細に規定。第22条2項にはシートベルトに関する規定が定められています。

また108条には22条で定めた内容が詳細に規定され、運転席と助手席のベルトは運行時腰及び上半身を容易に動かせる構造でなければならないと定められています。少し難しい言葉が並びましたが、つまり上半身をしっかりとホールドするフルハーネスは認められていません。

「道路運送車両法」によると公道でフルハーネスは、シートベルトとしては認められないということになります。見通しの悪い交差点やバック時に体をひねり後方確認することができなければ、確かに危険を伴っているといえそうです。

よく耳にするのは、サーキット走行を終了して帰宅時にそのままフルハーネスで、うっかり公道に出てしまったというもの。この場合には道路交通法によるところの「シートベルト装着義務違反」で反則金なしの点数加算となってしまうため、注意が必要です。

だからといって、スポーツ走行を行うためには車をもう一台用意しなければならないわけではありません。生活の足に使用している車をそのまま使用することは可能です。元から設置されている3点式シートベルトを残しておき、公道でフルハーネスを使用しなければ違反にはなりません。

車検に対応しているの?

ここで疑問になるのは、公道で装着することのできないフルハーネスは、車検を通すことができるのでしょうか。本来、公道を走行することを目的としている車については、やはり公道を走ることのできないものなので、車検を通すことはできません。

国の定めた法律である「道路運送車両法」に抵触しているため、認められることは難しいといえるでしょう。車検時にはフルハーネスを外し、3点式のシートベルトを装備して安全基準を満たすことが重要となります。

取り付け費用

レーシングハーネスといえば有名なところでは『クスコ』。競技使用を前提にデザインされており、軽い力でベルト調整が行える「クイックアジャスター」を採用しています。また『サベルト』は設計のコンパクト性に魅力あり。

ハーネスの取外し時間を短縮できるところも嬉しい点です。そのほかには『ウィランズ』も。ワンアクションで脱着可能で、手間がないことはポイントになります。商品自体は約1万~3万円代が主力商品です。高いものになると6万円前後にもなります。

取り付け費用は1万円前後のショップが多いですが、取り付けを依頼する際には、確認することをおすすめします。

まとめ

Lutsenko_Oleksandr / Shutterstock.com

サーキットでは命を守るフルハーネスですが、公道では安全基準を満たさないということから、使用することができません。もちろんそのままでは車検を通すことも難しいようです。命に直結する大切なものだからこそ、サーキットでは使用。

そして命にかかわるものだからこそ、公道では使用しない。フルハーネスにも種類があり、使用する目的を考えて購入するほうが良いようです。一口にサーキットでもレーシングコースかミニサーキットによっても異なります。

またダートで使用するなら、4点式以上の方が効果的です。でもフルハーネスだからといって過信は禁物。トップドライバーはフルハーネスにホールド性に頼らないといいます。力み過ぎたりポジショニングを見直したりすることも、忘れないでください。

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