コラム | 2021.05.11
普段の意識で走りが変わる?実践、MT車のドライビングテクニックはこれ!
Posted by KAKO MIRAI
ドライビングテクニックが磨かれるのは、サーキットでの練習だけではありません。普段の運転で意識すると次のサーキットでタイムアップを図ることも可能です。プロドライバーも地道な練習と理論から最速を極めています。どのようなことから始めればよいのか、そのヒントを探っていきましょう。
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デメリットだらけのMT車?
新車の販売において98%がATという国内事情から考えると、MT車の選択肢が非常に少ないということがいえます。また中古車であっても、低価格で購入できるMTスポーツカーはほとんどなく、新車以上の価格になってしまっているスポーツカーが目立ってきているのではないでしょうか。
最近はAT車の方が速く走れるといわれているように、トランスミッションの性能が向上しています。エンジン回転数に合わせて最適なシフトを合わせてくれるAT車と比較すると、MT車の方が遅いといわれることも事実です。
MT車に見られるアクセル全開走行や、シフトミスでエンジンが許容回転数を超過してしまうという結果から、オーバーレブを起こすこともあるでしょう。またエンジン回転数を上げてクラッチ操作を行うことが多いスポーツ走行ではトランスミッションの寿命が短くなるということもあります。
ハイパワーの車では、クラッチペダルが重いこともデメリットといえるかもしれません。適切な操作を行えば故障のリスクは低くなりますが、操作を誤れば車を壊す可能性があるでしょう。
現在のクルマ事情を考えると、MT車にはデメリットしか見えてこないような気もしますが、メリットはあるのでしょうか。
スポーツ走行でのMT車のメリット
最近のレーシングカーを見ても2ペダルで、左足ブレーキが主流となりつつある時代。パドルシフトやレバーでシフトチェンジを行うため、クラッチ操作は必要ありません。シフトチェンジのミスを無くすには、ATが最適だともいわれています。
それならば一般的な市販車でサーキット走行を行う場合にも、AT車が良いのかというとそうとも言い切れません。AT車のMTモードやパドルシフトでは、オーバーレブを防止するために自動でシフトアップが行われてしまう場合があります。
MT車であれば一段下のギアで引っ張ることができるため、パワーを最大限に使用することが可能です。またスポーツ走行時の高温に対する耐久性は、MT車の方が高い場合が多くなっています。
AT車はミッションオイルなど油温の上昇でセーブされることがあるため、長時間の走行はできなくなってしまう可能性があります。もちろんMT車であってもハードな走行にさらされ続ける場合には、ミッションオイルクーラーなどが必要です。どちらかといえばAT車の熱対策はより重要といえるでしょう。
クルマを操る楽しさを感じるのは、なんといってもMT車です。シフトやクラッチの操作は運転が好きな人にとっては楽しい作業ではないでしょうか。例えば素早いシフトチェンジで的確な回転数を合わせれば、タイムロスを減らせるだけでなく、ミッションをいたわることもできます。
スポーツ走行だからこそのテクニックも数多くあります。運転の技量を磨くためにはMT車は持ってこいといえるでしょう。ここからはドライビングテクニックについて、ご紹介していきます。
ドラテクとは
ドライビングテクニックは、速く走るための技術のこと。しかし免許を取得しただけでは、速く走る技術は身についていません。ましてサーキット走行となると、さまざまな知識と経験が必要になります。
車の性能を一つひとつ理解することが大切です。そして、走る、曲がる、止まるということを意識することも重要になるでしょう。そして速く走るために何よりも大切なのは、怖いもの知らずにアクセルを踏み続けることでも、ブレーキを踏まないことでもありません。
コーナ―でブレーキを踏むことなく突っ込み、思い切りステアリングを切り曲がろうとすれば、タイヤは横方向に力が加わりグリップの限界を超えてしまいます。するとタイヤは横に滑り曲がりきることができず、コースアウトするでしょう。
例えばコーナーの手前で最適なブレーキをかければ、車は前のめりの状態になります。その時、前輪には上から荷重がかかっていて、タイヤのグリップ量が増えたところでステアリングを切っていくとするとしましょう。するとタイヤは荷重がかかる前にグリップ力を発揮し、減速を抑えて曲がることができます。
車の状況を理論的に知り、アクセルの踏み方やブレーキのタイミングなどを正確なタイミングで行うことで最大限の性能を始めて引き出せるのです。丁寧で優しい操作性の中に速く走らせるためのテクニックがあるといえるでしょう。
ドライビングテクニックに必要となるものには、「ブレーキング」「ステアリングワーク」「アクセルワーク」「荷重移動」「挙動コントロール」が挙げられます。それぞれ別物のテクニックですが、すべての技術が重なって速さにつながっていくのです。
ドライビングテクニックといわれる技術にはどのようなものがあるのかご紹介していましょう。
・ヒール&トゥ
文字通りつま先でブレーキを踏み、かかとでアクセルを踏むという動作を同時に行い、シフトダウンする方法です。この動作を行う目的は、コーナでの立ち上がりに備えて進入時にシフトダウンを行うこと。
そして二つ目にはシフトダウンによる変速ショックを車体に荷重変動を起こさず、スムーズな立ち上がりを実現するというものです。ギアとエンジンの回転数を合わせることで、シフトロックを回避することができます。
・アウトインアウト
コース上のコーナーよりも大きな半径を走る方法で、より直線的に走行することができるため、スピードを落とさず通過できるというもの。つまりイン側にステアリングを切り込み、コーナー出口でアウト側を目標にして立ち上がることになります。
昔はクルマのブレーキ性能やタイヤのグリップ力が低く、一度速度を落とすとリカバリーに時間がかかりました。そのためコーナーでの速度低下を避ける方法として長い間利用されています。
しかし現在では車の性能も向上し、低速からでもトルクフルな走行が可能です。トラクション性能も格段に向上し、加速も良くなっています。もちろんタイヤもハイグリップに性能アップ。
そうなると車速を落としてライン取りを小さくしても、タイムロスにならないという場合も考えられるようになりました。つまりコーナーの特性と車の性能に合わせてライン取りを決めていくという方向に変化してきているのも事実です。
車の性能が向上してくると、使用するドライビングテクニックもひとつではなくなり、さらに難しくなってきているといえるでしょう。
・ブリッピング
シフトダウンテクニックのひとつです。急激なスピードダウンによってシフトを落とすと、ギアの回転差でシフトショックが発生し、車が前方に押し出されるような衝撃を受けることがあります。
そのような変速ショックを無くすためにアクセルを煽り、エンジンの回転数を上げて、シフトダウンによって生じるギアの回転差をなくします。方法としてはクラッチを切り、シフトチェンジ。アクセルを煽り、回転数が上がったところでクラッチをつなぐというものです。
・コーナリング
車の駆動方式によってドライビングが異なり、コーナリングの方法も変える必要があります。
FR…ステアリングがフロントタイヤ、リヤが駆動と分担されているため、操作性が良い。コーナーでパワーを変えるとオーバーステアになるので、ドリフトに使われる。
雨の日はリヤが滑るため、スピンしやすい。また微妙なアクセルワークが重要となる。
FF…軽量コンパクトな車のために開発された駆動方式。すべての仕事をフロントで行うためフロントタイヤにかかる負担は大きくなる。
コーナーでアンダーになりやすいが、アクセルを戻すことでインになるため、初心者でも扱いやすいといわれている。
4WD…フロント、リヤの両方が駆動しているため、コーナーの立ち上がりが速い。安定性も格段に良く、コーナーの途中でもアクセルを踏んでいくことができる。雨天でもグリップが安定しているのは4WDの特徴ともいえる
MR…エンジンが中央に搭載されているため、操縦性、回頭性が非常に良い。欠点としてはスピンしやすいこと。グリップの低い路面では慎重なアクセルワークを必要とする。
RR…重心が後ろにあるため、リヤに加重がかかりやすいためパワーのある加速を得ることができる。
普段から練習できることは?
サーキット走行は、普段から練習できる場所ではありません。一般道を走行しているときであっても、心がけていればサーキット場では練習の成果を発揮できるのではないでしょうか。
・シートポジション
正しい姿勢は正確な操作を行うために重要なものです。シートに深く腰掛けた状態で、アクセル、ブレーキ、クラッチを踏み込んだときに膝が伸び切っていないことを確認してください。
シートバックには背中をピタリとつけ、ステアリングを回しても肩がシートから離れない位置に調節。またバックミラー、サイドミラーなどは頭を動かさなくても後方を確認できるようにします。
・アクセルワーク
加速や減速を行わず、一定の速度で走行を続けるためには、繊細なアクセルワークを必要とします。このようなアクセルワークを「パーシャルスロットル」と呼びますが、これが意外に難しいものです。
道路状況は刻々と変わり、上り坂、渋滞などさまざま。アクセルの踏み込み量を調節することができれば、前にも後ろにも荷重がかかっていない状況を表しています。すなわち安定したコーナリングに必要となるテクニックです。
・ブレーキング
サーキット走行で難しいとされてるものに、ブレーキングが挙げられます。トップスピードからのフルブレーキングはどこでブレーキをかけるかで、おおきな差を生むことに。速すぎるとタイムロスにつながり、反対に遅ければコースアウトする危険もあります。
一般道でフルブレーキングは危険すぎますが、練習は可能です。「踏力一定ブレーキ」といい、一定速度で走行しながら赤信号でブレーキを踏む力を一定にしたまま停止線でピタリと止まること。
ブレーキの踏力を調整することなく、一定の加速度で行ってください。どこでブレーキを踏めば停止線で止まれるのかを体で覚えることができれば、ブレーキングに安定感が生まれます。
・視線
プロのドライバーの運転中の視線は30m以上先を見ているといわており、先を見ることでコーナリングのライン取りを頭の中で組み立てているのです。また、先を見ていることで危険を回避することにもつながります。
まとめ
AT車が台頭している現在であっても、MT車でスポーツ走行を行うことのメリットは十分にあるでしょう。車を理解するためには、MT車の存在も大きいといえます。現在、プロレーシングドライバーとして活躍している人たちも、日頃からコツコツと地道な練習を重ねてきたようです。
一日にしてドラテクは身につくものではありません。しかしほんの些細な意識付けで変わってくるものともいえるでしょう。車を操る楽しさをひとつでも多くマスターして、さらなるステップアップを図りたいものです。