コラム | 2021.05.11
映画が人気に火をつけた⁉リトラクタブルヘッドライトがカッコイイ車5選
Posted by KAKO MIRAI
スクリーンに登場するカッコイイ車たち。憧れたのは主人公ではなくて、やっぱり車でした。夢は夢のまま、あんな時代もあったと懐かしく思い出されることもあるでしょう。また夢を現実にして、手に入れた人もいるかもしれません。少しだけ時間を巻き戻して、タイムスリップしてみませんか。
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リトラクタブルヘッドライトとは
1970年代から1980年代後半にかけて、人気のあったヘッドライトの形状に「リトラクタブルヘッドライト」がありました。前方の夜道を照らすヘッドライトのひとつで、夜間の視野を確保するとともに、歩行者や周囲へ車の存在を知らせる目的を担っています。
リトラクタブルは英語で「中に引き込む」という意味を持っており、普段は車体の中に格納することができるものです。リトラクタブルの機構にも種類があり、それぞれに異なった特徴があります。
・ヒドゥンヘッドライト
消灯時はボディやグリルと一体となり、カバーで隠すことができる。
例:クライスラー インペリアル
・コンシールドヘッドライト
1960年代のアメリカ車で流行していた。ヒドゥンと同様に使用時以外は、車体と一体となり隠すことができる。
例:マーキュリー クーガー、リンカーン コンチネンタル
・ポップアップ式ヘッドライト
スポーツカーに使用されることが多いもので、フロントノーズに上向きに格納されており、
ライトがボディに張り付いているように見える形状のもの。点灯時にはライトが起き上が
り進行方向に正対する。
例:ランボルギーニ ミウラ、ポルシェ 928
・セミリトラクタブルヘッドライト
ヘッドライトの下半分が格納されているタイプのもの。
例:いすゞ ピアッツァ、ホンダ CR-X、ランボルギーニ ハラマ
リトラクタブルヘッドライトが誕生したのは、1930年のこと。当時の車は大きな丸いヘッドライトがラジエターグリルの左右に設置されているもので、デザイン的には似通った印象を与えているようです。
1935年にアメリカの『コード』から誕生した「801/802」は、従来にはない斬新なデザイン性を求めて誕生しました。当時はそれほど話題とはならなかったようですが、人気が高まったのは1960年代のこと。ロータス エランで採用されたころです。
車の開発に空気力学が応用され始めたのは1920年のことでしたが、まだ科学的な根拠に基づくものではありませんでした。その後1960年代に入り、空気抵抗を減らすためにさまざまな開発が進みます。
そのひとつがライトです。車体前部の高さを低くできれば、空気抵抗を抑えることが可能になるということが分かってきたのです。しかし歩行者への安全を配慮するためには、地上高には規制がありました。
地上高とデザイン性の向上も図ることができるものとして誕生したのがリトラクタブルヘッドライトです。いつしかリトラクタブルヘッドライトは、通称リトラと呼ばれるようになり、スポーツカーを代表するギミックのひとつになっていきます。
ライトがせり上がるというだけで、大興奮したあの頃を思い出す人も多いのではないでしょうか。
トヨタ 2000GT
日本初のリトラクタブルといえば、誰もが知るトヨタ 2000GTです。レーシングカー並みのスーパースポーツカーとして名を馳せました。空力特性を考慮した低いノーズで、美しいボディラインを強調。また丸い大きなフォグランプが特徴的となっています。
開発されたエンジンはDOHCのダブルオーバーヘッドカムシャフト構造。『ヤマハ発動機』と共同で開発されたエンジンで、「3M型」といわれるものです。日本のスポーツカーの原点ともいえる高性能エンジンでした。
最高出力150psと当時としては並外れたハイスペック。茨城県矢田部のテストコースで行った78時間1万マイルスピードトライアルで、平均時速206.18㎞を達成し、3つの世界記録を樹立しています。
インテリアにはステアリングにウッドが使用され、楽器メーカーとしても有名な『ヤマハ』の技術力が生かされました。インパネには7つのメーターを装備し、当時のスポーツカーとしての醍醐味を与えています。
2000GTを代表する映画といえば、1967年に日本を舞台に繰り広げられた『007は二度死ぬ』ではないでしょうか。俳優ショーン・コネリーさん演じるジェームズ・ボンドのボンドカーとして使用されたもの。しかし劇中で運転したのは、ジェームス・ボンドではなかったという珍しい一台です。
また実際にはなかったオープン仕様に変更されたことも大きな話題となりました。これはショーン・コネリーさんが高身長で、クーペボディには収まらなかったという逸話もありますが、撮影用に車載カメラを設置しやすいようにという配慮もあったようです。
オープンカーへの設計変更を受けたトヨタでは、『トヨペットサービスセンター綱島工場』にて、わずか14日間で完成車両を仕上げています。撮影では本番と予備に2台が用意されたようです。
本番で使用された1台は、現在愛知県にある『トヨタ博物館』で収蔵されており、その雄姿を見ることができます。
トヨタ セリカ GT-FOUR
1970年に誕生した初代から、生産終了となる2006年まで7代目を数える人気の高かった車種でした。斬新なスタイルと、モータースポーツでの目覚ましい活躍が、記憶に残る人も多いかもしれません。
初めてGT-FOURが誕生したのは、4代目となる1986年のことです。トヨタ初の『世界ラリー選手権(WRC)』フル参戦を果たし、1989年には初優勝を飾りました。セリカ初となるFFでありながら、FRのようなパワースライドを武器にした鋭い走りは、多くの人に驚きを与えています。
流面形ボディと呼ばれたエアロフォルムは、3つの面で構成されたもの。スラントノーズとリトラクタブルヘッドライト、曲面で構成されたウィンドウは、空気抵抗を大きく削減することに成功しています。
当時の最新技術をふんだんに盛り込み、国産エンジンでは最強の185psを発揮しました。『世界ラリー選手権(WRC)』での活躍のほかに、映画『私をスキーに連れてって』で登場したGT-FOUR。そのカッコよさに魅了された人は多かったといえるでしょう。
女優の高橋ひとみさんと、原田喜和子さんが雪道を激走するシーンでは目が釘付け。激走前にドアを開けて「凍ってるね」とつぶやく一言は、当時の流行語となったほどです。そして
スキーブームを引き起こし、雪道にはGT-FOURというイメージを定着させたきっかけでもありました。
また主人公を演じる原田知世さんが、運転したのはカローラ Ⅱです。コンパクトカーを代表するターセル、コルサと共に三兄弟として誕生。「3ドアリトラ」のスポーツグレードが設定されていました。
1.5Lのターボエンジンを搭載し、Hiモードで110psを発揮するハイパワー設定。つまりは、GT-FOURのようなスポーツカーのみならず、スポーティカーにもリトラクタブルの設定があり、当時リトラがどれほど人気を集めていたかが理解できるのではないでしょうか。
マツダ アンフィニRX-7 FD3S
1991年に誕生した3代目となるアンフィニ RX-7。2代目まで20年間続いてきた「サバンナRX-7」からサバンナを外し、アンフィニに変更されています。マツダが『ル・マン24時間耐久レース』で、国産初となる総合優勝を獲得し、ロータリーエンジンの存在が大きくクローズアップされました。
ロータリーエンジンを搭載し、走行性能が加わったピュアスポーツカーのFD3Sには、生産終了までに6つのタイプが存在しています。1~3型の前期、4型の中期、5~6型の後期です。
先代のFC3Sと比較すると、低くなったボンネットに流線型の柔らかなボディラインで、フルモデルチェンジを果たしました。わずか2年で2型、3型へと進化と遂げたFD3Sは、加速を重視したファイナルギアの設定や、ブレーキディスクの大型化など、ピュアスポーツを目指す下準備を整えていきます。
4型ではECUを8ビットから16ビットに変更。MT車では255psから265psへとパワーアップ。テールランプに丸目の3連が採用されました。後期となる5型、6型では最高出力280psにまで向上しています。
FD3Sが使用された映画は非常に多いといえるでしょう。中でも有名なのは『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』。チューニングメーカー『VeilSide』の手で仕上げられたコンプリートカー。
ノーマルのFD3Sとは全く異なるエクステリアで、すべてに手を加えて仕上げられています。オレンジとブラックのカラーリングで、印象的なデザインが魅力的です。映画公開から10年以上も経っていますが、いまだに注文を受けることがあるという、人気の高い車といえるでしょう。
また、アニメ『頭文字D』に登場するFD3Sは、登場人物の高橋啓介が操るイエローのボディが印象的なモデル。実車としては、1992年に発売された1型のプロトタイプで、コンペティションイエローマイカです。
主人公だけでなく、登場人物が乗るさまざまなスポーツカーに人気が集まるのが『頭文字D』 の人気の高さ。発売からかなりの年数がたっている車種たちであるにもかかわらず、高値で取引されています。今では登場車種のどれもが名車の域といえるでしょう。
その他にも『劇場版名探偵コナン ゼロの執行人』で安室透の愛車として登場。劇中で使用されたのは白のFD3Sです。また『サマーウォーズ』では、セルの音まで実車と同様という徹底ぶりに感動します。
リトラクタブルヘッドライトの国産車で、最後となってしまったのがFD3Sです。法規制の強化によるものですが、リトラで育ってきた世代には少し寂しい展開でした。
ロータス エスプリ
ロータスといえば、英国を代表するスポーツカーメーカーです。リトラクタブルライトが採用されたのは、1960年に誕生したエランから2代目となるエリート、その後エクラ、エクセル、エスプリでした。
エスプリは、同じ年に生産を終了したヨーロッパに代わる新たなミッドシップとして誕生。ヨーロッパがライトウェイトであったこととは対照的にフェラーリやランボルギーニをライバルにしたスーパースポーツをターゲットにしていました。
初代から『イタルデザイン』の創業者であるジョルジェット・ジウジアーロが担当。曲線を排除した直線的なスタイルが斬新な美しさを与えています。機能美ともいえるほぼ平面のウィンドーシールを採用するなど、これまでのロータスでは味わえない、モダンなデザインといえるでしょう。
軽量でハイパワーなボディを実現し、「バックボーンフレーム」と呼ばれるロータス独自のシャシーを採用しています。また搭載されたエンジンはグランツーリズモ エリートと同様の907エンジンです。
シリーズ1誕生からV8まで基本的なスタイルは最後まで引き継がれ、変わらない魅力がありました。最終モデルでは3.5LのV8エンジンを搭載し、出力の向上などが図られています。
1976年の初代モデルから2004年まで、実に28年間というロングセラーヒットモデルとなりました。シリーズ1が登場した映画は、1977年公開『007私を愛したスパイ』のボンドカーです。
なんといってもインパクトが強かったのは。潜水艦に変身するところではないでしょうか。ヘリコプターに追われ、桟橋から水中に飛び込んだエスプリが、潜水艦に早変わり。その後、レーダーでヘリコプターに向かってミサイルを発射し、爆発させるというスケールの大きいものでした。
「Wet Nellie(ウェットネリー)」と名付けられたエスプリは、撮影用に用意された中で、唯一潜水艦に変形可能に改造されたものです。フロリダの『ペリー海洋研究所』で4機のプロペラ、防水用のバッテリー、フィンが設置されました。
その他には煙幕発射装置や、ミサイル発射用のハッチも装備。実際に撮影を行ったのはアメリカ元海軍兵士で、スキューバダイビングスーツに身を包み、びしょ濡れで「Wet Nellie(ウェットネリー)」を操縦したそうです。
この「Wet Nellie(ウェットネリー)」ですが、映画公開された11年後に新たな話題を呼びます。所在の分からくなっていたエスプリが、ロング・アイランド島で発見。2013年に開催されたオークションで落札したのは有名な人でした。それは『テスラ社』のイーロン・マスクさんです。
子どものころ、南アフリカでこの映画を見たマスク少年は、大人になった今手に入れることができました。今後は電動パワートレインを交換して実際に潜水できるエスプリへと変更する計画がされています。またテスラから発売されているサイバートラックのモデルにもなりました。
コルベットC5
5代目となった1997年に登場したコルベットC5は、先代のイメージを引き継ぎつつも、すべての面で見直しがなされています。車両パッケージングによる重量配分では、重いパーツをどこに設定するかでトラクションに差が出ることもあり、こだわりの設計。
車両重量配分は、空車時で51対49にして、ドライバーが乗り込むと50対50をじつげんするといものです。スポーツカーの心臓部はOHV。剛性や重量軽減を図る目的で横置きされたサスペンションやフレーム式のシャシーを使用しています。
『GM』が理想とするスポーツカーを形にした一台となりました。C4からC5へのフルモデルチェンジは、大きな革新でした。C5は世界で最後のリトラクタブルとなってしまい、心に残る名車になったのではないでしょうか。
C5が登場する映画には『レッドライン』があります。大切な人を失い、レースに参戦しなければならなくなった、主人公と戦う車たちが超高級車揃い。走行シーンで聞くことができるエンジンサウンドは、とても聞き応えがありそうです。
さまざまなところで行われるカーアクションは、CGを使用せず、すべて実車で行われたものでした。クラッシュシーンでは「もったいない」のため息が漏れるかもしれません。使用されている車種の一部をご紹介しましょう。
・ケーニグセグ CCX
・エンツォ・フェラーリ
・SLRマクラーレン
・コルベットC5
『ワイルド・スピード』よりも高級車が使用されているイメージです。そのほかの映画には、『トイストーリー3』にも登場しています。ピンクのC5コンパーチブルにおもちゃたちが乗り込んでいました。
まとめ
懐かしく思い出される名車と映画には切っても切れない楽しさがあります。スクリーンに映る車に憧れた昔。いつかは乗りたいとワクワクした気持ちを、たまには思い出すことも必要な時間といえるのではないでしょうか。
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