コラム | 2020.09.20

V6エンジンと直6エンジン それぞれの違いは?

Posted by 菅野 直人

エンジンのシリンダー(気筒)数やレイアウトは、自動車好きであれば、議論になりやすい話題の一つですが、中でも直6(直列6気筒)エンジンと、V6(V型6気筒)エンジンは名機と呼ばれるエンジンの存在、歴史的意義なども含め激論の対象になることが多く、BMW以外に直6搭載車がほとんどなくなったことで、一時は勝負あったと見られたものの、2018年にメルセデス・ベンツが直6復活、さらにマツダも直6の新開発を報じられたことで、議論が再燃している感があります。

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コストなどバランスが優れ、振動も少なく多用された直6エンジン

Dale Morrison / Shutterstock.com

自動車史において、最初の内燃機関は、1886年ベンツ・パテント・モトールヴァーゲンに搭載された954cc単気筒4サイクルガソリンエンジンでしたが、出力向上のための大排気量化にはシリンダー(気筒)増加は必然でした。

もっとも、シンダー内でピストンを上下させるピストンエンジンでは、複数のシリンダーから動力を取り出すクランクシャフトの製造が課題で、精度が高く高品質な物をつくることができるようになるまでは、自動車用でもV型2気筒、航空機用など大排気量多気筒エンジンでは、後々まで星型エンジンなど、クランクシャフトが短くて済むエンジンが開発されています。

しかし、ある程度技術的なメドがつくと直列2気筒、同4気筒と長いクランクシャフトを持つ直列エンジンが登場するようになり、その決定版として20世紀初頭には、既に高級車用などで主力の座を得たのが直列6気筒エンジンです。

構造的な詳細は省きますが、振動が非常に少なく滑らかに回り、吹け上がりもよくて大排気量化によりパワフル、エンジンブロックが一つで済むため構造が単純で、より小さな車のための直列4気筒エンジンと生産設備を共用できるため低コスト、と良いことずくめの直6エンジンは、いわば20世紀を代表する自動車用エンジン形式の一つでした。

それ以上、たとえば直列8気筒以上にすると、さすがにクランクシャフトが長すぎ、精度や耐久性の面で支障が出てくるため、8気筒以上のエンジンでは、V型8気筒エンジンが主力となりましたが、大衆車でも高級車でも用いられる2~3リッタークラスエンジンでは、非常に有利な形式です。

そのクラスの車が多い日本でも、トヨタや日産の直6エンジン車が数多くつくられ、特に日産のL型やRB系、トヨタのJZ系エンジンは、名機として21世紀に入ってだいぶ経った現在でも、チューニングベースとして未だ現役で活躍しています。

時代の要請で登場したV6エンジン

一方、V6エンジンは直6に比べればはるかに歴史が浅く、1960年代にようやく量産車向けエンジンが登場した後、1970年代のオイルショックを境に増え始め、直6エンジンでは全長が長すぎて難しいFF車用横置きエンジンとして広く市民権を得たのは、1990年代に入ってからとなります。

オートバイやオート三輪など、搭載スペースが厳しい車に有利な空冷Vツイン(V型2気筒)、あるいはイタリアのランチアが得意とした、シリンダーを互い違いに配置して全長を縮める変速直4エンジン的な狭角V4エンジンを除けば、大衆車向けエンジンは直6、高級車向けはV8でコト足りてしまいました。

振動面で特に有利なこともなく、エンジンブロックもクランクシャフトも2つ必要なV6エンジンは、ほとんど必要とされていませんでしたが、それでも登場したのは、V8エンジンの生産設備や設計を流用して、ダウンサイジング(小排気量化)を低コストで可能にしたため、オイルショック以降のアメリカ車で多用されたことや、車内スペース拡大のためエンジンルームのコンパクト化が求められたのが大きな要因です。

全長の短さから縦置き用とした場合は、衝突安全性に関わるクラッシャブルゾーンが直6より短いエンジンルームで確保でき、FF用に横置きした場合も、タイヤの切れ角を確保できて、ボルボのように直6横置きFF車をつくった特異なメーカー以外は、ほとんどがFRでもFFでも使えるV6エンジンへとシフトしていきました。

日本でも2000年代に入ると、トヨタも日産も直6を廃止してV6へ転換、技術の進歩で振動や静粛性はだいぶ改善されていたとはいえ、直6エンジンのフィーリングを好んだユーザーを大いに嘆かせ、一時は直6エンジンを多用するメーカーはBMWくらい、それもかつてのように2~3リッタークラスへは使わず、1.5リッター直3~2リッター直4のダウンサイジングターボへ置き換えられています。

2010年代後半、直6エンジンの逆襲

popartproduction / Shutterstock.com

しかし、2010年代に入って多くのV6エンジンが2リッター前後の直4ダウンサイジングターボへ置き換えられていくと、かつてのように「FFでもFRでも使えて便利だからV6にしよう」という大義名分にはあまり意味がなくなってきました。

そうなると、直4エンジンと生産設備や設計が流用可能で、エンジンブロックやクランクシャフトは一つで済み、片バンクごとに配管を用意してターボチャージャーやハイブリッド用電動機などをかわすレイアウトに苦労するよりは、直6の方がよいのではないか?と考えるメーカーが出てきました。

技術の進歩でシリンダー間の間隔も狭くできて、以前よりエンジンの全長は短くでき、V12エンジンも搭載するようなエンジンルームを持つ車であれば、直4ダウンサイジングターボや直4ハマイルドハイブリッドでスカスカにするより直6を積んでしまった方が、高級感も増して快適、エンジンも気持ちよく回るというものです。

最初に動いたのはメルセデス・ベンツで、2018年にSクラスのマイルドハイブリッド版「S450」系で直6エンジンを復活させました。

その他のメーカーの対応はさまざまで、日産のように直4エンジンのまま可変圧縮比エンジンを開発、当面はV6ツインターボなどもつくるものの、直6は不要!と割り切るメーカーもあれば、トヨタのように「新規開発より、とりあえず協業したBMWからエンジン含め供給を受けよう」と、直6搭載で2ドアスポーツクーペのスープラを復活させた例もあります。

また、マツダもマツダ6(旧アテンザ)後継車に搭載するつもりで直6エンジンを開発中と報道されましたが、企業規模やブランド力からして採算が取れる高級車を必要な数だけ販売できる見通しもないため、「提携しているトヨタもマツダの新直6を採用するのでは」という観測すらある状態です。

こうした動きの一方で、トヨタが現行クラウンからハイブリッド車の上級グレード以外にV6エンジンを廃止するなど、V6搭載車は減り続けており、今後は大排気量車(に相当するハイブリッド車含む)を中心に、直6が復権していくのか?と考える人もいますが、話はそう簡単ではありません。

何しろ2020年代に入った現在、EVやPHEV、ハイブリッド、マイルドハイブリッド車が自動車の主力、スターダムに登りつめており、こうした電動車がモーターだけで走ると、静粛性や震動などいくら直6エンジンでもかなわないため、先が短い直6エンジンをつくるより、直4+モーターで乗り切った方が良いのでは?という意見が大勢を占めます。

高級車向けにV12エンジンを続行するような一部メーカーを除けば、直6もV6も「真っ先に廃止される運命のエンジン」である可能性は、非常に高いと言えるでしょう。

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