カスタム・アフターパーツ | 2021.05.11
著名ブレーキブランド・ブレンボとは?他のブレーキと何が違うのか
Posted by 菅野 直人
自動車にとって重要な三大要素「走る」「曲がる」「止まる」のうち、もっとも重要であり確実でないと困るのが「止まる」、すなわちブレーキです。多くの高性能車に純正採用され、ブレーキ分野におけるスペシャリストとして確固たるブランドを築いているイタリアのブレーキメーカー、「ブレンボ」の歴史と特徴をご紹介します。
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小さな町工場から始まり、超一流に愛されて世界へ羽ばたいた「ブレンボ」
クルマ好きやバイク好きで、しかもスポーツタイプの高性能車に興味があれば知らぬものなどいないのでは?と言えるほど有名なブレーキブランド「ブレンボ」。
ブレンボブレーキを純正採用した高性能車や、アフターパーツの装着に憧れる人は数知れず、モータースポーツでも大活躍する知名度の高さ、優れたデザインによるカッコよさは文句のつけようがありません。
そんなブレンボですが意外と歴史は浅く、1961年にイタリア北部ロンバルディノ州ベルガノ県のソンブレノで、小さな機械加工メーカーとして創業しました。
当初は、本当に小さな町工場という体でしたが技術力が認められ、1964年には、それまでイギリスからの輸入に頼っていた自動車用ディスクブレーキのブレーキディスクを製造するようになり、やがてブレーキキャリパーなどブレーキ周り一式の開発・生産を行うようになるまで、そう長い時間はかかりませんでした。
現在の社名「ブレンボ」となったのは、創業から10年ほど後のことで、創業者のイタロ・ブレダ(Italo Breda)とエミリオ・ボンバッセイ(Emilio Bombassei)の、「ブレダのBre」「エミリオのem」「ボンバッセイのbo」と頭文字をかけ合わせるとともに、近くにちょうどブレンボ川という川があったこともあり、「ブレンボ(Brembo)」と名付けられました。
ブレンボが大きく飛躍したのは、1975年、当時のフェラーリF1チームがブレンボブレーキを採用してグランプリへ挑んだ時で、同チームは名手ニキ・ラウダの活躍により1975年のワールドチャンピオンに輝き、さらに大事故で大火傷を負うなど重傷を負ったラウダが奇跡の復活を果たすまで途中離脱していた1976年を挟み、1977年にも再びチャンピオンを獲得しました。
この活躍を足元から支えた「ブレンボ」の名は世界に轟き、「超一流が使う超一流ブレーキ」としての道を歩み始めたのです。
高性能スポーツカーやスーパーカーが続々純正採用する実績と、デザインへの評価
その後もレーシングカーでの活躍や、スポーツカーの純正ブレーキへの採用は拡大していき、2016年にドイツのモータースポーツ誌がテストした中で、特にブレーキ性能に優れる「ベストブレーキング・カー」50台のうち、実に40台が純正採用されたブレンボブレーキを使用していました。
テスト内容は、「100km/hからのフルブレーキングにより、何mで停止できるか」というものでしたが、1位のポルシェ911GT3が30.7mを記録したのをはじめ、同率3位(31.3m)のフェラーリF1ベルリネッタ、KTMクロスボウGTなど、2位(31.0m)のシボレー・コルベットC6 Z06を除き、上記19位までの18台をブレンボのブレーキディスクかキャリパー、あるいはその両方を採用した車が独占しました。(国産車は6位のレクサスLFAがランクイン)
また、2004年には同社のカーボン/セラミックブレーキシステムが「もしブレーキでなければ、近代美術館の彫像になっていたであろう」という評価とともに、イタリアでデザインの優れた工業製品に贈られる「ゴールデン・コンパス賞」を受賞しました。
路面電車やプリンターなど、それ自体が完成された製品の受賞は珍しくないものの、「自動車の一部」として機械部品が受賞したのは、この時が初めてだったそうです。
ただしブレンボでは、代表的な赤一色に白文字の、あるいは金色や銀色に赤文字の着色されたブレーキキャリパーや、そのカッティングの美しさは芸術性の追求ではなく、あくまで機能性を追求した結果の機能美である、としていますが、同時に「最高の性能を求める努力と同様、外観も重要」としています。
実際、「Brembo」または採用した自動車メーカーの名が輝くブレンボのブレーキキャリパーは、美しい軽量ホイールの奥でも抜群の存在感を持っており、高性能を誇る実績とデザイン両面で、ユーザーの満足感を高める重要なアイテムです。
特徴は研究開発から部品の生産まで社内一貫した体制と、軽量・最適化された高性能
そんなブレンボは、他のブレーキシステムメーカーと比べてどのような特徴があるのでしょうか?
元が小規模な町工場であったためか、自社内で素材から小さな部品まで一貫して加工製造・組み立てを行う体制により高品質を実現し、フェラーリF1チームをはじめ、さまざまな四輪車、二輪車メーカーの高性能車で採用された実績から、自動車メーカーとの技術提携による研究開発体制で、その車に最適化されたブレーキシステムを開発する能力もあります。
また、アルミニウムやカーボン、セラミックなど軽量素材の使用でバネ下重量軽減にも積極的な姿勢で挑んでおり、車両に合わせて最適化されたサイズのキャリパーやディスクを選択しつつ、可能な限りの軽量化に取り組んでいます。
もちろん、車種によってはバネ下重量の低減が必ずしも最適解とは言えませんが、少なくとも高速性能や運動性が重要な高性能モデルでは、重心から遠い部分のパーツほど軽量化の影響が大きく、たとえばコーナリングで横Gがかかった時、加速やフルブレーキングで前後方向に大きくGがかかった際には、ブレーキシステムの重量が軽いほど余計な勢いがつかずに済むのは、言うまでもありません。
ブレンボではそうした軽量化の努力により、走行性能のみならず燃費低減にも寄与しているとして、環境性能の向上にも一役買っていると主張しています。
また、徹底的に贅肉をそぎ落とし、機能美に溢れたカッティング、そして大胆なカラーリングが施されたキャリパーなど、デザイン面でも性能同様に他のブレーキメーカーのベンチマーク的存在になっており、ユーザーが他の選択肢を選ぶ時には「ブレンボと比べてどうか」も、重要な要素になっていることでしょう。
実際、既に純正採用されている車種でブレーキのバージョンアップを検討する時、あるいはアフターパーツが設定されている車種で購入を検討する時、「ブレンボより高性能でカッコイイブレーキがあるか?」は、ユーザーにとって重大な関心事であるはずです。
細かい技術的アピールや実績もさることながら、「高性能で美しいブレーキの基準」であることが、ブレンボ最大の特徴かもしれません。
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