カスタム・アフターパーツ | 2021.05.11
車高調とダウンサスで乗り心地はどのように変わるのか?それぞれの目安コストは?
Posted by 菅野 直人
手頃な割に効果がわかりやすく、ドレスアップからチューニングまでコストパフォーマンスの高い自動車用パーツといえる、車高調こと車高調整式ショックアブソーバーやダウンサス。乗り心地や性能は実際にどの程度変わるものでしょうか?目安となるコストも含めご紹介します。
以下の文中の買取査定額は、投稿日時点での目安になります。実際の査定額については相場状況や車両の状態によって大きく変動しますので、あくまで参考金額としてご覧ください
車高調の普及以前はDIYも流行ったダウンサス
まず、手頃なダウンサスから紹介しますと、旧車や商用車、オフローダーなどへ残るリーフスプリング(板バネ)やトーションバー(ねじり棒バネ)、旧ミニなど一部特殊な車へ採用されたラバーコーンサス(ゴムバネ、高級車や大型車への採用が多いエアサス(空気バネ))を除き、乗用車の多くに採用されているのが金属を巻いた「コイルスプリング」です。
コイルスプリングは、巻かれた金属の間隔や巻き数により、重量がかからない時の長さ(自由長)や、重量がかかった際の長さが決まり、前者はショックアブソーバーが完全に伸びた時でも遊ばない(外れない)こと、つまり車検適合かどうかや、後者は車高に関わってきます。
つまり、車検に適合した自由長を確保した上で、車高を下げる役目を果たすようにつくられたコイルスプリングが「ダウンサス」というわけです(リーフスプリングのダウンサスなどもあります)。
今は規制緩和で適合車種が増え、いろいろな車に最適化されたダウンサスが販売されており、単にバネを交換するだけで車高を下げることができるため、車高調が増えるまでは「DIYで簡単に車高を下げられるパーツ」でした。
そのため、昔のカー用品店では、ショックアブソーバーから純正スプリングを外す際に伸びたスプリングが飛び出さないよう、そしてダウンサスを組み込んだ際に、アッパーシート(皿)をかぶせて固定するまでダウンサスが飛び出さないよう、スプリングを縮めて固定する「スプリングコンプレッサー」が、ダウンサスへの交換用としてよく売られていたものです(もっと昔の人であれば、硬い針金でギチギチに固定していたそうですが)。
ダウンサスは安価で違いもわかりやすいが、ショックアブソーバーとの組み合わせに注意
今でもやる人はいますが、純正スプリングを途中でカットして長さを短くした「カットバネ」や、そもそもコイルスプリングを組み込まない「アブノミ(ショックアブソーバーのみ」という手法も存在しますが、いずれもタダ同然とはいえ車検に通りません。
したがって、その車種に適合したダウンサスを購入するのが一般的ですが、新品であれば1台分1セット(4本)で数万円程度、安くて4万円くらいからが相場となるものの、ネットオークションや個人売買サイトで販売されている中古品であれば、安ければ数千円程度で済む場合もあります。
また、ハッキリ言ってしまえば、バネの巻き径が上下のスプリングシートに収まり、重量がかからない時に自由長不足でバネが遊ぶようなことがなければ良いため、他車種からの流用も容易です。
一般的には、スプリングシートが大きい純正形状用の大径スプリング(粗巻などと言ったりします)、ワイドタイヤやホイールに干渉しにくいというメリットもあり、シートが小さい車高調用の小径スプリング(同じく直巻などと言う)がありますが、純正で小径スプリングの場合は、最初から車高調用の直巻バネが使える車種もあります。
純正形状用のダウンサスであれば車種ごとに選ぶ方が間違いありませんが、特定の車種用というより、スプリング径と長さ、硬さ、巻き数違いを仕様に応じて使い分ける直巻バネを使えた方が、ダウンサスを組むにしても選択肢が豊富です。
このように、考え方によっては、かなり安価に組めるダウンサスですが、たとえば伸縮を抑える減衰力が低いショックアブソーバーに硬く反発力の大きすぎるダウンサスを組んでしまうと、スプリングの伸び縮みを抑えることができないため、少しの段差程度でも車体がブヨブヨ上下に動き続け、乗り心地が悪くなります。
逆に、減衰力の高いショックアブソーバーへ柔らかすぎるダウンサスを組むと、段差などで一旦縮んだのをスプリングの反発力で戻せないため、バネで衝撃を和らげる力がほとんど働かず、ガツンと下から突き上げる衝撃をモロに受けて、やはり乗り心地は最悪です。
そのため、ダウンサスを組む際に無難なのは、その車種に適合したもので、かつ純正ショック対応か、同じメーカーの社外品スポーツショックと組み合わせるものかを調べた上で最適な組み合わせを最初から組むか、あるいはスポーツショックとダウンサスがセットになった商品を購入するのがもっとも無難となります。
車高調や直巻バネを使えるショックアブソーバーの場合は、中古で何種類もダウンサスを試して、そこから最適解を見つけるのもDIY派の楽しみですが、一般的には「最初から最適と分かっているものを買う」のが確実です。
うまく組めたダウンサスは、見える世界が変わって乗り心地も無難に収まる
こうして最適解のダウンサスを組めた場合、まず「車に乗る」という段階から、車高の変化によって着座位置も下がるため、腰を下ろしても、いつもの位置にシートがないため、最初は「カクン」とズッコケたように乗り込むことになり、いきなり違いを体感できます。
さらに、運転席から見える視界もいつもより低くレーシーになり、アイポイントが下がるとゴーカートやレーシングカートのように体感速度も大きくなることから、低くなるほどスポーツカーを運転している、という感覚になり、同時にローポジションシートレールなどを使ってシート位置も下げていると、まさにレーシングカーのごときです。
ただし、アイポイントが下がるということは、体が露出しているカートと異なり、通常の車では視界の死角が増えるということでもあるため、車種によっては今までより周囲に注意して運転する必要があります。
また、走り出すと車高が下がったことによる重心低下や、コイルスプリングの硬さが変わったことでショックアブソーバーの動きも変わってきて、ハンドルを動かした際の挙動にもだいぶ影響が出て、おおむね「前より俊敏に動く」と感じるはずです。
前項で書いた「乗り心地が悪くなる組み合わせの例」を回避し、最適化されたダウンサスであれば、それで乗り心地が極端に悪化するようなこともなく、慣れれば今まで通りの快適性に収まると思います。
ただ、ショックアブソーバーが普段から縮んだ状態のため、ストローク量は短くなり、最低地上高も下がることにより、今までより段差でショックを感じやすくなったり、荒れた路面を走るとストローク限界が低いためダイレクトな突き上げ、ボディ底面を地面の何かに当てやすくなるなどの弊害が出るため、ラフな路面や高い段差がある場所での走行には注意してください。
車高調にはネジ式と全長調整式、さらに減衰力調整機能の有無などで複数ある
次に車高調、車高調整式ショックアブソーバーですが、大きく分けてスプリング下部のロワシートを上げ下げすることで車高を変える「ネジ式(ロワシート調整式)」と、車高調本体下部のブラケットを上げ下げして、本体そのものの全長を短くすることで車高を変える「全長調整式」があります。
前者は、車高調が流行り始めた初期から多く存在して比較的安価で、中古品も数多く出回っているため、古い車でもオーバーホールすれば特注などせずとも入手しやすいため、新品でも10~20万円程度、中古であれば数万円で購入できるのですが、車高を下げるためロワシートを下げると、自由長不足のバネが遊び安くなったり、ショックアブソーバーの有効ストローク長が短くなって、縮み切った時の「底突き」が発生しやすいデメリットもあります。
そこで近年主流なのは、後者の全長車高調で、ネジ式のようなデメリットがない代わりに高価な傾向があり、中には数万円と安価な製品もあるとはいえ、車高調整だけでなく、スプリングとのマッチングのしやすさ、限界性能域での減衰力不足といった面を重視するのであれば、物足りなさを感じることが多いかもしれず、走行性能や乗り心地まで含めて考えるのであれば、安くとも20万円前後から40~50万円程度の製品を考えた方がよさそうです(競技用フルオーダー品など1台分で100万円近くするものもあります)。
また、減衰力調整機能の有無、調整するにしても停車中に調整するものから、運転中でも電動モーターで調整できるものまであり、さらに伸び側/縮み側を別々に調整できるもの、できないもの、調整が4段程度から20段までなどあり、単筒/複筒式、正立/倒立式、ショックアブソーバーの容量を増やす別タンクの有無など、さまざまな製品があります。
性能追求型のユーザー以外は、調整機構はあまりイジらずメリットはあまりない
しかし、車高にせよ減衰力にせよ、調整機構は本来「ショックアブソーバー開発時に最適解を見つけるための機構」であったため、一般ユーザーは購入直後こそ珍しがって調整してみるものの、「これくらいだとどこを走っても大した難はない」というポイントを見つけ出すと、そこからいちいち調整などしなくなるものです。
ジムカーナやレースなどモータースポーツに参戦するのであれば、ほんの少しの差で変わる挙動がタイムや順位、完走率に大きく影響するため、調整機構は重要な意味を持ちますが、一般ユーザーにとっては単なるオーバースペックで無用な長物に過ぎないとも言えます。
コントローラーで容易に車高も減衰力も調整可能なエアサスならともかく、せいぜい減衰力を電動調整できるものもある、という程度の車高調であれば、あえて一般ユーザーが選ぶ必要はそうそうないかもしれません。
もしそれでも、どうしても車高調が必要というケースがある場合は、ダウンサスでは大雑把にしかできない車高の変化を、車検に適合する最低地上高9cmギリギリまで落とすため微調整するなど、よほどこだわりのある場合や、エアロを組んだり外したりするため、段差対策で頻繁に車高を変える必要性があるものの、エアサスは避けたい場合など、レアケースに限られてくるでしょう。
最近は、安価なエアサスも登場しているため、車高に細かくこだわるのであれば、あえて車高調を組むよりエアサスを組んだ方が良く、性能を追求するわけでなく、大雑把に車高が下がれば良い程度の要求であればダウンサスのみ、あるいはダウンサスがセットになったチューニング/ドレスアップ用サスペンションキットをオススメします。