カスタム・アフターパーツ | 2021.05.11
高温に耐えるエキゾーストマニホールド!チューニングで得られる効果とは?
Posted by KAKO MIRAI
エンジン内部の各シリンダーから流れ込む排気ガス。その温度は数百度になり、エキゾーストマニホールドはその熱にさらされ続けています。効率の良い排気を行うために重要なことはあるのでしょうか。チューニングの定番ともいわれているパーツだからこそ知りたいことをご紹介していきましょう。
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エキゾーストマニホールドの役割
エキゾーストマニホールドは、通称「エキマニ」「タコ足」と呼ばれているパーツです。エンジンの各シリンダーで排出される排気ガスを車外に排出するための装置のひとつですが、排気装置の仕組みを簡単にご紹介しておきます。
① エンジン…燃焼ガスが発生
② エキゾーストマニホールド…エンジンの各シリンダーから排出される排気ガスをエキゾーストパイプへと送り出す
③ 触媒コンバータ…排気ガスに含まれているNOx(窒素酸化物)やCO(一酸化炭素)などの大気汚染となる物質を外に出さず浄化する
④ エキゾーストパイプ…エキマニから触媒コンバータを連結する排気ガスの通り道をパイプでつなぐ
⑤ プリマフラー…マフラーの前にもう一段階消音の目的で取り付けられるもの
⑥ マフラー…排気ガスを車外に排出
一連の流れで排気ガスを車外に排出を行っています。その中でもエキマニはエンジンから排出された高温の排気ガスを最初に受け取る役割をはたすものです。各シリンダーで燃料を燃やして発生した排気ガスを一つにまとめる岐管となります。
一つのシリンダーから排出された排気ガスが合流地点に流れ込むまでに、別のシリンダーから流れてきた排気ガスとぶつかってしまうと岐管の中で詰まる原因となるのです。これを「排気干渉」といいますが、排気干渉が起こるとスムーズな排気ができません。
そのためエキマニは枝分かれした岐管となっています。この枝分かれの形状はシリンダーの数と同じであり、例えば4気筒なら4本のパイプがシリンダーからつながり、最終的にはひとつに集約された形となるのです。
この4つが直線でつながれていると、すべてのパイプの長さは同じにはならず、真ん中の2本は両端に比べると短くなり、この状態では排気効率が悪くなります。エンジンからの排気を行場合には、パイプの長さが均等であればあるほど排気効率が良くなるのです。
同じ長さにするために、しかも長さを稼ぐためにクネクネと曲がった形状が使用されるようになりました。この見た目が、タコの足のように見えることから「タコ足」とも呼ばれるようになったようです。
4気筒を例に挙げるエキマニのレイアウトには、排気効率を優先させた場合の「4-1」レイアウトがあります。これは等長のパイプを利用し、4本のパイプから1本に集約する形態です。
また「4-2-1」レイアウトでは4本のパイプを2本に集約し最終的に1本にするというレイアウトが多くなっています。この場合は各シリンダーから排出された排気ガスがぶつかる排気干渉を利用して新たに取り込む空気を充てんする効率を上げる掃気効率を利用。
「4-2-1」レイアウトは中低速でのトルクに優れ、「4-1」レイアウトはパイプが短い設計であるので高回転に優れるという、それぞれの特徴を持つことになります。
純正製品として取り付けられているエキマニは、鋳物(いもの)で製造。これは型に流し込み成形されるもので、コストを抑えているため量産には適しているといえるでしょう。
鋳物のデメリットとしては、錆びやすさにあります。高温にさらされ続けるエキマニは、想像を超える錆が発生し、温度が10度上がると錆びの発生は2倍になるといわれています。そのため取り付けの際に使用されたボルトやナットはカタチを変えていることも多いようです。
つまり素人の持っている工具ではなかなか外すことができないといえるでしょう。また取り換えになると、整備士でも困ることがあるといいます。また使用環境によっては海水や凍結防止剤などが錆の状況を悪化させることもあり、鋳物ならではのデメリットといえるかもしれません。
とはいえ、通常の使用方法であれば、エキマニを交換するほどに悪化するケースはほとんどないでしょう。一生ものといえるほど劣化に強いといえるため、交換をする理由はほとんどがスポーツ走行を目的としている場合といえます。
社外製品にはどのようなものがある?
ではスポーツ走行を行ううえで、エキマニの交換する目的は何でしょうか。排気効率を向上させるパーツであるため、エンジンの特性を向上させることができます。高回転までスムーズに回すことができ、トルクも向上。サーキットを走行するうえで欠かせないチューニングとなっています。
市販されているエキマニの材質もいろいろとあるようです。しかしどれもメリット、デメリットがあり、どれが良いとはいえません。
・スチール…価格も安く、加工も容易にできますが、重さと錆に弱い点が挙げられます
・アルスター…価格が安いことが魅力。素材の見た目があまり美しいといえません
・チタン…見た目が美しく青い焼き色は独特。軽さが魅力ですが、熱や振動に弱く、割れやすいため、加工が難しいもの。
・インコネル…ネッケル系合金を使用。『F1』でも使用されている実績もあるため人気。価格は高めとなっています。
・ステンレス…耐久性も良く、強度も問題なく価格も高すぎない。全体的なバランスがとれているといえるでしょう
純正から取り換えるメリット・デメリット
純正のエキマニの特徴
・コストや生産性に優れている
・鋳物を使用することで壊れることが少ない
・スペースや脱着性に考慮されている
・排ガス規制や音量に対応した理想的な音質
アフターパーツのエキマニ
・自動車メーカーの車種、エンジンに合わせ、走行目的に応じた性能を発揮することが可能
・高品質な素材を使用しているため、軽量化を実現
・自分好みの音質を作ることができる
純正のエキマニを、そのまま使用することで問題が起きることはほとんどありません。最近の車は高性能なエンジンを純正パーツとして採用しているので、走行性能の質を感じることは難しくなっています。しかしアフターパーツとしてチューニングを行えば、トルクフルな走行性能が期待できます。
例えばマフラー交換を考えると、排気系の最後のパーツであり、交換も手軽に行うことができるため、多くの人がアフターパーツのマフラーを装着することができます。しかしエキマニの交換は、エンジンに近い部分であるために、容易に交換をすることはできません。
パーツも高価なものとなり、手軽にチューニングを楽しむものではないため、交換を視野に入れている場合には、排気装置全体を考えて理想とするエキゾーストノートを得ることを視野に入れてください。
今まで排気効率をアップさせるためには等長である必要があるといってきましたが、必ずしもそうとはいえないケースもあります。かつての『スバル』水平対向エンジンで採用されていたのは不等長タイプのものでした。当時は「ボクサーサウンド」とよばれた独特の排気音です。
現在は『86/BRZ』の共用として直噴システムを採用しているため、等長タイプのパイプが採用されています。しかしチューニングショップメーカーとして名高い『東名パワード』の「EXPREME(エクスプリーム)」で等長、不等長がラインアップされています。
等長タイプでは全回転域での性能を高めるとともに、トップエンドのパワーを向上。不等長タイプでは中回転域でのトルク特性を改善し、4000rpmで起こるトルクの谷を解消することに成功しています。
『日産』のレーシングコンストラクターとしてスタートした『東名パワード』。創業50年を迎える老舗のチューニングメーカーでレーシングエンジンの開発、制作、チューニングを得意としています。
取り付け費用の相場
高温にさらされ続けるエキマニ。高回転までエンジンを回していることが多い場合には、エキマニ自体に負担がかかっている状態です。そのような場合には熱によってボルトが固まってしまっている場合があり、素人では取り外すことができないというケースもあります。
エキマニの交換はプロにお願いするほうが確実といえるかもしれません。取り付けにかかる費用は、10,000~50,000円ほどですが、相場の金額であるため確実とは言えません。交換をする場合には、ショップに問い合わせておくことをおすすめします。
いずれにせよ、エキマニ自体が高額なパーツです。交換に際しては、十分なリサーチが必要となるでしょう。
車検に通る条件
いざアフターパーツを取り付けたものの、車検に通らなければまた交換…ということにならないためにも、車検の保安基準を知っておく必要があります。社外品だからといって、絶対に車検には通らないということもないので、十分な知識を持つ必要があるでしょう。
車検で重要とされる検査項目には、排出ガス検査でCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)の濃度測定と排気漏れなどについて調べます。基準値はCOが1%以下、HCが300ppm以下を満たすこととされているようです。
排気ガス中の酸素の有無を検出するために、搭載されているものにO2センサーがあります。ポジションはメーカーによってさまざま。フロント、リア、エキマニ、エキゾーストパイプの付近に設置されているようです。
排気漏れやO2センサーの故障に気を付ければ、エキマニに関して問題はまずありません。車検で異常が見つかると、修理に時間を要し面倒なことになります。この2点はいずれも事前にチェックすることができるため点検しておきましょう。
まとめ
スポーツ走行を楽しむためにエキマニの交換は重要なパーツのひとつといえるでしょう。排気効率を向上させ、エンジン性能を高める効果を発揮するエキゾーストマニホールド。タコ足と呼ばれるゆえんも理解できたのではないでしょうか。
アフターパーツに取り換えるメリット、デメリットを知ることで、自分の車に必要なチューニングが何かが分かると、また一層走ることが楽しくなるのではないでしょうか。