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コラム | 2020.10.03

スーパーカーのマフラーはなぜうるさい?違法ではないの?

Posted by 菅野 直人

めったに見かけることはないものの、見つけてしまうと思わず振り返ってしまうスーパーカー。しかし、見とれているうちに「ずいぶんマフラーの音がデカイな?」と思うことはありませんか?それでも車好きであれば、イイ音に聞こえるかもしれませんが、そうでなければ騒音でしかありません。よくあるスーパーカーの大きな排気音は、違法ではないのでしょうか?

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マフラーからの大きな排気音は「近接排気音測定」であれば問題ないことも

車のマフラーからの排気音は、その車がつくられた年代によっても異なるものの、測定そのものは「近接排気音測定」という方法で行われてきました。

その方法とは、マフラーの排気口から45度の角度で50cm離れた位置へ計測器を置き、停止状態の車のエンジンを回して最高出力を発揮する回転数の75%で5秒間保持し、最大値を測定するものです。

皆さんがサーキットなどではなく、日常的な風景の中で、「あの車はマフラーの音がうるさいな」と思う時は、大抵が走行中、それも発進時や追い越し、アップダウンの激しい道路など、瞬間的にアクセルを踏み込み、かなりの高回転域で加速している時だと思います。

しかし、国産市販車の中でも、最高出力回転数がかなり高い部類に属するホンダ・S2000前期型(AP1)でも最高出力回転数は8,300回転で、その75%となると6,225回転に過ぎず、フェラーリの最新モデル、3.9リッターV8ツインターボのF8トリブートでは8,000回転に対し6,000回転での計測です。

しかも最高出力以下の回転数で安定させた場合、それも停車して何の負担もかかっていない状態では意外と音がしないもので、実際に走行している際、アクセル全開でエンジンが急激に吹け上がる時の排気音とは、大幅に異なることも多くなります。

それが「大きな音を立てて加速していくスーパーカーでも適法な理由」で、もちろん騒音規制を超える違法なマフラーへ換装している可能性もありますが、「純正でも結構イイ音しちゃう車」もありえるわけです。

ただし今までであれば、という但し書きがつきますが。

走行時の実態を見逃さない「新加速騒音試験法」

近年、自動車をめぐる環境問題へは、世界各国で協調したさまざまな規制で対応するようになっており、騒音についても自動車世界基準調和世界フォーラム(WP29)の騒音専門委員会「GDB」によって、日本やヨーロッパでは2016年から新たな騒音規制が導入され、それまでの近接排気騒音規制や、タイヤなどのロードノイズを含む定常騒音規制が廃止されました。

代わって登場したのが「新加速騒音試験法」で、これは50km/hで走行している車に対し、20mの全開加速後、全閉減速させるもので、その区間の中間地点両脇へ7.5mずつ離してマイクを設置、その計測点での音量を計測します。

つまり、「街中でその車が走り去る時に道端で聞く音」を再現するわけで、今までのように「全開加速時の音は計測されないから大丈夫!」とは言えなくなりました。

これまで生産・販売されてきた車の継続車検については、引き続き近接排気騒音の計測になるため、今もなおカン高いエキゾースト・ノート(排気音)を上げて走る車は、存在を許されていますが、それでも以下のように厳しくなっています。

【1997年までに生産された車】

・103dbまで(参考:地下鉄の構内や、電車が通る時のガード下で100db)

【1998年以降2016年9月30日以前に生産された車】

・車両後部(MRまたはRR)にエンジンのある車:100db
・それ以外:96db

【2016年10月1日以降に生産された車】

・車両後部にエンジンのある車:95 dB
・それ以外:91dB
※ただし消音器の劣化を考慮し+5dbまで許容範囲
※輸入車や継続生産車は2021年9月1日以降に生産された車

これは、あくまで近接排気騒音の数値で、新加速騒音試験法で計測される騒音は、2016年10月1日以降に生産された車(継続生産車は2022年9月1日以降)の場合、市街地で72~75dbに規制されています。

参考までに、セミの鳴き声や騒々しい事務所の中で70db、パチンコ店内や水洗便所で80dbとされているため、その中間で割と大きな音も許容されそうだとはいえ、「カン高い音を立てて走り去るスーパーカー」にとっては、なかなか厳しい条件です。

しかも、これが2020年10月1日以降に生産された車(継続生産車はやはり2022年9月1日以降)の場合、規制値は70~74dBへと厳しくなる「フェーズ2期制」が待っており、現在まだ生産されている車でも、2022年8月一杯を目処に生産終了ラッシュが起きるかもしれません。

今後のカギを握るのはEV走行やモーターアシスト、郊外の専用サーキット

Julia Lav / Shutterstock.com古い車に乗っていれば、ある程度は猶予されるとはいえ、自動車はスーパーカーでなくとも15~20年も経てば経年劣化でコンディション維持が難しくなるため、いずれほとんどの車が静かに走るようになり、車による騒音は街からだいぶ減りそうです。

何しろ国際的な騒音規制が最終的に目指すのは、「タイヤのロードノイズやモーターの音ですら、よほど配慮しないと規制を超える」というレベルのため、尋常ではありません。

では、現在でも大きな音を立てているスーパーカーはもはや存続不可能、過去のものになってしまうかと言えば、現在考えられている有効な救済手段は「電動化」です。

つまり最初からEV(電気自動車)として作ってしまうか、エンジンを積むにせよ航続距離延長用の発電機として使うレンジエクテンダーEV、あるいはPHEV(プラグインハイブリッド)やハイブリッドカーとして街中はモーターでゆっくり走るか、モーターアシストを受けて騒音の元になるエンジンの負担を減らし、多少音を立てても構わない郊外や高速道路でのみエンジンを使う、という方法で、スーパーカーは生き延びると思われます。

問題は、現行型のホンダ・NSXなど既にその種のハイブリッド・スーパーカーがありつつも、あまり芳しい評判が聞かれないことですが、環境に対応した新時代の車をつくるセンスが、今後のスーパーカーメーカーに求められそうです。

あるいは、規制の緩い国で大富豪向けの少量生産車として生き残る、サーキットなど限られた環境でのみ本領発揮できるといった手段もあります。

日本でも、千葉県南房総市で会員制サーキット「ザ・マガリガワ・クラブ」が2022年末の開業を目指し建設中で、そう遠くない未来、最新スーパーカーがカン高いエキゾースト・ノートを上げて走り回るのは、こうした限られた場所でのみ見ることができる、特別な光景になるかもしれません。

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