コラム | 2021.05.11
復活に期待⁉マツダが誇るロータリーエンジン、搭載車の魅力とは
Posted by KAKO MIRAI
レシプロエンジンとは全く異なる構造でエンジンを動かすロータリー。世界初の量産エンジンを開発した『マツダ』の高い技術力は、唯一無二といえるでしょう。そんなロータリーエンジンの魅力は一体どんなところにあるのか、復活に期待できる事柄も交えながらご紹介していきます。
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ロータリーエンジンの歴史
1967年、ロータリーエンジンを世界で初めて搭載したのは、『マツダ』が作り出した「コスモ・スポーツ」です。しかし回転型内燃機関が考案されたのは、1950年代のドイツ人「フェリックス・バンケル」でした。
その後2輪メーカーの『NSU』 との共同開発により、ロータスエンジンの原型が作り上げられますが、自動車用としての実用化には程遠いものでした。そこに目を付けた自動車メーカーが技術提供を願い出ることになりますが、海外から34社に及びます。
その中には『ダイムラー・ベンツ』『ロールスロイス』『ポルシェ』など名だたるメーカーが並びました。日本からはマツダが提携交渉を進め、見事に交渉を締結するに至ります。しかし、ロータリーエンジンの実用化には程遠い技術課題をクリアしていくことになるのです。
その歴史を探るために、まずは一般的なエンジンであるレシプロエンジンと、ロータリーエンジンの違いをご紹介します。
レシプロエンジンの基本的な動きとしては、ピストンが上下に動き、コンロッドを介してクランクシャフトが回るその動きがタイヤに伝わり動いているということができます。それに対してロータリーは、熱エネルギーをローターの回転によって出力を得ているのです。
レシプロエンジンの重要なパーツ
・ピストン…エンジン内のエネルギーを使用して吸気、圧縮、燃焼、排気の4つの行程を
繰り返す
・コンロッド…ピストンとクランクシャフトを繋いでいる
・クランクシャフト…ピストンとコンロッドの往復運動を回転運動へと変える役割
・吸排気バルブ…燃焼室内に送り込む混合気の量やタイミングを調節する
ロータリーエンジンの重要なパーツ
・ローターハウジング…レシプロエンジンのシリンダーに相当している
・ローター…レシプロエンジンのピストンとコンロッドにあたる部分。おむすび型のローターが回転することで熱エネルギーを作り出す
・エキセントリックシャフト…レシプロエンジンのクランクシャフトと同じ。燃焼ガスの圧力でローターが受ける力を回転運動に変換して駆動系に伝える
部品数も少なく、バルブなど動弁系のパーツを必要としないため構造はシンプルです。小型で軽量、しかも高出力を発揮するロータリーは、まさにスポーツカーに必要な夢のエンジンでした。
不可能を可能に変えたマツダのロータリーエンジン
ロータリーの実用化に向け、立ちはだかる大きな問題点は山積みです。ハウジング内を高速で回転するローターがハウジングの内壁に残す傷跡により、出力が低下してしまうこと。これを「チャターマーク」といい、悪魔の傷跡とも呼ばれていました。
そのほかにもレシプロエンジンより広い面積をオイルシールしなければならない特性を持つロータリーは、完璧にシールを施すことが難しくなります。オイルが燃焼室に侵入し、オイル消費量が増大するという問題もありました。
多くの苦難を乗り越え1967年に「コスモ・スポーツ」が誕生するまでの6年間に300万㎞に及ぶ走行テストを行います。ロータリーエンジンを開発する企業はマツダ1社のみの孤立無援の中、ついに新しい時代を切り開くロータリーエンジン搭載車が発売されたのです。
ではここからロータリーが搭載された名車たちをご紹介していきます。
コスモスポーツ
6年の歳月をかけて開発されたロータリーエンジンを最初に搭載したコスモスポーツ。未来的な美しいフォルムと夢のエンジンを載せたクルマは、宇宙を意味しています。総生産台数1,176台という希少性の高さ。
総排気量491cc×2、最高出力110ps、最高速度185㎞/h、という当時は驚異的なスペックです。ここから始まったロータリーの歴史は、現在でもコスモユーザーたちが大切に乗り継ぐ、まさに夢の車となっています。
ユーノスコスモ
1967年にコスモスポーツの4代目として発売されたこのモデルには、3ローターのロータリーが初搭載されました。また低速域と中高速域の2つでターボチャージャーを使い分けることができる「シーケンシャルツインターボ」も日本初の採用です。
また三菱電機と共同開発した「CCS」と呼ばれるGPS搭載のカーナビが世界で初めて採用されるという華々しい登場を飾りました。その中でも20Bエンジンは直列3ローターのツインターボ。
ランボルギーニなどの最高峰スポーツカーに搭載されるV形12気筒に匹敵するともいわれています。最高出力280ps、最大トルク402N・mという高出力です。本来は333馬力での販売が予定されていましたが、運輸省からの行政指導により280馬力へのデチューンを余儀なくされています。
RX7
1978年に「サバンナ」の後継として誕生したRX7 。初代から最終モデルまでリトラクタブル式ライト(通称リトラ)が採用されていました。初代では12A型エンジンが搭載され、130psを発揮しています。
2代目FC3S型でインタークーラー付きのターボエンジン13B型が開発され、最高出力が前期型で185ps、後期型では205psへと向上。ハイパフォーマンススポーツカーと呼ぶにふさわしい一台へと成長を遂げます。
3代目FD3S型は最終モデルとなってしまいましたが、100㎏の軽量化が図られ、さらに255psへとパワーアップしました。「野獣の肢体の美しさ」をコンセプトにしたデザインは、流れるようなラインが特徴となり若い世代の人気を集めます。
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RX8
2013年に生産を終了したRX8は、ロータリーエンジンを搭載する1代限りで最後の車種となりました。スタイルを大きく変更し、変速的な観音開きを採用したクーペ4ドアセダンとなっています。
エンジンの型式は従来通りの13B型ですが、その中身はほとんどが新設計されたNA13B-MSP型『RENESIS』となりました。RE+GENESISの造語で、復活を意味しています。最高出力は標準モデルで210ps、TYPE-Sでは250ps。
4ドアクーペでファミリーでも使えるFRスポーツの新しいカテゴリを切り開いた一台といえるでしょう。その後年々厳しさを増していく排ガス規制などに適合することが難しくなるなどさまざまな問題を抱えることになり、姿を消すこととなってしまいました。
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ロータリーのこれから
2013年以降もロータリーエンジンの復活はささやかれ続けてきました。ロータリーエンジンの大きな問題点は燃費性能、環境性能の改善です。水素ロータリーエンジンやPHEV,48Vなどさまざまな憶測を呼んでいます。
2017年の「東京モーターショー」ではロータリーエンジンを電気自動車のレンジエクステンダーとして復活させる計画があることも語られ、マツダのロータリー復活にかける意気込みも感じられるのではないでしょうか。
2019年中国『長安マツダ』がSNS『ウェイボー』に次世代ロータリーエンジンの復活を示唆しました。そこには「ロータリー・エンジンが世界をもっと美しくする」という言葉とコスモスポーツが描かれています。
新型RX7の復活かRX9の開発か、など多くの話題に尽きないマツダのロータリーエンジンには多くのデメリットも存在しましたが、それと同時に今後につながるメリットもあることに期待が膨らみます。
まとめ
マツダにしか成しえなかったロータリーエンジンの実用化。果敢に挑んだ技術者たちの苦労と努力は計り知れません。どの回転数でも一定のトルク感があり、レシプロエンジンとは全く異なるパワーとフィーリングを生み出しました。
今なおロータリーに魅せられている人は多く、今後さらなる進化を遂げた新たなロータリーの誕生からは目が離せません。
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