旧車・絶版車購入ガイド | 2019.11.26
ハリウッド発のSF映画にも登場したRX-8 ロータリーを存分に味わいたいなら前期の6速MT車がオススメ?
Posted by 菅野 直人
自動車に電動化の波が押し寄せ、今後のロータリーエンジンは自動車へ搭載されるとしても、その特性を活かした発電用だけになるのでは…といわれる今日この頃。それゆえ、おそらくはロータリーエンジンを主動力とした最後の量産車になりそうなのが、マツダのRX-8です。ピュアスポーツクーペであった名車RX-7の後継としてマツダが知恵を絞って作った4ドアスポーツクーペRX-8の中古車相場や注意点を紹介します。
以下の文中の買取査定額は、投稿日時点での目安になります。実際の査定額については相場状況や車両の状態によって大きく変動しますので、あくまで参考金額としてご覧ください
マツダ・RX-8とは
1960年代からロータリーエンジンの開発と、搭載車の開発・販売に鋭意努力してきたマツダ。初代コスモスポーツやファミリア・ロータリークーペなどに搭載していた頃こそ「未来を見据えた夢のエンジン」と言われてきましたが、1970年代のオイルショックによるガソリン価格の高騰で「大排気量のアメ車にすら劣る燃料食い」とそっぽを向かれてしまい、さすがのマツダも実用車への搭載は諦めざるを得ませんでした。
それでもピュアスポーツのRX-7、高級車のコスモやルーチェにロータリーエンジンを搭載してきましたが、1996年にユーノス・コスモの生産を終えて以降はRX-7(3代目FD3S)が唯一のロータリーエンジン車になってしまいます。
そのRX-7も排ガス規制の強化やスポーツクーペ市場の崩壊で、2002年に惜しまれつつも販売終了。それを見越したマツダは自然吸気版2ローターロータリーエンジンを搭載したRX-01を開発していましたが、1996年から2015年まで親会社だったアメリカのフォードは「保険が高い2ドアクーペの開発は認めない」と非常のストップ通告。しかし、そんな無情な宣告にもメゲなかったマツダは「ならば4ドア4シーター車なら問題ないでしょう!」とRX-8を開発し、2003年5月に発売したのでした。
4ドアとはいえ後ドアは後ろヒンジのフリースタイルドア。前ドアを開かないと開閉できない窮屈な観音開き式なのですが、後席スペースも大人2人が乗車できる最低限のスペースを確保した「一応4ドア4シーターのスポーツクーペ」という形。マツダが意地でもロータリースポーツを作りたくてたまらなかったことが痛いほどわかります。そのスタイリッシュなフォルムは、ハリウッド発のSF映画にも登場するほど賞賛された、まさしく苦心作でした。
一応はファミリー需要にも対応していましたが、このような出自ゆえに実質的には「後席へのアクセスが便利なスポーツカー」的な扱いを受けることが多く、自然吸気版13B-MSP型ロータリー「RENESIS」は前期型で最高250馬力、中低速トルクを増やして扱いやすくした後期型でも235馬力を発揮するなかなかのパワフルぶりを誇示。
2012年6月に販売終了して以降は「おそらく最後の量産ロータリースポーツ」といわれていることもあり、今なおロータリーファンに愛されるエポックメイキングな1台となっています。
RX-8の中古車相場
大手中古車検索サイトによると、2019年11月現在のRX-8(初代、2代目)/RX-8(3代目)の中古車相場は以下の通りです。
RX-8(販売期間2003年~2012年) | (AT車)9万円~223万円・その他ASK(価格応談)1台 |
(MT車)17万円~366万円・その他ASK1台 |
RX-8のミッションは発売当初からの前期型で「タイプS」「マツダスピードバージョン」などホットモデルが6速MTで、ベースグレードが5速MTまたは4速AT、「タイプE」が4速ATで、特別仕様車「トゥルーレッド」だけが6速MTか4速ATか選択することができました。
また、2006年10月にはATが6速ATとなり、2009年5月にはベースグレードから5速MT車が廃止されて6速AT車のみとなったうえで「タイプG」と名称変更されています。
RX-8のオススメグレード!ロータリーを存分に味わいたいなら前期の6速MT車
1代かぎりで終わったRX-8ですが、グレード間では同じ13Bロータリーエンジンでも特性が大きく異なり、かつミッションの選択肢も変わってくるため、どのRX-8も程度が良く走行距離が少なければオススメ!というわけではありません。
2003年4月から2008年3月まで販売されていた前期型のロータリーエンジンは吸気ポートの数が6ポート仕様と4ポート仕様があり、6ポート仕様は「タイプS」で250馬力、「タイプE」で215馬力。4ポート仕様のベースグレードは210馬力と差がついていました。
このうち、レブリミットまでモーターのように吹き上がるといわれるロータリーエンジンのフィーリングを最も味わえるのは、もちろん「タイプS」用パワーユニットで、レブリミット9,000回転の高回転型ロータリーであるとともに、6速MTを駆使してRX-8をスポーツカーとして走らせるのにはジャストのエンジンです。
2008年3月から2012年6月のモデル廃止まで販売されていた後期型ではすべて6ポート仕様となり、ベースグレード(タイプG)およびタイプEが215馬力、タイプSおよびタイプRSが235馬力となっているため、前期のタイプSおよび特別仕様車「トゥルーレッドスタイル」「ロータリーエンジン40周年記念車」の6速MT250馬力仕様車こそがRX-8における最強にして最高のオススメグレードとなります。
RX-8の中古車選びの注意点
ターボチャージャーを廃した自然吸気仕様ながら最高で250馬力を発揮する13B-MSP型「RENESIS」ロータリーですが、カーボン蓄積によるエンジンブローなど気難しく繊細な性格をもったエンジンでもあり、ECUやローターハウジングなどが段階的に改良されています。
さらにはエンジンの圧縮比が経年劣化で落ち込み、馬力やトルクがカタログ値とはほど遠い個体もあり、販売されている中古車のなかには「圧縮確認済み」とわざわざ記載されている1台もあるほど。
新車販売当時からさまざまな難点を抱えていたRX-8。中古車で購入する際のリスクは他のレシプロエンジン(ピストンエンジン)を搭載した同ジャンル車と比較にならないほど高く、購入にあたって車検証に記載された車台番号から、トラブル対応がなされたモデルなのか、未対応なのかを調べ、果ては何らかの原因で交換されたエンジンの対応未対応も確認するなど、細かい配慮と調査が求められます。
もちろん、ロータリーに対する自分自身なりの知識が万全であればいうことはありませんが、そのようなユーザーはかなりかぎられてきますし、ある程度は購入店や整備でお世話になる「主治医(ショップや整備工場)」を信頼するしかありません。
最低でも圧縮比の確認程度は行う必要がありますが、それが無理な場合はその店での購入を断念するか、程度良好な同タイプエンジンを搭載した部品取り車の購入や、ロータリーエンジンのオーバーホールを依頼できるショップのアテを確保しておく必要があるでしょう。
RX-8の中古車の維持費目安
2013年まで生産していた比較的新しいクルマなので、パーシャルエンジン(新品エンジン)以外は純正部品の供給にまだ期待できる点は大きな魅力。とはいえ、前項で書いたように故障頻度が高いため、たとえ後期型であっても修理費用の確保は維持費のうちと思わなければなりません。
また、4シーター車ということでファミリーカー的に使いたいと思う人もいるかもしれませんが、現実を直視すると修理期間などで困らないよう、日常的な足となる車、それもファーストカーを所有していることがマストといえるでしょう。
それ以外にも、RX-8ならではの維持費の注意点である「ロータリー換算」があげられます。排気量が654cc×2ローターで1,308ccなものの、ロータリーエンジンは排気量×1.5倍が課税されますので「654×2×1.5=1,962cc」、つまり1.5リッター以上2リッターのエンジンと同じ自動車税がかかってくるのです。年式がまだ新しい後期型や、前期型でも初年度登録から13年以内の車ならば自動車税は39,500円ですが、13年を超えている場合は15%の重加算税が適用されて45,400円となる点にも留意が必要かと思われます。
カタログ燃費は10・15モード燃費で9.0~10.0km/L、実燃費ではMT車で約7km/L台、AT車で約6km/L台程度であり、ロータリーエンジン車としては高効率ながらも、現在の基準に照らし合わせると決して燃費が良いとはいえません。2019年11月現在のハイオクガソリン平均価格が約153円程度なので、仮に6速MT車で月に1,000km走るとして、月間約2万2千円程度のガソリン代は覚悟のうえ、年間維持費は自動車税とガソリン代だけで最低約30~31万円程度はかかるものと考えた方が良いでしょう。