コラム | 2021.05.11
RE雨宮のコンプリートカー「GReddy」シリーズ3選+伝説の1台!
Posted by 菅野 直人
REといえばロータリーエンジンの略でもあり、ロータリーエンジンやマツダ車を得意としたRE雨宮を思い出し…というわけで、RX-7やRX-8といったロータリースポーツの全盛期にはとてもメジャーな存在だったのがチューニングショップ「RE雨宮」です。ロータリー専門ショップのように思われることもありますが、実際はさまざまな車を手がけており、特に近年はロータリースポーツの新型が出ていないこともあって、他ジャンル車のカスタマイズも積極的に手掛けています。そんなRE雨宮の印象的なコンプリートカーを何台かチョイスしてみました。
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SUMMARY
もっともスーパーカーらしかったGreddy6(ベース車:オートザムAZ-1)
RE雨宮のコンプリートカーといえば1989年に登場した「GReddy」シリーズが有名でしたが、元々は当時のJSS(ジャパンスーパースポーツセダン)レースに出場していたレーシングカーのような車を公道で走らせたい…ということから産まれました。
当時も今もGreddyといえばチューニングブランド「トラスト」のいちブランドとして有名でありますが、「響きが好きだから」と言う理由でRE雨宮代表の雨さんこと雨宮 勇美 氏がトラストから許可を取り、RE雨宮のチューニングカーに採用しました。
FC3S型RX-7がベースの「GReddy 1」(1989年)からFD3Sベースの「GReddy FINAL 7」(2003年)まで10台が作られたGReddyマシンのうち、もっとも異色なのが「GReddy6」です。
いずれもFC3SまたはFD3S型RX-7をベースとしていたGReddyマシンとは異なり、この6だけはその名の通りミッドシップ軽スポーツカーのオートザムAZ-1がベースとなっています。
AZ-1といえばスケルトンモノコックと呼ばれるシャシーへボディを載せた構造で、コンセプトカー時代はAZ550の名で市販型を含む3種類のボディが載せられていましたが、そのうちのタイプCは当時のル・マンでマツダが走らせていたマツダ717C以降のグループCレーシングカー風で、発売されていればなかなか面白そうな存在でした。
しかし所詮は軽規格の寸法に合わせた車、よく見ると寸詰まりのコロコロしたデフォルメカー的で、後にYMモービルメイツ(ヤマハの車内ベンチャー)が実際に市販してしまったオプティベースのフェラーリF40風カスタマイズ車「AMI」と似たような匂いがします。
そこでRE雨宮でGReddy6を作る時はモノコック前後にパイプフレームを組みなおして大型化、13B改20Bターボを搭載して本物のポルシェ製グループCカー用ミッションやデフを組み込み、元からあるガルウイングドアは生かしたことで、見事にグループCカー風マシンへ仕上がりました。
似たようなコンセプトはマッドハウスがAZ-1のスズキOEM車キャラをベースに作った「キャラR」などもありますが、GReddy6は「本物志向」という意味ではまさに究極のAZ-1であり、しかもRE雨宮のポリシーとしてナンバーを取得し、本当に公道を走れるのも魅力的でした。
1996年の東京オートサロンに赤いGReddy6が出展されて「国産コンプリートカー部門 優秀賞」を獲得後、2001年にも白く塗られて再出展。その後大事にしてくれるオーナーへ売却され、今でも現存しています。
「走りだけじゃなく見た目も大事!」ポルシェ928風のGReddy3(ベース車:FC3S)
RE雨宮代表の「雨さん」は基本的にポルシェが大好きですが、ポルシェを買うよりポルシェに負けない車を作りたかった方らしく、前述のGReddy6のように本物のポルシェのパーツすら平然と使います。
さらに、単純にポルシェに匹敵する、勝てる性能があればいいというものではなく、「走りだけじゃなく見た目も大事!負けたくない!」とばかりに作られたのが、一見してポルシェ928を作りたかったんでしょコレ?!と言いたくなるGReddy3です。
1991年の東京オートサロンに出展されて「コンプリートカー部門(国産車) 優秀賞」を受賞したこのマシン、FC3S型RX-7をベースにユーノス・コスモ用3ローター20Bエンジンを搭載し、TD06-19タービン2基がけで450馬力~480馬力、ミッションはなんとトヨタの7M-G用でした。
それだけでも圧倒的なパフォーマンスを発揮しそうですが、ポルシェの高級GTカー928やフェラーリ・テスタロッサに負けない見た目の存在感も大事であるとし、思い切った特注ワイドボディキットを組み込んで全幅約2m、ドアも上に開くシザーズドア化したスーパーカールックです。
ポルシェ928風のポップアップライトなどは前年の東京オートサロン1990へ出展した「GReddy2」で実装済み、ワイドフェンダーも装備していたとはいえ一見して「FC3Sの928風カスタマイズカー」とわかってしまうのは明らかでしたが、「GReddy3」ではベース車が何だったかなど、もはやどうでもよい存在感でした。
なお、SA22SやFD3Sでは固定式、FC3Sでは固定式または928風ポップライトを採用することが多かったRE雨宮のRX-7ですが、見た目だけでなくヘッドライト点灯時の空力も重視していた結果です。
「やっぱりカウンタックみたく上に開かないと…」GReddy5(ベース車:FD3S)
それでもガルウイングドアをカウンタックのように真上へ開けず、バタフライドアのように斜め上開きだったGReddy3の仕上がりは雨さんにとって何とも心残りだったようです。東京オートサロン1993へGReddy3のオープンスポーツ版(あるいはFC3Cベース版)のGReddy4を出展した後、東京オートサロン1995へ出展したFD3Sベースの「GReddy5」ではついにダブルアクションで真上に開くシザーズドアを4年越しで実現します。
しかも油圧式なのでスイッチひとつで開閉可能ですから、「これでカウンタックと並んでも負けないでしょ」という出来でした。
中身もキチンとTD06-25Gタービンなどを組み込み、ワイドボディでキチンと仕上げて東京オートサロン1995では「ドレスアップカー部門グランプリ」を獲得しましたが、そんな事より真上に開けるガルウイングドアがアピールポイントだったGReddy5は、「速ければいいってもんじゃなく、見た目も大事」というRE雨宮のコンセプトを表す1台です。
なお、GReddy3、5ともにその他のGReddyシリーズ同様、大事にしてくれるユーザーの元でほとんどが国内で健在らしく、FC3Sベースの4WDターボ車「GReddy7」のみ海外にあるらしいと言われています。
12AターボやNA版13B搭載のRE雨宮シャンテ(ベース車:シャンテ)
RE雨宮はロータリースポーツのプロフェッショナルであり、単に性能だけでなく見た目にもこだわったモディファイで世界中にその名を知られるチューナーですが、日本国内でその伝説の幕開けとして一般的によく知られているのが、「ロータリーシャンテ」かもしれません。
そもそもマツダはロータリーエンジン国産化計画の当初から軽自動車への搭載を考えており、初代キャロル末期の頃からシングルロータリー搭載の試作車を走らせていました。
しかしまだ360cc時代でターボチャージャーもありませんでしたから、振動が少なく静粛性も高く、高回転高出力のロータリーエンジンは他の軽自動車メーカーにとってよほど脅威だったようです。
初代キャロルでも後継のシャンテでも監督官庁やライバル他社の反対により、軽ロータリーは結局実現しなかったと言われています(実際は補機類も本体重量も重いロータリーエンジンを搭載したキャロルの試作車など、むしろ重厚感ある走りだったそうですが)。
その実現しなかったロータリーシャンテを作ってしまったのが初期のRE雨宮で、SA22CサバンナRX-7ターボ用の12Aターボを搭載して東名自動車道での公道レースに挑んだロータリーシャンテは国内外のスポーツカーに負けぬ実力を発揮し、谷田部(日本自動車研究所テストコース)のテストでは240.48km/hという脅威の最高速を記録したほか、TV番組の企画でドラッグレースにも出場、連戦連勝を記録しました。
これでRE雨宮は伝説のチューニングショップの仲間入り、代表の「雨さん」もレジェンドチューナーとして名を知られるようになりますが、RE雨宮の公式HPによればロータリーシャンテそのものは他のチューニングカー同様、お客さんに買われていったようです。
しかし2016年、東京オートサロンのRE雨宮ブースには再び「雨宮スーパーシャンテ13B NA」として伝説のロータリーシャンテが出現しました。
自然吸気仕様ながら280馬力を誇る13Bロータリーを搭載、性能はともかく見た目の仕上げは雑だった伝説のロータリーシャンテとは異なりオーバーフェンダーやスポイラーなど空力パーツ、内装まで含めた仕上がりはキレイなものとなっており、30年ほどの間にRE雨宮がどれだけ成長したかがわかる渾身の力作として「チューニングセクション最優秀賞」を受賞しています。