コラム | 2020.08.18

「ジムカーナ」とは?そもそも何を競うモータースポーツか

Posted by 菅野 直人

何種類かあるモータースポーツのうち、参加のハードルがもっとも低いジャンルの一つと言われるのがジムカーナです。一言で言ってしまえば、「舗装路の超短距離タイムアタック」ですが、レースなど他ジャンルとは何が異なり、何を競う競技で、何が必要とされるのでしょうか?

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超短距離タイムアタック、ジムカーナとは

「ジムカーナ」とは、古来より馬術競技の一つで、指定された区間の定められたコースを、ところどころに設けられた障害(高さ60~80cm程度)を飛び越してクリアしつつ走りきり、そのタイムを競うものでした。

それが、日本で自動車競技のジムカーナとして発展したのは、第2次世界大戦後、日本各地に占領軍として駐留し、日本の再独立後も一部で駐留を続けているアメリカ軍が、飛行場の舗装された広い滑走路や誘導路、エプロン(駐機場)などを用いて行なったことが始まりとされ、やがてそこへ日本人も混ざり、手軽にできる初歩的なモータースポーツとして認知されていきました。

基本的には、馬術競技の障害飛び越しに代わり、定められたコースの要所にサイドターン(サイドブレーキを用いたスピンターン)や、その難易度を上げた270度や360度以上のターンが設けられ、それらをクリアしつつ、いかに速く走り切るかを競う競技です。

ただ速いだけでなく「正確さ」が要求される

ジムカーナが、同じく舗装路を走行するレースと大きく異なるのは、何台もの車が一斉に走行して「他の車より速くゴールする」ではなく、1台ずつ走行して「他の車より速いタイムを記録する」点にあります。

つまり、他車との走行中の駆け引きなどはなく、パドックで整備や待機中のドライバー同士で声を掛け合う心理戦がある程度で、とにかく0.001秒でも速いタイムを刻めば勝ちです。

ただし、ジムカーナには大きく分けて、自動車教習所のようにある程度、あるいは全て固定されたコースで、少し広いところにパイロン(工事現場などに多い三角コーン)が置かれたターンセクションも含め、路面から脱輪せずに走ることが求められる「コースジムカーナ」と、広い駐車場のような舗装用地のあちこちにパイロンが置かれ、そのパイロン間をつなぐように、あるいはこのパイロンの右を抜け、あそこのパイロンの間を抜け、とコース設定された「フルパイロンジムカーナ」の2種類があります。

コースジムカーナで脇道がない、あるいは何かで塞がれていてコースを間違えようのない初心者向け競技会であれば、コースを覚える必要がないため、走行するのは簡単ですが、それ以外の場合は、走行以前にまずコース図を覚え、そのとおり間違えずに走行しなければなりません。

ジムカーナを始めるにあたって、まず立ちふさがるのが、この「コースを覚えること」で、初心者は、何回走行してもミスコースによる失格で、「今日は参加費を無駄にして何をしに来たんだろう」とガックリして帰り、二度とモータースポーツなどやるものかと硬く誓ったりするものです。

また、コースを覚えても、コースジムカーナで脱輪したり(タイム加算ペナルティ。大抵は5秒追加)、コース幅という概念がなく、指定されたとおりのポイントさえ通過すれば、どこを走行してもミスコースにならないフルパイロンジムカーナで、速く走行できるラインを見つけることができなかったり、どちらのジムカーナでも、ギリギリのラインをつきすぎて、パイロンに接触したり(よくてペナルティ、最悪ミスコース)、とにかくただ走行する以外に考えることが多すぎます。

「速く走行する」というより、「最速タイムを残すために、最適な走行ラインを見つけ、そのとおり正確に走行する」のがジムカーナであり、レースというよりは超短距離ラリーに近いといえるかもしれません。

逆に言えば、「ただ速いだけでは勝てない」というところに面白さがあり、走行時間も長くて2分程度、短ければ1分程度でゴールするため車の負担が少なく、ドライバーの体力も大きな問題にならないため、レースよりジムカーナを好むドライバーも大勢います。

参戦コストは「安い」とまでは言い切れない

ジムカーナを紹介する際によく言われるのが「普段乗っている車でも参戦できて、安くモータースポーツへ参戦できる」ということですが、それはあくまで参戦するだけの話です。

実際、ただ参戦するだけであれば、必要とされるのは何でもよいので車1台(自分で持っていなければ誰かの車を借りてもよいが、レンタカーは不可の場合が多い。)、競技会によってはレンタルもあるヘルメットと指が出ず滑りにくい素材のグローブ(滑り止めのない軍手などは不可)、それに事故時にケガを防ぐ長袖長ズボンと、運転に支障のない靴があれば構いません。

もちろん、ミニバンやSUV、オートマ車で参戦しても構いませんし、ライトバンや軽トラで速く走ってしまう人もいます。

ただし、全日本選手権や地区選手権など、JAF(日本自動車連盟)が公認するイベントで定められた格式の高い大会では、規則で「JAF登録車両」に登録されている車でしか参戦を認められないケースが多く、規則で改造範囲は細かく指定され、カッコイイからとインチアップしたタイヤを履くにも規則でNGなのは普通です。

そのため、JAF登録車両の中でも、ほとんど無改造で、タイヤサイズを変えなくとも高い走行性能を誇り、ジムカーナで必須とされるサイドターンをやりやすい車で、規則で求められるロールバーや、規則で許された改造パーツが現実的な価格で市販されていないと話になりません。

そのため、ちょっと昔であれば安価な「レースベース車」を購入して、市販状態では営業車チックな車へ社外品パーツと交換を繰り返すのが一般的でしたが、最近では走行に必要な装備もタイヤが最初からまともでも、豪華な快適装備も一緒についてくるため、車両価格自体が高価になっています。

昔であれば、200万円以内の車を購入して、好きなようにカスタマイズできたものが、300万円以上の車を購入してさらに100万円以上のカスタマイズ費用を求められるのが普通になってしまいました。

車だけでなくヘルメットやグローブ、レーシングスーツにも細かい規則があり、それらを本気で全て適用される上位イベントになるほど、「まず技術以前にお金が必要」というモータースポーツではお約束の話がついて回ります。

そうした風潮を嫌ったJAF非公認イベントでは「むしろなんでもOKにした方が、事故さえなければ安上がり」としていますが、公認競技会、それも上位イベントは、とにかくお金がかかるため、よほど本気で打ち込む人でもない限り続けることはできません。

かつては車の性能競争もあったが、今は運転技術競争

参戦できる車が限定される上に、最近ではコンソール上のボタン一発で作動する「電気式パーキングブレーキ」採用車が増えました。そうした車ではブレーキに異常が生じた時など非常ブレーキとして動作するよう電子制御されているため、レバーを使った機械式パーキングブレーキのように「思い切り引いてロックさせ、スピンターンする」など不可能です(代表的な例が現行シビックタイプR)。

これが改造範囲の広い、場合によっては外装さえ市販車っぽい形をしていれば、中身は何でもよい、むしろ安全性を向上するため規則で市販車と全く異なる必要があるレーシングカーやラリーマシンであれば、パーキングブレーキを電気式から昔ながらの機械式や、もっと強化した油圧式へ変えることもできますが、公認競技に出場するナンバーつきジムカーナ車はそうした改造が認められていません。

そうした制約の中で「なるべく速い車を」となると、排気量や駆動方式で分けられたいくつかのクラスごと、ほとんどのドライバーが同じ車を選びます。改造範囲の広かった昔のように、「A選手の○○とB選手の××による車種対決」のようなシーンはほとんど見られなくなりました。

現在ではクラスごと、カラーリング違いでほとんど同じ車種が何台も走行し、純粋にセッティングやドライバーの運転技術勝負になりましたが、好きでもない車のワンメイク状態では観戦しても、つまらないものです。

この20年ほどを通じてさらに傾向が強まり、JAFが参戦費用低減策として取り入れた規則がかえって参戦費用高騰を招き、参戦ドライバーも将来の参戦予備軍となる観戦客も減少しています。また、各地でJAF公認競技会もJAF公認ライセンス所持者も減り、採算の合わなくなったサーキットなどモータースポーツ施設の閉鎖や残った施設の一極集中化など、ジムカーナの衰退がモータースポーツ全般に悪影響を及ぼしています。

本当に安く手軽に参戦できる!ジムカーナに代わる低コスト競技会「オートテスト」が登場

もっとも、速く走行するのが嫌いなドライバーが増えたというわけではないため、JAFの縛りがゆるくライセンス不要な下位競技会や、JAFとは無関係に参戦しやすさ、走りだけでなくイベント参加自体の楽しさを追求した非公認競技会も多く、そうしたイベントは一種のレジャーとして親しまれています。

また、JAFも近年は危機意識を持っているようで、本当に安くて手軽に参戦できる「オートテスト」という新種のモータースポーツ(昔から学生向けに行われている「フィギュア」と似ていますが)を開催するようになっており、ジムカーナへ取って代わる初心者向けイベントとして定着しつつありますが、詳しくはまた別な記事で紹介しましょう。

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