旧車・絶版車購入ガイド | 2021.05.11
フロントマスクは歌舞伎役者をイメージ!?奇抜なデザインのミニバン マツダ「ビアンテ」
Posted by 菅野 直人
3列シートSUVの「CX-8」を後継としてミニバンを全廃したマツダは、かつて商用1BOXの「ボンゴ」をベースにさまざまなレジャー用途を提案するなど、RVブームの先駆けともいえたメーカーです。そのマツダが最後に作った箱型ハイルーフミニバンが「ビアンテ」で、登場時は歌舞伎役者をイメージしたという奇抜なフロントマスクが話題でした。
以下の文中の買取査定額は、投稿日時点での目安になります。実際の査定額については相場状況や車両の状態によって大きく変動しますので、あくまで参考金額としてご覧ください
SUMMARY
マツダ「ビアンテ」とは
1966年に発売したキャブオーバー型1BOX商用車「ボンゴ」が大ヒットし、古い世代には1BOX商用車を総称してボンゴと呼ぶ人すらいるほどでしたが、マツダは単に商用ユースだけでなく、早くからボンゴベースでレジャー用途のコンセプトカーをモーターショーへ出展するなど、ミニバンも含むRVブームの先駆け的な商品展開をしていました。
その集大成として1995年に発売された「ボンゴフレンディ」は、オートフリートップと呼ばれる開閉する屋根が寝床になる純正キャンパー仕様が話題になりましたが、2006年に販売終了すると商用の「ボンゴバン」を残し、一時期マツダのハイルーフ箱型ミニバンは消滅しました。
しかし同時期、FF(フロントエンジンフロントドライブ)乗用車ベースの箱型ハイルーフミニバンの日産「セレナ」やトヨタ「ノア/ヴォクシー」、同「アルファード/ヴェルファイア」などが全盛期でした。そこで同ジャンル車を失ってしまっていたマツダはFFロールーフミニバン「プレマシー」をベースとした新型ハイルーフミニバン「ビアンテ」を開発し、2008年7月に発売しました。
ボンゴフレンディのオートフリートップのように目立つ飛び道具こそなかったものの、5ナンバーサイズにこだわらなかったため2.3リッターエンジンなど動力性能に余裕を持たせることが可能になり、車内空間も同クラス車より広くできたほかデザインの自由度も高く、歌舞伎役者の隅取をイメージしたという異様につり上がった上に黒く縁取られたヘッドライトなどデビュー時のフロントマスクは印象的でした。
しかし、個性的に過ぎたデザインはユーザーを選んでしまったようで、発売初年の2008年でさえ平均月販1,840台を記録した程度でミニバンという人気ジャンルとしては少々物足りず、2年目以降は平均月販が常に1,000台を切る3桁販売車となってしまい、堅実ではあるもののドル箱とは言いがたい状況でした。
マツダは2013年にSKYACTIVテクノロジーを投入した新エンジンや新ATを投入するものの状況は改善されず、2014年にはついに平均月販500台を下回り、後継モデルの開発も目途が立たない状況で、「MPV」やプレマシーなど他のミニバンも似たような状況だったことから2016年にマツダはミニバンそのものからの撤退を発表しました。
こうしてビアンテも2017年9月で生産終了、2018年3月で在庫販売も終了し、1966年の「ボンゴコーチ」以来50年以上続いたマツダのハイルーフミニバンはその歴史を終えました。
後継は3列シートSUVの「CX-8」が担っていますが、最低地上高の高いSUVは3列シート車でも乗降性や居住性(特に3列目)の面からミニバンの完全代替は難しく、今やマツダファンにとってビアンテの中古車は最後に残された貴重な選択肢となっています。
マツダ「ビアンテ」の中古車相場
大手中古車検索サイトによる、2020年5月現在のビアンテの中古車相場は以下の通りです。
【マツダ・ビアンテ(2008-2018)】
(前期2.0リッターFF車)
11.8~159.8万円・296台
(後期2.0リッターFF車)※SKYACTIV-G 2.0エンジン搭載
55~243万円・126台
(2.0リッター4WD車)
20~222.8万円・31台
(2.3リッターFF車)
26~63.9万円・12台
流通しているほとんどがデビュー当初からの2.0リッターエンジンを搭載したFF車ですが、2013年5月マイナーチェンジ以降のSKYACTIV-G 2.0エンジン搭載車は高効率エンジンと6速ATの効果でJC08モード燃費が12.4km/L(アイドリングストップ車)から14.8km/Lへ大幅向上しており、高価でも低燃費な後期を取るか、車両価格ほどの差はないだろうと前期を選ぶか、悩みどころです。
また、雪国などで4WDの必要性を感じているユーザーにとっては、流通台数があまりに少なく選択肢の乏しさが問題です。
トップグレードとなる2.3リッター車は2.0リッター車の151馬力(これはSKYACTIV-Gでも変わらず)に対して165馬力と動力性能に多少は余裕あるものの、自動車税で5,000円以上の差があり燃費も劣る事から経済性の面であまり選択肢に入らなかったらしく、流通台数が少ないのみならず価格もかなり低めとなっています。
マツダ「ビアンテ」のオススメは、新しくて6速ATなSKYACTIV-G搭載車
中古車価格が少々高めのSKYACTIV-G 2.0搭載FF車「20C-SKYACTIV」「20S-SKYACTIV」「グランツ-SKYACTIV」ですが、2013年5月以降の販売で自動車税が新規登録から13年超の重加算税対象となるにはしばらく猶予があるほか、6速ATで高効率なだけでなく緻密な制御により運転中のストレスも少ないなど、価格差を補ってあまりあるメリットがあります。
どうしても4WDがいい、2.3リッター車が安いなら動力性能の余裕を味わいたい、という希望があればともかく、もうこれ以降マツダの新しいハイルーフミニバンが登場しない以上は、SKYACTIV-G 2.0搭載車が最善の選択肢です。
マツダ「ビアンテ」の中古車選びの注意点
12年前に発売され、3年前まで生産されていた車のため購入後の維持で固有の注意すべき点はないのですが、他社5ナンバーミニバンと比較すると70mmほど幅広いがゆえに保管場所で不便をこうむらないか、といった点は注意が必要です。
また、3列シート8人乗りとはいえ、2列目は本来独立した2人乗りキャプテンシートを中央に寄せて3人乗りベンチシートとしても使えるという程度のもので、3列目中央席は狭くてヘッドレストもなくシートベルトも3点式ではなく2点式の補助席じみた扱いとなるため、8人乗車の頻度が高いユーザーは同クラス他車をオススメします。
マツダ「ビアンテ」の中古車維持費目安
前述のように機械的トラブルや、その修理に伴う純正部品の欠品などはまだあまり考慮しなくてもよい時代の車で、維持費としてかかるのはまず自動車税です。
初期の2008年式が間もなく新規登録から13年以上で重加算税対象となり、2.0リッター車なら総排気量1.5リッター超2.0リッター以下で4万5,400円、2.3リッター車なら2.0リッター超2.5リッター以下で5万1,700円となります。ただし現時点ではまだいずれも重加算税対象外で、2.0リッター車なら3万9,500円、2.3リッター車なら4万5,000円です。
実燃費は2.0リッターFF車だと現実にはSKYACTIV-Gであろうとそれ以前だろうと10km/L程度で変わらず、2.0リッター4WD車(4AT)なら8km/L程度、2.3リッターFF車なら7km/L以下と大幅に悪化してしまいます。
一般的な2.0リッターFF車を例にとりますと、2020年5月11日現在のレギュラー平均価格がリッター当たり約120円程度なので、仮に月1,000km走るなら月12,000円程度のガソリン代がかかり、年間のガソリン代が約14.4万円に自動車税を合わせると、約18.4万円程度が最低年間維持費の目安となりそうです。
特に人気車や希少車、趣味車というわけではないため盗難リスクは少ないものの、最後のマツダハイルーフミニバンということで大事に使うなら保管場所や環境には相応の気を使うのを推奨するほか、環境次第で変わってくる購入後の駐車場代やタイヤ代、車検代や整備代、任意保険代などは各自計算してみてください。