カスタム・アフターパーツ | 2021.05.11
車用シートのブランド、「RECARO(レカロ)」は何が優れているのか?
Posted by 菅野 直人
自動車用のシートで総合的に優れたブランドは何か?と聞かれれば、車に詳しい人ほど「RECARO(レカロ)」と答える人が多いであろう圧倒的なブランド力と技術力を誇るレカロ。 自動車のみならず航空機や鉄道、スポーツ、オフィス、さらに近年はゲーミングチェアにまで進出しているレカロは、自動車用シートメーカーとして考えた場合、何が優れているのでしょうか?
以下の文中の買取査定額は、投稿日時点での目安になります。実際の査定額については相場状況や車両の状態によって大きく変動しますので、あくまで参考金額としてご覧ください
SUMMARY
馬車や自動車の内外装コーチビルダーとして創業、ビートルやポルシェ356向けもつくったレカロ
現在では自動車以外の分野にも積極進出しており、クルマ好き以外にも憧れのシートブランドとなっている「RECARO(レカロ)」。その素晴らしい座り心地に感心しつつ、それなりに高価であるがゆえに、「いつかはレカロシート!」と憧れに思う人も多いはずです。
なお、レカロの自動車用シートメーカー部門は、2011年にドイツのレカロ本体から売却されており、2021年現在は、アメリカの自動車用シートメーカー、「アディエント」のプレミアムシート部門となっており、日本でも神奈川県の追浜にある「アディエント追浜」が、レカロシートや各メーカー向けシートの製造拠点となっています。
そんなレカロですが、本格的に自動車用シートや各種チェアメーカーとなったのは第2次世界大戦後しばらくたった1963年のことで、1906年に馬車の架装業者として創業後、自動車の内外装を手掛けるコーチビルダーとして歴史を重ねてきました。
戦前には現在でいうコンバーチブル・ボディの特許を取り、後に世界最多生産大衆車となるフォルクスワーゲン タイプ1「ビートル」の原型、「kdf」初期量産車も製造、さらに戦後にはポルシェ356などポルシェ車の内外装ボディワークも手掛けており、自動車用シートは各メーカーからの注文に応じて納入するパーツのひとつに過ぎなかったのです。
しかし、1963年に車体製造工場をポルシェに売却、シート専業への転向に当たってポルシェ356用のフルバケットシートや、サイドサポートつきリクライニング・スポーツシートの先駆者となり、主にスポーツカーやレーシングカーでその実力を発揮してきました。
現在では自動車のみならず、航空機や鉄道用、オフィス用など長時間座り続ける用途向けのシート、スポーツ向けやチャイルドシートなど、短時間でも身体的負担を避けたい用途向けのシート、さらに2018年には、やはり長時間着座が想定されるゲーミングチェアにも進出しました。
「足腰や背骨、首に負担をかけたくないのであればレカロシート」という名声は、あらゆる分野へ広がっていますが、実はシート専業になってからまだ60年と経っていない、意外と新しいメーカーでもあります。
1980年代には完成を見たレカロのコンセプト
日本では1980年代後半のバブル時代、さらに1990年代の改造規制緩和という流れの中で、「レカロ」はその名声を轟かせ、当時のヒット商品「SP-G」や「SR-3」のホールド性と座り心地、さらにどれだけ乗っていても疲れ知らずという「こんな高性能な自動車用シートがあったのか」と、クルマ好きを大いに驚かせました。
その当時で既にサスペンションラバーマット「ピレリーマット」のように、乗り心地や安全性に関わる技術は既に確立されており、現在のレカロシートも基本的には当時のコンセプトからの延長線上にあり、時代の要請に応じた改良を続けてきています。
今から30年以上前には「人間工学の観点から優れた自動車用シートの頂点」を極めていたことになり、当時の自動車用純正シートなど及びもしない圧倒的なリードを築いていた結果、レカロシートを純正採用する国産車も、スポーツカーを中心に多数登場しました。
その当時の風潮として、「社外品のレカロシートに比べ、純正採用のレカロはロゴの使用許諾を得ただけで別物」などと言われたこともありましたが、レカロ株式会社(レカロの日本法人)が設立されたのは1976年で、それ以来レカロブランドの品質維持には気を遣ってきたはずのため、あくまで風評に過ぎないとも言われます。
現代のレカロシートは「軽量」と「シェル形状」が売りで、日本で飛躍的に進化!
コンセプトが30年以上前から変わらないとはいえ、もちろん当時のレカロシートが現在もそのまま販売されているわけではありません。
体に負担がかからず疲労しにくい、安全性やホールド性が高いというコンセプトは崩さぬまま、当初は鉄フレームに樹脂部品で、後には完全樹脂部品で構成するようになり、レーザー溶接などの技術も駆使してデザインの自由度を飛躍的に高め、内蔵するウレタンも薄型化するなど、大幅な軽量化も果たしました。
また、日本のように「シートは着座位置が低く、寝ている方がよい」という嗜好に合わせ、全体的に後方へ倒しつつ、骨盤や足、背骨の位置は変えず、頭まで寝て上を向いてしまわぬよう、背もたれの頭部が当たる位置は中折れ前傾させるなど、ユーザーの要望に応えつつ、レカロのアイデンティティを崩さないシェル形状のシートへと進化しています。
シートの強度と剛性、人間工学上のホールド性や安全性といった、本来であれば相反する要素を高いレベルで見事に両立しているのが、現在でもレカロシートが優れた自動車用シートと呼ばれる理由です。
その結果、誕生したレカロ「RMS」は、日本の拠点で独自開発され、今や究極の軽量高剛性レカロシートとして、世界から注目されるまでに成長しました。
かつて「輸入高性能シート」として憧れの存在であったレカロは、日本のユーザーからの厳しい要望に応えて独自の進化を遂げ、「日本発のレカロシート」として、新しい時代を築こうとしています。
もちろん、高性能なシートほど高価ですし、レカロシートであれば、なおさら「憧れの、いつかはレカロ」となってしまうのは致し方ありませんが、一度座れば、さらに走り出せば、その価格に否応なく納得せざるを得ない説得力も、レカロの特徴です。
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