コラム | 2021.05.11
スタッドレスタイヤの交換時期の目安は?正しい点検方法とは
Posted by 菅野 直人
雪国では必需品、雪国に住んでいない場合でも、降雪地帯に出かける用事があったり、年に一度でも積雪がありえるのであれば用意しておきたいスタッドレスタイヤ。タイヤである以上は当然寿命がありますが、その考え方は通常の夏タイヤとは少々異なります。交換時期の目安や点検方法についてご紹介しましょう。
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SUMMARY
誤解もある「スタッドレスタイヤは何で効果がある?」
1990年に施行された法律により、事実上日本のほとんどの地域ではスパイクタイヤが履けなくなったため、それに代わる冬用タイヤとして、特に雪国では必需品となったスタッドレスタイヤ。
それ以前からタイヤに金属製のスパイク(鋲)を打っていない「スノータイヤ」や、スタッドレスタイヤそのものも1980年代はじめには販売が始まっていましたが、法規制から30年もたつと、さすがに街中で「ゴロゴロゴロ…」と独特なロードノイズを立てるスパイクタイヤ装着車はほとんどなくなりました。
初期には「本当にこれは冬用タイヤなの?」と言いたくなるくらい低性能のものも普通に売られていたスタッドレスタイヤですが、2020年代に入った今では、海外メーカー製も含めた各社のスタッドレスタイヤは、少なくとも買った当初は積雪路や凍結路まで、それなりの安全性を持つようになっています。
とはいえ、スタッドレスタイヤは「夏用タイヤと異なるブロックパターンの角を路面に食い込ませて冬道の走破性を得ている」という誤解はまだあり、スタッドレスタイヤにとって何が肝心かは、皆さん正しく理解されているとは言い難いかもしれません。
スタッドレスタイヤにとって重要なのは、「吸水性」と「柔らかさ」。
太溝とは別に設けられたタイヤ表面のサイプ(細溝)や、タイヤ素材そのもので発揮される「吸水性」は、凍結路面や硬い積雪路面を踏んだタイヤが、その圧力で生じる熱によって溶けた雪や氷と、タイヤの間に水の膜を張り、接地性が損なわれるのを防ぐために水を吸収します。
また、柔らかいタイヤはその柔軟性によってフカフカの雪にもタイヤをよく食いつかせるとともに、吸水した水をかき出すのにも力を発揮し、さらに夏用タイヤであればカチカチになって性能が落ちる低温域、それも気温5℃程度から下の領域でも、雪や氷の有無に関わらずタイヤの性能を落とさないことに大きな力を発揮し、「乾燥路でも冬はスタッドレスタイヤの方が良い」という根拠にもなっているのです。
交換時期の目安で重要な点検方法「プラットフォーム」
通常のタイヤには、「これが露出するようであればタイヤの寿命で、車検にも通りませんよ」ということを示す「スリップサイン」という突起が溝の中にありますが、スタッドレスタイヤの場合はスリップサインと別に、これが露出すると冬用タイヤとしてはオシマイだよ、という意味の「プラットフォーム」と呼ばれる突起が、やはり溝の中にあります。
プラットフォームの場所は、タイヤ側面にある矢印マークの先にあり、スタッドレスタイヤの摩耗が進んで、このプラットフォームと同一面くらいになると、そこで冬用タイヤとして十分な性能発揮はできない、という証明です。
夏用タイヤとしてはスリップサインが出るまで使えるため、そのまま履き替えずに夏用タイヤとしてスタッドレスタイヤを使い続ける人もいますが、溝の多さから接地面積が劣るスタッドレスタイヤは夏用タイヤに比べ舗装路での性能が一般的に低く、特に雨天時や急ブレーキ時のブレーキ性能は、はっきり劣るため、スタッドレスタイヤを冬以外でも履き潰して使う場合は運転に慎重を期しましょう。
また、サスペンションを交換したり、足回りのアライメントがズレているなどの原因でタイヤが偏摩耗し、接地面のサイプ(細溝)がなくなっている場合は、プラットフォームが出ていなくとも要交換です。
摩耗以外での、交換時期の目安
他に、スタッドレスタイヤはその柔らかさを維持するため、一昔前であればオイルを、近年の製品であれば樹脂なども使った軟化剤をタイヤゴムに配合しており、早ければ1シーズンで、直射日光が当たらず高温多湿を避けるなど最良の保管条件でオフシーズンを過ごしたとしても、3年程度でタイヤの柔らかさが失われます。
そうなると、吸水性能や排水性能は多少保持されていても、カチカチタイヤでは冬用に適さないため、購入したタイヤのメーカーHPなどを参照し、冬用タイヤとしての寿命がどのくらいあるかを把握してください。
実際のところ、雪国でも車の使用頻度が少なく、使っても平地を短距離にとどまる、積雪期間が長いため冬は乾燥路面をほとんど走らないといったケースでは、タイヤの柔らかさが損なわれてからもしばらくは、溝さえあり、プラットフォームも出ていなければ、何年もスタッドレスタイヤを使い続けるケースもあります。
しかし、その場合でもタイヤの性能を100%どころか半分も発揮できないと自覚し、慎重に慎重を重ねた運転、急坂など性能的に無理な路面は避けるなどといった雪国ならではの知識があっての話で、そこまで神経を使うのであれば、まともなスタッドレスタイヤをきちんと買い替えた方が間違いないです。