旧車・絶版車購入ガイド | 2021.05.11
ドラマあぶない刑事でお馴染みの元祖ハイソカー 日産「レパード」中古車購入ガイド
Posted by 菅野 直人
同じ車名でも代替わりしていくうちにコンセプトが大きく変わり、先代とは全く別の車になることが時々ありますが、日産「レパード」もその1台です。 高級スペシャリティカーの初代、日産版「ソアラ」そのものとも言える2代目、海外向け高級セダンインフィニティ「J30」を国内向けとした3代目、セドリック/グロリアの兄弟車の4代目と、それぞれに全く異なる個性を持つ稀有な車です。
以下の文中の買取査定額は、投稿日時点での目安になります。実際の査定額については相場状況や車両の状態によって大きく変動しますので、あくまで参考金額としてご覧ください
日産「レパード」とは
日産から初代「レパード」が登場したのは1980年でした。後にライバルとなるトヨタ「ソアラ」に1年先んじてデビューした高級パーソナルカーで、4ドアハードトップと2ドアハードトップがラインアップされた鋭角的なデザインは当時の最先端を行き、トヨタ「クレスタ」などとも並ぶ「元祖ハイソカー」と称して差し支えないものでした。
ただし1970年代から使われてきた古いエンジンには直列6気筒のL型のみならず直列4気筒のZ型まで搭載した廉価版も存在したため、1981年にデビューしたソアラや「マークII」3兄弟に比べて、新世代3.0リッターターボ「VG30ET」エンジンを搭載して以降も含め、今ひとつブランドイメージとしての高級感の演出に難がありました。
そこで1986年に発売された2代目レパードでは思い切って「どこから見てもソアラの日産版」と言えるデザインへとフルモデルチェンジしました。エンジンは全て当時の日産が期待をかけていた新世代V6エンジンのVG系に統一され、後期型には255馬力というパワフルさから初代「シーマ」が大ヒットする原動力となった3.0リッターセラミックターボ「VG30DET」エンジンすら搭載されました。
V6エンジンでありながらロングノーズ・ショートキャビンのクラシカルスタイルで明確にソアラを意識し、当時人気だったTVドラマ「あぶない刑事」での活躍もあって一定の人気を得た2代目レパードでしたが、残念ながらこの路線も一代限りで終わりました。
1992年にフルモデルチェンジした3代目レパードは日産の海外向け高級ブランド「インフィニティ」で販売されていた4ドア高級セダン「J30」を国内向けバージョンとし、名前も「レパードJ.フェリー」に変えて再出発しました。
3.0リッターV6エンジンまたは4.1リッターV8エンジンを搭載してスポーティな足回りを持つレパードJ.フェリーは国際戦略車として作られただけあり、高級スポーツセダンとして十分な性能を持っていましたが、問題は日産自身が「410型ブルーバード」や「130型セドリック(前期型)」で「日本では絶対にウケないジンクス」を成立させてしまった“尻下がりデザイン”だったことで、それだけが原因とも言い切れなかったとはいえ、実際ジンクスを踏襲した散々な販売状況となってしまいました。
それでもまだ多チャンネル販売体制だった日産としては、まだ存在した日産店(ブルーバード販売会社)やサニー店(サニー販売会社)向けの高級車が必要であり、さりとてバブル崩壊後に経営不振にあえいでいた日産にはレパードを独立車種として開発するのは困難だったため、1996年にフルモデルチェンジした4代目レパードはいよいよセドリック/グロリアと兄弟車になります。
しかし、単にセドリック/グロリアのバッジ違いというわけではなく前後デザインは明確に異なっており、日産初の直噴エンジン搭載など伝統の先進性も維持されていたとはいえ、1999年にフランスのルノー傘下となった日産が販売網を再編、旧来の多チャンネル体制から「レッドステージ」と「ブルーステージ」に集約(その後完全に統一)されるとレパードは不要となり、2000年をもって消滅しました。
ある意味では、過去の日産が持っていた魅力と経営不振時の迷走を象徴した歴史を持つ車であり、それゆえ販売台数の割には話のネタになりやすい車として、後々まで語り継がれています。
日産「レパード」の中古車相場
【初代F30型(1980-1986)】
(4ドアハードトップ)129.8万円:1台
(2ドアハードトップ)流通なし
【2代目F31型(1986-1992)】※2ドアクーペ
70万円~770万円:29台・ASK(価格応談):1台
【3代目JY32型(1992-1996)】※4ドアセダン
43万円~73万円:3台・ASK:1台
【4代目JY33型(1996-2000)】※4ドアセダン
32万円~39万円:2台
中途半端に古く現存台数が少ない初代レパードとスマッシュヒットとなった2代目レパードに人気が集中しており、2代目レパードは流通台数もそれなりにあります。その一方で新車販売台数が少なかった3代目レパードと4代目レパードは比較的新しい割に流通台数が少なく一般的な知名度も低いことから「こんな車もあったのか」と驚く人が多いかもしれません。
2代目レパードは単にバブル時代の栄光を味わえる当時の人気車種というだけでも、年式の割にそれなりの高価格で販売されていますが、「あぶない刑事」シリーズ劇中車と同年式同グレード同カラー車であったり、後期型では廃止されたグラフィカル・デジタルメーター装備の前期型でレストア済の程度良好車、あるいはさらにハイパワーエンジンへと載せ替えた車は相当なプレミア価格がついています。
日産「レパード」でオススメするなら300万円以下の2代目
ヒストリックカー好きなら初代レパードも良いのですが、見た目も歴史も誰にでもわかりやすく説明しやすい、つまり所有欲を満たしやすい存在としては2代目レパードが最高です。ただしさすがに500万円以上のプレミア価格車はそれなりに所有する目的がないと現実的とはいえません。
300万円以下でもグラフィカル・デジタルメーター車やターボ車は購入できますから、バブル時代の日産車を味わいたい程度の目的であれば、せいぜい300万円前後までの中から選ぶのをオススメします。
また、新車販売当時の人気こそなかったものの、高級感や走行性能では間違いなく国際戦略車レベルで高品質だった3代目レパードや、ただセドリック/グロリアを買うよりは面白い存在で、流通している車はほとんどないとはいえ状態は良さそうな4代目レパードを「乗っていればどこかで必ず話のネタになる希少車」として購入しておくのは、自分を個性的に見せるアイテムとして案外アリかもしれません。
日産「レパード」の中古車選びの注意点
1980年代から1990年代初頭までのいわゆる「ネオ・ヒストリックカー」世代な初代や2代目レパードは人気モデルではありますが、現実的な価格で購入するならやはり程度はそれなりと考えておくべきで、内外装の傷や欠損パーツが極力ない「出物」を探すのが一番です。
それを除けば何しろ歴代モデル全てが希少車と言える流通台数ですから、たとえばモノコックのサビや塗装の劣化程度は後で直した方がレストア済みを買うより安上がり、くらいの気持ちで中古車探しに挑むべきでしょう。
あえて特筆するなら、2代目レパード前期のグラフィカル・デジタルメーターは正常に動作するか、サンルーフは雨漏りがないか程度は確認しておいた方がいいかもしれません。
日産「レパード」の中古車維持費目安
この項では、歴代レパードの代表的モデルであり流通台数も(レパードとしては)多い2代目レパードについて書きますが、20年ほど前に搭載車種がほとんどなくなったVG型エンジンとその補機類を中心に純正部品や代替部品の枯渇はそれなりに深刻と考えるべきです。
購入に際しては「もう1台買える程度の予算」が、一度にかかるわけではないにせよ購入時のコンディション維持予算として考えておくべきで、場合によっては部品取り車の購入やエンジンスワップも検討しておくとよいかもしれません。
それを除けば、新規登録から13年以上で重加算税対象となる自動車税が2.0リッター車なら総排気量1.5リッター超2.0リッター以下で45,400円、3.0リッター車なら総排気量2.5リッター超3.0リッター以下で5万8,600円です。
1980年代後半の高級クーペですから自然吸気エンジン/ターボエンジン、あるいは2.0リッター3.0リッター問わず燃費は現在の基準で考えられるものではなく、期待できる実燃費は各グレード平均して最良でも6km/L前後、2020年3月現在のハイオクガソリン平均価格が約147円程度として、仮に月1,000km走るなら月25,000円程度のガソリン代がかかり、年間のガソリン代約30万円に自動車税を合わせると、約34~36万円程度が2代目レパードにおける最低年間維持費の目安となりそうです。
3代目レパードや4代目レパードはともかく、初代レパードや2代目レパードはかなり希少な人気車種のため盗難リスクは高く、保管場所のセキュリティや車両保険には相応の気を使う必要があります。また、ユーザーの環境次第で変わってくる購入後の駐車場代やタイヤ代、車検代や整備代、任意保険代などは各自計算してみてください。