旧車・絶版車購入ガイド | 2021.05.11
絶滅危惧種!見つけたらすぐに買うべき!三菱「ランサーエボリューション」(第1/第2世代)
Posted by 菅野 直人
WRCをはじめ国内外のモータースポーツで大活躍した三菱「ランサーエボリューション」。最初に登場したランエボIの時点で「コンパクトなランサーへギャランVR-4のメカニズムを叩き込んだ台数限定販売のモンスターマシン」として人気となり、年々進化していくとともに最新モデルの登場が期待されるようになりました。今回は第1世代最初のランエボIから第2世代最後のランエボIV TM(トミー・マキネンエディション)までを紹介します。
以下の文中の買取査定額は、投稿日時点での目安になります。実際の査定額については相場状況や車両の状態によって大きく変動しますので、あくまで参考金額としてご覧ください
SUMMARY
第1 / 第2世代ランエボ(I~VI TM)とは
三菱自動車は1960年代から「コルト1000F」などで国際ラリーに参戦し、1970年代には初代「ランサーGSR」でサファリラリーを制し、2代目「ランサーEXターボ」でWRC(世界ラリー選手権)を戦いました。しかし、1980年代半ばからグループA時代に入ったWRCで戦う「ギャランVR-4」は、4WDターボの威力で高い戦闘力を誇ったものの、ライバルを圧倒するには大きく重いことがネックでした。
そうなると考えられるのが、小型軽量マシンへ戦闘力の高いメカニズムを詰め込む手法でした。この手法をとると少々ジャジャ馬じみた操縦性になるものの、とにかく速いことは確かです。そこで小型4ドアセダンでトップモデルは1.8リッターターボエンジンを搭載した4WDの4代目「ランサーGSR / RS」(通称エボゼロ)へ、ギャランVR-4の2.0リッターターボエンジン「4G63」と4WDを組み込み、各部を強化した上で1992年9月に限定2,500台を発売したのが初代「ランサーエボリューション」(ランエボI)です。
性能もさることながら何より目を引いたのは放熱やインタークーラー冷却のために大きく開けられた「いかにも競技モデル」なボンネットで、限定2,500台の根拠はこのボンネットを作るための金型がもたないから…などと説明されましたが、たちまち人気モデルとなり注文が殺到すると、アッサリ2,500台が追加販売されました。
もっとも、懸念された通りジャジャ馬的操縦性で耐久性も低かったランエボIはラリーなどでの実績はそう芳しかったわけではなく、さらに改良を加えられたランエボII(1994年1月発売)へと発展しました。
以降も改良は続けられて大型リアウイングが目を引いたランエボIII(1995年1月発売)、モデルチェンジされた5代目「ランサー」ベースで第2世代へ移行し、ついに当時の自主規制値280馬力へ到達したランエボIV(1996年8月発売)、ワイドボディで3ナンバー化、歴代ランエボ初の1G旋回を可能にしたランエボV(1998年1月発売)、冷却性能や空力性能改善のため前後バンパーなどが大きく変わったランエボVI(1999年1月発売)と後に続きました。
その間、1995年にはランエボIIがWRC初優勝、1996年にはランエボIIIをドライブするトミ・マキネンがWRCドライバーズタイトルを獲得、ランエボIVも含め1999年まで4連覇するなど大活躍し、1998年にはマニュファクチャラーズ(メーカー)タイトル、改造範囲の狭いグループNでも総合優勝してWRC完全制覇を達成しました。
その偉業を記念し、ランエボVIベースでエースドライバーのトミ・マキネンの名を冠した“ランエボ6.5”的なモデル「ランエボVI TM(トミ・マキネンエディション)」が2000年1月に発売され、これが最後の第2世代ランエボとなりました。
なお、ランエボの特徴として、市販車よりラリー専用レーシングカーに近い「WRカー」規定がWRCに登場、ライバル車がWRカーへ移行していったのに対し、第2世代ランエボまでは一貫して市販車ベースのグループAマシンで戦い続けた上での偉業でした。これはいわば市販ラリー車最速マシンだったのです。
また、WRCだけでなく全日本ラリーなど国内外のラリー、ダートトライアル、ジムカーナや、スーパー耐久などあらゆる競技で大活躍し、当初は初代インプレッサWRXに遅れをとることも多かったものの、ランエボIIIで舗装路でも優位を得るとワイドボディ化したランエボVではその差が圧倒的となり、国内競技ではランエボが圧倒的なシェアを誇るようになりました。
第1 / 第2世代ランエボ(I~VI TM))の中古車相場
大手中古車検索サイトによると2020年1月現在、第1 / 第2世代ランエボ(I~VI TM)の中古車相場は以下の通りです。
※新車価格はいずれも税別。
(第1世代)
ランサーエボリューションI(1992年11月発売)
GSR:流通なし
RS:流通なし
(新車価格:220.8万円~273.8万円)
ランサーエボリューションII(1994年1月発売)
GSR:110万円~193万円:4台
RS:流通なし
(新車価格:230.8万円~289.8万円)
【ランサーエボリューションIII(1995年2月発売)】
GSR:179.9万円~298万円:3台
RS:流通なし
(新車価格:237.8万円~296.8万円)
第2世代
ランサーエボリューションIV(1996年8月発売)
GSR:39.8万円~178万円:14台・ASK(価格応談):1台
RS:78万円:1台
(新車価格:249.8万円~299.8万円)
ランサーエボリューションV(1998年1月発売)
GSR:99万円~330万円:11台
RS:148万円:1台
(新車価格:259.8万円~324.8万円)
ランサーエボリューションVI(1999年1月発売)
GSR:68万円~239万円:14台
RS:ASK:1台
(新車価格:259.8万円~324.8万円)
ランサーエボリューションVI トミ・マキネンエディション(2000年1月発売)
GSR:219万円~429.8万円:4台・ASK:1台
GSRスペシャルカラーリングパッケージ:398万円~489.9万円
RS:流通なし
(新車価格:259.8万円~329.8万円)
車の性格上、競技ベースモデルの「RS」は一般的な中古車販売店というより競技系のショップなどで実際に競技へ参加するドライバー向けに販売されていることが多く、一般的な流通としては「GSR」が圧倒的多数です。
流通している車に関しては程度のよいものや信頼性の高そうな改造を受けたものが新車並+α程度な価格に対し、ランエボVI TMのみはメモリアルモデル的な存在ゆえか、抜きん出たプレミア価格がついている状況です。
そもそもの販売台数が少ないうえに、運転技術が未熟なドライバーが無理な走りをして事故を起こしたり、競技に使われクラッシュ全損というケースも少なくない車なため、探す時は近場に限定せず、日本全国から探し出す方がよいでしょう。
第1 / 第2世代ランエボ(I~VI TM)のオススメは一般ユーザーならVかVI
基本的には「最新のランエボが最高のランエボ」といえるほど進化を続けてきた時代のランエボだけに、第2世代までで選ぶならランエボVI TMが最高だと言いたいところですが、前項で書いたようにプレミア価格がついており、コレクターでもなければ安易に手を出すべきではありません。
何より、基本的にはどれも「2.0リッター直列4気筒ターボエンジンの名機4G63を搭載した4WDマシン」であり、発売当時のスペックはどうあれ現在はチューニングによって新しいモデルかそれ以上の性能、いかようにもできますから、スペックよりほかの部分にコダワリを持ちたいものです。
その上でダートトライアルなど競技に使用するドライバーなら、初期のランエボではもっとも小型軽量ハイパワーでバランスが取れており、最小限のメンテナンスやカスタマイズで高いポテンシャルを発揮できるランエボIIIがオススメではありますが、これも前項で書いた通り、そのような用途であれば専門のショップで競技ベースグレードのRSで競技仕様に仕立てたモデルを買いたいところ。
ならば快適装備を搭載した一般ユーザー向けGSRなら何がよいかといえば、ワイドボディ化で安定して高い運動性能を誇るランエボVかランエボVIがオススメとなります。ランエボVIは一般ユーザー向けを意識しすぎてサスペンションなどがソフトにすぎる、と新車販売当時は言われたもので、実際中古車市場でもランエボVの方が相場は高めなのですが、サスペンションなど交換してしまえばどうということはない部分ですし、VでもVIでもお好きな方を選ぶとよいでしょう。
なお、GSRでも元オーナーが競技に使用していたためジムカーナ仕様だったりダートトライアル仕様だったり競技向けチューンが施されていたりすることも多いため、日常使用に不便がないかどうか、あるいは日常使用でも非現実感があってそれもよいなど、好みに応じられる車かどうかは、よく考えて購入してください。
第1 / 第2世代ランエボ(I~VI TM)の中古車選びの注意点
基本的には4ドアセダンとはいえ4WDターボの競技用マシン、その市販バージョンだけに、「カッコだけでいいから大人しくファミリーセダンとして乗っていたワンオーナーカー」などという淡い期待をするべきではなく、程度の差はあれ、ほぼスポーツ走行などで荒く乗られていた車だ、ということにまず注意すべきです。
なんらかの改造箇所があってもおかしくはなく、競技用途で使うなら極端な話、原型を保ち、走行に必要な部品が一通り揃っていれば後はいかようにでもしてしまうものですが、一般用途ではエアコンやパワーウィンドーなど快適装備がキチンと作動するか、走行していてエンジンなどから異音や妙な動きはないか、サスペンションがガチガチで日常使用に耐えないなどの問題はないか、という点が大事でしょう。そのため、日本全国から程度の良さげな車を取り寄せるとしても、購入前にはできれば現地へ飛んでしっかり現物を確認しておきたい車です。
もっとも、これも車の性質上「買ってから気に入らない部分は交換してしまうのが前提の車」でもありますから、予算に余裕を持って、ツルシ(買ったそのまま)で乗ろうと考えないのが、もっとも健全な初期ランエボの選び方かもしれません。
第1 / 第2世代ランエボ(I~VI TM)の中古車の維持費目安
荒く乗られていたり、改造されていることが多い、と念頭に置かねばならない類の車ですし、最後のランエボVI TMでも20年近く昔の車ですから、維持費には少なからず定期的なメンテナンス費用、修理費用がのしかかるのは最初から覚悟せねばならず、ランエボらしくあるためにはタイヤやブレーキパッドもそれなりに良いものをと考えれば、決して安く乗ろうと考える類の車でもありません。
それを踏まえた上で、まず自動車税については、全て新規登録から13年以上が経過し重加算税対象となっており、総排気量1.5リッター超2.0リッター以下で45,400円です。
実燃費は平均すると7.5km/L前後で、2020年1月現在のハイオクガソリン平均価格が約155円程度として、仮に月1,000km走るならば月21,000円程度のガソリン代がかかり、年間のガソリン代が約25万円に自動車税を合わせ、約30万円程度が第1 / 第2世代ランエボ(I~VI TM)における最低年間維持費の目安でしょう。
もちろんこれは故障や高額な消耗品の交換などが発生しない場合の数字ですし、ランエボは盗難率も高い車ですから、駐車場の環境によってはセキュリティや保険もそれなりに費用をかけておかねばならないことに注意が必要です。その他ユーザーの環境次第で変わってくる購入後の駐車場代やタイヤ代、車検代や整備代、任意保険代などは各自計算してみてください。