コラム | 2021.05.11
こんな車が今あれば?!ディーラーでも購入できた90’s純正カスタムスポーツセダン3選
Posted by 菅野 直人
現在はトヨタなら「GR」、日産なら「ニスモ」や「オーテック」など、純正カスタムカーが常にラインナップされて各車種の魅力を高めていますが、その流れが盛り上がってきた1990年代から2000年代はじめにかけては、ベース車に搭載していなかったエンジンを搭載して特別感を演出したような、凝ったカスタムカーが販売されていました。そのなかでも “今こんなクルマがあれば!” と羨まれそうな、珠玉の純正カスタムスポーツセダン×3台をご紹介します。
以下の文中の買取査定額は、投稿日時点での目安になります。実際の査定額については相場状況や車両の状態によって大きく変動しますので、あくまで参考金額としてご覧ください
SUMMARY
今でも“欲しい”と言われるけれど…TRD2000(AE101カローラGT改)
バブル時代に販売され、現在に至るまで “一番豪華なカローラ” と評されている7代目E100系カローラセダン(1991-1995)は、基本は大衆向けファミリーセダンとして作られましたが、1.6リッタースポーツツインカムエンジン「4A-GE」を搭載した「カローラGT」など2本出しテールのマフラーがカッコ良かったもので、コンパクトなスポーツセダン好きにとっては忘れられないクルマとして記憶されているはずです。
1994年、全日本ツーリングカー選手権がスカイラインGT-Rなどをトップクラスに戦うグループAレース「JTC」から、本場のDTM(ドイツツーリングカー選手権)を彷彿とさせる4ドアセダンレース「JTCC」に変わった際、トヨタワークスはコロナ(10代目T190系)で参戦しつつ、TRD(トヨタ・レーシング・デベロップメント)はひと回り小さいカローラと4ドアハードトップ版カローラ セレス/スプリンター マリノをベースとしたレース車両を、プライベーターチームに供給しました。
このJTCC用カローラ競技車両は市販のカローラGTとは異なり、2リッターの3S-GEが搭載されていましたが、その技術をフィードバックして1994年10月に発売されたのが「TRD2000」です。
当初は「TRDカローラ2000」として発売予定でしたが、あくまでTRDが作ったクルマなのでトヨタから、カローラの名前は使うな!と釘を刺されてカローラの冠を被ることはありませんでした。
あくまでノーマルながら、JTCCマシン同様の3S-GEをカローラのエンジンルームへ強引にインストール、ミッションは当時のセリカ(6代目ST202)用、ドライブシャフトはちょっと古いセリカ(5代目ST182)用、と新旧混合ながらも純正パーツで手際よく組み上げられていたのが最大の特長です。
スペースの都合かABSがオプションでも設定無しであったり、寒冷地仕様の大型バッテリーは搭載不可という制約はあったりしたものの、見事に “2リッター版カローラGT” を練り上げたのです。
ただし、TRD自身で持ち込み登録しなければいけないという制約があったため、ディーラーで購入可能だったとはいえ、販売は東京、千葉、埼玉、神奈川の1都3県に限られてしまい、かつカローラGTの5MT車が181.9万円で買えた時代にTRD2000の新車価格はなんと335万円という価格で、おまけに25歳以下への販売不可、しかもあくまでTRDが改造した車のためトヨタからのメーカー新車保証なし、キャンセルされても困るからか、代金は全額先払いとがんじがらめの制約尽くめでした。
また、バブル崩壊後の超絶不景気が始まっていたことも相まって、限定99台ながら実際に販売されたのは10台程度だったと言われています。
いかにも “いま、こんな車があったら買うのに!” と唸りそうですが、実際に発売されるとなかなか買えないという、当時から現在にまで続く典型的な症例とも言うべきクルマだったのです。
スペック
名称 | 1994年式 AE101改 TRD2000 |
全長×全幅×全高(mm) | 4,275×1,685×1,360 |
ホイールベース(mm) | 2,465 |
車重(kg) | 1,140 |
エンジン | 3S-GE 水冷直列4気筒DOHC16バルブ |
排気量 | 1,998cc |
最高出力 | 132kw(180ps)/7,000rpm |
最大トルク | 191N・m(19.5kgm)/4,800rpm |
乗車定員 | 5人 |
駆動方式 | FF |
ミッション | 5MT |
サスペンション形式 | (F・R)ストラット |
中古車相場 | 皆無(2019年12月現在) |
実は2種類あった日産HNR32スカイライン オーテックバージョン
今でも数多くのファンがいるR34以前の直6エンジン搭載スカイライン。
そのなかでもやはり印象深いのは2.6リッター直6DOHCツインターボの名機、RB26DETTが搭載されたスカイラインGT-Rでしょう。
8代目R32に設定されたBNR32に始まり、10代目R34のBNR34で終わるスカイラインGT-Rは “第2世代GT-R” とも呼ばれ、第1世代GT-Rのごく初期には4ドアのPGC10スカイラインGT-Rも存在。
BNR32は2ドアクーペとして登場したため、ツウな玄人筋から4ドアGT-Rも復活して欲しい、という声が発売当初からあがっていたのも事実です。
その願いは1997年、初代スカイライン発売40周年を記念した「スカイラインGT-R オーテックバージョン 40thアニバーサリー」の発表と、翌年1月の発売で叶うことになります。
ですが、実はそれより数年前にオーテックジャパンは4ドアGT-R的なカスタムカーを発表していたのをご存じでしょうか。
それは1992年に発売されたHNR32「スカイライン オーテックバージョン」です。GT-RではなくGTS-4をベースにしていたためボディは5ナンバーサイズ(全幅1,695mm)のまま、フロントグリルなどマスクはGT-R風ですがフロントバンパーはオリジナルで、搭載されたエンジンはRB26DETTからタービンを外し、ピストンやカムシャフト、吸排気系、ECUチューンで220馬力を発揮するNA版「RB26DE」で造られました。
専用チューニングサスペンションとGT-R用ブレーキシステムを装備したとはいえミッションは4速ATのみで、スポーツセダンというより大人向けのグランツーリズモ・セダンという出で立ちでした。
NA版とはいえRB26を搭載していた4WDセダンなので“4ドアGT-R”と呼ばれることもありますが、スペックは大人しめであり、ブリスターフェンダーも持たない外観はGT-R風フロントマスクと、トランクリッドの「SKYLINE26」エンブレムによる演出&主張のみです。
そして、スカイライン一族(あるいはGT-R一族)の中ではかなり異色の存在でしたが、カタログモデルとして正規販売されなかった “もうひとつのHNR32スカイライン オーテックバージョン” があります。それがRB20DET搭載版です。
つまりエンジンだけ見ればただのGTS-4ですが足回りはGT-Rからの流用、内外装もオーテックバージョンそのものという、幻のRB20DET仕様HNR32スカイライン オーテックバージョンというワケです。
経緯は不明ながらたった2台のみ製造されたと言われ、おそらくは試作段階でお蔵入りになったと思われますが、正式販売されなかった試作車が正式に登録されて公道を走り、様々な経緯で一般ユーザーの方の手に渡って超レア車として、日の目を見る…というケースは時々あるもので、もしかしたら皆さんも知らないうちに出会っているかもしれません。
スペック
名称 | 1992年式 日産 HNR32 スカイライン・オーテックバージョン |
全長×全幅×全高(mm) | 4,580×1,695×1,360 |
ホイールベース(mm) | 2,615 |
車重(kg) | 1,480 |
エンジン | RB26DE 水冷直列6気筒DOHC24バルブ |
排気量 | 2,568cc |
最高出力 | 162kw(220ps)/6,800rpm |
最大トルク | 245N・m(25.0kgm)/5,200rpm |
乗車定員 | 5人 |
駆動方式 | 4WD |
ミッション | 4AT |
サスペンション形式 | (F・R)マルチリンク |
中古車相場 | 298万円(車両本体価格・2019年12月現在) |
タクシー仕様がよく似合う?トヨタ・コンフォートGT-Zスーパーチャージャー
最後に、カスタムカーの発売こそ2000年代だったものの、1995年にベース車が発売されたこの純正合法チューンドを紹介しましょう。
“ハイパワー直6ターボエンジンのRB26DETTや2JZ-GTEも積める地味な営業車” として、主にドリフト方面で半ばウケ狙い、しかし実力も伴うので侮れないのが日産クルーやトヨタ・コンフォート(および、同族のクラウンコンフォートやクラウンセダン)ベースのチューニングです。
どちらも主にタクシーや教習車向けのクルマでしたが、一般向けにも販売されており、クルーは2002年まで(一般向け以外は2009年まで)、コンフォートは2018年まで購入できたので、“5ナンバーの小型FR車がない” という時代にもカチ合い、地味な見た目ながらもその気になれば熱い走りを叩き込める一種のギャップ萌えとしてコアなフリークから高い人気を誇っていたのです。
そういうノリがウケるならいっそ市販してしまおう、という目論見があったのか、トヨタテクノクラフトの特装車部門がスポーツセダン仕様の「コンフォートGT-Zスーパーチャージャー」を2003年のオートサロンに出展、チューニングカー部門の優秀賞を受賞するなど好評とみるや、同年6月には本当に市販へ踏み切ってしまいます。
ただし、トヨペット店で購入できたとはいえTRD2000と同様に1都3県のみに限られ、11月までの約5ヶ月間のみ受注販売というカタチ。
高くとも300万円以内(227~291.8万円)と手が届く価格帯に納められており、前述のオートサロンに出展された先行試作車を含め60台が生産されました。
スポーツセダン仕様とはいえエンジンは2リッタースポーツツインカムの3S-GEではなく、ハイメカツインカムの3S-FEにスーパーチャージャーを組み合わせて最高出力160馬力/6,100回転および最大トルク22.5kgm/3,300回転と、下からのトルクを活かした仕様となるのが特長です。
スペック面での迫力は今ひとつというところですが、専用のエアロバンパーやフロントグリル、リアスポイラー、ワタナベの8スポークアルミなどが奢られたほか、専用スポーツサスペンションで30mmローダウンされたエクステリアは、地味で真面目な中年男性サラリーマンがある日突然、青年時代に流行したファッションへ着替えたような、ある意味ド迫力の華麗なる変化と言えます!
メーカーオプションでTRDのスポーツステアリングやスポーツシート、大森の3連メーターなどを選べば、車内はスポーツマインド急上昇となり、同じくLSDや強化クラッチを組み込めば、トヨタテクノクラフトが目指した “走りを忘れかけた大人達へ贈る80’sスポーティセダン” は、確かに実現されていました。(サイズや性能的には、コロナ/カリーナGT-TRのような感じでしょうか)
わずか60台のみ作られたレア車ではありますが、サーキットで走りを楽んだり、公道で雰囲気を味わう姿が目撃されているほか、当然のごとく個人タクシーとして使われている例もあります。最後の5ナンバーFRセダンだったコンフォートとその血脈の廃止により、もはやベース車がなくなって同じような車が作れなくなった今、中古車市場で見つけたらぜひともチェックしてみたい合法チューンドセダンと言えましょう。
スペック
名称 | 2003年式 トヨタ SXS13Y コンフォート GT-Z スーパーチャージャー |
全長×全幅×全高(mm) | 4,590×1,695×1,480 |
ホイールベース(mm) | 2,680 |
車重(kg) | 1,320 |
エンジン | 3S-FE+TX07 水冷直列4気筒DOHC16バルブ スーパーチャージャー |
排気量 | 1,998cc |
最高出力 | 118kw(160ps)/6,100rpm |
最大トルク | 221N・m(22.5kgm)/3,300rpm |
乗車定員 | 5人 |
駆動方式 | FR |
ミッション | 5MT |
サスペンション形式 | (F)ストラット・(R)トレーリングリンク車軸式 |
中古車相場 | 皆無(2019年12月現在) |