買取相場 | 2020.08.03
軽自動車版ハイエース?エブリィワゴンの査定相場について
Posted by 菅野 直人
軽商用1BOX車「エブリイ」をベースに豪華内外装を与え、軽ミニバンというべきジャンルに昇華させた「スズキ・エブリイワゴン」は、軽自動車界のハイエースともいえるエブリイ同様、極限までハコ化したボディは高いスペース効率を誇り、かつ同カテゴリー随一の販売台数を誇る1台です。 買取市場ではどのような評価を受けているのでしょうか?
以下の文中の買取査定額は、投稿日時点での目安になります。実際の査定額については相場状況や車両の状態によって大きく変動しますので、あくまで参考金額としてご覧ください
SUMMARY
エブリイワゴンの中古市場での人気について
1961年に初代モデルが発売されたスズキの軽1BOX商用車「キャリイバン」は、1982年に4ナンバー(商用車登録)のままながらRVブームに乗る形で上級仕様のエブリイを生み出し、660cc時代に入ってから現在まで続く新規格への改定後、1999年に5ナンバー(乗用車登録)のエブリイワゴンが登場しました。
乗用車的用途を意識しつつも4ナンバー登録だった従来の「エブリイバン・ジョイポップ」シリーズとは異なり、5ナンバー登録となったことで乗車スペースを広くとることが可能になりました。他にはエアコンやパワーウィンドウ、オーディオといった快適かつ豪華装備を充実させ、当時すでにブームとなり始めていたミニバンの軽自動車版、軽ミニバンというべき存在へとなり得たのです。
あくまで軽1BOX商用車がベースという出自は変わらないため、2000年代に登場した軽スーパーハイトワゴン(スズキならバレットやスペーシア)のような低床ボディではない分だけやや重心は高いものの、エブリイ同様にリフトアップ仕様やキャンピングカー仕様といったカスタマイズが容易というメリットもあり、効率というよりは絶対的なスペースを求めるユーザーからの支持を受け続けています。
新車販売台数こそ少ないものの、10年落ち以内の中古車価格も20~188万円と安定しており、需要と供給のバランスがとれたモデルといえるでしょう。
買取査定額が期待できるエブリイワゴンのグレード
エブリイワゴンは先代モデルの途中、2010年5月の改良時に自然吸気エンジンのグレードを廃止したため、それ以降は全車ターボ車。廉価版「JPターボ」、標準版「PZターボ」、豪華版「PZターボスペシャル」の3グレードとなっており、それぞれFR(後輪駆動2WD)と4WD、標準ルーフ仕様と背の高いハイルーフ仕様をラインアップしています。
このうち買取査定額が新車価格に対して高い傾向にあるのはPZターボスペシャルで、軽商用1BOX車をベースとしているだけに装備は充実、商用車エブリイとの差別化がハッキリしているグレードが好まれる傾向にあります。
買取査定額が期待できるエブリイワゴンのカラー
エブリイワゴンの買取査定額上位はボディカラーがパールなどホワイト系またはブラック系が多く、次いでシルバーやグレーのように落ち着いた色のほか、ブルー、ライトグリーン、パープルなどが並びます。
ホワイトやブラック系のボディカラーが上位多数を占めるのは日本市場におけるド定番といえますが、エブリイワゴンはファミリー需要のほか、エブリイに対してミニバンらしい特色ある外観を形作るメッキパーツが目立つボディカラーが好まれているかもしれません。
1年落ちエブリイワゴンの目安査定額
1年落ち2019年式エブリイワゴンは、2015年2月から販売されている現行モデルです(3代目)。
2019年6月の改良で衝突被害軽減ブレーキが、レーザーセンサー式の「レーダーブレーキサポート」からステレオカメラ式の「デュアルカメラブレーキサポート」へ更新されて、夜間歩行者検知まで対応しています。
リアバンパーにも超音波ソナーを搭載し、「後退時衝突被害軽減ブレーキサポート」も追加されるなど、予防安全装備が大幅に強化されました。オプション込みでのおおよその新車価格と、2020年7月現在での平均買取相場は、以下の通りです。
JPターボ標準ルーフ(FR/4WD) | 新車169万円/買取実績なし |
JPターボハイルーフ(FR/4WD) | 新車170万円/買取実績なし |
PZターボ標準ルーフ(FR/4WD) | 新車182万円/買取価格89万円程度 |
PZターボハイルーフ(FR/4WD) | 新車186万円/買取価格82万円程度 |
PZターボスペシャル標準ルーフ(FR/4WD) | 新車193万円/買取価格99万円程度 |
PZターボスペシャルハイルーフ(FR/4WD) | 新車194万円/買取価格104万円程度 |
平均買取価格 | 93万円程度 |
平均残価率 | 約49% |
4年落ちエブリイワゴンの目安査定額
4年落ち2016年式エブリイワゴンは、2015年2月から販売されている現行モデルです(3代目)。
既にスペース効率や使い勝手の良さに定評があった先代(2代目)から、フロントタイヤとダッシュパネルを前方に移動し、ボディも極限まで箱型にして、さらに車内を広く、フロントシートもベンチシートとしてシートスライド量を拡大し、前後席間隔も広げて快適性を高めました。
エンジンも新型のR06A型へ更新するなど燃費も向上、ワンアクションパワースライドドアなど、使い勝手の向上やレーダーブレーキサポートによる衝突被害軽減ブレーキ全車標準装備など、予防安全性能も備わっています。オプション込みでのおおよその新車価格と2020年7月現在での平均買取相場は、以下の通りです。
JPターボ標準ルーフ(FR/4WD) | JPターボ標準ルーフ(FR/4WD) |
JPターボハイルーフ(FR/4WD) | 新車166万円/買取実績なし |
PZターボ標準ルーフ(FR/4WD) | 新車180万円/買取価格61万円程度 |
PZターボハイルーフ(FR/4WD) | 新車181万円/買取価格74万円程度 |
PZターボスペシャル標準ルーフ(FR/4WD) | 新車188万円/買取価格80万円程度 |
PZターボスペシャルハイルーフ(FR/4WD) | 新車189万円/買取価格84万円程度 |
平均買取価格 | 75万円程度 |
平均残価率 | 約41% |
5年落ちエブリイワゴンの目安査定額
5年落ち2014年式エブリイワゴンは先代(エブリイとしては5代目・エブリイワゴンとしては2代目)モデルの末期で、2010年5月以降のフロントバンパーやメッキグリル、フォグランプ、シート表皮など内外装のデザイン変更が行われたモデル。
オプション込みでおおよその新車価格と2019年10月現在での平均買取相場をみてみましょう。
●JPターボ(4AT・FR/4WD/標準およびハイルーフあり):新車157万円/買取価格44万円程度
●PZターボ(4AT・FR/4WD/標準ルーフのみ):新車166万円/買取価格49万円程度
●PZターボスペシャル(4AT・FR/4WD/標準およびハイルーフあり):新車181万円/買取価格64万円程度
10年落ちエブリイワゴンの目安査定額
10年落ち2010年式エブリイワゴンは、2005年8月から2015年2月まで販売されていた先代(2代目)モデルです。インパネシフト化で前席左右ウォークスルーを可能としたり、パワースライドドアを採用するなど使い勝手を向上したモデルで、JPとJPターボ、PZターボスペシャルには標準ルーフとハイルーフ双方が、JPターボリミテッドとPZターボには標準ルーフが設定されています。
2010年5月の改良では、自然吸気エンジンに3ATや5MTの組み合わせで商用車的だった廉価グレードのJPが廃止されて、全車ターボエンジン+4ATとなり、テールランプのクリアレンズ化などで乗用ワゴンに徹した仕様となりました。オプション込みでのおおよその新車価格と2020年7月現在での平均買取相場は、以下の通りです。
JP(5MT/3AT・FR/4WD・標準ルーフ/ハイルーフ) | 新車140万円/買取価格13万円程度 |
JPターボ(4AT・FR/4WD・標準ルーフ/ハイルーフ) | 新車155万円/買取価格24万円程度 |
JPターボリミテッド(4AT・FR/4WD・標準ルーフ) | 新車164万円/買取価格21万円程度 |
●PZターボ(4AT・FR/4WD・標準ルーフ) | 新車164万円/買取価格21万円程度 |
PZターボスペシャル(4AT・FR/4WD・標準ルーフ/ハイルーフ) | 新車176万円/買取価格36万円程度 |
平均買取価格 | 22万円程度 |
平均残価率 | 約14% |
エブリイワゴンを高く売るためのポイント
ベースは商用1BOXバンとはいえ、豪華内外装と快適装備、そして流行の軽スーパーハイトワゴンすら上回る広大なスペースが売りとなっているのが、エブリイワゴンです。単に広くて快適というだけであれば、同じスズキでもスペーシアが人気ですが、エブリイワゴンは「定員が座って快適に過ごしても、なお人数分の荷物を載せる余裕」が大きな魅力です。
つまり、短距離の買い物や送迎用途より帰省など長距離走行、車中泊を伴うレジャーなどに向いた車のため、荷室や座席は一般的な軽乗用車より酷使され、傷つきやすいものです。そこで査定ダウンを防ぐためには、シートカバーや荷室へ荷物を入れる時も乱暴にしないなど、日常使用から気を遣うのが大事となります。
また、標準ルーフでもかなり車高が高い車のため、洗車の際は車のルーフ(屋根)までまんべんなく洗って水垢やワックスなどの拭き残しもないよう、脚立などを準備して手間をかけるのも大事です。
エブリイワゴンの走行距離による値動きの変化
エブリイワゴンの2020年7月現在における走行距離ごとの買取相場を、2015年2月以降に販売されている現行モデルを例に紹介します。
14万km台 | 30.9万円程度 |
11万km台 | 24.4~43.3万円 |
10万km台 | 41.5~46.1万円 |
8万km台 | 37.6~49.7万円 |
7万km台 | 48.7~82.8万円 |
6万km台 | 47.1~83.7万円 |
5万km台 | 47.8~81.7万円 |
4万km台 | 56.2~96.1万円 |
3万km台 | 55.3~95.1万円 |
2万km台 | 56.2~107.5万円 |
1万km台 | 56.4~111.6万円 |
まだ発売から5年半足らずの車のため、10万kmオーバーの過走行車はさほどありませんが、傾向としては7万km台から8万km台にかけて高額査定車がなくなり、また2万km台、4万km台を境に査定が落ちるようです。
おおむね年間走行距離が1.5万kmから2万kmを超えると、グレードや装備、程度が同じであれば、査定が落ちるものと考えた方がよいでしょう。
エブリイワゴンを売るのにベストなタイミングは?
流行のスーパーハイトワゴンや、現在ではベーシックな存在となったトールワゴン、スズキでいえば、スペーシアやワゴンRに比べ販売台数こそ少ないものの、豪華な軽ミニバン的存在として重宝されるエブリイワゴンは、オプション込み実売価格に占める買取価格の割合、「平均残価率」が1年落ちの場合、約49%、4年落ちの場合でも約41%と高く、比較的リセールバリューの高い車です。
ただし、10年落ちの場合は、古い上に型落ち、長距離走行用途が多いゆえか走行距離も伸びた車が多く、一気に平均残価率が約14%まで落ちます。それでも4ドアセダンなど不人気ジャンルの車より、よほどリセールバリューは高いため、年間走行距離が1万km程度までであれば、10年程度乗って、ある程度の価格で売れれば元が取れます。
バンバン乗り倒して年間走行距離が1.5万から2万km程度で使っている場合に限っては、おおむね4~5年程度、または2回目の車検あたりを目途に売却を検討するか、そうでない場合はリセールバリューを期待せず、車検費用の見積もりが高すぎたり、別に欲しい車が出た時に、売却や下取りを検討してみてください。
事故車・修復歴ありのエブリイワゴンの場合は?
エブリイワゴンの事故車買取価格については、正面衝突でフロントが大破、エアバッグは開きエンジンも使えない状態ながら、新車登録から1年経たないためか150万円で買い取られたケースがあります。しかし、登録1年以内中古車価格の相場(98~173万円)を考えるとまさしく納車直後、新車同然で距離も走っていないなど特殊なケースと思われ、実際の事故車買取相場は1~59万円程度、通常の買取相場からすれば高くても6割程度までに留まるでしょう。
エブリイワゴンの残価率・リセールバリューは?
スズキ・スペーシアなど軽スーパーハイトワゴンほどの超人気車種ではないとはいえ、少ないながらも堅実な需要はあるようで、リセールバリューはそこそこ手堅いといれるかもしれません。
1年落ち2018年式は平均残価率46~57%(全グレード平均50%)、平均買取価格78~108万円(同、91万円)と、残価率6割を超えることすらある人気車種ほどではないものの、5年落ち2014年式でも平均残価率28~35%(全グレード平均31%)、平均買取価格44~64万円(同、52万円)と、根強い需要のある車種レベルは維持されています。
10年落ち2009年式では平均残価率9~20%(全グレード平均14%)、平均買取価格12~33万円(同、22万円)と落ち着きますが、それでも残価率が10%以下に落ち、ヒト桁万円台で買い取られるような車種が少なくないなかでは、値落ちしない方だといえるでしょう。
決して目立つ車ではなく、スタイルも商用版エブリイとそう変わらないとはいえ、キャンピングカー仕様やリフトアップしてのオフロードSUV仕様などへの改造ベース、バイクやマウンテンバイクを搭載するトランスポーター、いざとなれば豊富なリヤシートスライド量で後部座席快適仕様にできる自由自在な1台。
中古車市場でも人気が高いため、過走行や程度などコンディションにさえ問題がなければ、リセールバリューはそれなりに期待してよさそうです。