買取相場 | 2019.11.02
ザ・軽自動車のスズキ・アルト、近年の軽ハイトブームで買取相場は逆風か?
Posted by 菅野 直人
今でこそ軽トールワゴンや軽スーパーハイトワゴンの売れ筋モデルに主役の座を譲ったものの、かつて軽自動車の代表選手、“ザ・軽自動車”と呼べる車種だったスズキ・アルト。 小型軽量かつコスパの高いパーソナル・カーとして今も生き残っているこの隠れたロングセラーは、買取市場でどのような評価を受けているでしょうか。
以下の文中の買取査定額は、投稿日時点での目安になります。実際の査定額については相場状況や車両の状態によって大きく変動しますので、あくまで参考金額としてご覧ください
SUMMARY
アルトの中古市場での人気について
1979年、1人~2人乗りメインと割り切った必要最低限の装備で47万円という驚きの低価格を実現し、世間をアッと驚かせた初代スズキ・アルトがデビューしてから40年。コンパクトなボディながら極限までスペース効率を高め、長引く経済低迷のなかファミリーカー用途としても大好評となり、かつての安い分だけガマンする車から、今や200万円以上の高級モデルすら存在するようになった軽自動車。そのなか、アルトは一貫して初代以来のシンプルかつコンパクトで安価というスタイルを貫いてきました。
販売台数上位の座こそ、スズキでいえばワゴンRのような軽トールワゴン、スペーシアのような軽スーパーハイトワゴンに譲ったとはいえ、背が低いコンパクトな小型軽量ボディでキビキビ走るアルトは、まだまだ多くの人々に必要とされています。
ファミリーカーとして使われることが多い大型の高額モデルとは異なり、アルトのメインユーザーは今でも1~2名乗車がメインの個人用移動手段、あるいは仕事用の営業車であり、またファミリーカーとしても愛され安くてツブシが効く1台として、中古車市場でも多数のアルトが日々売買されているのです。
決して派手ではなく、使い勝手や快適性が格段に優れているわけではなく、ハイテク最新装備を満載しているわけでもありませんが、車なんてこういうのでいいんだよ、と肩の力が抜けているゲタ派ユーザーにとっては、新車であれ中古車であれ、アルトは最高の選択肢のひとつと言えるでしょう。
買取査定額が期待できるアルトのグレード
アルトは大別すれば商用車登録(4ナンバー)のボンネットバン「アルトバン」と、乗用車登録(5ナンバー)の「アルト」に分かれており、最新モデルだとアルトバンは「VP」グレードのみ、アルトは廉価版「F」、標準版「L」、豪華版「S」、最上級版「X」の4グレードに分かれています。
VPとFのみFF車に5速MT車が残されているほかはFF車も4WD車もAT車で、VPとFは5速MTを自動化したAGS(オートギアシフト)と呼ばれる5速AMT、LとS、XはCVTを採用。比較的高額買取傾向にあるのは装備が充実し、衝突被害軽減ブレーキも搭載される「S レーダーブレーキサポート装着車」やXで、それ以外はグレードごとの違いがあまりなく、アルトバン VPが飛び抜けて安いくらいです。
買取査定額が期待できるアルトのカラー
性能や装備面でこだわりのある車選びをしているユーザーが少なく、ファミリーカー用途としてフォーマルな場に赴くこともあまり想定されない実用車ゆえ、アルトのボディカラーは買取査定額へあまり影響を与えていません。買取高額上位の一覧を見ていると多彩なボディカラーが並んでおり、あえていえばホワイト、ブラック、シルバーの比率は若干多いものの、だから高価買取が期待できる、というほどの差はないようです。
1年落ちアルトの目安査定額
1年落ち2018年式アルトは2014年12月にモデルチェンジされた現行モデル(8代目)で、2018年4月にESP(横滑り防止装置)やヒルホールドコントロール、4輪ABSがアルトバンVPにも標準装備化されています。
同年12月には従来のレーダーブレーキサポート装着車に代わり、単眼カメラ+レーダーのデュアルセンサーを持つ衝突被害軽減ブレーキ「デュアルセンサーブレーキサポート」を搭載した「スズキセーフティサポート装着車」がVPを除く各グレードへ設定されています。
オプション込みでおおよその新車価格と2019年10月現在での平均買取相場は以下となります。
●VP(FF・5MT/FF・5AMT/4WD・5AMT):新車88万円/買取価格13万円程度
●VP レーダーブレーキサポート装着車(FF/4WD・5AMT):新車97万円/買取実績なし
●F(FF・5MT/FF・5AT/4WD・5MT/4WD・5AMT):新車99万円/買取価格32万円程度
●F レーダーブレーキサポート装着車(FF/4WD・5AMT):新車102万円/買取実績なし
●F スズキセーフティサポート装着車(FF/4WD・5AMT):新車106万円/買取実績なし
●L(FF/4WD・CVT):新車104万円/買取価格29万円程度
●L レーダーブレーキサポート装着車(FF/4WD・CVT):新車107万円/買取価格29万円程度
●L スズキセーフティサポート装着車(FF/4WD・CVT):新車111万円/買取実績なし
●S(FF/4WD・CVT):新車119万円/買取実績なし
●S レーダーブレーキサポート装着車(FF/4WD・CVT):新車118万円/買取実績なし
●X(FF/4WD・CVT):新車132万円/買取価格39万円程度
3年落ちアルトの目安査定額
3年落ち2016年式アルトも現行(8代目)モデルで、モデルチェンジからの変更点は2016年12月にボディカラーが追加された程度。
オプション込みでのおおよその新車価格と2019年10月現在での平均買取相場は以下の通りです。
●VP(FF・5MT/FF・5AT/4WD・5AMT):新車87万円/買取価格7万円程度
●VP レーダーブレーキサポート装着車(FF/4WD・5AMT):新車97万円/買取実績なし
●F(FF・5MT/FF・5AT/4WD・5MT/4WD・5AMT):新車99万円/買取価格18万円程度
●F レーダーブレーキサポート装着車(FF/4WD・5AMT):新車102万円/買取実績なし
●L(FF/4WD・CVT):新車104万円/買取価格18万円程度
●L レーダーブレーキサポート装着車(FF/4WD・CVT):新車107万円/買取価格18万円程度
●S(FF/4WD・CVT):新車116万円/買取価格21万円程度
●S レーダーブレーキサポート装着車(FF/4WD・CVT):新車118万円/買取価格25万円程度
●X(FF/4WD・CVT):新車130万円/買取価格25万円程度
6年落ちアルトの目安査定額
6年落ち2013年式アルトは2009年12月に発売された先代(8代目)末期のモデルで、アルト、アルトバンのほか、新型エンジンを搭載して燃費性能を大幅に向上させた「アルトエコ」もありました。
オプション込みでおおよその新車価格と2019年10月現在での平均買取相場は以下となります。
●VP(FF・5MT/FF・4AT/4WD・4AT):新車85万円/買取実績なし
●F(FF・5MT/FF・4AT/4WD・5MT/4WD・4AT):新車98万円/買取価格10万円程度
●G(FF・4AT/CVT):新車101万円/買取価格9万円程度
●X(FF・4AT/CVT):新車113万円/買取実績なし
●G4(4WD・CVT):新車122万円/買取実績なし
●ECO-L(FF/4WD・CVT):新車101万円/買取価格14万円程度
●ECO-S(FF/4WD・CVT):新車112万円/買取価格16万円程度
●ECO-S エコブルーパッケージ(FF・CVT):新車110万円/買取実績なし
事故車・修復歴ありのアルトの場合は?
アルトの事故車買取価格の相場は、おおむね0.4~43万円程度の範囲内ですが、高額買取が見込めるのは走行距離も少なく新車同然、軽微な損傷に留まるなど、よほど好条件な場合のみ。実際には10~20万程度にとどまるうえに、修復されて中古車市場へ復帰するよりは、部品取り車としての需要が高そうです。
アルトの残価率・リセールバリューは?
特に趣味性のない実用車であり、日常のアシとしていつでも手軽に中古で買える車という面が注視されがちな車種ゆえ、アルトのリセールバリューはまったく期待できません。
1年落ち2018年式の段階で平均残価率15~32%(全グレード平均26%)、平均買取価格13~39万円(同、28万円)と、既に事故車とさほど変わらぬ残価率でしかなく、3年落ち2016年式でも平均残価率7~21%(全グレード平均17%)、平均買取価格7~25万円(同、19万円)ときわめて低めの傾向です。
ただし先代モデルとなる6年落ち2013年式は平均残価率9~14%(全グレード平均12%)、平均買取価格9~16万円(同、12万円)と、古いモデルにも関わらず下げ止まっているのが印象的で、つまりはどれだけ古くとも実用車、日常のゲタ代わりとしての価値は認められているものの、さりとて新しいからと価値が高いわけでもないことを意味します。
いつ売っても同じような価値に留まる類の車種なので、リセールバリューには期待せずコスパ高い維持費を生かし次の車を購入する貯金をして、都合のよい時に売りに出すというスタンスが正解でしょう。