コラム | 2021.10.30
史上初となるJAF公認レース!ヴィッツレースからヤリスカップまで サンデーレーサーが楽しめるワケとは?
Posted by KAKO MIRAI
JAF公認のナンバー付きレースは、今や珍しいことではありません。一般人でも気軽にレースを楽しむことができるようになりました。その草分け的な存在となるのは『Netz Cup Vitz Race(ネッツカップヴィッツレース)』です。サンデーレーサーたちを熱狂させたレースは、車種の変更で『Yaris Cup』へと代わっています。脈々と受け継がれるレースの魅力をご紹介していきましょう。
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ヴィッツレースの歴史
ヴィッツレースが開催される以前は、『JAF』公認レースの中で、市販車両をそのまま持ち込んだレースは開催されていませんでした。市販車をベースに改造したマシンを使用する『N1耐久レース』はありますが、それでもナンバー無しの競技車両を使用しています。
そこで1990年にナンバー付きの車両でも、レースをしようという動きが本格化。しかしそれを実現するためには大きな問題が山積しています。中でも難しいのは、自宅を出るときから、レース車両が公道を走行。そのままレースを走って、また帰路は公道を走る必要があることです。
使用する車両は、レースに耐えうるだけの性能を確保するだけでなく、自宅までの公道走行も安全に走行できるだけの高い安全性が絶対条件になります。元々トヨタは、日本初となるワンメイクレースを「スターレット」で始めていたこともあり、その後継として選ばれたのがヴィッツだったのです。
1990年から時間をかけ、本格的に始動できたのは2000年のことでした。ヴィッツが誕生したのは1999年のこと。当時としては新しいデザイン性や安全性能、環境性能を持った5ドアコンパクトカー。世界戦略車として海外では「ヤリス」の名を与えられ、日本のみならず海外でも一躍大ブームを引き起こしています。
また「ホットハッチ」としても高い人気があり、ターボが設定されたRSや1.8Lのスーパーチャージャーを与えられたGRMNも登場するなど、スポーツ性能の高さも評価されています。
スターレットの後継としてヴィッツが誕生したばかりの頃に、『JAF』のナンバー付きレース車両を選定するなら、ヴィッツが適任だったことはいうまでもありません。2020年に終了を迎えるまで、長い歴史を作ってきました。
そして評価される点としては、長い歴史を持つということにあります。ナンバー付きレース車両として、レースに耐えることのできる高い性能を持っている車だったということに尽きるのではないでしょうか。
人気のレース、その内容は?
高い人気を誇ったのは、公道走行が可能なナンバー付き車両だったということもありますが、それだけではありません。「国内A級ライセンス」を所持していれば、アマチュアでも出場できるという手軽さがあったからです。
ヴィッツレースの上級カテゴリーに位置していたワンメイクレースとして、アルテッツァレースが開催されていました。「JAF N1規定」に基づくナンバー無しの本格的なレースです。
ヴィッツレースで憧れていたレースの舞台に立ち、サンデーレーサーから本格的にレーサーを目指そうとするドライバーも多く、ヴィッツレースは更なる高みを目指す人たちにとって足がかりとなっていたことも事実です。
そのため初心者から上級者まで、ヴィッツレースに参加する人が殺到。予選通過者と予選落ちした人が走るコンソレーションレースに分けて行われていたほどの人気でした。2006年にアルテッツァレースが終了すると、ヴィッツレースはホビーレースとしての役割を担うことになります。
サンデーレーサーのホビーレースというと、優勝のチャンスがあるのでは?と思ってしまいますが、なかなかそんな甘いものではないようです。レースレベルは、ほかのカテゴリー同様に非常に高いものとなっています。
・全国を5シリーズで戦う
各シリーズをポイントランキング制で戦い、上位選手はファイナルを締めくくる特別戦へも出場することができるものでした。開催地は以下の通りです。
・北海道シリーズ…十勝スピードウェイ
・東北シリーズ…ツインリンクもてぎ、スポーツランドSUGO
・関東シリーズ…富士スピードウェイ
・関西シリーズ…岡山国際サーキット・鈴鹿サーキット
・西日本シリーズ…オートポリス
ヴィッツレース 歴代車両
SCP10
ヴィッツには1Lの4気筒エンジンの設定しかなかったことから、ヴィッツレースでもそのまま使用されています。車重は810~1,000㎏で最高出力は70ps。ロールケージと牽引フック、シートベルトなどのレースパーツを装着することで、そのままレースに参加することができました。
その後『TRD』からレース車両として「TRD-MSB」が販売されています。フロントスタビライザーなどを装備したレース出場可能車でした。しかしそれ以外のヴィッツでも参加することができたため、全ての車が同じコンディションでレースを行うことは難しいといえるでしょう。
初代ヴィッツはジムカーナをはじめラリーなどでも活躍を果たした名車として、その名前が知られています。
NCP91
2006年~2011年まで使用された2代目ヴィッツは、RSモデルの1.5Lエンジンとなりました。また『TRD』 プロデュースによる「TRDレーシングモデル」の使用が指定。足回りを中心にロールバーなど、レースで指定されたパーツが標準装備されています。
これによりエンジンは一切手を加えることができなくなり、参加車両の性能を均一化するイコールコンディションが実現。排気量の拡大によってスピードが向上し、ドライバーのスキルも一段上がったといえるでしょう。
2代目になってからは各地方のチャンピオンで争う日本一決定戦の開催や、2007~2008年は『日本GP』の前座レースとして更に人気を高めていくことになりました。
NCP131
2012年に3代目となり、イコールコンディションのレギュレーションが更に厳しさを増していきます。自由に選択できるパーツは、シートとブレーキパットだけ。タイヤも『グッドイヤー』の指定、マフラーはノーマルのみという徹底ぶりです。
マイナー前後でデザインが異なる車両の混走となっていたことも特徴の一つ。マイナー前は「RS Racing」が公認モデルでしたが、マイナー後の2018年からは「Vitz GR SPORT Racing Package」となりました。ベースになったのはVitz GR SPORTです。
専用のエクステリアデザインが特徴的でした。またシフト操作のないCVT車も設定されており、参戦可能となったことは大きな特徴のひとつです。ここから始まったCVTの導入は現在でも、日本ラリーを中心に行われています。
ヤリスカップとは
2000年にヴィッツの後継者として誕生したのがヤリスでした。ヴィッツレースの21年に及ぶレースの開催は実に400戦を超えるという歴史あるシリーズ。車種の変更に伴い「Netz Cup Vitz Race」から「TOYOTA GAZOO RACING Yaris Cup」として新たな一歩を踏み出しています。
ベース車両は1.5Lの最廉価バージョンXが使用されており、以下の専用装備の設定が義務付けられているようです。
6点式サイドバーのロールケージ
当然ながらマシンへの乗り込みにはロールケージを跨いで乗り込むため、普段の使用に
は不便さも覚悟しなければならないようです。
・専用サスペンションセットとしてフロントアクスルハブ部ボルト&スペーサー
バネレートとショックアブソーバの減衰力をレース用に設定。また車高も15mmローダウンしています。
エンジンオイルクーラー
MTにはコンパクトな水冷式を採用し安全マージンを確保。CVTにはより油温にシビア
な2ペダルでも、15段のコアを持つ空冷式が採用され、それぞれに最適化されています。
・牽引フックにはフロントトランスポートストラップ/リヤトランスポートフック
フロントには追突時のダメージが少ないストラップタイプ。リアは専用設計となった頑丈なフックを新開発しました。
・6点式シートベルト
従来の4点式から点数を増やし確実に身体をホールドすることを可能しています。
・指定タイヤ
グッドイヤー「EAGLE RS SPORT S-SPEC195/55R15」
参加するには?
参加車両には上記のヤリスカップカーを用意するほか、どのようなことが必要になるのかご紹介していきましょう。
STEP1:ライセンスの取得
まずはサーキット走行を行うことのできる国内Aライセンスを取得することから始まりま
す。まずは『FAF(日本自動車連盟)』に加入。講習会への参加資格として
国内Bライセンス所持
ラリー、ジムカーナ、ダートトライアル、サーキットトライアルに1回以上出場し、完走
していること。
公認サーキットに定められた走行経験が25分以上あり、証明を受けられる者
国内Bライセンスのない人
公認サーキットに定められたスポーツ走行経験が50分以上あり、証明を受けられる者
Aライセンスの講習会前24か月以内に上記の条件を満たす必要があります。
STEP2:エントリーの準備
まずは身の回りの準備
国内Aライセンスを取得後に、レース規定を満たしたヤリスの準備のほか、レーシングギアの準備が必要です。
→ヘルメット(フルフェイスタイプ)
→レーシングスーツ、アンダーウェア、バラクラバス(目だし帽)、ソックス、シューズ、グローブなど
サポート仲間を探す
一緒に参加してくれる仲間を探すことも大切です。友人や家族、サークル仲間など、サポートが重要不可欠。またはトヨタの販売店では車両購入の相談のほか、参戦に関する相談、車両のメンテナンス、レース当日の整備サポートなどきめ細かなサポート体制が充実しています。迷ったときには相談することをおすすめします。
パスポートの申請
レースに参戦するためには『T.R.A』事務局にCup Car、ドライバーの申請と登録が必要です。登録完了でYaris Cupへの参加が認められることになります。その後、ゼッケン番号が確定。
STEP3:エントリー
出場したいレースを探し、参加に必要な書類を準備します。
・参加申込書
・各大会特別規則
・公認レース車両申告書
STEP4:レース開催
サーキットについてしまえば、あとは流れに準じて予選を勝ち残るのみ。ワクワク感がたまりません。大会期間中はサーキット外へCup Carを持ち出すことができないため、2日間の大会期間の宿泊先と移動手段の手配を行う必要があります。
まとめ
レースに出場するなんて、あまり考えられないことかもしれません。出場しようとしても、高額な費用がかかることも大きな問題です。しかしヤリスの購入ができるなら、頭の片隅に入れておいても良いかもしれません。
ヴィッツレースから脈々と流れるサンデーレーサーのホビーレースは、楽しむことにあります。勝ち負けも重要ですが、レースに出場してサーキットを走る数少ないチャンスです。一度はチャレンジしてみる価値があるかもしれません。