コラム | 2021.08.01
モータースポーツのDNAを受け継ぐトヨタGRシリーズ、走りを極めるラインナップをご紹介!
Posted by KAKO MIRAI
トヨタにはスポーツ性能に特化したGRシリーズがラインナップされています。世界のモータースポーツで活躍する『TOYOTA GAZOO Racing』の、レースで培った技術がフィードバック。まさに走るために開発された車です。しかしレースで速い車であっても、一般走行には必要ないと思われるかもしれません。ではなぜトヨタがラインナップに加えているのか、その意味をご紹介していきましょう。
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SUMMARY
GR・GR SPORT・GRMNのちがいとは
トヨタのモータースポーツ活動に名付けられた『TOYOTA GAZOO Racing』のGAZOOとは、元々画像という言葉から誕生した造語です。最初はディーラーが使用する中古車検索システムの名前でした。
このシステムの立ち上げにかかわっていたのが、現社長の豊田章男さんです。当時は公式なトヨタのレース活動とは認められていなかったこともあり、豊田社長が度々モータースポーツにモリゾウの名前で参戦していた際に使用されたのがGAZOOでした。
社長就任と時期を同じくして『GAZOO Racing』はトヨタのモータースポーツ活動へと発展していきます。通常であれば、モータースポーツのプロが集まり編成され、より高見を目指す組織がつくられるもの。
しかしトヨタが目指したのは、社員を鍛える場所としての活用です。社内のテストドライバーやメカニックが集まり結成に至りました。その後2017年に正式なGRカンパニーとして誕生しています。
そのためゼロベースのスポーツカーを作り出すというよりも、量産車をベースにしてチューニングを行うコンプリートカーが主流です。そしてGRには3段階のチューニングが設定。
ライトなチューニングを施したものから順にGRスポーツ、GR、GRMNと名付けられています。全てに共通させていることには、GRテイストのデザイン、専用のステアリングホイールが設定されていることです。
それではここから詳しく3つのチューニングについてご紹介していきましょう。
・GRスポーツ
ボディとシャシーを強化し、専用となるエアロパーツを装着したGRスポーツは3つの中で手ごろなライトチューンが施されたものです。GRスポーツの前身は2010年に登場した「G’s」。
トヨタは「ライフスタイルに合わせて走りを楽しむエントリースポーツモデル」と位置づけています。そのため足回りを強化するなど、ノーマルモデルよりはスポーツチューニングを楽しむことのできる仕上がりです。
ちなみにGRスポーツの下に位置するのは「GRパーツ」。自分好みにセレクトしたパーツを組み合わせ、ドレスアップからチューニングまで楽しむことができます。GRパーツが使用するパーツは『TRD』製なので、どのパーツを選んでも安心して使用することができるでしょう。
GRスポーツよりも、もっとライトにチューニングすることや、ドレスアップをしてみたいという人には嬉しいものです。
・GR
ボディとシャシーの強化に加え、トランスミッションといったパワートレインの部分も強化が施されています。カタログモデルとして販売されているものなので、誰もが欲しいと思ったら、購入することが可能です。
トヨタは「操る喜びを日常的に実感できる本格スポーツ」と位置付けてサーキット走行まで視野に入れた開発を行っています。エンジンには手を入れていませんが、例えば86でGRスポーツとの違いを比較してみましょう。
GRモデルの86では、ステアリングクラッチの補強やサスペンションは10mm下げることができるものを使用しました。またブレーキシステムのキャリパーには通常シングルポットと呼ばれる型押し式が使用されています。
しかしGR 86は、スポーツカーであり、サーキット仕様も視野に入れている車です。そのためフロント6ポット、リヤ4ポットが採用されており、高い走行性能を発揮することができます。
・GRMN
GRシリーズの最高峰に位置するものが、GRMN。「GAZOO Racing tuned by MN(マイスター・オブ・ニュルブルクリンク)」の略称です。世界一過酷なサーキットといわれているドイツのニュルブルクリンクから追求されたモデル。
エンジンはもちろん、空力やサスペンションなど総合的にチューニングを施して、世界基準の走りを体感。車に求められる夢や走る楽しさを提供する目的で開発されています。しかし
現在のところラインナップされている車種はありません。
以前は86GRMN、マークX GRMN、ヴィッツGRMNターボ、iQ GRMNといった車種で販売されていました。GRMN魅力のひとつに限定販売車であるということが挙げられます。
スタンダードモデルにはないハイパワーのパフォーマンスは、ユーザーにとって羨望の眼差しとなるでしょう。
ここからは現在ラインナップされている車種をご紹介していきます。
GR86
2021年秋に初となるフルモデルチェンジが行われることが決定しているトヨタ86。2代目からは車名がGR86に変更になることが分かっています。新採用される2.4L水平対向4気筒エンジンで、先代の2Lエンジンから大排気量化が図られるようです。
共同開発が行われているスバルBRZはGR86よりも少し早い発売を予定。ボディデザインはサイドやリヤは共通デザインですが、フロントの印象は異なっています。86が採用するのは「FUNCTIONAL MATRIX GRILL」。これはGRシリーズで採用されているものと同様です。
また歴代の86に根付く車をイジり育てるという文化から、7メーカーが新型GR86のカスタマイズを追求し、独自の86を生み出そうとしています。
・HKS…車検対応パーツにこだわった開発でトータルにカスタマイズ。安心と安全を届けるコンセプトカー
・クスコ…モータースポーツの技術で、峠からサーキットまで楽しく走ることのできる「Tarmac Rally」仕様
・サード…86 GT1やサード90スープラのデザインを踏襲。フェイスづくりにも個性が光るサードブランドの進化と確立を目指す
・トムス…ワイド&ローなデザイン性で、もっとスポーティにカスタム
・トラスト…トラスト独特のパワフルなターボパワーとスタイルの良さを活かしたエクステリアづくりを施したもの
・ブリッツ…コンセプトは、ストリートを安心して走行できる性能。カスタマイズすることの楽しさや安全性を両立
・GRパーツ…AE時代から培ってきた86を知り尽くした技術で、空力から操安性まで高次元で叶えることのできる調律。ワインディングから街乗りまで心地よいハンドリングを追求。
詳しいことは発売を待ってからということになりますが、今からフルモデルチェンジした86も、カスタムパーツメーカーの86に対しても期待が膨らみます。
GR ヤリス
トヨタが自ら作るスポーツカー、これこそがGRヤリス。86やスープラのように他社との共同開発ではなく、一から作ること。その願いを叶えたGRヤリスは、『WRC』で目覚ましい活躍を遂げるようになりました。
トヨタの考える車作りは一般のユーザーが使用すること。その車の中からレースに使用できるチューニングを施し参戦するというスタイルです。しかしGR ヤリスは違いました。レースで勝利を収める結果を出すことができる車に、一般のユーザーを乗せること。
逆転の発想から誕生した車こそGR ヤリスでした。最小で最軽量かつハイパワーを生み出すことのできるエンジン。理想のエンジン回転フィールを生み出すことができたのは、ピストンやコンロッドを計測し、同等となる質量のものを組み合わせることができた結果です。
ボディに求めたのは、より強く軽いものでした。例えばウィンドウシールドガラスの固定に使用する接着剤は高剛性ウレタンを使用。溶接も約200点のスポット溶接の増し打ちをするなど、数倍の時間をかけています。
ラリーの現場で得られるデータをただフィードバックするだけでなく、『WRC』 に出場しているドライバーたちも開発からかかわりました。一台一台バラつくことのない車作りは容易なことではありません。
そのためGR ヤリスは大量生産ではなく、多品種少量生産を行っています。GRヤリスに込められた、トヨタの使命は非常に大きなものといえるのかもしれません。
GR スープラ
A80型スープラが生産を終了して17年が経過した2019年にGRスープラDB型が誕生しました。このスープラはGRの専売車種であり、歴代のスープラと区別するためにGRスープラと呼ばれています。
BMWとの共同開発を行い、プラットフォームはBMW Z4が採用されていますが、差別化が図られ全く異なる仕上がりとなりました。スープラ伝統の、直列6気筒エンジンにFRは同様ですが、エクステリアは大きく異なっています。
ショートホイールベースの車体で、軽快なハンドリングを実現。コンパクトカー並みのボディサイズでありながら、重量は先代のA80と同様というスポーツモデルに特化した車が出来上がりました。
セリカXXから続いてきた、トヨタのフラッグシップモデルスポーツカーがGRスープラとして進化を遂げています。今後の活躍が期待される一台といえるでしょう。
コペンGRスポーツ
GRシリーズの中で初採用された2シーターオープンモデルこそコペン GRスポーツでした。コペンといえばダイハツが誇るフラッグシップモデルです。2002年に誕生したコペンは、2014年にフルモデルチェンジを行い2代目となっています。
電動オープンカーを継承し、2019年にコペン GRスポーツとして発売が開始されました。ライトチューニングであるGRスポーツということもありパワートレインに変更はありません。
ベースとなるコペンと同様に直列3気筒のDOHCターボエンジンが採用されています。シャシーやボディの剛性は強化されており鉄筋などで作られた補強材のブレースが追加、または形状の変更が行われました。
ノーマルのコペンの良さを活かし、軽自動車を超えるスポーツ性能を持つコペン GR スポーツ。車メーカーの中でも数少ない軽オープンカーとして、GTにラインナップされています。
C-HR GR スポーツ
2019年にマイナーチェンジを行われた際に、GRスポーツとして追加が決定。CH-Rがデビューする以前からプロトタイプが『ニュルブルクリンク24時間レース』に出場してきました。
また『FIAアジア・パシフィックラリー選手権』にも参戦し、そのポテンシャルの高さを周知させることができたのではないでしょうか。GRスポーツ全車に共通するボディ補強において、CH-Rはフロアセンタートンネルに取り付けられた「フロアセンターブレース」が挙げられます。
CH-RはクロスオーバーSUVのため、ノーマルモデルではサスペンションのストロークが長めに設定。しかしGRスポーツならではの足回りの強化が図られ、サスペンションはコイルスプリング、ダンパーをチューニングしています。
またタイヤサイズは18インチから19インチにサイズアップ。扁平率が下がりハンドリングがシャープになっているようです。ライトなスポーツフィールを持つCH-Rですが、GRスポーツになることで手に入れた走行性能は大きいといえるでしょう。
プリウスPHV GRスポーツ
2017年に登場したプリウス PHV GRスポーツは、トヨタがGRに統一して初のモデルとなり注目を集めていました。プリウス50系をベースに開発が行われ、プリウスとの差別化を図るために4眼ヘッドライトの採用やフロントバンパーの形状変更をしています。
プラグインハイブリッドカーの特徴である、外部電源からの充電機能はそのままに、スポーツモデルとしての走りの質を高めているようです。従来からリチウムイオンバッテリーを搭載していることから、重心が重くなり安定感が増すというメリットを最大限に生かしています。
スポット溶接などは増やさず、ボディ底面にブレースを装着することで13mmのローダウンサスペンションを備えました。またタイヤのサイズはノーマルで15インチとなっていますが、GRスポーツで採用するのは18インチです。
燃費性能に重視したノーマルモデルではコーナーでのグリップ力が低くなり、横滑りをしやすくなってしまいます。プリウス PHV GRスポーツでは、横滑りを抑えて操舵角通りに曲がるように設定しました。
エコカーの概念に縛られることなく、エコカーの持つ車の可能性を広げる一台としてGRシリーズにラインナップされています。
ノア GR スポーツ
ファミリー層に人気のあるミニバンを代表するノアにもGR スポーツが誕生しています。2016年に「G‘s」として設定され、2017年にGRスポーツに変更されました。ミニバンを意識させない走行性能は、気軽にスポーツカーの走りを楽しみたいという人から支持を得てきました。
家族との時間を大切にしながら、低重心で安定感のある走行を体感できるでしょう。GRスポーツならではのボディ剛性とサスペンション、シートやステアリングに専用チューニングを施しています。個性的な車に乗りたいという人にはおすすめです。
ヴォクシー GR スポーツ
ヴォクシーG’sが登場したのは2010年のこと。2017年にGRスポーツとなっています。ZSグレードをベースにサスペンションやブレーキパッドに専用のチューニングを施しました。またボディの剛性化もおこなわれ、フロア下に空力パーツが採用されています。
そのため、コーナリングでミニバン特有のロールを感じることがなく、直進安定性も向上しました。走行性能の味付けは、通常のグレードと異なる大きな点といえるでしょう。また18インチのアルミホイールや大型の専用バンパーのフロントにはエンブレムが取り付けられていないことも特徴で、一目でGRと分かるデザイン性も魅力です。
まとめ
トヨタが考えるいいクルマの条件のひとつに、「走りたくなるクルマ」があります。レースで勝つための車に必要な条件は、一般道を走行するために必要があるものとは思えないかもしれません。
しかしレースで重要なのは安全性であり、ドライバーの疲労を軽減することでもあります。乗っていて疲れないこと、安心感のある車、そしてもっと走りたいと思える気持ちよさを提供することにあるようです。
トヨタがレースに挑み続ける理由、そしてGRをラインナップする理由は、一般ユーザーにいいクルマを届けるための挑戦なのかもしれません。