カスタム・アフターパーツ | 2021.08.21
D-SPORTやプロバイルへ要注目!踏み込むと意外に深くて楽しい沼「ダイハツ車チューン」がこれからもまだまだアツイ!
Posted by 菅野 直人
いわゆる「クルマ好き」からは、もっとも縁遠く、実直な実用車づくりに徹してきた印象のあるダイハツ工業。100%子会社化によるトヨタグループ入りでその傾向はますます強まっているようにも思えますが、その一方で、「昔も今も、チューナーにとっては面白いクルマ」をつくっており、2009年に撤退するまでモータースポーツにも積極的に関与していました。そんなダイハツ車のチューンを、最新車種からちょっと古めの車種までいくつかの例を紹介します。
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SUMMARY
日本グランプリのオリジナルレーシングカーかサファリラリーでも果敢に挑んだダイハツ
今ではタントやムーヴ/ムーヴキャンバス、ミライース/ミラトコットといった軽自動車、ブーンやトールといったコンパクトカー、タフトやロッキーといった軽/コンパクトSUVメーカーとして優れた実用車を数多く輩出しているダイハツですが、「イジって面白い車ってコペンくらいじゃないの?」と思われているのも事実です。
しかし、過去には四輪乗用車へ参入するや、初の乗用車コンパーノをベースにしたオリジナルレーシングカー「P-3」や、第2回日本グランプリの予選でクラッシュしたポルシェ904の修理を見に行って参考とした、パイプフレームのフルオリジナルミッドシップレーサー「P-5」をつくって参戦していた歴史がありました。
1967年にトヨタの提携、事実上傘下入りしてからは、日本グランプリなどオリジナルレースからは撤退したものの、軽自動車によるミニカーレースやラリー参戦は、公式クラブ的な「DCCS」と、それを母体としたメーカーワークス「DRS」によって積極的に行われており、海外ディーラーからの要請に応じてシャレードによる国際ラリーにも参戦。
中でも1993年のWRCサファリラリーでは、1~4位を占めたトヨタセリカGT-FOURに続き、並み居るモンスターマシンを押しのけ、1リッターターボのシャレードが、総合5~7位を占めるという華々しい成績を挙げています。
その後も、全日本ラリーや全日本ダートトライアルを中心にミラX4やストーリアX4、ブーンX4といった過激な競技ベースマシンで最大のライバル、スズキと大激闘を演じるなど、2000年代までのモータースポーツシーンには欠かせない存在であり、2009年に不況によるモータースポーツ撤退後も、コペンなど遊び心の溢れた軽スポーツをつくり続けているのです。
どうもクルマ好きからすると、「ダイハツなんて走って楽しめるクルマがないじゃない?」という地味な印象を持つ人が多いのですが、一度ダイハツマニアとしてハマると、並み居る国産名車に負けないくらい深い沼が待っているのも、また事実なのでした。
コペンのECUチューンなど、ダイハツ最新チューンを担うD-SPORT
ダイハツ車のチューナーとしてもっとも名高く、東京オートサロンでもダイハツブースに関わった車が必ず並ぶほど関係が深い、事実上のダイハツワークスチューナーと言えるのが「D-SPORT」です。
正確には、D-SPORTという会社やショップがあるわけではなく、自動車パーツ商社大手のSPK株式会社D-SPORT部門という部署が運営していますが、チューニングやドレスアップ、モータースポーツへのノウハウが豊富なショップや、過去にモータースポーツへも積極参加していたスタッフも抱えるダイハツ地域販売会社(ディーラー)とタッグを組み、純正部品並のテスト体制や品質を確保しています。
最近では、ドレスアップ系やサスペンションパーツ、ボディ補強パーツのリリースが多いものの、軽オープンスポーツのコペンに関しては、初代/2代目ともにチューニングにも力を入れており、最近の注目株は「パワードライブ」。
初代コペン用のJB-DETエンジンにも設定がありましたが、2代目コペンのKF-VETエンジン用もリリースされており、大掛かりなチューンを要せず、カプラーオンでECUとプラグを交換するだけで、ハイオク指定ながらノーマル64馬力から軽く80馬力に達し、しかもMT用だけでなく、CVT用も設定されたスグレモノです。
また、2代目コペン以外にも存在するKF-VETエンジン搭載車向けには、PIVOTと共同開発したサブコン「パワードライブPDX-D1」を販売しており、これもカプラーオン装着で軽く10%以上の出力向上が見込めます。
昔であれば、ECUチューンなど小規模ショップでも手掛けていたものですが、最近の車は電子制御の発達で「ヘタにイジると、まともに走らなくなったり、最悪エンジンでさえ、かからなくなる」ものですから、クオリティが高く純正品同様の品質を期待できるスポーツECUやサブコンをリリースしているのは、ありがたいものです。
FR化や4WD化、リフトアップもなんでもござれ、ミラトコットTR-XXも作ったプロバイル
ダイハツ車チューンといえば一時流行したのは、「コペンやムーヴ用の4気筒ターボエンジンJB-DETへ、ストーリアX4用のRHF4タービンを組み込み、同じくストーリアX4用のクロスミッションやD-SPORTの機械式LSDで武装」というパターン。
これを小型軽量のミラあたりへ搭載すると、軽く120馬力オーバーで最高速200km/h以上など愉快なマシンをつくることができましたが、それもダイハツ車が「ミラやムーヴベースのFF車と、ハイゼットやテリオスなどFR車の2種類とそれらの4WD版しかつくっていない」というシンプルさゆえです。
1998年の新規格軽自動車が登場して以来、同世代の車同士であれば、軽でもコンパクトカーでも、エンジンからミッションからサスペンションから、かなりのパーツを使いまわしできるため、「ダイハツ車で面白いと思う車がなければ、つくれば良いじゃない?」という考え方は、ダイハツマニアなら常識です。
そうしたチューンで最近元気なショップと言えば、兵庫県の「プロバイル」が話題豊富で、最初のうちは東京オートサロンへFR化した初代コペンを出展していた程度であったのが、あらゆるダイハツ車のFR化や4WD化、軽オープンスポーツながら、クロスオーバールックの2代目コペンX-PLAYをリフトアップ&タイヤ大径化(もちろん4WD)を施すなど、性能でも見た目でも派手な車づくりをしています。
ダイハツ車のFR車化には2種類あり、1つはハイゼットやテリオスキッドなど、軽FR車のパワートレーンを使ってエンジンも縦置きしたものと、エンジン横置きFF車ベースの4WDからフロントドライブシャフトを抜いたパターンがあり、プロバイルは両方とも対応。
4WDは普通に軽FFベースの4WDパワートレーンを組み込むだけですが、本来FFしかないコペンをあえて4WDターボ化するあたり、発想の勝利です。
さらにプロバイルがその名を上げたのは、ミライースのファンシー版派生車「ミラトコット」が発売された時で、そのカクカクしたルックスから「これで往年の軽ホットハッチ、ミラTR-XXが復活したら面白いのに!」という声がWEBなどで高まるのを待ってました!とでもいうように、オリジナルの「ミラトコットTR-XXアヴァンツァートR」を開発して発売しました。
2代目コペンのKF-VET+5速MTを組み込むだけでなく、オリジナルエアロや往年のシャレード・デ・トマソやミラTR-XXを彷彿とさせる赤黒ツートンカラーも再現する凝りようで、制作規模が小規模に限定されるカスタムカーとはいえ、ダイハツ車の可能性を大きく広げる1台となりました。
2030年代問題で岐路に立たされるダイハツだが、チューニングはまだまだ楽しめる?
ダイハツといえば、もともと「発動機製造」という会社からスタートした生粋のエンジン屋であり、自動車以外に汎用エンジンメーカーとしても名高いのですが、ヘタにエンジン技術が高いため、これまで他社のように最新技術を駆使しなくとも高効率・高性能を実現できてしまっていた歴史がありました(軽自動車用のDOHCやマルチバルブ化も一番遅かった)。
それゆえ、気がつくと環境性能と走行性能の両立にハイブリッドを要せず、一度ハイゼットカーゴ・ハイブリッドを発売したものの、価格に見合った燃費向上を果たせなかった(元々悪くない軽自動車では難しい)という背景もあり、それ以来まともな電動車を市販していません。
おかげで2030年代に全ての新車を電動化(最低でもマイルドハイブリッド化)せよ、という国の方針に対して、これまでのようにエンジン自慢だけではなかなかやっていけなくなっており、今後は車種削減などでダイハツ車ラインナップも大幅に変わるのではと言われ始めています。
しかし、「ちょっと古くなったダイハツ車って、安くチューニングして楽しむには最適だよね」という考え方は今でも健在で、「軽自動車界のRB26DETT」と言われたJB-DETスワップチューンはさすがに古くなりすぎて落ち着いてきていますが、2000年代以降に登場したKF-DETやKF-VET搭載車で「遊ぶ」のは、まだまだこれからです。
特に2代目コペンの登場で「KF-VET+5速MT」という組み合わせが安価に可能になった(それ以前はフルコンECUで200万円以上かかった)メリットは大きく、今後はミライースやミラトコットのKF-VET+5速MTスワップチューンが流行るのではないでしょうか?
欲を言えば、2008年度まで開催されていたダイハツ車専門ジムカーナ、「ダイハツチャレンジカップ」のようなメーカー公式イベントが復活すると、ユーザーとしてもショップとしても、チューニングに力を入れやすくなるため、是非とも検討してほしいものです。