買取相場 | 2022.05.19
“いつでも売り時”な定番人気車種、ハイエースワゴンの残価率は?
Posted by 菅野 直人
国産1BOXカーで圧倒的なシェアを誇る「トヨタ ハイエース」には、日本の産業を支える商用車のバンのほか、乗用登録でミニバンに分類される「ハイエースワゴン」も存在します。バンほどではないものの、商用1BOXベースのミニバンでは最大の販売台数を誇るハイエースワゴンは、中古車買い取り市場でどのような評価を受けているのでしょうか?
以下の文中の買取査定額は、投稿日時点での目安になります。実際の査定額については相場状況や車両の状態によって大きく変動しますので、あくまで参考金額としてご覧ください
SUMMARY
ハイエースワゴンの中古市場での人気について
「トヨエース」や「ダイナ」といった1950年代から作られていた小型トラックのさらに小型版として初代ハイエースが登場したのは1967年2月。同10月には現在までおなじみの3列シート9人乗り乗用登録ワゴンが登場、翌1968年4月にはスライドドアをもつ2列シート6人乗りのデリバリーバンも登場し、ハイエースのスタイルは既にこの時点で確立していました。
その後、ロングボディ仕様やハイルーフ仕様などを追加しつつ代を重ね、2代目の1980年には当時盛り上がりつつあったRVブーム(RV=レクリエーショナル・ビークル)に呼応した豪華仕様、「ハイエースワゴン スーパーカスタム」が登場。
1982年にモデルチェンジした3代目では斬新な縦目の角目4灯式ヘッドライトに豪華内外装で“新世代セダン”をうたい、黎明期のミニバンとして使い勝手の良さ、信頼性の高さでベストセラーモデルへと成長。あっという間に“1BOXワゴン/バンの定番”という地位を確立しました。2022年5月現在販売されているのは、2004年8月にモデルチェンジした5代目で、無駄を廃した角型ボディで極限までスペース効率を追求、車内容積や寸法を極大化。ライバルを全く寄せ付けない圧倒的な販売台数を誇っています。
2018年の販売台数は商用バンでもライバルである日産NV350キャラバンに対して2倍以上、ハイエースワゴンも商用1BOXバンベースのミニバンながら他社乗用車ベースミニバンよりも多い9,048台と、ライバルの5倍以上を販売。中古車市場でもその実績が反映されてタマ数、販売価格ともに圧倒的上位であり、1BOX商用バンの乗用仕様ならハイエースワゴンこそ定番中の定番!といえる人気ぶりです。
買取査定額が期待できるハイエースワゴンのグレード
現行の5代目ハイエースワゴンは、一応ミニバンに分類されるとはいえ実質ビジネスワゴンおよび、それをベースとしたジャンボタクシー仕様やキャンピングカーの販売がメインとなっており、そうした派生モデルを除く基本グレードは3つ。ベースグレードで見た目は黒い樹脂バンパーなどバンと変わらない「DX」、ボディ同色バンパーやメッキグリル、オプティトロンメーターなど内外装を充実させた「GL」そして最上級モデルとなる「グランドキャビン」から構成されています。
すべて全幅1,880mmのワイドボディで、DXとGLが全長4,840mmのロングボディ、グランドキャビンが5,380mmのスーパーロングボディで、全車とも初期は2.7リッター直列4気筒DOHC VVT-iガソリンエンジンに4速AT、2015年1月の改良以降はエンジンを「Dual VVT-i」化したうえでシケーンシャルシフトマチック付き6速ATに組み込まれ、かつ全グレードとも2WD(FR)とフルタイム4WDを設定。
このうち高額買取傾向にあるのはGLグレードで、充実した内外装と取り回しが比較的良好なボディサイズ、手頃な価格が評価され、後述するように残価率も高めとなっています。
買取査定額が期待できるハイエースワゴンのカラー
基本的には、商用1BOXバンの乗用登録仕様だけあってボディカラーのバリエーションは少なく、ごく一般的なFF&4WDミニバンと比べれば派手さより質実剛健ぶりが際立つ様子。高額買取上位のボディカラーはホワイトパールクリスタルシャインまたはラグジュアリーパールトーニングをトップに、ハイエースワゴン独特の定番色といえるベージュメタリックが続きます。その他、黒やシルバーもありますが、上位は気品あふれるホワイトとゴールドと考えていいでしょう。
1年落ちハイエースワゴン(2021年式)の目安査定額
ハイエースワゴンの1年落ち2021年式モデルは、2020年4月デジタルインナーミラーの全車に、インテリジェントクリアランスソナーを「Toyota Safety Sense」装着AT車にオプション設定するなど改良を受けたモデルです。
2021年4月にも「GL」と「グランドキャビン」にスマートエントリー&スタートシステムや、AC100V・100Wアクセサリーコンセントが標準装備になるなど一部改良を受けましたが、発売から18年近くを経て熟成の域へ達している人気車種だけに、大きな変化はありません。
ただし買取相場の動きは2020年8月当時から2年近くを経て大きく変化しており、超人気車種のハイエースバン(商用登録)に対し、車検の間隔が長い代わりに自動車税が高く、人気は控えめだったハイエースワゴン(乗用登録)の相場が急騰しています。「オプション込みでおおよその新車価格」と2022年5月現在での平均買取相場は以下。
DX | 新車334万円/買取実績なし |
GL | 新車362万円/買取価格253万円程度 |
グランドキャビン | 新車423万円/買取価格265万円程度 |
ハイエースワゴン・平均買取価格 | 約259万円 |
ハイエースワゴン・平均残価率 | 約66% |
4年落ちハイエースワゴンの目安査定額
4年落ち2018年式ハイエースワゴンは、2004年8月から販売されている現行モデルで、2017年12月の一部改良により、衝突回避支援パッケージ「TSS(Toyota Safety Sense)」のミリ波レーダー+単眼カメラ版を標準装備しました。
衝突被害軽減ブレーキと車線逸脱警報、自動ハイビームが組み込まれ、予防安全性能が大きく向上しました。オプション込みでのおおよその新車価格と、2022年5月現在での平均買取相場は、以下の通りです。
X(FR/4WD) | 新車327万円/買取価格121万円程度 |
GL(FR/4WD) | 新車352万円/買取価格207万円程度 |
グランドキャビン(FR/4WD) | 新車414万円/買取価格171万円程度 |
平均買取価格 | 166万円程度 |
平均残価率 | 約46% |
6年落ちハイエースワゴンの目安査定額
6年落ち2016年式ハイエースワゴンは、2004年8月から販売されている現行モデルで、2015年1月の改良でエンジンが改良されるとともに、ATも4速からシーケンシャルシフトマチック付き6速へと更新、JC08モード燃費が大きく改善されたモデルです(DXやGLのFR車で8.6km/Lから9.7km/Lへ)。
2016年6月にはさらに改良され、トラクションコントロールや横滑り防止装置、急な上り坂の発進でずり下がるのを防ぐヒルスタートアシストコントロール、急ブレーキ時にハザードランプを点滅させる緊急ブレーキシグナル、アクセサリーソケット(DC12V・120W)が全車標準装備となっています。オプション込みでのおおよその新車価格と、2022年5月現在での平均買取相場は、以下の通りです。
DX(FR/4WD) | 新車313万円/買取価格127万円程度 |
GL(FR/4WD) | 新車341万円/買取価格183万円程度 |
グランドキャビン(FR/4WD) | 新車402万円/買取価格143万円程度 |
平均買取価格 | 151万円程度 |
平均残価率 | 約43% |
8年落ちハイエースワゴンの目安査定額
8年落ち2014年式ハイエースワゴンは、2004年8月から販売されている現行モデルで、2013年12月のマイナーチェンジで、GLとグランドキャビンのフロントバンパーやグリル、前後ランプ類などが変更され、スタイリッシュな外観になったほか、バックドアイージークローザーを標準装備しています。
さらに、スマートエントリー&スタートシステムやオーディオのステアリングスイッチがオプション設定されるようになりました。オプション込みでのおおよその新車価格と、2022年5月現在での平均買取相場は、以下の通りです。
DX(FR/4WD) | 新車292万円/買取実績なし |
GL(FR/4WD) | 新車319万円/買取価格162万円程度 |
グランドキャビン(FR/4WD) | 新車378万円/買取価格132万円程度 |
平均買取価格 | 147万円程度 |
平均残価率 | 約43% |
ハイエースワゴンを高く売るためのポイント
商用1BOX車のハイエースバンよりは、多人数乗車を想定した乗用用途が多く、アルファードなど大型ミニバンに比べれば、宿泊施設の送迎や仕事現場への人員輸送など、業務用途が多いイメージのハイエースワゴンですが、それゆえに高価買取を狙うとなれば「普段からいかに車内をキレイに、傷や汚れを少なく保ち使うか」がポイントとなります。
汚れた靴や服装で乗車したり、油まみれの工具などをドカドカ載せる用途が想定される場合は、最初からハイエースバンを購入したり、ハイエースワゴン購入後にそうした用途が浮上してきたのであれば、汚れや傷がつく前にバンへ買い替えて適材適所を図るのが順当です。
ハイエースワゴンの走行距離による値動きの変化
ハイエースワゴンの2022年5月現在における走行距離ごとの買取相場を、2004年8月以降に販売されている現行モデルを例に紹介します。
15万km台 | 32.6~57.7万円 | 7万km台 | 45.2~247.9万円 |
14万km台 | 51.8万円程度 | 6万km台 | 98.3~220.4万円 |
13万km台 | 33.4~94.1万円 | 5万km台 | 91.2~186.6万円 |
12万km台 | 63.5~130.2万円 | 4万km台 | 120.1~283.0万円 |
11万km台 | 68.5~134.1万円 | 3万km台 | 103.1~225.8万円 |
10万km台 | 59.7~155.6万円 | 2万km台 | 110.2~239.2万円 |
9万km台 | 63.5~134.1万円 | 1万km台 | 94.4~253.0万円 |
8万km台 | 76.2~146.0万円 |
何しろ16年もモデルチェンジなしで販売し続けているロングセラー、ミニバンと商用1BOXバンの中間的車種、用途も個人向け乗用から業務用貨客車までと多様なため、程度もさまざまで、単純に距離だけで推し量るというよりは、年式や程度でも価格が大きく左右されます。
それでもある程度は距離に応じた傾向はあり、おおむね5~6万km台、10~11万km台と5万km刻みで、それ以上走ると買取査定が厳しくなる谷間が生じているのは、一般的な乗用車と変わらないようです。
事故車・修復歴ありのハイエースワゴンの場合は?
ハイエースワゴンの事故車買取はフロントが大破、エンジンは使えるもののエアバッグが開くほどの大ダメージを受けた9年落ちでも20万円の買取価格がつき、100万円の修理費用をかけて中古車市場に復帰した例があります。通常、9年落ちともなると形が変わるほどのダメージでは廃車、部品取りになっていてもおかしくありませんが、需要が多く人気車種で高価販売が期待できるハイエースワゴンだからこそ、それでも値段がつくという好例でしょう。
ハイエースワゴンの残価率・リセールバリューは?
商用登録のハイエースバンやマイクロバス仕様も含め、シリーズ全体が盗難被害にあうクルマ上位にくるほど人気が高いということもあり、残価率・リセールバリューとも文句ナシに期待していいでしょう。
5年落ち2017年式は平均残価率44~60%(全グレード平均52%)、平均買取価格178~208万円(同、193万円)と、同バンと比べても販売台数が少ない割には大健闘! 7年落ち2015年式でも平均残価率32~48%(全グレード平均40%)、平均買取価格125~162万円(同、143万円)、9年落ち2013年式でも平均残価率32~46%(全グレード平均39%)、平均買取価格118~146万円(同、132万円)と、多少年式が古くなっても残価率はさほど落ちていきません。
特に全長5mを超えるグランドキャビンより取り回しがよく内外装も充実したGLグレードは高い残価率を誇っており、ハイエースワゴンGLを所有しているユーザーなら“いつでも売り時”と考えてもよいでしょう。さすがはトヨタが、日本が誇る定番人気車種です。
ハイエースワゴンを売るのにベストなタイミングは?
2022年5月現在まで16年間もモデルチェンジなし、それでいて絶え間ない改良でクラストップシェアを守り続けているハイエースの乗用登録仕様がハイエースワゴンです。
大量の荷物を載せても、定員目一杯を乗車させても信頼性が高く、安定した運用のできる車としての定評は、商用登録のバンで不動の評価を得ており、快適性では専用設計の大型ミニバンには劣るものの、車内スペースにおいては、圧倒的に勝るのが特徴です。
従って、新車価格に対する買取査定額の割合を示す「リセールバリュー」も4年落ち2018年式くらいの場合は、最新ミニバンほどではない約46%ですが、その後4年落ちでも6年落ちでも約43%までしか落ちず、「古くても新しくてもある程度の評価で、古いからというだけでは価値が落ちにくい車」といえます。
買取査定が厳しくなるのは、走行距離が伸びた、傷や汚れで程度が悪化した、という要素の方が大きいため、前項までで説明したように、走行距離が5万kmや10万km台に入りそうな時、あるいは今後の使用用途で傷や汚れの増加が予想されるようになった時、または広大な車内スペースや多人数乗車が必要なくなった時が、売却や乗り換えに最適なタイミングでしょう。