カスタム・アフターパーツ | 2022.01.07
サスペンションが硬い!硬さを変えて乗り心地を良くするには?
Posted by 菅野 直人
車体とタイヤ/ブレーキの間にあって、ショックアブソーバーと呼ばれる伸縮する柱やスプリング(バネ)で車を支えているサスペンション。車の走行性能や乗り心地に大きな影響を与えるパーツですが、乗り心地が悪いとサスペンションの硬さを変更して改善する場合もあります。その方法とは?
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SUMMARY
車の「サスペンション」とは、具体的にどの部分?
日本語で「懸架装置」と書くサスペンションは、バネ長を短くして車高を下げる「ダウンサス」という製品があるように、スプリング(バネ)を指す場合もありますが、実際にはスプリングとショックアブソーバー(ダンパー)、この2つで構成されています。
さらに「サスペンション方式」という場合、サスペンションと車体をつなぐ「アーム(サスエペンションアーム)」にどのような方式が使われているかを表し、サスペンションそのものではありません。
ショックアブソーバーとスプリングは、それぞれ以下のような役割を果たします。
ショックアブソーバー
「ダンパー」と呼ばれることもあるショックアブソーバーは、サスペンションが伸縮する際の速度を抑え、振動を和らげる「減衰」という役割を持ったパーツです。
一般的には、ガスやオイルを封入した筒と長い棒のついたピストンで構成され、自動車の場合は、走行中に路面の段差などをタイヤが踏んだことによる「路面からの突き上げ」、加減速による縦Gやカーブなどでかかる横Gで「車体の重量がかかって沈み込む」力を抑えます。
こうした力がかかった場合、筒に対してピストンが押し込まれていきますが、その時に筒の中に何もない状態の場合、「スコン!」とピストンが筒の底へ入ってしまうため、ガスやオイルの圧力で、ピストンを柔らかく受け止めるわけです。
そうしないと、路面からの突き上げは車体や中の乗員や荷物へモロに衝撃を与えますし、カーブではピストンが底づきした瞬間、タイヤのグリップ力(路面との摩擦力)が限界を超えれば横滑りしてしまいます。
このような状態を「サスが抜けた」ということもありますが、あくまで「経年劣化や想定以上の衝撃で、ショックアブソーバー内の圧力が抜けること」で、ショックアブソーバーの状態や硬さ(圧力)は、乗り心地と走行性能に大きな影響を与えるのです。
スプリング
ショックアブソーバーのピストンへ被せるように、あるいはショックアブソーバーと別体で取り付けられているスプリング(バネ)は、普段はショックアブソーバーのピストンが車体の重量で沈みきらないように抑える役割を果たします。
つまり、スプリングの長さや硬さによる、静止時のバネ長(外した状態ではなく、車に取り付けられて静止した状態)や、バネの取り付け位置で、車高が変わるわけです。
乗用車ではバネ鋼をグルグルと巻いた「巻きバネ」が多いのですが、昔の車や大重量を支えるトラック、商用車などでは板状のバネ鋼を使った「板バネ」を使うことも多く、「トーションバー」とも呼ばれる棒状の「ねじり棒バネ」もあります。
走行中、ショックアブソーバーへかかる衝撃は、まずスプリングが受け止め、スプリングとショックアブソーバーの減衰による2段構えで抑えていき、衝撃が終わると今度はスプリングが元に戻ろうと伸びる力で、ショックアブソーバーのピストンを戻すのです。
そのため、ショックアブソーバーの減衰とスプリングの硬さのバランスが取れていないと、衝撃を受け止めきれずにショックアブソーバーが急に縮んだり、スプリングが伸び縮みするのに任せて車体がボヨンボヨン揺れるハメになります。
スプリングはサスペンションに欠かせないと同時に、適当に交換するとショックアブソーバーの役割を十分に果たせず、乗り心地や走行性能を極端に悪化させてしまうパーツでもあるのです。
「サスペンションが硬くて乗り心地が悪い」は、具体的にどのような状態?
そこで「サスペンションが硬くて乗り心地が悪い」というケースですが、大きく分けて以下2つの状況が考えられます。
1. ショックアブソーバーとスプリングの組み合わせが適切ではないか、どちらかが壊れている
ダウンサスなどスプリングのみ、あるいはショックアブソーバーも含めて両方交換した場合にありがちですが、ショックアブソーバーとスプリングの組み合わせが適切でないと、乗り心地が硬すぎたり、柔らかくなりすぎたりします。
ショックアブソーバーの減衰(減衰力)に対し柔らかすぎるスプリングだと、スプリングがすぐに縮み、底づきした時ほどではないにせよ、ショックアブソーバー内の圧力か、スプリングが縮みきって固まる「線間密着」によって、車体に「ガツン!」という衝撃が。
スプリングが硬すぎても、伸び縮みを抑制するというより全く縮まず、やはり衝撃がダイレクトに伝わります。また、ショックアブソーバーの圧力が低すぎるか、壊れて圧力が抜けている状態では、スプリングだけで車体を支えているのも同然なため、線間密着するまでバネが縮んで硬い衝撃が伝わったり、そこから急激にバネが伸びて、車体が揺さぶられてしまうのです。
2. ショックアブソーバーとスプリングの組み合わせが、走行性能優先である
スポーツタイプの車では、急な加減速や激しい横Gがかかるコーナリングでも、車体の動きが激しくならないよう、スプリングもショックアブソーバーの減衰力も、かなり高いレベルになっており、ちょっとした突き上げ程度ではサスペンションが縮みません。
そのため、スポーツ走行や高速巡航では車体が安定する一方、普段乗りでは路面の継ぎ接ぎや段差で常に車体へ衝撃が加わり続ける状態となり、買い物や通勤では硬すぎて乗り心地が非常に悪くなります。
スポーツ走行を目的にサスペンション交換した車に多い現象ですが、3代目シビックタイプR(4ドアセダンタイプのFD2型)のように、純正でもスポーツ走行最優先を極めた結果、非常に硬くて乗り心地の悪いサスペンションで知られる車種もありました。
その一方、スポーツ走行を優先しつつ、衝撃の硬さを「突き上げられる」というより「ちょっと硬いかな」程度へ絶妙に抑えたサスペンションも存在し、かつてスバルが純正で多用したビルシュタイン製ショックアブソーバーなどが「名器」として知られています。
サスペンションの硬さを改善して、乗り心地を良くしてみよう
「サスペンションが硬すぎて乗り心地が悪い」ケースの改善方法は、原因にもよります。
まずサスペンション交換後にそうなった場合、ショックアブソーバーの減衰力がスプリングに対して硬すぎる場合がほとんどのため、減衰力調整式ショックアブソーバーの場合は、一番柔らかい 減衰力へと調整してください。
それでも改善しない場合や、そもそも減衰力調整機構がない場合は、より硬いスプリングへの交換を推奨します。
純正サスペンションでその種の不満がある場合は、まずスプリング交換、それでも不満があれば、サスペンションそのものを乗り心地重視へ交換という順番です。
もちろん自分で考えて最適と思われる組み合わせ、あるいはサスペンション一式への交換でも良いのですが、その場合は納得するまで試すのを繰り返す「トライ&エラー」となるため、最短距離で解決したい場合はショップのプロへ相談しましょう。
なお、乗り心地改善を目的とした場合、大抵は走行性能とのバーター(交換)になるため、スポーツ走行を第一に考える場合は、街乗りの不満は我慢する!というのも選択肢のひとつです。
ドライバーが乗るだけであれば「サスペンションが硬くて乗り心地が悪い」は、スポーツ走行を目的としたチューニングで起きる他の快適性悪化(エンジンマウント交換による振動や騒音増加)と同じく、ちょっと乗っていれば「そんなもんだ」という感じで慣れます。
(その代わり、普通の車に乗ると「エンジンかかってないのかな?」と思ってしまうほど感覚は鈍ってしまいますが)
もしファミリーカー用途など、同乗者が頻繁に乗る車であればヒンシュクを買ってしまうため、実際に改善した方が良いかどうかは用途次第です。