カスタム・アフターパーツ | 2021.05.22
ブレーキローターの交換、いくらでできる?交換時の注意点等
Posted by 菅野 直人
コンパクトカーや商用車でも前輪に、それ以上の車やスポーツモデルであれば四輪全てに用いられることが多いディスクブレーキですが、ある程度走行距離が進んだ車や、スポーツ走行を繰り返す車、耐摩耗性より制動力を重視したブレーキパッド、あるいはブレーキシステムがそのような考え方でつくられている場合は、ブレーキローター(ディスク)の交換が必要になります。基本的にはDIYではなくプロに依頼する部品ですが、交換料金の目安や注意点を紹介します。
以下の文中の買取査定額は、投稿日時点での目安になります。実際の査定額については相場状況や車両の状態によって大きく変動しますので、あくまで参考金額としてご覧ください
基本的には「消耗品」であるブレーキローター
ダンプカーなど大型商用車を除けば、ほとんどの車では前輪に、スポーツモデルやある程度グレードの高い車であれば四輪全てに用いられているディスクブレーキは、比較的小型軽量で安価な実用車の場合、「ソリッドディスク」と呼ばれる1枚板、ハイパワー車や重量級の車の場合、2枚挟んだ中間に冷却用の空間が設けられた「ベンチレーテッドディスク」というブレーキローターを使います。
そのブレーキローターに貼り付くように設けられているブロック状の部品が「ブレーキキャリパー」で、キャリパー内に取り付けたブレーキパッドをピストンでローターに押し付け、その摩擦で制動力を発揮するのがディスクブレーキというシステムです。
ブレーキをかけて制動力を発揮させた際には、猛烈な熱を発するとともに、ブレーキパッドもブレーキローターも表面が摩耗していくため、ブレーキをかける限り必ず全面が摩耗するブレーキパッドは割と早めに、ブレーキローターもある程度使用すれば表面がすり減ったり歪んだりしてくるため、交換が必要です。
ブレーキローターの交換頻度は、ごく一般的な国産乗用車を、ごくごく普通に公道で運転している限りは、10万kmで寿命に達するたび交換と言われますが、これはあくまで目安。
スポーツ走行やそれに近い運転を繰り返したり、ブレーキパッドをパーツの寿命より制動力を優先したスポーツパッドなどへ交換していた場合は、もっと早くなり、電子制御ブレーキの発達で、雪道や雨で濡れたスリップしやすい路面では、車のコンピューターが勝手にブレーキを四輪独立制御して、ドライバーでさえ気づかないまま、車を立て直している場合も寿命は短めです。
逆に、最近はハイブリッド車やEV(電気自動車)など、ゆるいブレーキであれば発電機を回してバッテリーに充電する抵抗でブレーキをかける「回生ブレーキ」を使って昔ながらの摩擦式ブレーキをあまり使わなかったり、前述の四輪独立制御もブレーキではなくデフの駆動配分で行う場合もあるため、そのようなケースでは寿命が長めになるなど、車種によりけりです。
実際には車検ごと、あるいは車検までに何万kmも走るようであれば、1万kmごとに走行前点検でブレーキローターを触り、明らかに段差や歪みが生じていないかのチェックをオススメします(じかに指で触れた場合、パーツクリーナーなどで脱脂した方が良いでしょう)。
また、輸入車の場合、特にメルセデス・ベンツやBMWなど、日本より制限速度がかなり高い、あるいは無制限区間さえあるヨーロッパのアウトバーンを走るために寿命より制動力重視!減ればすぐ交換!という考え方で開発されたブレーキシステムもあるため、そうした車はディーラーからの説明をよく聞き、国産車より早い頻度だと思っても変に疑うことなく素直に交換を受け入れましょう。
意外と多い、ブレーキローター交換時の注意点
前項で「ディスクブレーキは、ブレーキパッドをブレーキローターに押し付けた摩擦でブレーキをかける」と説明しましたが、つまりブレーキローターが摩耗した時というのは、ブレーキパッドや、場合によっては、ブレーキキャリパーの部品も劣化が進んでいる可能性が高いです。
使っているうちにパッドとの接触面だけ減ったり、その接触面にしても偏摩耗して平滑ではない可能性もあり、極端な場合は、わずかなりとも弓なりに反り返っている場合さえあるため、単純に新品のローターへ、まだ摩材の厚みがあるからと、そのまま今までのブレーキパッドを使うのはオススメしません。
もちろん使っているうちにブレーキパッドの方が新品のブレーキローターへ馴染むように摩耗しますが、それまでは接触面が少ないため制動力が弱くなったり、新品のうちからローターに偏摩耗を起こす原因にもなりかねないため、ブレーキローター交換時はブレーキパッドも一緒に交換するのが無難です。
また、それだけ使い込んだブレーキキャリパーは、ローターとパッドの摩擦熱を受け続けて部品が劣化し、パッドを押すためのピストンが固着して、うまく動作しなくなっているかもしれません(そしてそれが、ローターやパッドの異常な摩耗の原因になっている可能性もあります)。
つまり、ブレーキローター交換時には「パッド交換と、点検結果によってはキャリパーのオーバーホール」まで要すると考えておくべきです。
さらに、純正のブレーキパーツをそのまま新品に交換するだけであれば良いのですが、どうせなら…とローターに小さな穴が無数に空いた「ドリルドローター」、溝が刻まれた「スリットローター」、あるいはその両方が施されたドリルド&スリットローターへ交換し、制動力強化を図るケースでは、性能アップの代わりに純正よりかなり早く摩耗交換に至ると思ってください。
特に元からブレーキ容量、つまり摩擦熱に対する余裕がないブレーキローターをドリルドローターへ交換した場合、早い場合は、サーキット走行1回で穴と穴の間に亀裂が入ることもあります(当然、亀裂を放置したら遠からずブレーキローターは割れ欠け、ブレーキが効かなくなります)。
また、容量不足解消のためにと、派生車種から大径ブレーキローターのブレーキシステム一式を移植してしまう人もいますが、その車種で上級グレードやスポーツグレードにさえ設定がないようなブレーキシステムを組んだ場合、前後ブレーキバランスが崩れたり、バネ下重量増加による性能悪化、ABSなど電子制御とのマッチング不良を起こす場合もあるため、ブレーキシステムに限っては安易な他車種流用は控えるべきでしょう。
ブレーキローター交換工賃の目安は、「工賃以外は車種や選択肢によりけり」
ここまでの話を踏まえた上で、ブレーキローター単体の交換工賃そのものは、1輪あたり税別4,000~5,000円あたりが一つの目安となります。
もちろん、これには新品ブレーキローターの費用は含まれていませんし、同時交換が強く推奨されるブレーキパッドも、さらに劣化していた場合のブレーキキャリパーオーバーホール費用も含まれていません。
一般的にはブレーキローターで摩耗交換が必要になるのは前輪のみで、ブレーキをかければ前輪に力が集中するため、前輪よりはるかに長い寿命がある後輪のディスクローターを同時交換することはそうそうなく、大抵は前2輪のみ交換です。
そこで工賃としておおむね税別1万円、ローター代、パッド代、キャリパーオーバーホール代は純正か社外品か、社外品であれば純正相当か性能強化品か、そして車種によっても大きく変わってくるため、工賃以外は作業を依頼するお店に相談し、強化品などを使うとしても予算内に収まるようにしましょう。
なお、近年ではローターにせよパッドにせよ、「純正より安くて性能は純正相当、場合によっては純正より性能や耐摩耗性が優れている」という社外品もあるため、必ずしも純正にこだわる必要はありません。