コラム | 2021.05.11
ホイールに4穴や5穴などがある理由とは?穴数でどのように変わるのか
Posted by 菅野 直人
タイヤホイールは、乗用車の場合大抵は4穴か5穴、オフロード車や車重が重い車であれば6穴といった感じで、穴数とハブボルトの数が増えていき、大型トラックであれば10穴、昔のシトロエン2CVや初代スマート・フォーツーでは3穴など様々です。ホイール穴とハブボルトの数が違う理由はなんでしょう?
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乗用車用ホイール穴は大抵4穴や5穴
一般的な乗用車に使われるタイヤホイールには、大抵ハブボルトを通すためのボルト穴が4つや5つ空いており、中にはマルチPCD(※)のため、いくつも穴が空いているホイールもありますが、純正品ではまずありません。(※PCD=ボルト穴を結んだ円の直径。国産車の場合、100や114.3が多い。)
何となくの一般的感覚では「ボルト穴が多い方が高級そうで優れている」という声も聞きますし、実際筆者は25年ほど前にトヨタ・コロナExivの2リッターモデル(初代ST182型)に乗っていた時、カリーナEDの1.8リッターモデル(2代目ST180型)に乗っていた先輩から、「おっ!お前のExiv5穴じゃん!俺の4穴なのに生意気だ!」などと言われたものです。
もっともその感想はあながち間違いではなく、ハブボルトの数は「車両重量や動力性能に応じて想定される負担」が大きいほど増やして、より大きな負担に耐えることができるようになっているため、同種の車であれば、4穴ホイールより5穴ホイールの方が豪華で重量が重い、エンジンがパワフルという傾向は確かにあります。
性能向上で4穴から5穴になることもある
ハブボルトにかかる負担が大きいほど数が増えるということは、逆にスポーツカーであろうと軽量でヒラヒラ舞うような類の車の場合、わざわざコストをかけて5穴ホイールにしなくてもよいわけで、その典型的な例が、4穴ホイールを採用した現行のND型マツダ・ロードスターです。
1.5リッターで、グレードによっては車重1tを切るNDロードスターはともかく、2リッターエンジンで車重もある程度増えているロードスターRFでも4穴なのはどうなのか、やはりコストの問題かなとも思いますが、その程度までは4穴ホイールで十分ということでしょう。
それに対し、モデル途中で4穴から5穴に増やしたのが初代ホンダ・インテグラタイプRで、1998年1月発売の通称「スペック98」から5穴ホイールになりました。
リッター100馬力を超える1.8リッター200馬力の高回転型DOHC VTECエンジン搭載で、サーキット走行やレース、ダートトライアルまでガンガンこなすリアルスポーツマシンであったため、5穴化は歓迎すべきでしたが、ベースのSiR(EK4型)が4穴だったのに対し、5穴ホイールとした初代シビックタイプR(EK9型)が前年の1997年8月にデビューしていたため、部品共用化でコスト的にも問題がなくなったからかもしれません。
より負担が大きい車は、穴の数も多い
乗用車に比べ、荷物の積載がメインとなる貨物車は、6穴以上のホイールを使用することが多く、オフロード走行のため時には一輪あたりの負担が非常に大きくなる上、ラダーフレーム構造などで車両重量も重くなりがちな本格オフローダーの類も、軽やコンパクトクラスでも5穴、大抵は6穴以上となります。
まだ軽量高剛性ホイールが開発できていなかった頃の小型車版スズキ・ジムニー(今ならジムニーシエラ)など、軽自動車版ジムニーのタイヤホイール流用では、ホイールの剛性不足であったこともあり、コンパクトクラスでありながら、あえて1クラス上の6穴ホイールを使っていました。
それがダンプカーや大型トラックになると、過積載まで考慮したオーバースペック気味な耐荷重性能を持たせるため、10穴など穴数の多いホイールを履かせますが、それでも過積載や整備不良、はたまたメーカーの設計ミスなどもあって、ハブボルトやハブそのものの破断による重大事故に繋がるケースもあり、たかがハブボルトやホイール穴ひとつ、と軽視できません。
逆に軽い車だと3穴ホイールもある
ならば、4穴ホイールを使った車より、さらに軽くてエンジンパワーもそれなり、舗装路しか走らないという車であれば、もっとハブボルトやホイール穴を減らせるかといえばその通りで、1930年代末期に試作車がつくられ、第2次世界大戦後に量産車がデビューしたフランスのシトロエン2CVは3穴ホイールでした。
鋼管フレームに薄い鋼板を貼っただけ、内装もシートも最低限の軽さという2CVには3穴で十分でしたが、近年でも1990年代に入って発売された2人乗りマイクロカー、初代スマート・フォーツーは3穴ホイールです。
スマート車で問題ないのであれば、国産軽自動車も採用しても良いのでは?と思いますが、3穴ホイールは何しろ採用例も少なく、純正にせよ社外品にせよ限られた車のために専用品を作ると、かえって高価になるため、大抵は4穴ホイールを使っています。
5穴や6穴ホイールは頑丈ですが、もちろんタイヤ交換の際に脱着せねばならないホイールナットは多いですし、自力で交換する場合は手間を考えれば、4穴ホイールがベストでしょう。
そうした整備性の不便を忍んでも採用される5穴以上のホイールは、そうしなければいざという時に破損リスクが大きくなるなど、それを採用するだけの合理的な理由があるということです。
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