カスタム・アフターパーツ | 2021.05.11
今や車は電子制御の塊⁉新コンピュータチューンの世界
Posted by KAKO MIRAI
現在では100を超えるコンピュータが搭載されているといわれる車は、まさに電子制御の塊です。エンジンコントロールを行うだけでなく、トランスミッションや斜線維持システムに至るさまざまなパーツで採用されています。またハイブリッド車や電気自動車は電子制御無くしては実現できないものです。昔とは違うコンピュータチューニングについてご紹介していきましょう。
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電子制御システムECUとは
エンジンの運転制御に電子制御を用いることを、「エンジンコンピュータ」といいます。エンジン制御装置の総称が『エレクトロニック コントロール ユニット』と名付けられているところから「ECU」という言葉が定着してきました。
しかし、海外では『エンジン コントロール モジュール』といわれており「ECM」が名称として広く用いられています。エンジンコントロールは点火装置から始まり、燃料系の制御も行うようになりました。
制御の対象
・点火機構…点火プラグに点火するタイミング
・燃料系統…インジェクタ燃料噴射量や噴射のタイミング、燃料タンクからデリバリパイプまで燃料を供給するフューエルポンプ駆動
・吸排気系統…ターボチャージャーやスーパーチャージャーなど過給器の過給圧、エンジン
コントロールのために、スロットルの開弁角を調整するスロットル開度センサ、排気効率を向上させる排気デバイスの駆動、排気ガスに含まれる酸素濃度によって出力電圧が変化するO2センサを使用して、空燃比の濃い(リッチ)、薄い(リーン)を検出するA/F制御
・動弁機構…吸排気を行うためにエンジンバルブの開閉時期を決めるバルブタイミング
・始動制御…セルモータ、イモビライザー
エンジン性能や運転性能を向上させてきたECUは、今では燃費性能や排気ガスのクリーン化にも使用されています。またオートマチック車ではトランスミッションを含むパワートレイン全体を制御しているほどです。
ECUの今、昔
1990年代のECUは8bit CPUで、データ量もそれほど多くなかったため、エンジンの出力特性は簡単に書き換えることができました。スピードリミッターのコントロールも、実際の速度よりも遅く走っているというごまかしができたものです。
またROMもCPUとは別置きで、点火時期、燃料マップの変更、最高速のリミッター解除などを、PC98で16進数データに変換し、ROMの該当アドレスのデータ変更はROMライターという書き換え装置を使用していました。
エアクリーナーやマフラー交換をしていると空気流量が上がります。そのため燃料を増量して空燃比を調整し、パワーアップを図るというものが一般的だったのです。このほかにも吸気温、水温センサをフィードバック制御で増量補正することもありました。
現在は32bit CPUが主流となり、スピードや回転数、トランスミッションなどの各部分をCAN通信で高速に制御を行うため、ちょっとしたデータ変更は困難です。書き換えなければならないデータは膨大な量になるでしょう。
そのためメーカーからのプログラム提供を受けられない限り、ROMチューンは簡単にできなくなりました。もちろん大幅にパワーを増加させることもできなくなっています。現在のROMチューンは、チューニングメーカーにとって難しいコンピュータとなっているのです。
ECUチューニングのメリット・デメリット
ECUのプログラムを書き換えることで、さまざまな性能をアップすることができるのです。これはチューニングというよりは、セッティングに近いといえるでしょう。ではなぜ、メーカーが最適と決定した数値から、ECUを書き換えたいと考えるのでしょうか。
そのメリットはパワーアップやフィーリングアップです。エンジンコントロールユニットに連動するさまざまなパーツの補正値を書き換えることで、大きな変化を感じることができます。
つまりエンジン性能を向上させ、出力をアップさせることが可能になるのです。データ上で大幅に数値が変化していなくても、ドライバーの思うとおりに反応してくれるということにもつながります。
トルクやパワーを感じられれば、乗りやすいと感じることもできるでしょう。そのためどのようなセッティングを行うかを事前に決めておくことが必要になります。
デメリットとしては、パワーアップの反面として燃費の悪化は避けられません。また費用も高額になる傾向です。基本的には自分で行うというよりも、ショップに依頼することが多くなります。
マップの書き換えで5万円前後、現車へのセッティングは、安くても5万円はかかりそうです。部品代はもちろん工賃もかかるため、約10万円の費用は必要となるでしょう。そのほかにECUの脱着費用なども必要になる場合もあるため、しっかりとした見積もりを取ることが重要です。
また一度で自分好みのセッティングに仕上がることはなかなか難しいため、何度もトライアンドエラーを繰り返せば、それなりの金額になってしまうこともあるでしょう。
ROM
純正ECUの中にあるCPUには、あらかじめ燃料噴射量や点火時期などを書き込んであるROMがあります。ROMのデータとなる燃料マップや点火マップなどを変更することをROMチューンといいます。
純正のECUに変更を加えるため、外観は純正と変わりません。最近多くなっているのはROMデータがCPUチップに内蔵されるタイプ。また応用性の高いROMを使用し、基板の追加や、CPU交換、フラッシュツールによる書き換えなどが一般的です。
既存のECUを用いて変更するので、セッティングがしやすいといえるでしょう。しかしチューニングできる範囲は純正ECUの範囲と限定されてしまうため、パワフルなチューニングは期待できません。
また基本的にROMチューンは年々難しくなってきているため、新しい車には搭載できない可能性があるでしょう。
フルコン
ECUを丸ごとエンジンマネージメントシステムといわれる、フルコンに交換する方法です。新たにECUを搭載するため純正ECUの影響を受けることなく、データの変更が簡単で思うようなチューニングを施すことができます。
最適なフルコンを選択すれば最新のエンジンから古い年式のものまで、ミスファイアリングシステムやシーケンシャルコントロールなど、どのようなエンジン制御も可能です。自分が車に期待する成果を得ることを可能にします。
空燃比センサを接続し自動調整を行うことができるクローズドループ制御や、データ集積を行うデータロガーを内蔵するフルコンもあります。ほかにはインジェクターの追加などエンジン性能を極限まで引き出すことを目的に作ることができます。
フルコンの性能や機能次第だけではなく、設置方法やセッティングするチューナーの能力によって大きく変わるものです。ショップの評判や実績なども十分注意する必要があります。
また専門的な知識を必要とするため、正確なセッティングをするには専門家に依頼するほうが良いといえるでしょう。安易に行えば、エンジンブローの可能性も十分にあることを忘れないようにしてください。
サブコン
純正ECUに追加する形で使用されるものです。ROMを変更することが難しい純正のECUにも、入力信号を元に出力を補強してチューニングを行います。純正の配線に割り込むことから、設置がしやすくコストもかからないため手軽に行えるチューニングです。
しかしECUの出力動作を受けてから補正を加えるものなので、点火の時期や出力タイミングを上げる操作を行うことは難しいでしょう。またエンジンの基本レイアウト以上の性能を発揮させることもできず、純正のECU制御と重複してしまうところが出てくるなど、思うようなチューニングは難しいといえるかもしれません。
まとめ
エンジンの制御をつかさどるECUは、車にとって非常に重要な部分です。エンジンコンピュータのデータ量は以前とは比べ物にならない量へと変わってきました。どこをどのように変えたいかは、人それぞれです。
つまり車の数だけチューニングの可能性も広がっているといえるのではないでしょうか。パワーだけを追求すれば、耐久性を失うことにもなりかねません。すべてのバランスを大切にしながら、車の性能アップを図っていきましょう。