コラム | 2020.07.21

かつてのスポーツモデルは、なぜボンネットに穴があったのか?今は少なくなった理由は?

Posted by 菅野 直人

スポーツモデルに限った話ではありませんが、ツルンとしていて何もない車もあれば、デザイン上さまざまな形状をしていたり、エンジンの都合で一部が膨らんでいたりと、車のフロントボンネットフードはさまざまです。その中でも「穴」が開いている車種もありますが、その理由と最近では減ってしまった理由を紹介します。

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ボンネットの「穴」の役割

開閉可能な自動車のフロントフード、ほとんどは、その下にエンジンが収まっているかに関わらず、「ボンネット」と呼ばれていますが、車種によっては穴が開けられています。

それも上向きだったり、ボンネットから少し飛び出して、あるいは飛び出さずに前や後ろを向いた開口部があり、スポーツモデルに多い印象ではありますが、実際には一般的な実用モデルでも必要に応じて開いています。

これは大きく分かれば2種類、「吸い込むか、吐き出すか」という役割を持っており、吸い込む場合は、ターボチャージャーやスーパーチャージャーのインタークーラー、あるいは市販車では通常ありませんが、走行時の風圧で吸気の過給効果を出すラムエアインテーク、そしてターボチャージャーなどの冷却用や、車内へ外気導入する吸気口が開いていることもあります。

そして吐き出す場合は、ほとんどがエンジンやタービンの排熱で、エンジンルームに熱がこもりやすい、あるいは発熱しすぎて穴が開いていなければ、オーバーヒートしやすい車において、排熱用の穴が上向き、または後ろ向きに設置されていますが、上向きの場合は雨漏りで電装系などを傷めないよう、水が流れ込みにくいフタをされていることも多くなっています。

おおむね、「外気を取り込むか、内部の熱気を放出する」のが「穴」の役割ですが、中にはコストダウンの関係(例:2代目ダイハツ・オプティビークスの自然吸気エンジン車)や、デザインの都合上残した(例:2代目NEWミニ)場合もあります。

また、ランサーエボリューションVII GT-Aは、基本的にランエボの個性とも言えるボンネットの穴が標準ではありませんが(オプションでエボVII同様のボンネットも選べる)、これはファミリーカー用途を想定して同居の家族や同乗者に不安を与えないためです。

上置きインタークーラー車で多かったボンネットのインテークダクト

かつては軽自動車やコンパクトカーでも、インタークーラーつきターボ車であれば多くの場合は、ボンネット上にエアインテークが開いており、スポーツモデルでなくとも、ターボ車であれば、実用モデルならターボ車から流用したエアインテークつきボンネットを装着していました(例:5代目スズキ・アルト エポターボなど)。

ただし、それらはエンジンの上にインタークーラーを配置した「上置きインタークーラー」の場合で、エンジンの前に配置した「前置きインタークーラー」の場合は当然ボンネット上になど開口部を設けず、フロントグリルやバンパーからの走行風で冷却します。

一見すると、前置きの方が合理的に思えますが、スポーツ走行時には前から走行風が常時入るとは限らず、特に横向きのドリフト走行で長距離を走るラリー競技では、思うような冷却効果を得ることができないほか、市販車でも重量物が前端部近くに置かれることによる旋回性能悪化や、衝突安全性能を考えるとエンジンルームが狭い実用車では採用しにくいなど、さまざまな問題があります。

上置き式は、エンジンの熱をモロに浴びる反面、開口部や吸気ダクトを工夫すれば、狭いエンジンルームでは面積の広いインタークーラーも容易に配置できるため、ボンネットへインテークダクトを設けるのが特にコンパクトカーや軽自動車では一般的で、前置き式はデメリットよりメリットを重んじた場合に多く採用され、そうした車では排熱用のエアアウトレットがボンネットに配置されています。

現在でも「穴」は残るものの、その数は激減

しかし、およそ2000年頃からデビューした車から、次第にボンネットの「穴」は減っていきます。

その理由としては、いくつか挙げられますが、まずはそれ以前から問題となっていた、歩行者との衝突時に頭部がボンネットに叩きつけられ、そのすぐ下のエンジンやインタークーラーなど補機類など硬い部分への衝撃により、歩行者のケガが致命的なものになる、という問題がありました。

その対策として、新規生産車は平成17年(2005年)9月から、継続生産車も平成22年(2010年)9月から「歩行者頭部保護基準」に従った対策を求められるようになり、それまで補強材つきの板(ボンネット)を1枚挟んですぐ下にはエンジンやインタークーラーという構造が許されなくなり、衝突時に歩行者の頭部を受け止めるポップアップ式やエアバッグ式のボンネット装着車も含め、以前のように「低いボンネット」が許されなくなりました。

そのため、ボンネットとエンジンの間には歩行者の頭部が多少めり込んでもその下の硬い機械には当たらないよう、広い隙間が設けられ、自動車のデザインに多きな影響を与えました(「昔みたいにボンネットが低くてカッコイイ車をつくらないのはなぜだ!」という疑問の回答は、この理由によるものが多いです。特にフロントエンジン車。)

その影響で、フロントマスクが上下に大型化することとなり、拡大した開口部から取り込んだ空気を、上置きインタークーラーへ通せる長いダクトの設置が可能になりました。

さらには、1990年代までのようにスポーツモデルがもてはやされることがなくなり、むしろ「時代遅れのスポコン車」扱いを受けるようになり、ことさらターボ車であることを強調しているように見られかねないボンネットインテークは敬遠されがちになりました。

加えてデザインに合わない、自然吸気車と同じボンネットの方がコストダウンできる、近所から「あの家は穴の開いた変な車(車に興味がない人の意見は、そのようなものです)に乗っている。」などと妙な評判が立ったりと時代の変化もありました。

もちろん、構造を工夫すれば、衝突時の歩行者頭部保護とインテーク/アウトレットの両立は不可能ではありませんでしたが、よほどスポーツ性を売りにした車でもなければ、商品価値が上がるわけでもないどころか、かえって下がることすらある穴開きボンネットは急激に廃れていき、2020年現在では、ほとんどなくなってしまいました。

冷却風はフロントグリルやフロントバンパーから入れるとして、排熱はどうするのかという意見もあるかと思いますが、プロペラシャフトを通すセンタートンネルや、ディフューザーを使い、ボディ底面から後ろへ流す方法もありますし、フロントフェンダー後方の穴から排出する方法もあるため、実際はそう困らない場合が多いです。

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どうしてもの場合は後付けパーツもあり

それでも、昔の車のように迫力あるエアインテークやエアアウトレットを装着したい!という場合は、主にFRP製などで後付けパーツが販売されていますし、純正品でもインテークやアウトレットはボルト締めなどで別体というボンネットもあるため、必要があればボンネットを加工して装着することは可能です。

むしろ、そうした後付けパーツの方が「その下のエンジンルームで何かやってるな?」というアピールで一目置かれる場合もありますし、半ばドレスアップ目的で装着してみるのもよいでしょう。

なお、その場合は純正品と違って雨漏りなどで電装品へ与える影響も考慮し、注意深く位置決めしていくのが肝心です。

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