旧車・絶版車購入ガイド | 2021.05.11
バブル時代に一世を風靡!高級ビッグサルーン日産「セドリック」
Posted by 菅野 直人
「シーマ」や「セルシオ」といった新世代の高級車が登場するまで大型高級セダンの代名詞と言えば、トヨタ「クラウン」、日産「グロリア」「セドリック」でした。 その中でも兄弟車のグロリアともどもスポーティ路線を打ち出し、VIPカーなどカスタムカーのベース車としても人気があったセドリックの2020年3月現在における中古車市場の状況はどうでしょうか。
以下の文中の買取査定額は、投稿日時点での目安になります。実際の査定額については相場状況や車両の状態によって大きく変動しますので、あくまで参考金額としてご覧ください
SUMMARY
日産「セドリック」とは
戦後の国産車に大型高級セダンが登場し始めていた1950年代、ライバルのトヨタが「クラウン」を、プリンスが「プリンスセダン」や「スカイライン」、「グロリア」を発売していたのに対し少々出遅れていた日産ですが、1960年になってついに最初の大型高級セダン「セドリック」を発売しました。
当初から豪華装備路線で、2.8リッターガソリンエンジンや2.0リッターディーゼルエンジン、3速ATを追加するなど先進性のあったセドリックですが、日産がプリンスを合併して以降に開発された「230型セドリック」からは、グロリアを兄弟車として日産系販売店ではセドリックを、旧プリンス系販売店ではグロリアを販売する体制に移行しました。
その後もクラウンをライバルとして同クラストップの座を奪うべく改良しながら代を重ね、1979年には国産乗用車初のターボエンジンを搭載、1987年に発売されたY31型セドリック以降はスポーツグレードの「グランツーリスモ」を設定するなど、スポーティ性ではライバルを凌ぐ評価を受けていました。
1990年代半ば以降はステーションワゴンやミニバン、SUVなどRVブームに押されたセダンの販売不振、日産自体の経営不振もあって販売面でライバルに及ばなくなっていきますが、最後のセドリックとなったY34型セドリック(1999年発売)ではグランツーリスモ系のグロリアに対し、それまで「ブロアム」というグレード名で販売されていたラグジュアリー系をセドリックに集約、兄弟車でありながらキャラクターを明確化して、2004年の販売終了を迎えました。
もともと大型セダンによる「ストックカーレース」での活躍や、中古車価格がこなれていたこともありVIPカーなどカスタムカーのベース車として人気があり、モデル廃止後も中古車市場では盛んに取引されていた車ですが、それだけに販売終了から15年以上が経過した2020年3月現在ともなると、状態のよいノーマル車は中古車市場でだいぶ少なくなっています。
旧来の日産ファンにとってはかつての憧れ、セドリックの程度良好車を普通に中古車で買えるのは、今が最後の時期かもしれません。
日産「セドリック」の中古車相場
大手中古車検索サイトによると2020年3月現在、セドリックの中古車相場は以下の通りです(※4ドアセダン/ハードトップのみ)。
【初代30型(1960-1965)】
ASK(価格応談):1台
【2代目130型(1965-1971)】
77万円~159.9万円:3台・ASK:2台
【3代目230型(1971-1975)】
35万円~275万円:7台・ASK:2台
【4代目330型(1975-1979)】
98万円~258万円:6台・ASK:2台
【5代目430型(1979-1983)】
50万円~299.8万円:12台・ASK:2台
【6代目Y30型(1983-1987)】※バン/ワゴンは1999年まで継続販売
59.8万円~148万円:13台
【7代目Y31型(1987-1991)】※セダンは2002年まで、タクシー/ハイヤー用途では2014年まで販売継続
(グランツーリスモ)59.8万円~229万円:2台
(ブロアムその他)19.9万円~203万円:45台・ASK:1台
【8代目Y32型(1991-1995)】※この代より3ナンバーボディ4ドアハードトップのみ
(グランツーリスモ)37万円~100万円・4台
(ブロアム/クラシック)15万円~58万円・4台
【9代目Y33型(1995-1999)】
(グランツーリスモ)18万円~99.9万円:18台
(ブロアム)9.8万円~69.9万円:13台
【10代目Y34型(1999-2004)】※この代はブロアム系のみ
5.8万円~64.5万円:40台・ASK:1台
全体の傾向としては、430型セドリック以前はヒストリックカー的なプレミア価格が見られる一方で安価な車もあり、Y30型~Y31型セドリックは「ちょっと古い1980年代の高級セダン」としてソコソコのタマ数と程度によっては高価です。
Y32型~Y33型セドリックは特に丸目4灯ヘッドライトでブロアム系と明確に区別されていたグランツーリスモ系グレードの人気が高く、維持が難しくなっている古いVG型エンジン搭載のY32型セドリックは品薄状態で、Y34型セドリックはグランツーリスモ系のグロリアとは異なり、ソコソコのタマ数があり、かつ中古車価格もあまり高価ではないようです。
少々特殊なのがY31型セドリックで、主流の4ドアハードトップこそ4年でモデルチェンジしたものの、4ドアセダンは一般向けが2002年まで、タクシーやハイヤーなど営業用途向けでは2014年までと27年もの長きにわたって生産されており、おそらくハイヤー上がりなのか2005年式など、型が古いにも関わらず新しい車も販売されていて、「形が古いのに新しい」という、ヒストリックカーファンにとって手頃な車となっています。
グランツーリスモはグロリアに任せ、セドリックならY31型で「新しい旧車」狙い?
同じような年式でも430型セドリック以前の旧車ならグロリアより中古車価格が高めですが、Y30型セドリック以降は人気が逆転し、最終型のY34型セドリックに至ってはグランツーリスモ系がグロリア一択となったため、ブロアム系を引き継いだセドリックはプレミア価格がつくこともなく安価に購入できます。
単に日産ファンで、かつての憧れ「セド/グロ」をなるべく新しく安価に購入したいというならY33型セドリックやY34型セドリックが非常にお手頃です。エンジンは現在も改良が続けられて搭載が続いているVQ型で、Y34型セドリックには無段変速機「エクストロイドCVT」も搭載されています。
「ちょっと古いセダンをオシャレに乗りたい」というなら、2014年まで継続生産されていたY31型セドリックセダンのハイヤー/タクシー上がりが狙い目です。他にも営業用途上がりで長く生産されていた車はありますが、1980年代半ばのデザインで2014年までと、わずか6年前まで生産されていた乗用車はセドリックセダンくらいなもので、もちろん途中で改良が加えられ、営業用途なことから2007年以降はLPG車のみなため単純に新しくて所有が楽とまでは言いませんが、旧車ファンにとって着目すべき選択肢ではあります。
少なくとも外装部品に共通点が多いという意味では、Y31型セドリックセダンそのものの方がY32型セドリックやY33型セドリックより維持しやすいかもしれません。
日産「セドリック」の中古車選びの注意点
古くとも近年まで生産されていた事から内外装の新品部品が出やすそうなY31型セドリックセダンを別とすれば、いずれも生産・販売終了から15年以上が経過しているために、古い車ほど欠損・破損している部品を中古も含めた純正部品で交換するのが困難になってきていますから、最初からVIPカーの完成車狙いでもない限りはフルノーマルで内外観の欠損や傷がなく、日常的な使用に支障のない範囲で各部の動作を確認しておくべきです。
そのためには現車確認が不可欠で、本当にセドリックが欲しいという場合は自ら伺える範囲にある店から選ぶべきであり、遠方の店からの写真確認のみで選ぶのは避けた方がよいでしょう。
特にY31型セドリックセダンを除くY32型セドリック以前は足回りなど走行に難があるほどの故障が起きた際に純正部品の供給も難しくなっていますから、購入時の現状がどの程度なものか、実際に見てみると雨漏りやサビ、ボディパネルのすき間が目立たないかを、自分の目で確認するのが鉄則です。
日産「セドリック」の中古車維持費目安
Y31型セドリックセダンの内外装を除けば、最終のY34型セドリックまで含め生産終了から15年以上が経過していますから、各部の消耗は年式なりに覚悟しておかねばならず、比較的新しいY34型セドリックでもそろそろ各種センサー類やポンプ類の劣化などが目立ち始める年式です。
国産車の品質が現在のような高レベルへ到達する1990年代以前のセドリックへ乗る場合は特に、予想外の故障に備えたセカンドカーなどつなぎの車の予算も含め、ある程度の保守予算を考慮しておくべきと考えましょう。そうした意味でも、耐久性を求められる営業用途に継続生産されたY31型セドリックセダンの方が、維持は楽かもしれません。
それを踏まえた上で、2014年まで継続生産されていたY31型セドリックセダンLPGエンジン搭載車を除く全てが新規登録から13年以上が経過し自動車税も重加算税対象となるため(Y31型セドリックセダンもガソリンエンジン搭載車は2007年が最終)、Y33型セドリックまで存在した2.0リッター車なら総排気量1.5リッター超2.0リッター以下で45,400円となります。2.5リッター車なら総排気量2.0リッター超2.5リッター以下で51,700円、3.0リッター車なら総排気量2.5リッター超3.0リッター以下で66,700円となります。
いわゆるエコカー普及前の車であり、排気量やターボチャージャーの有無、FR車か4WDにもよるものの、期待できる実燃費は平均して7km/L程度なようで、2020年3月現在のハイオクガソリン平均価格が約154円程度、仮に月1,000km走るなら月22,000円程度のガソリン代がかかり、年間のガソリン代約26.5万円に自動車税を合わせると、約31~33万円程度がセドリックにおける最低年間維持費の目安です。
もちろんY31型セドリックセダンのLPGエンジン搭載車なら新しくて税金は安く、燃料もガソリンではないため維持費はだいぶ変わってきます。その他ユーザーの環境次第で変わってくる購入後の駐車場代やタイヤ代、車検代や整備代、任意保険代などは各自計算してみてください。