コラム | 2021.10.30
GTカーの定義は曖昧⁈スポーツカーとも違うホントのところとは?
Posted by KAKO MIRAI
さまざまな車が持つGTというグレード。最上級に位置するハイパフォーマンスモデルとして君臨しています。ともするとスポーツカーと思われている現代のGTカーですが、本来の意味は少し異なっていることをご存じでしょうか。本当の意味が分かると、ちょっと豪華で幸せな時間を過ごせる車探しができるかもしれません。
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GTカーとは
GTカーの歴史を辿ると、英国貴族がドーバ海峡を渡り、広々としたヨーロッパ大陸をグランドツーリングするために生まれたといわれています。グランドツーリング、それは「大旅行で長距離を快適に走ることができる車」という意味で使用されてきた言葉でした。
英語ではグランドツーリング、イタリア語ならグランツーリスモの頭文字をとったカテゴリーになります。日本人にはグランツーリスモという言葉の方が馴染み深いかもしれません。
はじめてGTというモデルが誕生したのは1929年のこと。アルファロメオ 6C 1750 GTが最初のモデルといわれています。その後しばらくの間はGTの名前が使用されたモデルは出ていませんでした。
1950年代に入り、GTカーがどのような車を指しているのかが、少しずつ明確化されていきますが、「このような車を指す」というものではなく、ぼんやりとしたイメージでしかありません。
しかし海外では、着実に長時間ドライブを適える高いパフォーマンスを持ち、またゴージャスなラグジュアリー性を持った車という位置づけを獲得していきます。もちろん旅行には欠かせない、広いラゲッジスペースが確保されていることも重要なポイントの一つでした。
ではなぜ、日本で捉えられているハイスペックなスポーツカーというイメージに変化していったのでしょうか。
日本のGTカー
日本で初めてGTと名付けられたモデルは、いすゞ自動車のベレットGTです。1963年から1973年まで製造されていた日本を代表する名車です。1tを切るライトウェイトスポーツカーとして、モータースポーツで活躍。
1964年には、日産 スカイラインが『日本グランプリGTクラス』出場のため、ファミリーセダンから6気筒を搭載したスカイラインGTを製作しました。レース出場に必要な認定を受けるためには、ベース車両が一般に販売した実績を必要とする「ホモロゲーション」ように100台を生産しています。
なお、現在のホモロゲーションは、連続した12ヶ月間に2,500台以上、車種全体で25,000台以上の生産台数が必要となっています。1960年代の規定とは異なっているので、注意が必要です。
1967年にはトヨタ 2000GTが登場。国際的に通用するスポーツカーを目指し開発されました。DOHCエンジン搭載の「国産車初となるスーパーカー」と呼ばれることもある、名車です。
このように1960年代後半にかけて、日本ではスポーツカーのハイパフォーマンスモデルに与えられる称号として、GTが使用されてきた経緯があります。そこには、レースで参戦を果たすモデルとしての意味合いも強かったといえるでしょう。
モータースポーツにおいてのGT
モータースポーツの世界で使用されるGTという言葉は、グランドツーリングという意味ではありません。『国際自動車連盟(FIA)』 、『日本自動車連盟(JAF)』 によると、以下のように定義されています。
2ドア、2座席あるいは2+2座席を有するオープンまたはクローズドスポーツ仕様の完全に公道使用に豪放な車両で耐久コミッティの承認された創造者の販売網にて販売することができる車両である。
2015年「ル・マン」グランドツーリング耐久グランドツーリングカー技術規則
日本でも人気の『SUPER GT』では車の形状よりも、改造の規模やレース級の戦闘力を持っているかどうかが基準の判断となっているようです。
歴史を紐解くと、レースに参戦したハイペックのレーシングモデルがGTカーであるという認識になっていった経緯があるといえるのではないでしょうか。日本のように国土が狭いと、長時間のドライブでも快適に過ごせると車というイメージは定着しにくいといえるでしょう。
スポーツカーとの違いってなに?
運転を楽しむということは全ての車に共通していることですが、スポーツモデルは「スポーツドライビングを楽しむ」ことに重点を置き、設計・開発がされた車といえるかもしれません。またユーザー側も運転操作を楽しむことを最大の目標に置いています。
そのためラゲッジスペースの広さなどは二の次で、それよりもハイスペックでパワー重視の走行性能が優れている方が良いと捉えている車がスポーツカーということができます。ボディ形状は特に定まってはいませんが、伝統的にみると2ドア、2シーターの車を指している場合が多くなっているようです。
常々「スポーツカーの定義」というものが車好きの間で話題になるものですが、基本的には個人的な好みの問題であるとされます。だからこそ永遠のテーマとされているのかもしれません。
近年では、排ガス規制や電動化に傾く自動車業界の現状から、2ドア、2シーターの車
のみならず、スポーツカーの定義も広がりつつあるようです。ミニバンやクロスオーバーSUVなどの車種であっても、専用のチューニングが施されていればスポーツカーとして考えられるケースもあります。
これは世代によっても大きく見方が変わってくるもので、スーパーカー世代にとっては、大きく意見の分かれるところかもしれません。スポーツカーにおいても拡大解釈され、曖昧になっている定義は、主観によって大きく異なることが分かってきます。
だからこそGTカーの定義も、人それぞれ。自分にとっての持論を持っていてもいいといえるのではないでしょうか。
ではここからGTを代表する海外モデルと、日本のGTカーをご紹介していきます。日本の歴史に見てきたGTグレードとは少し異なる車を選択してみました。筆者独自の持論ですので、ご了承ください。
GTを代表する車
国産車編
レクサス LC
これまでの国産車にはなかったレクサスフラッグシップモデルのLCは、超高級クーペといえるでしょう。2017年に誕生したLCの車名には「Luxury Coupe(ラグジュアリークーペ)」と「Lexus Challenge」という両方の意味が込められています。
全長約4800mm、全幅1,900mmのサイズ感は、国産車とは思えない迫力あるサイズ感です。5LのV型8気筒エンジンに10速ATの「LC500」は、豪快で超高性能な走行性能を持ち、輸入車にも一歩も引けを取らない仕上がりになっています。
また3.5LのV型6気筒エンジンにモーターをプラスした「LC500h」も展開。両者共に後輪駆動のFRが採用されました。エクステリアを見るとスピンドルグリルを採用したレクサスならではのフェイスが特徴的です。
ワイド&ローにまとめられたデザインがシャープさを強調。インテリアには左右独立のシートが収められ、上質なピット感を演出されています。何よりもスポーツカーでありながら、ゆったりとくつろぐことのできる室内空間が魅力的なモデルといえるのではないでしょうか。
トヨタ ソアラ
初代が販売されたのは、1981年から遡ること5年。1976年から開発が進められた経緯にはこんな事情があったようです。当時の日本車は海外で高い評価を受けていましたが、それは小型車に限ったことでした。
アメリカをはじめヨーロッパ市場では日本車は地元企業保護のために輸出台数の制限が敷かれていた時代です。そのような中で、トヨタ社内から「2000GTの匹敵するような新たなイメージリーダーとなる車が欲しい」という声が上がり始めます。
そこで世界レベルに通用する高級車としてメルセデス・ベンツ SLクラスや、BMW 6シリーズをターゲットとした高級GTカーを製作することになっていきました。全グレードを6気筒とし、2.8LのDOHCが搭載されています。
ブランドイメージの向上が図られ、トヨタの最先端技術が多く採用されたモデルとしても特徴的です。初代から3代目までは2ドアのパーソナルラグジュアリーカーとして人気の高いモデルとなりました。
ロングノーズのローフォルムで、ボディラインが美しいデザイン性がひときわ目を惹くものです。4代目からはクーペボディを変更。電動格納式のハードトップを持つクーペコンパーチブルへと変化していきます。その後はレクサスブランドの一員となり、SCとして販売されることになったモデルです。
現行車のレクサスLCと、現在では販売されていないトヨタ ソアラをご紹介してみました。両車共に走行性能重視のスポーツカーとは一線を画すGTカーとしての魅力にあふれているといえるのではないでしょうか。
輸入車偏
メルセデス・ベンツ AMG GT R
AMG GT Rは2013年に生産が終了となったSLS AMGの後継車に当たります。このモデルからAMGはメルセデス・ベンツのサブブランド「メルセデスAMG」となりました。そのためリアのエンブレムの位置が右から左に変更されています。
典型的なロングノーズ・ショートデッキのスタイルを持ちながら、ラゲッジスペースは350L備えたまさにGTカーといえるでしょう。走行性能は『ニュルブルクリンク』で鍛えられ、可能な限り速く走らせるために一切の妥協を許さない作り手の意志が伝わってきます。
V8エンジンのツインターボを搭載し、最高出力は510psを発揮。メルセデス・ベンツのフラッグシップモデルとして、走行性能を磨き上げた一台といえるでしょう。超ハイパフォーマンスでありながら、コントロール性能が良くタイトなコーナーでも安定感のある走りを体感できます。
サーキットで活躍する過激なスポーツモデルのようで、実は柔軟でしなやかな走行性能を持つAMG GT Rは、GTカーとしても使用することのできるパフォーマンスがあるといえるでしょう。
ベントレー コンチネンタル GT
コンチネンタルRの後継者として2003年に初代が誕生。現行車は2017年に発売された3代目となっています。6Lの12気筒エンジンをツインターボで過給し、最高出力は550psを発揮。
本物のラグジュアリーを体現するGTモデルは、GTカーとして一つの理想形といえるかもしれません。「ベントレーダイナミクス」の搭載によってクラストップの走行性能はもちろんのこと、ドライブモードの切り替えで洗練された快適な走りを堪能することができます。
通常の速度域では感じることのできない豊かなトルクは、いつまでも運転したくなる心地よさを与えてくれるようです。ワインディングでは、スポーツモードへの切り替えで俊敏なハンドリングをみせ、軽快な走行性能に驚かされるかもしれません。
パフォーマンスの質を換えることなく8気筒内で4気筒を休止するシステムを採用。わずか20ミリ秒のシームレスな変換で行われ、燃費性能にも貢献しました。インテリアには最高品質のレザーや環境に配慮して採取された天然素材が、落ち着いた印象を与えています。
輸入車を代表するGTカーはハイブランドが並ぶ結果となりました。各メーカーよって快適性の解釈やスポーツ性能とのバランスは異なっているようにみえます。そこにはその車を選択する乗り手の意志が感じられるといえるかもしれません。
まとめ
GTカーの定義は定められたものではありません。個人的に判断される要素がとても大きいものといえるでしょう。日本では、歴史的背景からGTカーはスポーツ性能を重視してきた経緯がありますが、自動車メーカーが提示しているGTカーは、快適性や走行性能のバランスが良い車であるともいえるのではないでしょうか。
輸入車ではハイスペックな超高級車が多く、なかなか手が出る車とは言い難いですが、自分にとってのGTカーは自分で決めても良いのかもしれません。パフォーマンスとライフスタイルのバランス、またそこに何を加えるかは自分次第。想像するだけで楽しくなってくること、それが車の醍醐味といえそうです。