コラム | 2021.05.11
NAでリッターあたり100馬力超!ホンダVTEC搭載の名車4選
Posted by KAKO MIRAI
スポーツカーなら当たり前。今や軽自動車からハイブリッドまでホンダのエンジンに搭載されている「VTEC」は可能性が無限に広がっているようです。1989年に誕生して以来クルマの進化は、エンジンにとってもさまざまな「可変」を必要としました。走行条件に合わせてベストな性能を発揮することは、どんな状況下でも高効率であることです。NAで100PSを実現したホンダの挑戦。それをカタチにしてきた数々の名車をご紹介していきましょう。
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名機VTECエンジンの魅力
「VTEC」が名機のひとつといえるのは、低速トルクと高速のパワーを両立していることにほかなりません。これを実現させているのは、可変バルブタイミング・リフト機構ですが、歴史をさかのぼるとゼネラルモーターズ(GM)が実験をしていました。実用化には至らず、日本で最初に採用したのは日産の「VTC」です。
エンジンは、「吸気」「圧縮」「燃焼」「排気」の4つの工程を繰り返して動力を生み出す、4サイクルエンジンいわゆる「レシプロエンジン」が主流です。吸排気を行うときにバルブを開閉して行いますが、バルブの開く量は一定でした。
「VCT」は、バルブを開くタイミングが早くなることで高回転域に適したバルブタイミングになり、反対に遅くすると、低回転域で安定したバルブタイミングとなります。バルブタイミングを変化させることには成功していますが、バルブリフト量を変化させることができていないため、最大出力への効果としては小さいといわれていました。
ホンダが着目したのはエンジンのジレンマを解消すること。つまり、日常の使い勝手とスポーツ性の両立でした。バルブタイミングの変化に加えてバルブリフト量も変化させることができる機構、それが「VTEC」です。
メカニズムとしては、バルブを押し上げるカムとロッカーアームを1種類から2種類に変更し、低速用カムと高速用カムを設置し回転数に応じてカムを切り替えています。切り替えを行うのは、ロッカーアームの中に内蔵されたピンを油圧で動かすというもの。
低速時にはピンが動かず、バルブの開きが少なくなりますが、高回転時には油圧でピンが動きロッカーアームが大きく動くことになりバルブの開きも大きくなります。バルブの開き方を可変させ、パワーと扱いやすさを見事に両立させました。
ホンダはハイパフォーマンスな技術の達成によって、低いボンネットフードの斬新なデザインやパワー、レスポンスで新たな躍進を遂げました。ここに唯一無二のエンジンが出来上がったということになります。ではここからは、歴史に残る「VTEC」の名車たちをご紹介していきましょう。
インテグラ タイプR
ホンダから初めて「タイプR」が登場したのは「NSX」 です。スーパーカーであるNSXは、誰もが手にすることができるクルマではありませんでした。しかし1995年に「インテグラ」のタイプRが登場したことで、当時の話題性は非常に高いものとなります。
1.8L直4 DOHC VTECのB18Cをチューニングした「B18C 96spec.R」。エンジン屋ホンダのレース用エンジン開発の技術が、遺憾なく発揮されました。ポート研磨は職人が手作業で行う徹底ぶりで、回転フィールもレーシングエンジンの耐久性を高めたハイグレードな仕上がりを見せています。
赤い結晶塗装のフードカバーは通称「赤ヘッド」。タイプRの証とし差別化され、人々を惹きつけてやみません。さらにはトランスミッションのクロスレシオ化に至るまで、上位クラスに劣らぬ最速FFスポーツカーとして、多くの人を魅了しました。
ホンダが得意とするFFレイアウトで、エンジンはパワーあふれるVTEC。さらにNSXのスポーツマインドであるタイプRまで投入して作られた、まさに名車といえるのではないでしょうか。
S2000
1999年に発売された「S2000」は、まさに贅を尽くした専用設計でホンダのこだわりがカタチになった一台です。FFを得意とするホンダが「S800」から29年の時を経て復活させたFRは当時、話題を集めました。
とにかく驚かされたのは、ほとんどの部品をS2000のためだけに設計した専用パーツであったことです。バルブやバルブスプリングの素材はF1と同等のものを使用し、オイルパンはアルミ製と細部にまでこだわりが見え隠れしています。
エンジンは、フロントミッドシップを実現させた「F20C」。VTECへの切り替えに使用されてきた連結ピンを内蔵し、一体型となったロッカーアームを新開発。2.0L直4DOHCエンジンの最高出力は、8,300回転で250馬力をたたき出し、レッドゾーンは9,000回転という超高回転ユニットです。
かつて「全日本ツーリングカーレース(JTCC)」で活躍したアコードのレース用エンジンをデチューンしたようなF20C。VTEC採用の高回転エンジンの中で、最も優れたものとなりました。
ミッションは6速MTのみの設定。もちろんS2000のために新設計された自社製ミッションを採用。現在ではATの設定がないなんて信じられない時代ですが、走ることに特化した潔ささえ感じられるのではないでしょうか。
オープンスポーツカーの泣き所となる剛性も、「ハイXボーンフレーム構造」を開発し、衝突安全性を確保することに成功。フロントミッドシップレイアウトにこだわり、車体前後重量配分は50:50を実現しています。これによってクイックなコーナリングを体感することが可能になりました。
高い性能を発揮する反面、挙動と操縦性はピーキーな面もありましたが、「乗り手を選ぶ」クルマを乗りこなしたいと思った人も多かったのではないでしょうか。S2000の希少的価値は、確かに名車の一台といえるでしょう。
シビック タイプR (EK9)
1972年に誕生した「シビック」は現行で10代目となる息の長い車です。その中で1997年、6代目のシビックに追加されたのがファインチューニングモデルとなる「EK9のタイプR」でした。
タイプRは「レーシングカーのテイストとドライビングの楽しさ」を追求するモデル。シビックに求めたものは、ロングホイールベースでショートボディだからこそのダイナミックな走りと高い操縦性能です。
1.6LのVTECを搭載した「B16B型」エンジンは、タイプRのNSXやインテグラと同様に職人によるポート研磨が行われるこだわりの逸品。そこから繰り出される最高出力は8,200回転で185馬力という世界最高峰のパワーです。
また回転数の限界を8,200から8,400へと高めてトルクを厚くすることで、アクセル操作による伸びを体感することができました。トルク向上のための吸排気系を強化、熱効率を高める圧縮比アップ、フリクション軽減、軽量化のほか、ヒール&トゥの操作性向上のためペダルレイアウトにまでこだわり抜いた設計です。
コクピットは赤を基調とし、タイプRを意識せずにはいられません。「レカロ製バケットシート」、「小径MOMO社製ステアリング」を純正装備、ショートレンジのシフトノブはチタンの削り出し、などテンションが上がってしまう室内です。
現行モデルとして進化を遂げているシビック タイプRですが、EK9はレースでも大活躍したホンダイムズが脈々と流れるマニアックな一台といえるでしょう。
NSX 初代NA1/2型
NSXが発売されたのは1990年にさかのぼります。日本を代表するスポーツカーの代名詞でした。
開発コンセプト
・世界第1級の運動性能
・スーパースポーツとしてのコンフォート
・耐久性
・トラクションコントロールなどの先進機能と衝突安全
・リサイクル性
・量産世界初のオールアルミボディ
ピュアスポーツに偏ると運動性能に特化するものの、運転のしやすさや走行環境への適合性は妥協しなければなりません。
量産スポーツカーは、快適性と信頼性を重視するため、運動性能を妥協することになります。ピュアスポーツと量産スポーツカーの両方を兼ね備えたクルマがNSXです。妥協を捨て世界第1級のパフォーマンス、ハンドリング、ブレーキ性能、空力性能、視界、快適性、信頼性、安全性に至るまですべてを手に入れたといっても過言ではありません。
本来スポーツカーはピーキーで乗り手を選ぶものという価値観が強い中で、誰もが運転できるというホンダのコンセプトは軟弱なスポーツカーというイメージを植え付けることになります。
しかし中身はカリカリのモンスターマシーン。フェラーリ328を超える走行性能を目指して開発されたといいます。エンジンは3L V6 DOHC VTECの「C30A」。最高出力は280馬力で国内自主規制を達成しています。車高が低く、存在感が強い車だということは言うまでもありません。
1992年に登場したのがタイプRです。オールアルミモノコックボディーで1,350㎏と軽量だったボディを、さらに120㎏軽量し遮音材や下回りの緩衝材も取り去るほどの徹底ぶりでした。またサスペンションのスプリングレートは、レーシングカーとほぼ同等なくらいにガチガチで、サーキット走行のパフォーマンス性が強化されています。
タイプRの歴史がここから始まったのです。ニュルブルクリンクで8分を切るという目標を持ち、スポーツモデルの最上位グレードであるという誇りもありました。残念ながらニュルで8分を切るという目標を達成することはできませんでしたが、その夢は2代目で叶えています。
ミッドシップの特性であるトラクションの良さが一段と際立つ一方で、フロントとリアのタイヤサイズが異なるため、先にリアが温まり後からフロントが温まります。そのため乗りこなすことが難しいといわれていました。
2005年に生産を終了したNSXが2016年に復活し、現行車として存在していることはとても大きな意味があります。購入できるかできないかではなく、ホンダのフラッグシップスポーツカーとしていつまでも夢を与える存在であってほしいものです。
まとめ
吸排気バルブのタイミングとリフトを同時に変えることができる、世界初の動弁機構であるVTECは、注目を集めてきました。最高出力の向上だけでなく始動性、低燃費化などさまざまな特性を向上させています。
VTECエンジンが搭載されたインテグラ、S2000、シビック、NSX。どの車種においてもVTEC独特のハイカムに切り替わった時のエンジンサウンドに魅了され続けてきました。20年の時を経ても、いまだ変わらず人気の高い車種であることが、その理由を裏付けています。VTECが今なお進化を続けていることが本当の名機であるということを証明しているといえるのではないでしょうか。