旧車・絶版車購入ガイド | 2021.05.11
5ナンバーサイズの正統派FRスポーツセダンは日産「スカイライン」R32以外無し!
Posted by 菅野 直人
1989年、先代同様に「ハイソカー路線」を歩み続けるかに見えた日産「スカイライン」の印象を一変させた8代目スカイライン(R32)。最後の5ナンバーサイズの正統派FRスポーツセダン/クーペとして長く愛されることとなりました。デビューから30年がたった現在、R32は中古車市場でどのような状況にあり、購入するとしたらどのあたりがポイントなのでしょうか?
以下の文中の買取査定額は、投稿日時点での目安になります。実際の査定額については相場状況や車両の状態によって大きく変動しますので、あくまで参考金額としてご覧ください
SUMMARY
日産「R32スカイライン」とは
1960年代半ばから1970年代はじめまではレースで大活躍して名を売り、その後4代目(C110)では歴代最高の販売台数を記録したものの、厳しい排ガス規制と省燃費志向の中で「名ばかりのGT」と言われたことすらあったのが、日産「スカイライン」です。
1980年にデビューした6代目(R30)からはデザインが一新、続く7代目(R31)までライバルのトヨタ「マークII」3兄弟同様にハイソカー路線を歩むかに思われましたが、その裏で行われていた日産の「1990年代までに技術世界一を達成する」を目標とした901運動で蓄積した技術力を使い、デザインや品質、走行性能の面でライバルをはるかにしのぐ8代目(R32)が1989年5月に発売されました。
シャープでスタイリッシュ、無駄な重量を感じさせず俊敏な走行性能を予感させるデザインに4輪マルチリンクサスペンションから織りなす軽快な運動性能、2.0リッター直列6気筒DOHCターボエンジン「RB20DET」を中心としたエンジンラインナップは十分な動力性能を与え、日産ファンのみならずクルマ好きはR32を大絶賛したものです。
唯一難があったのはあまりのスポーツ志向で居住性が十分ではなかったことです。
初期のミニバンやSUV、ステーションワゴンなどRV(レクリエーショナル・ビークル)の台頭もあってセダンの販売台数は落ち込み、ハイソカー路線と決別したのもアダとなって販売面ではR31を下回る結果となってしまいました。
しかし、こと走りの面で優秀だったのは間違いなく、その後の9代目(R33)や10代目(R34)がさらなる販売不振に苦しみ、11代目以降のスカイラインでは日産のプレミアムブランド「インフィニティ」の国内向けモデルへとコンセプトが変わったこともあり、人によっては最後の名作、最後の5ナンバーFRスポーツセダン/クーペとして評価されているのも事実です。
特に正規販売されていなかった北米では、映画の影響などもあって人気が高く、生産から25年経てば北米での登録が自由になる「北米25年ルール」解禁以降はGT-RのみならずR32であれば右から左へ売れて北米へ大量流出し、一時は中古車市場で極端にタマ不足となり、中古車価格がつり上がったこともありました。
2019年12月現在、その人気や中古車価格は落ち着きを取り戻しつつありますが、程度のよいR32は今でもやや高値で取引されているのが現状です。
R32スカイラインの中古車相場
大手中古車検索サイトによると2019年12月現在、GT-Rを除くR32の中古車相場は以下の通りです。
ECR32GTS25系・販売期間1991年8月~1993年8月
セダンMT車 | 99万円~159.9万円:2台 (新車価格:235.6万円~238.1万円) |
セダンAT車 | 22万円:1台 (新車価格:237.5万円~251.8万円) |
クーペMT車 | なし (新車価格:244.3万円~246.8万円) |
クーペAT車 | なし (新車価格:258万円~260.5万円) |
HCR32GTS-t/GTS-tタイプM系・販売期間1989年5月~1993年8月
セダンMT車 | 123万円~154万円:4台・ASK(価格応談):1台 (新車価格:221万円~263.6万円) |
セダンAT車 | なし (新車価格:230.7万円~273.3万円) |
クーペMT車 | 130万円~248万円:10台 (新車価格:229万円~274.9万円) |
クーペAT車 | 109万円~179万円:2台 (新車価格:238.7万円~284.6万円) |
HNR32GTS-4・販売期間1989年8月~1993年8月
セダンMT車 | 109万円~171.8万円:2台 (新車価格:279万円~308.6万円) |
セダンAT車 | なし (新車価格:288.7万円~318.3万円) |
クーペMT車 | なし (新車価格:283.5万円~313.6万円) |
クーペAT車 | なし (新車価格:293.2万円~323.3万円) |
HNR32 オーテックバージョン・4WD・販売期間1992年4月
セダンAT車 | 298万円:1台 (新車価格:279.3万円~314.9万円) |
HR32/HCR32GTS系・販売期間1989年5月~1993年8月
セダンMT車 | 48.8万円:1台 (新車価格:190.4万円~234.5万円) |
セダンAT車 | なし (新車価格:200.1万円~244.2万円) |
クーペMT車 | 159万円:1台 (新車価格:194.9万円~239.5万円) |
クーペAT車 | 99.8万円:1台 (新車価格:204.6万円~249.2万円) |
HR32GTE系・販売期間1989年5月~1993年8月
セダンMT車 | なし (新車価格:169.7万円~202.4万円) |
セダンAT車 | なし (新車価格:179.4万円~212.1万円) |
FR32GXi系・販売期間1989年5月~1993年8月
セダンMT車 | なし (新車価格:141.4万円~145.4万円) |
セダンAT車 | なし (新車価格:149.7万円~153.7万円) |
【その他】
クーペRB25DET換装2WD・MT | 100万円~298万円:2台 |
グレード構成を大雑把に分けた結果が以下の通りです。
セダン/クーペGTS25系 | RB25DE(2.5リッターDOHC・自然吸気)搭載車 |
セダン/クーペGTS-t系 | RB20DET(2.0リッターDOHC・ターボ)搭載車 |
セダン/クーペGTS-4系 | RB20DET搭載4WD車 |
セダン オーテックバージョン | RB26DE(2.6リッターDOHC・自然吸気)搭載4WD車 |
セダン/クーペGTS系 | RB20DE(2.0リッターDOHC・自然吸気)搭載車 |
セダンGTE系 | RB20E(2.0リッターSOHC・自然吸気)搭載車 |
セダンGXi | CA18i(1.8リッターSOHC・自然吸気)搭載車 |
R32の頃はまだ5ナンバーボディで1.8~2.0リッターのSOHCエンジンを搭載した廉価版や、GT-R用のRB26DETTツインターボエンジンを自然吸気化してGTS-4のボディへ搭載した “自然吸気のGT-R” 的なオーテックバージョンが存在したりと、バラエティに富んでいました。
R32スカイラインのオススメグレードは、タマ数からクーペのGTS-t系一択
だいぶ古い車な上に、北米25年ルールにより北米での登録が解禁され多くが国外流出したことや、チューニングベースとして使い潰された車も多いためR32自体の流通台数は少なく、そのままで走りが楽しめる2.0リッターターボのGTS-tやGTS-tタイプMくらいしか、ある程度まとまった選択肢はありません。
同じ2.0リッターターボに「アテーサE-TS」4WDシステムを組み込んだGTS-4も “5ナンバーのGT-R” 的で面白いのですが、いかんせんタマ数があまりないため、どうしても欲しいとなれば気長に探すほかはないでしょう。
R32スカイラインの中古車選びの注意点
30年前に発売された車ですから、まずは状態に期待はせず多少の傷や塗装の劣化は最初から直すつもりで購入し、ともかく「程度のよい車」というよりは、「面倒がなるべく少ない車」程度のスタンスで選ぶのがポイントです。
程度が良さそうに見えてもそれで本当にしばらく故障せず乗せるかといえば、そのような保証はありませんから、最初からじっくり付き合うための専門店やチューニングショップなど「主治医」のアテを探しておいた方が話は早いでしょう。
問題はドレスアップやチューニングが広範囲にわたっている車で、それが自分の好みに合えばともかく、合わなければそれを自分の好みへと手直ししていく手間が生じますから、よほど気に入っているのでもない限り、明らかに改造やドレスアップ、オールペンされた車は避けた方が無難です。
R32スカイラインの中古車の維持費目安
GT-Rならともかく、それ以外のR32は純正部品の供給をアテにしていいような年式の車ではありませんし、北米など海外へ流出した車が多いということは、リビルト品や中古部品の類も含め海を渡っていると考えた方がいいかもしれません。
そのため部品交換というよりワンオフ製作や社外品、流用部品でお金をかけたトラブル対策に備える必要があり、外装部品も交換がきかないので、板金修理などコンディション良く維持するにはお金がかかることは覚悟すべきという意味で、イレギュラーな維持費発生は常に覚悟しておく必要があります。
さらに販売終了から25年以上経過しているため、自動車税は13年超の重加算税となり、もっともタマ数の多い2.0リッターターボエンジンのGTS-t系(1,998cc)なら総排気量1.5リッター超2.0リッター以下の区分で自動車税は45,400円です。
実燃費は小型軽量なこともあって8km/L前後が期待できますから、2019年12月現在のハイオクガソリン平均価格が約155円程度として、仮に月1,000km走るならば月20,000円程度のガソリン代がかかり、年間のガソリン代が約24万円に自動車税45,400円を合わせ、最低29万円程度がGTS-t系における最低年間維持費の目安でしょう。
既に希少車の域に達し、国内外で人気のある車ですから盗難に備えた対策や保険の類もしっかり考えておく他、ユーザーの環境次第で変わってくる購入後の駐車場代やタイヤ代、車検代や整備代、任意保険代などは各自計算してみてください。