旧車・絶版車購入ガイド | 2021.05.11
高価だけど“アガリのクルマ”、第2世代「スカイラインGT-R」の入手方法
Posted by 菅野 直人
日産「GT-R」がすっかり1,000万円オーバーのスーパーカーになってしまった現在、それに劣らぬ魅力を持つ、あるいはそれ以上の魅力を持つともされる日産「スカイラインGT-R」。S20エンジンを搭載した第1世代はもはや文化財や芸術品レベルの価格がついてしまっていますが、ここではRB26DETTを搭載した第2世代目を中古車で購入する際のポイントを紹介します。
以下の文中の買取査定額は、投稿日時点での目安になります。実際の査定額については相場状況や車両の状態によって大きく変動しますので、あくまで参考金額としてご覧ください
SUMMARY
日産「スカイラインGT-R」とは
1969年、それまで第2回日本グランプリでのポルシェ「904」との対決をはじめ、国内レースで大活躍したプリンス「スカイライン」(S5型)の後継車として、日産「スカイライン」(C10型)にレーシングカー「R380」由来の2.0リッター直列6気筒DOHC自然吸気エンジン「S20」を搭載した「スカイラインGT-R」(第1世代)がデビューしました。
第1世代GT-Rは国内レースで挙げた50勝以上の勝利やマツダのロータリー軍団との対決でレースファンには忘れられぬ存在となりましたが、1970年代の自動車メーカーには省燃費・低排出ガス志向が求められ、5年ほどの歴史の中2000台強という生産台数で中止となり、以後しばらくGT-Rを名乗るスカイラインは作られませんでした。
状況が変わったのは1980年代中盤、グループAレースで当時の日産「スカイラインGTS-R」(R31型)がグループAレースでフォード「シエラRSコスワース」やボルボ「240ターボ」など外国車勢に太刀打ちできなくなったことで、それまで蓄積した技術の粋を凝らした4WDターボの最強GTマシンとして開発したのが第2世代「スカイラインGT-R」(BNR32型)です。
L型以来の鉄製直列6気筒エンジンの集大成と言える、頑丈で大幅なチューニングの負荷に耐える「名機」2.6リッター直列6気筒DOHCツインターボエンジン「RB26DETT」を搭載し、電子制御スプリット4WDシステム「アテーサE-TS」で駆動、電子制御4WSシステム「スーパーHICAS」や、1980年代に日産の技術力を大躍進した「日産901運動」による優れたサスペンションセッティングなどでレースからストリートまで無敵を誇った国産マシンであり、日産のみならず、日本の誇りとも呼べる1台になりました。
その基本的なパッケージは第2世代2代目の「BCNR33」型、同3代目の「BNR34」型にも受け継がれていずれも賞賛されましたが、性能的にもイメージ的にもスカイラインGT-Rが卓越した一方で、ベースとなった8代目~10代目スカイラインは「GT-Rではないスカイライン」との格落ちイメージもあって販売台数は回復するどころか下降し続けます。
さらにはスカイラインとプラットフォームを共用する準兄弟車ローレルも無視できないため、居住性や快適性とスポーツ性という相反する要素の中で常に苦しみ、かといって第1世代スカイラインのように上級モデルと下級モデルを同時に作り分け続けられるほどの体力もなく、燃費指向やスポーツカー市場の低迷もあり、2002年12月には「スカイラインGT-R」としての歴史を終えました。
その後、10代目日産「スカイライン」(V35型)以降にはGT-Rが設定されず、2007年にデビューした日産「GT-R」(R35型)はスカイラインから独立したマルチパフォーマンス・スーパーカーとして新たな歴史を刻んでいます。
スカイラインGT-Rの中古車相場
大手中古車検索サイトによると、2019年11月現在の第2世代スカイラインGT-Rの中古車相場は以下のようになっています。
第2世代初代BNR32 (販売期間1989年8月~1994年12月) |
185万円~999万円:96台・ASK(価格応談):20台 (新車価格:445万円~529万円) |
第2世代2代目BCNR33 (販売期間1995年1月~1998年12月) |
288万円~880万円:50台・ASK:11台 (新車価格:478.5万円~550.3万円) |
第2世代3代目BNR34 (販売期間1999年1月~2002年12月) |
624.8万円~2,580万円:48台・ASK13台 (新車価格:499.8万円~630万円) |
第2世代スカイラインGT-Rの中古車相場は、北米でどんなに人気があろうとも製造から25年がたたなければ厳しい排ガス検査なしで輸入、登録できないという「北米25年ルール」に左右されます。
“25年ルール対象外となり右から左に売れるため価格も天井知らずのBNR32、デビュー時のサイズアップが不評だったのを引きずった不人気で安価なBCNR33、最新モデルかつ最後のGT-Rとなって高価なBNR34”という構図で、現在はBNR32が北米での人気が一段落したのがやや下落しているのに対し、BCNR33がロングホイールベースによる高速安定性の高さなどで再評価される傾向です。
変わらず人気なのは最後のGT-RであるBNR34で、最終モデルの「ニュル」(VスペックIIとMスペックが存在)など中古車買取でも程度が良ければ新車価格を大きく上回る1,000万円近くで取引されているほど。海外でのスカイラインGT-R人気は日本での想像以上で、ニスモコンプリートカーのBNR34「Z-tune」など香港で5,000万円以上の落札価格がつきましたから、本当に程度のよいものや「NISMO400R」などコンプリートカーの類となると、現在でもかなりの高額です。
そのため市場での流通台数に対して「ASK(価格応談)」の車が多くなっていると思われますが、本当に極上のスカイラインGT-Rを探すならば、このASK車も含め丹念にチェックしていく必要があるでしょう。ある意味ではスーパーカーのごとく、「走る資産」的な価値を持つのが、スカイラインGT-Rの中古車における特徴です。
スカイラインGT-Rのオススメグレード!現実に選ぶならBCNR33のVスペック
前項で書いたように、今や資産としての価値を持つスカイラインGT-Rは単に「よい車だから中古車も高い」とはいえず、本来なら最終型のBNR34型VスペックIIあたりを推したいところですが、プレミア価格があまりに上昇してしまい、その性能的価値に見合った価格ではない車が増えています。
では価格が下落傾向にあるBNR32がよいかといえば、発売から30年経つなどあまりに古すぎて要整備/要修理箇所が多く、あまり安いものを購入してもレストアベースや部品取りということになりかねません。
第2世代スカイラインGT-Rは純正といわれるNISMOをはじめ、中小様々なチューニングショップのレストアメニューなどが豊富ですが費用はそれなりにかかりますし、ならば手頃な価格で古くとも純正部品の供給がまだ豊富、最近では再評価で隠れた名車扱いもあるBCNR33のホットモデル、Vスペックが現状のオススメグレードといえるのではないでしょうか。
もっとも、BCNR33も2020年からは「北米25年ルール」対象外になる車両が出てくるため、今後は中古車価格の上昇が予想されます。既にその兆候はありますから、購入するなら早めに決断した方がよいと思います。
スカイラインGT-Rの中古車選びの注意点
まず安価な個体は事故などでフレーム修正などモノコックに及ぶ重大な修復歴を抱えていることが多いです。もちろん、キチンと修理されていればよいのですが中にはマトモな修理が行われていないもの、その結果として広範囲にサビが及んでいるものなど、機械的トラブル以前に構造的な問題をはらんでいる車が多いと考えた方がよさそうです。
機械的トラブルなら社外品も含めた部品交換で予算が多少かかっても何とかなりますが、モノコックが傷んで車検が通るかも怪しい、見た目だけ整えても真っ直ぐ走らないようでは購入後に多大な費用がかかります。
購入に際しては、購入後即オーバーホールくらいの気持ちで考えるか、あるいは最初から最低でも400~500万円以上の車を購入するなど、ある程度の予算は必要不可欠だと考えてください。内外装の部品は多くが「NISMOヘリテージパーツ」で購入できますし、機械的部品を補うこともできますが、くれぐれもモノコックに及ぶ重大な修復歴には気を付けてください。
その他、第2世代2代目の「4ドアGT-R」オーテックバージョン40thアニバーサリー(BCNR33改)などファミリーカー用途もこなしつつ使いたいという人もいるかもしれませんが、こうした特殊なモデルは内外装が特別で純正部品やレストアパーツの供給が難しく、注意が必要です。
スカイラインGT-Rの中古車の維持費目安
基本的には大衆向けのちょっと高級なスポーツGTという程度なのがスカイラインGT-Rですから、整備さえしておけば通常の街乗りなどで特別な費用がかかる車ではありません。ただ、古い車なので自動車税の重加算税や、エコカーではないのでガソリン代などが現在の基準と少々異なることは覚えておきましょう。
自動車税については最終のBNR34まで含め全て初年度登録から13年超の重加算税対象車ですから、総排気量2.5リッター超3.0リッター以下の58,600円。実燃費は7~8km/L程度なので、2019年11月現在のハイオクガソリン平均価格が約153円程度、仮に月1,000km走るならば月20,000円程度のガソリン代がかかり、年間のガソリン代が約17~20万円に自動車税58,600円を合わせ、最低30万円程度が最低年間維持費の目安でしょう。
その他、駐車場代やタイヤ代、車検代や整備代、任意保険代などはユーザーの環境次第なので、購入後にどのような維持費がかかるからは各自計算してみてください。