買取相場 | 2022.12.15
人馬一体感に磨きをかけたシティ派SUV、マツダ「CX-30」の残価率は大健闘か?
Posted by 菅野 直人
マツダ独自のSKYACTIVテクノロジーを初めて全面採用したCX-5がヒット作となり、SUVを新たな基幹カテゴリーに据えることを決めたマツダ。 デミオ(現在は改名してMAZDA2)がベースのコンパクトなCX-3と、アテンザ(同MAZDA6)の姉妹車と言える、やや大柄なCX-5の中間的モデルとして、アクセラからのモデルチェンジを機に改名したMAZDA3をベースとしたミドルサイズSUVとして開発したのがCX-30です。 狭すぎず大きすぎず、手頃なサイズのSUVを高い質感で提供するCX-30は、買取市場でどのような評価を受けているでしょうか。
以下の文中の買取査定額は、投稿日時点での目安になります。実際の査定額については相場状況や車両の状態によって大きく変動しますので、あくまで参考金額としてご覧ください
SUMMARY
CX-30の中古車市場での人気について
2022年11月現在、大手中古車情報サイトにおけるCX-30の流通台数を見ると、以下のようになっています。
2リッター純ガソリンエンジンのSKYACTIV-G2.0、または2022年8月以降マイルドハイブリッド化したe-SKYACTIV-G2.0搭載の「20S」系が、436台で車両本体価格は165.7万~326.9万円、そのうち試乗車や展示車、登録済み未使用車と思われる走行500km以内の車両は、13台(239.8万~319万円)。
予混合圧縮着火を採用して熱効率を向上した新型直噴ガソリンエンジンへ、マイルドハイブリッドを組み合わせた2リッター純ガソリンエンジン+MHVのe-SKYACTIV-X2.0を搭載する「X」系(2020年1月追加)が、69台で225万~383.9万円、うち走行500km以内が、3台(264.8万~329.8万円)。
1.8リッター直噴ディーゼルターボエンジンSKYACTV-D1.8を搭載する「XD」系が2、26台で189万~321万円、うち走行500km以内が、6台(264.8万~319万円)。
「性能はともかく、高価過ぎる」(新車の車両本体価格が330万~407万円)と不評の「X」系はさすがに少なく、流通台数の約6割を20S系が占めていて、「燃料が経由で安く、トルクフルなXD系、高性能のXD系」に比べ、手頃な価格で普通のSUVが欲しい、という保守層に人気があるようです。
なお、マツダといえば、MT車の設定比率が多いことでも知られますが、CX-30でも20S系とX系に設定があるものの、中古車の流通は30台と約4%に過ぎず、価格帯も199.8万~331.9万円と、特にプレミアがついているわけでもありません。
買取査定額が期待できるCX-30のグレード
グレード別で単純に買取査定額が高いものを探すと、装備が充実した「プロアクティブツーリングセレクション」、「Lパッケージ」が上位に来ますが、あくまで車両本体も高いからであり、意外と健闘しているのが素の「20S」です。
今回の調査では、2021年式以前、つまりマイルドハイブリッドのe-SKYACTIV-G化された2022年8月以前の車両のみであり、純ガソリン車のもっとも簡素な最廉価グレードが新車価格(239.25万円)の割に買取査定で高く評価されています。
つまりは、「内外装の豪華さや充実した装備」は査定であまり高く評価されない、CX-30くらいのマツダ製ミドルクラスSUVだと、それより手頃な価格の方が重要視されている、と考えられそうです。
買取査定額が期待できるCX-30のカラー
買取査定の評価が凡庸な最廉価グレードほど高いというのであれば、ボディカラーも無難で保守的な白黒系が人気かといえば、そうでもありません。
黒、白(パール)、グレー、赤、紺といった感じで、白黒系以外も普通に高額査定が出ており、あえて言えば茶色やシルバー系が低い程度。
ここから考えられるのは、ファミリーカーやフォーマルな場へ乗りつけるラグジュアリーカーというよりも、「手頃なサイズ、手頃な価格でパーソナル用途の需要が多い、ちょっと立派なアシ車」というCX-30像が浮かび上がってきます。
マツダSUVのエントリーモデルとなるはずが、販売面で苦戦しているCX-3に代わり、CX-30が新たなエントリーモデルと受け止められているのでしょう。
【1年落ち2021年式CX-30の目安査定額】
1年落ちの2021年式CX-30は、2020年12月の改良(X系とXD系は2021年1月発売)によって、追加されたばかり(2020年1月)なのに、コストパフォーマンスの悪さを指摘され不評の「X」系がテコ入れされ、最高出力、最大トルクともに向上したほか、XD系も最高出力を向上し、トルク特性も低回転型にチューニング。
また、同じタイミングで2020年7月に発売した特別仕様車「100周年記念車」には、2020ワールド・カー・オブ・ザ・イヤーのTOP3選出を記念した、「100周年特別記念車2020WCOTY TOP3選出記念モデル」が追加されています。
2021年4月には、サスペンションセッティングの変更、10月にもX系がさらにテコ入れされ、吸排気系のサウンドチューニング、コストパフォーマンス改善のため「プロアクティブ」系グレードをX系のみ廃止して、装備を厳選した安価なグレード、「Xスマートエディション」を追加する改良を受けました。「オプション込みでおおよその新車価格」と2022年11月現在での平均買取相場は、以下のようになっています。
(SKYACTIV-Gガソリン車)
20S | 新車276万円に対し、買取価格176万円程度 |
20Sプロアクティブ | 新車300万円に対し、買取価格175万円程度 |
20Sブラックトーンエディション | 新車306万円に対し、買取実績なし |
20Sプロアクティブツーリングセレクション | 新車314万円に対し、買取価格186万円程度 |
20S Lパッケージ | 新車320万円に対し、買取価格182万円程度 |
20S 100周年特別記念車 | 新車356万円に対し、買取価格195万円程度 |
20S 100周年特別記念車2020WCOTY TOP3選出記念モデル | 新車360万円に対し、買取実績なし |
平均買取価格 | 183万円程度・平均残価率59%程度 |
(SKYACTIV-Xマイルドハイブリッド車)
Xスマートエディション | 新車318万円に対し、買取実績なし |
Xプロアクティブ | 新車376万円に対し、買取実績なし |
Xブラックトーンエディション | 新車381万円に対し、買取実績なし |
Xプロアクティブツーリングセレクション | 新車389万円に対し、買取実績なし |
X Lパッケージ | 新車395万円に対し、買取実績なし |
X 100周年特別記念車 | 新車431万円に対し、買取価格204万円程度 |
X 100周年特別記念車2020WCOTY TOP3選出記念モデル | 新車435万円に対し、買取実績なし |
平均買取価格 | 204万円程度・平均残価率47%程度 |
(SKYACTIV-Dクリーンディーゼル車)
XDプロアクティブ | 新車331万円に対し、買取価格192万円程度 |
XDブラックトーンエディション | 新車336万円に対し、買取実績なし |
XDプロアクティブツーリングセレクション | 新車344万円に対し、買取価格197万円程度 |
XD Lパッケージ | 新車351万円に対し、買取価格204万円程度 |
XD 100周年特別記念車 | 新車386万円に対し、買取価格209万円程度 |
XD 100周年特別記念車2020WCOTY TOP3選出記念モデル | 新車390万円に対し、買取実績なし |
平均買取価格 | 201万円程度・平均残価率57%程度 |
【2年落ち2020年式CX-30の目安査定額】
2年落ち2020年式CX-30は、2019年10月に発売されたCX-30の2年目モデルで、2020年1月に新型エンジンへマイルドハイブリッドを組み合わせたe-SKYACTV-X2.0搭載のX系グレードを、同7月にはマツダ創立100周年を記念し、記念装備で充実させた特別仕様車「100周年特別記念車」を追加しています。
2020年12月には、2021年式の項で説明した改良がX系とXD系に施されたほか、20S系を含む全車でCTS(クルージング&トラフィックサポート)の作動上限速度を従来(55km/h)より高速域まで引き上げ、レーダークルーズコントロール(MRCC)の加減速制御も滑らかになりました。「オプション込みでおおよその新車価格」と2022年11月現在での平均買取相場は、以下のようになっています。
(SKYACTIV-Gガソリン車)
20S | 新車276万円に対し、買取価格162万円程度 |
20Sプロアクティブ | 新車300万円に対し、買取価格167万円程度 |
20Sプロアクティブツーリングセレクション | 新車314万円に対し、買取価格174万円程度 |
20S Lパッケージ | 新車320万円に対し、買取価格175万円程度 |
20S 100周年特別記念車 | 新車356万円に対し、買取価格168万円程度 |
20S 100周年特別記念車2020WCOTY TOP3選出記念モデル | 新車360万円に対し、買取実績なし |
平均買取価格 | 169万円程度・平均残価率54%程度 |
(SKYACTIV-Xマイルドハイブリッド車)
Xプロアクティブ | 新車376万円に対し、買取実績なし |
Xプロアクティブツーリングセレクション | 新車389万円に対し、買取実績なし |
X Lパッケージ | 新車395万円に対し、買取価格226万円程度 |
X 100周年特別記念車 | 新車431万円に対し、買取実績なし |
平均買取価格 | 226万円程度・平均残価率57%程度 |
(SKYACTIV-Dクリーンディーゼル車)
XDプロアクティブ | 新車331万円に対し、買取価格164万円程度 |
XDプロアクティブツーリングセレクション | 新車344万円に対し、買取価格182万円程度 |
XD Lパッケージ | 新車351万円に対し、買取価格187万円程度 |
XD 100周年特別記念車 | 新車386万円に対し、買取価格196万円程度 |
平均買取価格 | 182万円程度・平均残価率52%程度 |
【3年落ち2019年式CX-30の目安査定額】
3年落ち2019年式CX-30は、2019年10月に発売されたマツダの新型SUV、CX-30の初期モデル。
CX-3とCX-5の中間的なサイズと車格のSUVとして、2019年5月に発売されたMAZDA3(3代続いたアクセラのモデルチェンジ版)をベースに開発された新型で、クーペルック的でスポーティな外観は、MAZDA3ファストバックに通じるものの、特に後席の頭上スペースに配慮しつつ、ほとんどの機械式立体駐車場へ収まる全高1,540mmへ抑えたのが特徴です。
発売時点では、e-SKYACTV-X2.0搭載の「X」系グレードはまだ設定されておらず、2リッター純ガソリンエンジンのSKYACTV-G2.0を搭載した「20S」系と、1.8リッタークリーンディーゼルターボSKYACTV-D1.8Dを搭載した「XD」系のみ。
20S系のみベーシックグレードの「20S」があり、全系統で装備充実版の「プロアクティブ」、「プロアクティブツーリングセレクション」、「Lパッケージ」が設定されました。「オプション込みでおおよその新車価格」と2022年11月現在での平均買取相場は、以下のようになっています。
(SKYACTIV-Gガソリン車)
20S | 新車276万円に対し、買取価格156万円程度 |
20Sプロアクティブ | 新車300万円に対し、買取価格146万円程度 |
20Sプロアクティブツーリングセレクション | 新車314万円に対し、買取価格173万円程度 |
20S Lパッケージ | 新車320万円に対し、買取価格177万円程度 |
平均買取価格 | 163万円程度・平均残価率54%程度 |
(SKYACTIV-Dクリーンディーゼル車)
XDプロアクティブ | 新車331万円に対し、買取価格171万円程度 |
XDプロアクティブツーリングセレクション | 新車344万円に対し、買取価格182万円程度 |
XD Lパッケージ | 新車351万円に対し、買取価格181万円程度 |
平均買取価格 | 178万円程度・平均残価率52%程度 |
CX-30の残価率・リセールバリューは?
まだ発売から約3年と新しい車種であり、同じデザインテイストを採用するにはサイズが小さすぎ、腰高感のあるCX-3よりも好評を得ているだけあって、根本的なデザイン変更などは行われておらず、XD系のディーゼルターボで低回転特性向上や、不評のX系でスペック変更を伴う大掛かりな改良、安価に新エンジン車を購入できるグレード整理が行われたくらい。
そのためCX-30としては発売当初のモデルでも型落ち感はなく、新車価格に対する買取査定額の割合、「リセールバリュー」は3年落ちでも50%台をキープ、売れ筋グレードの20S系など、1年落ちでは約59%に達しています。
XD系は若干20Sより落ちるものの、やはり52~57%程度のリセールバリューを保っていますが、難しいのはe-SKYACTIV-2.0のX系で、今ひとつリセールバリューに伸びがなく、このまま「失敗作」として新車販売が早期終了してしまった場合、さらに買取査定が厳しくなる可能性があり、先が読めません。
もちろんマツダとしては、それなりに期待して開発、実用化にこぎつけた新パワーユニットなので、今後も継続したいところだとは思いますが、最廉価グレード「20S」のリセールバリューがもっとも高い(1年落ちで約64%)CX-30のように、新車価格が重要視されるモデルでは少々ミスマッチだったようで、X系ユーザーにとっては売るタイミングが難しい状況が続きそうです。