カスタム・アフターパーツ | 2021.10.10
玄人好みのファイナルギアをチューニング!立ち上がり重視か最高速か?セッティングで変えられる極意とは⁈
Posted by KAKO MIRAI
サーキットユースにはなじみ深いパーツのひとつ、ファイナルギア。最終減速比ともいわれるファイナルギアと変速比は、車のキャラクターを左右する重要な要素でもあります。最適なギア比を合わせれば、走行性能の向上につながることはいうまでもありません。もちろんサーキット走行だけではなく、街乗りでも快適性を追求するならファイナルギアの変更もアリでしょう。今回はあまり知られていないファイナルギアについてのご紹介です。
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デファレンシャルギアのひとつ
ファイナルギアはデファレンシャルギアの中のひとつです。デファレンシャルギアを簡単に説明すると、コーナーを曲がる際に外側のタイヤの方が内側よりも移動距離が大きくなります。
駆動する左右のタイヤを1本のシャフトでつなげた場合、上手く旋回することができないのは想像できるのではないでしょうか。そのためシャフトを2本にして、左右にタイヤ、そのシャフトの中央部分にデファレンシャルギア(通称デフ)を装着します。
デフは左右のタイヤに自動的に回転差を与えるための歯車装置となっており、それぞれのタイヤが適切な回転数、回転速度を選択して走行。つまり旋回する際には、外側のタイヤは速く回転し、内側のタイヤはゆっくりと回転させる回転速度差を作り出しています。
回転速度差を生み出しているのがファイナルギアです。旋回時にドライブシャフトから伝わった動力を、曲がる直前で減速させ左右輪の一方の回転数を減らして調整。そのため
「最終減速装置」とも呼ばれています。
ファイナルギアのメカニズム
ファイナルギアは、ドライブピニオンとリングギアで構成されています。ドライブピニオンは減速時に用いられる入力歯車のことです。またリングギアはドライブピニオンから入力された動力によって回転する歯車をいいます。
プロペラシャフトから伝わった動力を方向変換させるとともに、減速を行いトルクの増大を行うことを役割としているのです。つまりエンジンの回転数とタイヤの回転数の比のことで、値が大きければタイヤの回転数は少なくなり、反対に小さいほどタイヤの回転数が多くなるということができるでしょう。
例えばトヨタ86の変速比を、主要諸元表から抜粋してみます。GT Limited 6MTの場合
変速比
1速 3.626
2速 2.188
3速 1.541
4速 1.213
5速 1.000
6速 0.767
後退 3.437
最終減速比 4.100
車の車速を決定するうえで必要な要素は4つです。
・エンジン回転数(rpm)…クランクシャフトが1分間に回転する値
・タイヤの外周長…タイヤが1回転して進む距離
・トランスミッションのギアレシオ…トランスミッションの各ギアに割り当てられた値
・ファイナルギア(最終減速比)…エンジン回転数とタイヤの回転数の比
大きい→タイヤの回転数は少ない
小さい→タイヤの回転数が多い
最終減速比の数値が大きいと低中速重視の車で、値が小さくなると高回転型のスポーツカーに多くなっています。
ファイナルギア変更の効果
ファイナルギアを変更することで、どのような効果が得られるのかを詳しく見ていきましょう。
例えばコーナーからの立ち上がりにおいて、通常は回転数が落ちています。しかしファイナルギアを変更していると、失速気味だったコーナーからの立ち上がりの回転数を通常よりも高めに設定することが可能です。そうすると加速が良い状態のまま立ち上がることができます。
エンジンを常に一定の回転数で保つことができれば、出力を無駄なく活かすことは可能です。しかし走行中は、常に変わる状況下の中で一定の回転数を保つことはできません。アクセルワークによって、回転数が上下し、その度にシフトチェンジを行っているものです。
そのため、回転数の一定区間におけるファイナルギアを変更することで、回転数をなるべく一定に保つことができます。例えば、ファイナルギアを4.1から4.8に変更するという場合です。
一般的なエンジンの回転数は2000rpm程度で、これは1分間に2000回転しているということになります。またタイヤの大きさはさまざまですが、外周は約2mのものが多いでしょう。もしも直結していたら1分間に4000m進むことになり、時間換算に置き換えると時速240㎞になってしまいます。
そのような時速はあり得ません。この場合にはエンジンの回転数をファイナルギアで落とします。つまり外側を速く回し、内側を遅く回すことで負荷を減らしているのです。これを踏まえてファイナルギアを4.1から4.8に変更する場合にはエンジンの回転数が4.1分の1から4.8分の1になることを示します。
エンジン回転数が2000rpmで時速58㎞出た車がファイナルギアを変更すると50㎞になり、2割ほど回転数は遅くなる。そこで4.8に変更することで落ち込む回転数を上げることが可能になります。
またサーキット走行を例にとると、全開スピードでコーナーに進入したいものですが、2速ではそれ以上は上がらない、3速ではすぐに2速にシフトダウンしなければならずリズムが良くないという場合です。
ファイナルギアを変更することで2速の引っ張りを伸ばす、あるいは2速の吹きあがりを速くして3速をフルで使用できれば効果的となります。高回転型にキープできるということは、使用粋トルクを増加させることにつながっていくと言い換えることができるのです。
ファイナルギアを変更することで、コーナーでの立ち上がりやシフトのリズムが大幅にアップするといえるでしょう。さらには回転数を高めに維持できるために、トルクやタイヤのグリップ力が増し、高い速度でのコーナー旋回が可能になるということも挙げられます。
人気社外メーカーと工賃の相場
クスコ
モータースポーツやサーキット走行をはじめとする、スポーツ走行をメインに徹底的なテストを繰り返し、最適なギア比を設定しました。クスコといえばモータースポーツフィールドで鍛え上げられた実績があります。
さまざまなカテゴリーでチャンピオンを獲得し、実戦で得たノウハウをフィードバック。勝つための研究開発が進められ、タイムアップの効果を生みだしてきました。使用状況を想定した材料の選択。「SCr材」のほか「SCM材」などを用途に合わせて使用しています。
歯面仕上げには高強度と静粛性を実現するシェービング仕上げを施し、オプションになりますが、強度の優れた歯研をすることも可能です。
モンスタースポーツ
「モンスター田嶋」といわれる田嶋伸博さんが率いるモンスタースポーツ。ダートトライアルやラリーで、数々の勝利を収めてきました。1986年にはスズキと提携した「スズキスポーツ」を設立。そのため、スズキ車のチューニングには定評があります。
スイフト スポーツのファイナルギアでは、エンジンン性能を活かしたファイナル比に設定し、スポーツ走行で高い威力を発揮。ローギアード化することで、エンジンの高回転域を存分に使用することができ、加速性能の向上を見込むことができます。
また86/BRZのファイナルギアでは、ギアの表面を改良し疲労強度を改善。そのため耐久性が向上しています。ギア比を4.555にしてトルクバンドを活用した走行を可能にしました。パワーのある状態を維持することができるのでタイムアップを図ることも夢ではありません。
なおフルモデルチェンジに伴い、現在は販売を終了しています。今後はニューモデルの登場によって、展開されることを期待しましょう。
作業工賃にはショップごとに決められているため、異なっています。そのため相場で見ていくと35,000円から50,000円前後となるでしょう。
まとめ
モータースポーツを行うユーザーにとっては、重要なパーツであるファイナルギア。加速を重視するのか、それとも最高速重視か、ギア比ひとつで車の性能が大きく変わることはいうまでもありません。しかし街乗りでもファイナルギアを変更することで得られる特性は大きいもの。
また装着することで、車のフィーリングも大きく変わることが期待されます。ファイナルギアのセッティングに挑んでみてはいかがでしょうか。