コラム | 2021.05.11
エンブレムが違うだけでカタチは同じ⁈よく聞くOEM供給の謎に迫ります!
Posted by KAKO MIRAI
車のエンブレムが違うだけで、よく見ると全く同じ車を見かけて、不思議に思ったことはありませんか?なぜそのような車を作る必要があるのか、またどれくらいの車種があるのか疑問は尽きません。もしかしたら見たことのない車も存在しているかもしれません。そんな数ある疑問を解消していきましょう。
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OEMとは?
同じ車でエンブレムが異なる車をOEM車といいますが、これは「Original Equipment Manufacturer」の略称のことです。委託を受けたメーカーが他社のブランドの製造を行います。
つまり内外装やエンジンなどはそのままで、エンブレムのみを変えて販売する形態をとりますが、中には多少の違いを作るケースもあるようです。いずれの場合にも、「名前」を表すエンブレムや車名を変更するだけなので、「バッジエンジニアリング」または「リバッジ」とよばれることもあるようです。
OEMを行う理由としては、大きく3つに分けられます。
1自社製造を開始するまで、技術やラインが整っていない場合に、市場に投入されるまでの期間の差を埋めることができる
2自社製造のみでは、生産が追い付かない場合
3低コストで市場に車を供給することができる
多くの場合は、3番目に挙げた低コストで市場に供給することを目的にしています。例えば、軽自動車の生産をしていないメーカーにとって、OEM供給を図ることで軽自動車のブランドまで確立することができるため、大きなメリットとなるわけです。
例えば軽自動車の製造と、普通乗用車ではプラットフォームが異なっており、製造するためには新たな設備投資を行う必要があります。コストをかけずに自社から軽自動車を販売するには、OEMを行うことが最善の策といえるのです。
また軽自動車メーカー側から見ると、乗用車と比較した場合利益が少なくなります。大量生産を行うことで利益を上げることができるのです。両社にとって大きなメリットが得ることができます。
OEM供給されている車の一部をご紹介しましょう。
トヨタのOEM車
・プリウスα→ダイハツ・メビウス
・カムリ→ダイハツ・アルティス
・プロボックス→マツダ・ファミリア バン
・ハイエース→マツダ・ボンゴ ブローニー
日産のOEM車
・セレナ→スズキ・ランディ
スズキのOEM車
・アルト→マツダ・キャロル
・ソリオ→三菱・デリカD:2
・ワゴンR→マツダ・フレア
・スペーシア→マツダ・フレア・ワゴン
・ハスラー→マツダ・フレア クロスオーバー
・エブリィ→マツダ・スクラム バン
日産・NV100クリッパー
三菱・ミニキャブ バン
・エブリィワゴン→マツダ・スクラムワゴン
日産・NV100クリッパーリオ
三菱・タウンボックス
ダイハツのOEM車
・ロッキー→トヨタ・ライズ
・ブーン→トヨタ・パッソ
・ウェイク→トヨタ・ピクシス メガ
・キャスト→トヨタ・ピクシス ジョイ
・タント→スバル・シフォン
・タント カスタム→スバル・シフォン カスタム
・ムーヴ→スバル・ステラ
・ムーヴカスタム→スバル・ステラ カスタム
・アトレー ワゴン→スバル・ディアス ワゴン
・トール→トヨタ・ルーミー
スバル・ジャスティ
・ミライース→トヨタ・ピクシス エポック
スバル・プレオプラス
・ハイゼット カーゴ→トヨタ・ピクシス バン
スバル・サンバーバン
・グランマックス カーゴ→トヨタ・タウンエース バン
マツダ・ボンゴ バン
となっており、各メーカーにさまざまなOEM車が存在していることが分かります。
OEMとは異なる共同開発
OEMと共同開発の違いを紹介する前に、よく耳にする「兄弟車」について少し整理しておきましょう。国内メーカーが販売する際に、複数のチャネルで流通させることが多くありました。
ひとつのメーカー内で、車を車種ごとにカテゴリー分けすることでディーラーを特化させるという販売手法をチャネルといいます。現在では『トヨタ』のみが使用する「トヨタ店」「トヨペット店」「カローラ店」「ネッツ店」の4チャンネルがあります。
その昔は『日産』でも「ブルーステージ」「レッドステージ」の2チャネルに分かれていました。『ホンダ』は「プリモ店」「クリオ店」「ベルノ店」の3チャネルなどと多チャネルで販売。
しかしほとんどのメーカーでは、チャネルの統合を図り、『トヨタ』を残すのみとなっています。その『トヨタ』も2020年5月から1つのチャネルに統一され、どこの店舗でもすべての車種が購入できる体制へと変化しています。
以前は兄弟車といえば、1車種を複数の販売店で流通させる際に、異なる車種名で販売していました。例えば、「トヨタ・マークⅡ三兄弟」には「マークⅡ」「クレスタ」「チェイサー」のように同じプラットフォームを使用したモデルをひとまとめにしてこのような呼び方をしていました。
例を挙げると『日産・シルビア/180SX』・『トヨタ・ノア/ヴォクシー/エスクァイア』・『トヨタ・レビン/トレノ』といった車たちのこと、といえば理解しやすいでしょうか。
現在ではこのような意味での兄弟車は存在していません。しかし同一のプラットフォームを使用して、メーカーの垣根を越えて共同開発されるというケースが多くなってきています。
例えば『トヨタ・スープラ』と『BMW・Z4』は『BMW』製の直6エンジンを搭載し、プラットフォームも『BMW』が開発。ボディやインテリアは独自で行っています。そのため「Z4」は2シーターのオープンモデル。
対する「スープラ」はスポーツクーペと別のキャラクターに仕上がっています。両車ともスポーツカーであることに変わりはありませんが、走行性能の方向性は歴然としているようです。コーナリング性能で「Z4」は乗り心地とステアリングのバランスが絶妙。
しかし「スープラ」はモータースポーツへの投入も決めたスポーツカーでもあり、ドリフトもこなせる仕上がりです。同じDNAを持っていても、開発ひとつでここまで変わることに驚きを隠せません。
同様のプラットフォームを使用し、部品を共有。両メーカーの味付けが施され、デザインも異なるためキャラクター分けが可能になり、ユーザーのバッティングもなくなります。
委託側のメーカーとしてもプラットフォームを持っていない場合には、OEM同様に設備投資を行わないことでコスト削減になります。受託側のメーカーも、供給することでコストを抑えることが可能となり、両社の思惑が一致することになるといえるでしょう。
OEMのメリット・デメリット
OEMのメリットの多くは、メーカーにとってのものということができるでしょう。コスト削減やラインナップの充実、生産台数の増産になります。では、ユーザーのメリット・デメリットはどのようなものがあるかご紹介しましょう。
・メリット
- 選択肢の増加
オリジナルブランドに加えて、部分的に差別化が図られるモデルも存在しています。そのため、異なる雰囲気となりより好みのデザインを選択することが可能です。
- 場合によっては安く購入することができる
OEMといっても新車価格は同じです。しかしOEM車は値引きが大きい場合もあるようです。オリジナルブランドよりも知名度が低いこともあり、オプション価格で値引きがあるといったケースも期待できるかもしれません。
またオリジナルブランドと同等の金額であっても、双方で見積もりを取ることで比較することができます。その価格から交渉することはできるでしょう。
- 信頼できるメーカーからの購入ができる
以前から付き合いのあるメーカーであれば、車の不具合にどのような対応をしてくれるかも分かっています。そのため安心して購入することができるのではないでしょうか。
- 納期が早い
知名度の低い車であれば、納期が早いということもあるようです。車の購入を急いでいるといった場合には、選択肢の一つにすることもできるでしょう。
- 人の乗っていない車に乗ることができる
OEMといえども、人気のある車種は存在しているので、一概には言えません。しかしあまり名前の知られていない車種も多く存在します。人と被らない車に乗りたいと考えているなら、OEMで探してみるというのもありです。
・デメリット
- 存在感がない場合も
OEMなので、エンブレムのみが異なっているという車も存在します。その場合にはオリジナルブランドだと認識されてしまい、名前が目立たないということがあるかもしれません。
- 下取りが安いことがある
全車共通で言えることではありません。しかしオリジナルブランドと比較すると、どうしてもネガティブなイメージが付きまといます。そのため中古車市場では人気が低く買取り相場が低くなることもあるようです。
OEMを行わないメーカーもある?
OEM供給を必要とする理由は、自社製品の穴を埋め、車種をそろえることにあります。そのため、自社製品に穴がなければ、OEMを行う必要がないといえるでしょう。そのようなメーカーはあるのでしょうか。
『ホンダ』は軽自動車、コンパクトカー、セダン、ミニバン、SUV、スポーツカーに至るまで製造を行い、ラインナップが充実しています。小排気量の軽自動車では高い人気を維持しているといえるでしょう。
セダンには「レジェンド」や「クラリティ」、スポーツカーには「NSX」や「シビック TYPE R」があります。ミニバンやハイブリッド、PHEVなどありとあらゆる車種を取り揃えているといえるでしょう。
過去には『いすゞ自動車』から「アコード→いすゞ・アスカ」「ドマーニ→ジェミニ」などOEM供給をしていたこともあります。しかし現在では全くOEMする必要がないようです。メーカー独自の技術が他社に流出することもありません。
独自路線を攻め続けることができるのは、メーカーにとっても強みの一つです。他社メーカーにはない独自技術を搭載した、全く新たな車を誕生させてくれる期待が高まります。
OEMで生まれた車たち
OEM車は、もともと販売台数としては少ないものが多いといえます。その中でもなかなかお目にかかることのできない車をご紹介していきましょう。
・ダイハツ・アルティス
『ダイハツ』が『トヨタ』から初めてOEMを受けた車が「アルティス」でした。2000年に販売を開始したのは「カムリ」と同型の「アルティス」です。『ダイハツ』のフラッグシップカーで、唯一の3ナンバーとなっています。
現在は5代目を数え、10代目となる「カムリ」と同様ですが、2018年に「カムリ」で追加されたスポーツグレードと「E-Four」搭載車は設定されていません。ちなみに車名の「アルティス」は、東南アジア仕様の「カローラ アルティス」というサブネームを採用しました。
『日本自動車販売協会連合会』2020年5月の新車登録台数を発表していますが、わずか2台となっています。希少といえば希少な車といえるでしょう。
・ダイハツ・メビウス
ダイハツは『トヨタ』からOEMを受け、2013年から乗用ハイブリッドカーを取り扱うようになりました。それが「プリウスα」と同型になる「メビウス」です。グレードとしては「プリウスα」で設定されている「G」グレード、や7人乗りの「S」グレードの設定はされていません。
「Sツーリングセレクション」には『ダイハツ』初となるLEDヘッドライトを装着した者もあります。しかし「プリウスα」が2021年3月をもって生産終了となることに伴い「メビウス」も販売終了となる予定です。
まとめ
OEM車は供給する側と供給を受ける側の双方にメリットがある販売形態だということが分かりました。OEM車はエンブレムが異なるほかに、グレードや装備などでさまざまな限定を受ける車です。メーカーにこだわりを持つのか、装備の充実を取るのかで選択肢は異なるでしょう。
2020年11月に『マツダ』は『トヨタ・ヤリス』のハイブリッドをベースにOEMを受け、欧州市場に投入するという話題もあります。OEMや共同開発など、今までとは異なる新しい形に発展していく可能性もあり、目が離せません。