コラム | 2021.05.11
乗りにくさも車の醍醐味⁉ 憧れのMRレイアウト国産車5選
Posted by KAKO MIRAI
現在ではMRレイアウトの車が少なくなり、すれ違う回数もめっきりと減ってしまったMRレイアウト。ちょっと普通とは異なる運転フィールに憧れた人も多いのではないでしょうか。今後時代が変わっても、MRが主流となることは考えにくい今だからこそ、乗ってみる価値について紹介していきましょう。
以下の文中の買取査定額は、投稿日時点での目安になります。実際の査定額については相場状況や車両の状態によって大きく変動しますので、あくまで参考金額としてご覧ください
駆動方式の特徴
車の駆動方式にはアルファベットが使用されています。「FF」「FR」「MR」「RR」、これはエンジンの搭載位置と駆動輪の関係によって分類がされたものです。これらの駆動方式には、さまざまな特徴があります。
FF…フロントエンジン・フロントドライブ
前にエンジンやトランスミッションなどのパワートレインを置き、前輪が駆動するものです。パワートレインを横置きすることができるため、エンジンルームを短くすることが可能。
プロペラシャフトがないため、床を低くすることができるので車内空間を広くできるメリットがあります。走行性能では、滑りやすい路面でスピンしにくいといえるでしょう。
最近のクルマはほとんどがFRで、車内を広くできることやエンジン部品数が少ないためミニバンやエコカーで広く採用されています。
FR…フロントエンジン・リアドライブ
前にパワートレインを置いていることはFFと同じですが、後輪が駆動します。動力を伝える一部が後方に配置されていることから、FFよりも重量バランスは良いといえるでしょう。
エンジンからプロペラシャフトが床下を通ってディファレンシャルギアに接続されているため、車内空間が狭くなります。また駆動輪を支える必要があるため、リアにシンプルなサスペンションが採用できません。
滑りやすい路面では、スピンする可能性が高くなります。一般的に高級セダンやスポーツカーで採用される駆動方式です。
MR…ミッドシップエンジン・リアドライブ
車内と後輪車軸の間にエンジンが搭載され、後輪が駆動しています。重量バランスに優れているほか、加速力も高いといえるでしょう。エンジンによって車内空間が狭くなることがデメリットです。
スポーツカーやレーシングカーに搭載されることが多く、乗用車では少数になります。コーナリング性能が高く、素早く曲がり素早く立ち上がる、まさにレースマシーンに必要な要素を持ち合わせているといえる仕様です。
フロントの荷重が少なく、ドライビングスキルは必要となりますが、常識的なスピードの範囲では、何の問題もなく走行できます。
RR…リアエンジン・リアドライブ
エンジンとパワートレインが後輪車軸の後ろに搭載されたもの。リアの車軸に係る、重量があるため、パワーのある駆動力を発揮。ブレーキングで4輪のバランスが非常に良くなっています。
RRを採用している車といえば『ポルシェ911』がありますが、バスにも使用されているものです。最近ではコンパクトカーにも広がっており、低床で室内を広く取れることにほかなりません。
MRの歴史
MRの採用は1934年にさかのぼり、レースカーから始まりました。駆動方式の運動特性上、FFはフロントにエンジンを積む前輪駆動です。コーナリングでスピードが上がっていくと駆動輪が外側へ押し出されるアンダーステアになり、曲がり切れなくなることがあるでしょう。
FRもFFと同様にフロントが重くなっていますが、駆動輪が後輪のためスピードが上がると車が内側に向かうオーバーステアになり、スピンする可能性もあります。
MRは前輪と後輪の重量配分が50:50に近いためアンダーステアでもオーバーステアでもないニュートラルステアです。そのためコーナーでの限界スピードが高くなると同時に安定性も良いといわれています。
『アウディ』の前身となる『アウトウニオン・レーシングカー』が「フェルディナント・ポルシェ』に設計を依頼したことに始まります。MRレイアウトの斬新なフォーミュラカーはグランプリレースで勝利を収めました。現在のレーシングカーの常識を作り上げています。
市販された最初のMR車は1960年代のこと。『オトモビル・ルネ・ボネ』が作った『ジェット』です。『ルノー・8』のエンジンとギアボックスを逆に搭載したホイールベース2,400mm、幅1,500mmという独特のフォルムを持つスポーツカー。
その後、『デトマソ・ヴァレルンガ』『ロータス・ヨーロッパ』『ポルシェ・914』と続きます。日本で最初に市販されたのは、1952年に軽自動車の『オートサンダルFS型』でした。スポーツカーで最初に量産されたのは、記憶に新しい1984年『トヨタ・MR2(AW10系)』です。
MR車のメリット
加速性能の高さ
駆動輪となる後輪にけん引力となるトラクションがかかりやすく、スムーズな立ち上がりです。また加速するときの安定感があります。
操縦性の良さ
前にエンジンを積んでいない分、前輪に荷重がかかることがないのでハンドリング性能が良いといえるでしょう。ハンドリングとはパッケージングのことで、前後左右の重量配分のこと。MRの良さである重量配分50:50が十分に発揮されることにつながります。
回頭性
エンジンの位置が車体の中央に搭載されていることで、車体前後の慣性モーメントが小さくなります。慣性モーメントとは車の回転運動に対する慣性の大きさのことで、物体が影響を受けにくい性質です。つまり慣性モーメントの値が小さければ操縦性が安定するということになります。MRの場合は、慣性モーメントが小さくまたコーナリングで垂直の回転軸を中心に回り込もうとするヨーイングを抑えられるため、車の向きを変えやすく、回頭性が良くなるのです。
スタイリッシュなデザイン性
今までに発売されてきたMRレイアウトの車は国産、輸入車に関わらず、スタイリッシュなデザインのクーペやスポーツカーばかりでした。前にエンジンを積んでいないことが、デザイン性を高めているのかもしれません。
デメリット
操作が難しい
メリットのひとつでもある回頭性の良さは、コーナーで突っ込みすぎるとオーバーステアになり、危険を伴うことになりかねません。また車体が軽い分、スピンすることもあり、技術力が必要な一面も持っています。
室内の狭さ
エンジンが運転席の後ろに搭載されているため、室内を広くすることができません。そのため2シーターを採用することが多くなってしまいます。
メンテナンスの費用
MRレイアウトのリアヘビーな車は前後のタイヤサイズが異なる場合が多くなっています。『フェラーリ』フロント245/35/20インチ、リア305/30/20インチを始め、『ホンダ・S660』フロント165/55/15インチ、リア195/45/16インチ が採用されています。
つまりエンジンを後ろに積むリアタイヤの減りが早く、通常走行でも半年に1度のタイヤ購入が必要になる場合もあるようです。
国産車究極の5選
現在、国産車でMRを採用する乗用モデルは非常に少なくなっています。そのため国産車の中で歴史を彩ったMR車も含めてご紹介していきます。
元祖国産MRスポーツカー「トヨタ MR2(SW20型)」
初代が発売されたのは1984年のこと。日本で最初のMRレイアウトを採用したモデルです。「Midship Runabout 2seater」の頭文字から名づけられています。1.5Lと1.6LのNAエンジンから始まりました。
1989年に登場した2代目SW20は2Lへとパワーアップ。カローラ系の4A-Gからセリカの3S-Gのターボチャージャーへとパワーユニットが変更されます。更に重量の増加やサスペンションにも改良を加え、他社メーカーのスポーツカーに対抗できるスペックを手にすることができました。
軽快で癖がなく乗りやすいMR2は、1990年を代表するピュアスポーツカーといえるでしょう。1999年に生産が終了となり2000年以降は中古相場が安定してきました。現在ではレース車両として、ジムカーナなどを始め、幅広く使用されています。
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国産初のミッドシップスパーカー「ホンダ NSX」
『ホンダ』のフラッグシップモデルである『NSX』は1990年から2006年まで販売されていました。そして2016年に2代目となる現行のNSXが復活し、2019年モデルも登場しています。
初代から脈々と流れている「人間中心のスーパースポーツ」を継承し、誰もが快適に操作を行うことができる2シーター。ホンダ独自の電動化技術、3モーターハイブリッドシステム「SPORT HIBRID SH-AWD」を採用し、新時代のスーパースポーツを作り上げています。
3.5LのV型6気筒ガソリンエンジンをミッドシップに配置。72個のリチウム電池と3基のモーターを持つハイブリッドです。出力はエンジンから507㎰、ドライブモーターから48ps、前輪モーターから37psで合計581psとなります。
中低速域でも切れのあるハンドリングが楽しむことができ、高速域では今までにない安定感を体感できるでしょう。特にコーナリングにおいてはコントロール性能の向上により、安定感が増しています。
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軽自動車と侮るなかれ。本格MRスポーツカー「ホンダ S660」
『ホンダ・ビート』が生産終了となった1996年以来、軽自動車のミッドシップは不在の状態にありました。ビートの後継といわれることにあまり乗り気ではないホンダから2015年に満を持して登場したスポーツカーがS660です。
軽の限界を超えていく過給器を得た3気筒の走りは十分なパワーを持っています。ハンドリング性能も力強く、思い切りの良さも伝わってきます。2020年1月にマイナーチェンジを行っており、グリルやアルミホイールが変更されました。
658㏄直列3気筒ターボは、64ps。中低速域から力強く回るのは、過給器の恩恵といえるかもしれません。6速MTとCVTから選択することができ、好みの走りを追求できそうです。峠を攻めるのもよし、ワインディングを走ることもできるピュアスポーツ軽自動車といえそうです。
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光岡自動車手掛ける渾身のオリジナルカーはMR「光岡自動車 オロチ」
『光岡自動車』により2007年から2014年まで生産されていた『オロチ』は独特のスタイルが注目を集めた一台でした。光岡自動車は既存の車を独自にカスタマイズして手作りで生産するという唯一の自動車メーカーです。
名前の通りに「ヤマタノオロチ」をコンセプトにしています。全長4,650mm、全幅2,035mm、全高1,180mmというワイドボディを持ち、蛇の目をイメージするヘッドライトや、重心が低い車高で見る人を惹きつける魅力があるようです。
特徴的なのは、光岡自動車の特徴でもあるベース車両を用いることなく制作されたこと。市販化に向けて『レクサス』のエンジン、『スズキ』のステアリングホイール、『ホンダ』のブレーキなどさまざまなメーカー部品を流用している点です。
MRながら「ファッションスーパーカー」をコンセプトにして、足回りなど柔らかな設定になっています。走行性能より居住性を重視し、スーパーカー独特の扱いにくさを排除。日常の使い勝手の良さを追求した車です。
まさに農道のNSX HONDAのレーシング魂が生んだ「ホンダ アクティ」
ミッドシップはスポーツカーだけのものではありません。MRレイアウトの真骨頂、軽トラックの『アクティ』です。スポーティ路線に打って出たわけではなく、他社メーカーに勝る使い勝手の良さを追求した結果です。
1977年に発売以来、現在4代目を迎えますが一貫してMRを採用しています。ライバル社をしのぐ平らな荷台を実現するために用いられたのは、当時のF1で培った技術です。エンジンは横置きに吊るされ、ミッションとクランクケースは一体化。
デフの両端からドライブシャフトを通し、後輪を駆動する方式が採用されています。クランク軸から駆動輪までを最短距離で繋ぐデザインは、まさにF1のノウハウを見るようです。また前後の荷重配分はMRならではのイーブン。荷物を載せていなくても、後輪に荷重が加えられ、トラクションが効きます。滑りやすい道路でも後輪の空転の心配もありません。
MRを採用したことによる積載性と操縦性の良さ、安定感は今でも根強い人気となっています。
まとめ
走りの良さに定評のあるMRレイアウトですが、ホンダ・アクティを除いては使い勝手が良いとはいえないようです。しかし車に求めるものは人それぞれ。少しくらい乗り手を選ぶ車も可愛いものではないでしょうか。
MRを自分の手足のように乗りこなせたら…そう考えるだけでワクワクする、そう考える人にはおすすめの一台になりそうです。