買取相場 | 2023.01.16
国内で唯一現行で買えるピックアップトラック トヨタ「ハイラックス」そのリセールバリューは大健闘?
Posted by 菅野 直人
トラック版は、2004年に6代目で、ワゴン版のサーフが2009年に4代目で日本国内での販売を終えて以降、日本にはあまり縁のなかったハイラックス。 しかし、2010年代に入ってからのSUV人気と多様化により、以前販売していたモデルの買い替えのみならず、本格的なオフロード性能を持つピックアップトラックに新たな需要があると判断したトヨタにより、2017年にダブルキャブピックアップトラック版が復活しました。 それ以降、昔からハイラックスに乗っているピックアップトラック愛好家のほか、若い世代にも人気となり、販売台数上位に飛び出すほどではないものの、数百〜1,000台程度が毎月売れる、根強い需要のあるクルマとなりました。そんなハイラックスは、買取市場でどのような評価を受けているでしょうか。
以下の文中の買取査定額は、投稿日時点での目安になります。実際の査定額については相場状況や車両の状態によって大きく変動しますので、あくまで参考金額としてご覧ください
SUMMARY
ハイラックスの中古車市場での人気について
2022年12月現在、大手中古車情報サイトにおけるハイラックス、それも2017年9月より販売再開した9代目120系ハイラックスのダブルキャブピックアップトラック版について、流通台数と車両本体価格の相場を見ると、以下のようになっています。
新車価格 | 326.7万~431.2万円 |
【中古車流通台数と車両本体価格】
875台・279万~599.8万円
このうち、新車同然の登録済み未使用車、展示車や試乗車、ショップデモカーなど、極端に走行距離の少ない車両が261台(352万~599.8万円)となっており、実質的な中古車相場としては、615台、279万~598万円です。
現在のハイラックスはタイ製であり、もともと注文から納車まで長めのクルマでしたが、新型コロナウイルス禍による海外からの部品調達が難航、生産遅延を生じている状態は、タイにも及んでいるようで、そこにさばききれない受注が重なって納期が伸び、早く手に入れたい人向けにプレミア価格での販売を見込んだ業者もあるようで、さらに遅延しています。
2022年12月現在ではディーラー(各地域の販売会社)が持っている枠にもよりますが、最廉価グレードのXでも12ヶ月、ZやZ GR SPORTでは14ヶ月待ちとも言われており、運良く納期が前倒しになっても、半年より早くはならないようです。
そうした事もあって、新車そのものや登録済み未使用車はもちろん、走行距離が数千km程度、あるいはそれを超えてもワンオーナー車や、人気のありそうなカスタマイズが行われた車両は、かなり強気のプレミア価格がついています。
人気があっても需要自体は限定的なため、生産ライン増強や国内への生産移転、輸入台数増加も行われる余地がなく、今後も過走行車や修復歴ありの「ワケあり車」を除き、中古車価格の高値推移は続きそうです。
買取査定額が期待できるハイラックスのグレード
どのグレードでも人気の趣味車扱いで買取査定の高い現行ハイラックスですが、一歩頭が抜けているのは、「Z ブラックラリーエディション」や「Z GR SPORT」といった、メーカー純正カスタマイズモデルです。
また、資料上では通常の「X」や「Z」グレードなものの、メーカーカスタマイズ車と同様の理由で、リフトアップや各種オフローダー的なカスタマイズを受けている車両で走行距離が少なく、程度のよいものは高価買取対象と思ってよいかもしれません。
買取査定額が期待できるハイラックスのカラー
ボディカラーについては、パール(白)、ブラック、シルバーといった無難なラグジュアリー系、あるいはスポーティな色に高価買取実績が多いものの、おそらくは新車で購入し、キレイなままで比較的早期に手放すユーザーにそういう傾向が強いだけとも言えます。
実際、初期型の2017年式ではイメージカラー的な青(ネビュラブルーメタリック)も高価買取実績があり、本格的なオフロード走行で傷などが増えない限り、どのボディカラーでも大差がないと思ってよさそうです。
【1年落ち2021年式ハイラックスの目安査定額】
1年落ち2021年式ハイラックスは、2017年9月より販売されている日本国内向けダブルキャブピックアップ型ハイラックスの現行型(8代目)。
2020年8月のマイナーチェンジで、「タフ&レクリエーショナル」をテーマにした外観デザインの変更と、エンジンの改良など燃費改善、サスペンション改良などで乗り心地も改善し、上級グレードの「Z」へ安全装備を追加したモデルです。
2021年10月には従来「Z」のみであった自動ブレーキなど、予防安全装備を廉価グレードの「X」にも標準装備したほか、「Z」のエアコンを左右独立温度コントロール機能を追加するなど改善を行い、スポーティなメーカー純正カスタマイズグレード、「GR SPORT」を追加しました。「オプション込みでおおよその新車価格」と2022年12月現在での平均買取相場は、以下のようになっています。
X | 新車385万円に対し、買取価格261万円程度 |
Z | 新車427万円に対し、買取価格318万円程度 |
Z GR SPORT | 新車474万円に対し、買取価格360万円程度 |
平均買取価格 | 313万円程度・平均残価率73%程度 |
【2年落ち2020年式ハイラックスの目安査定額】
2年落ち2020年式ハイラックスは、2017年9月より販売されている日本国内向けダブルキャブピックアップ型ハイラックスの現行型(8代目)。
2020年8月のマイナーチェンジで、「タフ&レクリエーショナル」をテーマにした外観デザインの変更と、エンジンの改良とアイドリングストップ機能追加で従来のJC08モード燃費11.8km/Lから、WLTCモード燃費11.7km/Lと実質的に向上(JC08モード燃費は13.6km/L)。
サスペンションやパワステの改良で乗り心地も改善し、上級グレードの「Z」へ新たにクリアランスソナー&バックソナーを標準装備するなど、安全性能も向上させています。
「オプション込みでおおよその新車価格」と2022年12月現在での平均買取相場は、以下のようになっています。
X | 新車377万円に対し、買取価格247万円程度 |
Z | 新車424万円に対し、買取価格310万円程度 |
Z ブラックラリーエディション | 新車444万円に対し、買取価格314万円程度 |
平均買取価格 | 290万円程度・平均残価率70%程度 |
【3年落ち2019年式ハイラックスの目安査定額】
3年落ち2019年式ハイラックスは、2017年9月より販売されている日本国内向けダブルキャブピックアップ型ハイラックスの現行型(8代目)で、2018年12月にハイラックス誕生50周年を記念した特別仕様車、「Z ブラックラリーエディション」が追加されたモデル。
2019年6月の一部改良で、「Z」系の自動ブレーキの検知機能を向上、夜間歩行者と昼間の自転車への対応や、車線逸脱警報に逸脱抑制を行うヨーアシスト機能追加、前走車追従走行を行うレーダークルーズコントロールや、道路標識の認識機能、先行車発信告知機能が装備されたほか、悪路走破性を高めるリアデフロックが全車の標準装備になりました。
なお、2019年10月に消費税増税(8%→10%)のため、車両価格が変更されています。「オプション込みでおおよその新車価格」と2022年12月現在での平均買取相場は、以下のようになっています。
X | 新車366万円に対し、買取価格255万円程度 |
Z | 新車415万円に対し、買取価格278万円程度 |
Z ブラックラリーエディション | 新車438万円に対し、買取価格316万円程度 |
平均買取価格 | 283万円程度・平均残価率70%程度 |
【4年落ち2018年式ハイラックスの目安査定額】
4年落ち2018年式ハイラックスは、2017年9月より販売されている日本国内向けダブルキャブピックアップ型ハイラックスの現行型(8代目)。
2018年12月に、専用デザインでブラック塗装に統一したアルミホイールやフロントグリル、バンパー、ホワイトレタータイヤなどを採用し、オーバーフェンダーを装着するなどスポーティな内外装でまとめたハイラックス誕生50周年記念車、「Z ブラックラリーエディション」が追加されました。「オプション込みでおおよその新車価格」と2022年12月現在での平均買取相場は、以下のようになっています。
X | 新車360万円に対し、買取価格251万円程度 |
Z | 新車411万円に対し、買取価格279万円程度 |
Z ブラックラリーエディション | 新車435万円に対し、買取価格291万円程度 |
平均買取価格 | 274万円程度・平均残価率68%程度 |
【5年落ち2017年式ハイラックスの目安査定額】
5年落ち2017年式ハイラックスは、2017年9月に発売された日本国内向けダブルキャブピックアップ型ハイラックス現行型(8代目)の初期モデルで、タイで生産して世界各国へ供給する世界戦略車を輸入しています。
熱心なピックアップトラックファンが熱望する、シングルキャブ車や装備が簡素なグレードは、残念ながら輸入されなかったものの、2.4リッタークリーンディーゼルターボと強固なラダーフレーム式構造、悪路走破性が高いパートタイム4WDを備え、装備も整った上級グレードで、若い新規ユーザー獲得も狙えるラグジュアリー性の高いモデルとなりました。
「オプション込みでおおよその新車価格」と2022年12月現在での平均買取相場は、以下のようになっています。
X | 新車360万円に対し、買取実績なし |
Z | 新車411万円に対し、買取価格264万円程度X: |
平均買取価格 | 264万円程度・平均残価率64%程度 |
ハイラックスの残価率・リセールバリューは?
単なる「昔売っていたピックアップトラックの日本再上陸」にとどまらず、2010年代に入ってからのSUVブームが、クーペルックのスポーティな舗装路向け都市型クロスオーバーSUVから、1990年代RVブームのような「本格派のオフローダー路線」へ回帰するトレンドをうまくつかんだ、あるいは牽引したモデルのひとつが、現行ハイラックスです。
予防安全装備の義務化など法規対応や、かつてのように業務用としての需要が見込めず、純然たる乗用車としての販売再開となったため、快適性と同時に趣味性の高さが評価されて人気となっており、リセールバリューはかなりの強気です。
何しろ販売再開初期の2017年式ですら、新車価格に対する買取市場での平均残価率は64%に達し、1年落ちの2021年式では73%に達するなど、ランドクルーザー300や、スズキ ジムニーと肩を並べるリセールバリューの高さを誇っています。
もともとハイラックス系は、日本での正規販売終了後も、ディーゼルエンジンへ日本の法規に対応する改造を施した並行輸入車が人気となっており、それが今度はトヨタ系販売店から正規輸入車を買えるということで、トヨタの目の付け所は正解でした。
その後、現行型RAV4などがヒットした事により、1990年代に三菱 パジェロなどクロカン4WDが大ヒットしたRVブーム同様、快適性や経済性を求めて「本格オフローダールックのクロスオーバーSUV」にまた焦点は移ると思われますが、その時期がいつになるかはわかりません。
新型コロナウイルス禍による物流や生産の混乱が収まるまでは、数年かかる見通しもあり、ロシアのウクライナ侵攻などによる世界情勢の不安、円安の進行で自動車の新車価格に明確な上昇傾向もあることから、こうした「貴重で今後買えるとしても高額になりそうな趣味車」は、しばらく高価買取傾向が続きそうです。