コラム | 2021.02.12

TRDって何の略?TRDについての基礎知識をおさらい

Posted by 菅野 直人

トヨタのワークスファクトリーと言える「TRD」ですが、それが何の略であり、どのような歴史を持つのか、GRやモデリスタなど他ブランドとの違いは何なのか、ハッキリしないという人も多いかもしれません。ここでTRD関連の基礎知識をおさらいしておきましょう。

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「TRD」は何の略で、どのような歴史を経て誕生したのか?

まず「TRD」とは、「トヨタ・レーシング・デベロップメント」の略であり、現在はトヨタ自動車の関連会社、「トヨタカスタマイジング&ディベロップメント」の一部門、あるいは所有ブランドとして、レーシングカーの開発・製作・メンテナンスや、他ブランドも含む純正コンプリートカーやパーツの開発を行っています。

そして、現在でもメーカーワークスとして積極的な活動を行う日産の「NISMO」、スバルの「STI」、ホンダの「無限(M-TEC)」、そしてかつては三菱の「ラリーアート」やマツダの「マツダスピード」とともに、「ワークスチューニンググループ」としての活動も行っており、メーカーワークスチューンドカーや市販コンプリートカーの試乗会、ユーザー向けサーキット走行会も開催するメンバーです。

そもそもは1953年、当時のトヨタ自販(トヨタ自動車販売。1982年にトヨタ自動車工業と合併し、現在のトヨタ自動車)が、ライバルに比べ販売基盤が弱かった東京において、東京トヨペット(現在のトヨタモビリティ東京)を設立しました。

東京でトヨタ車を普及すべく、新車販売のみならず、中古車の販売にも力を入れなければいけませんでしたが、当時下取りされたトヨタ車の再生・修理・ボデー架装は、東京の芝浦工場で「東京芝浦自動車工業株式会社」と「日本ボディー株式会社」の2社が行っていたものの、両社とも業績不振で解散してしまいます。

そこで、両社の設備と要員を引き継いだ新会社として1954年6月、新たに「トヨペット整備株式会社」が設立され、東京トヨペットが下取りしたトヨタ車を、中古車として販売するための再生整備を行うようになり、1964年には「株式会社トヨペットサービスセンター」へ改名しました。

その頃、1963年には戦後初の本格的大レース「第1回日本グランプリ」が鈴鹿グランプリで開催されたのを皮切りに、自動車メーカー自身がその威信をかけ、ワークス体制でレースへ挑むようになりますが、当初ワークスファクトリーであったのは、トヨタ自工(トヨタ自動車工業)の第7技術部(通称「ナナギ」)です。

しかし、レース文化が花開き、メーカーワークス以外のプライベーターも数多くレースへ参戦するようになると、市販車ベースのツーリングカーで参戦するプライベーターのサポートを担当する部門として、1965年4月、トヨペットサービスセンターへ「特殊開発部」が設置され、TRDの直接の前身となります。

当初は自工の「ナナギ」と自販の「綱島」、ツートップ体制だったトヨタワークス

https://toyota-automobile-museum.jp/archives/car-database/detail.html?id=106

その後のトヨタワークスは、市販車改造のみならず、トヨタ7のようなプロトタイプレーシングカーもつくった、トヨタ自工第7技術部(後に第17技術部)、通称「ナナギ」がいわゆる「一軍」のようなポジションでした。

それとは別に、トヨタ自販系で、その所在地(横浜市港北区綱島)から「綱島」と呼ばれていたトヨペットサービスセンター特殊開発部が、プライベーター向けセミワークスファクトリー、いわゆる「二軍」的なポジションにありました。

しかし、1970年代に入るとオイルショックでメーカーワークスの国内レース参戦は自粛され、自工系の「一軍」は海外での活動へシフトしました。

二軍であった「綱島」のセミワークス活動が国内でのメインになり、1974年8月には、プライベーター向けのモータースポーツ部品を開発・販売する「TOSCO(トヨタスポーツコーナー)・デポ」が新設され、1976年に商標を「TRD(トヨタ・レーシング・デベロップメント」へ改めました。

他メーカーでも、「一軍」として国際ラリーや大レース用プロトタイプレーシングカーを仕切った追浜ワークス(特殊車両部)、「二軍」としてツーリングカーなどを担当する大森ワークスがあった日産のような例があり、オイルショック後は、国際ラリーに転じた後に消滅した追浜ワークス、プライベーター向けで「NISMO」へ発展して現在に至る大森ワークスと、似たような歴史をたどっています。

ワンメイクレースの開催やコンプリートカーの販売に積極的だった全盛期

https://www.trdparts.jp/product/supra/3000gt.html

1980年代に入ると、TRDはプライベーター支援のみならず、自らスターレット(当時はKP61)をはじめカローラレビン/スプリンタートレノ(同AE86)といったワンメイクレースを開始、1984年にはTOSCOデポそのものをTRDへ改称します。

1990年代に入ると、トヨペットサービスセンターは、「トヨタテクノクラフト株式会社」へ社名を変え、トヨタ系のチューニングおよび救急車など特装車ファクトリーとしてさらに発展していきました。

1990年にはフォーミュラ・トヨタやMR2(SW20)のワンメイクレースを開始、TRD系パーツブランド「Waydo」の立ち上げ(1993年)、E100系カローラをベースに2リッタースポーツDOHCの3S-Gを積んだ「TRD2000」や、80系スープラへJGTC仕様ワイドボディキットを装着した「TRD3000GT」といったコンプリートカーも発売(1994年)しました。

その後は、現在まで知られているように、数々のTRD系パーツブランドやコンプリートカー、チューニングパーツを開発して販売、新世代コンパクトカー「ヴィッツ」(現・ヤリス)や高級スポーツセダン「アルテッツァ」によるネッツカップ・ワンメイクレースシリーズにも関わるほか、それらで使うレース車の販売や、TRDオリジナルデザインのコンプリートカーも多数発売しました。

その歴史の中で、もっとも「TRD」の名を前面に出したのは、2000年頃からの一時期で、チェイサーTRDスポーツ、セリカTRDスポーツM、カローラ系各車やヴィッツにも「TRDスポーツM」を発売し、特にダイハツと共同開発したパッソのTRDスポーツMは、ベース車にはない5速MT車を設定し、話題となります。

2010年代には、トヨタで久々に復活した小型FRスポーツクーペ「86」の可能性を追求すべく、「86 Griffon Project」を開始し、最終的には動力系のリファインと各部の軽量化で究極の86を生み出し、その成果として2014年にはTRDチューニングコンプリートカー「14R-60」および、そのデザインを活かした量販版「14R」を送り出しました。

GAZOO Racingへ「顔」を譲り、現在はファクトリーとしての役割に徹する

Mario Puskar / Shutterstock.com

TRDが現在の形となる転機は2009年、豊田章男氏がトヨタ自動車の社長へ就任したことで、レーシングドライバー「モリゾウ」としても知られる章男社長は、大のモータースポーツ好きであり、当時のマスターテストドライバー、成瀬弘氏(故人)なども巻き込みレーシングブランド「GAZOO Racing」を立ち上げます。

当初は、GAZOO Racingチームによるレース参戦、「G’s」シリーズなど純正コンプリートカーのプロデュースにとどまっていましたが、やがてトヨタのモータースポーツブランド全般を統括するトヨタ社内カンパニーへ成長し、ブランドも「GAZOO Racing」または「GR」として統一され、それまでのTRDなどに取って代わりました。

さらに2018年4月には、トヨタテクノクラフト(TRD)、トヨタモデリスタインターナショナル(モデリスタ)、ジェータックスの用品・コンプリート部門トヨタ関連3社が合併して「株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント」が誕生しました。

その後は、スポーツ部門を上位で統括するGAZOO Racingに対し、TRDやモデリスタの名は、コンプリートカーのブランドに残るのみとなりますが、たとえばGAZOO Racingの名で参戦するチーム、開催されるモータースポーツイベントで使用される車両のメンテナンスや開発などは、今でもトヨタカスタマイジング&ディベロップメントのTRD部門が行っており、ワークスファクトリーとしての機能は維持されています。

2021年1月現在でも、全国8か所のネッツトヨタ店(うち6か所がGR Garage店)が「TRDファクトリー店」として指定されており、そこでしか購入できないTRDパーツがあるなど、トヨタワークスとしてのTRDブランドはまだしばらくの間、健在でしょう。

なお、日本国内での知名度はそれほど高くないものの、アメリカやタイでも独自の「TRD」ブランドが存在しており、特にアメリカのTRDは、ピックアップトラックやSUVの高性能版として「TRD」仕様が販売されています。

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