カスタム・アフターパーツ | 2021.09.04
ブレーキシステムの要はブレーキパッド⁈走行スタイルに合わせた選択で性能は引き出せる
Posted by KAKO MIRAI
ブレーキパーツは止まることを目的としたものです。中でもブレーキパッドは純正から社外品まで幅広く販売されており、タイプもさまざま。使用されている素材も多く、何を選べばよいのか悩むところです。純正パーツが一番では?と思われがちですが、使用する用途によって最適なブレーキパッドは異なります。愛車にピッタリなものはどのようなものなのかを、今一度考えてみましょう。
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ブレーキパッドとは
ブレーキの仕組み
ブレーキシステムにドラムブレーキとディスクブレーキがあり、現在の主流はディスクブレーキとなっています。構造がシンプルで大きな力を必要としないメリットからドラムブレーキが使用されていましたが、車の高性能化とブレーキングの回数の増加などによる熱問題を解決したのがディスクブレーキです。
熱によっておこる「フェード現象」や「ペーパーロック現象」などが起こりにくいことが最大のメリットとなり、現行車の全輪にはディスクブレーキが使用されています。サイズの小さな車の後輪には、ドラムブレーキが採用されていることもあるようです。
構造としてはホイールと一体で回転するディスクローターを摩擦材のブレーキパッドが両側から挟み込んで速度を落としたり、車を止めたりするというもの。元々は航空機に採用されていたもので、その後レーシングカーに転用。一般車両にも採用されるようになりました。
ブレーキパッドがどこに設置されているかというと、キャリパー内に収められています。ブレーキペダルを踏むことでキャリパー内のピストンが油圧によって押し出され、ブレーキパッドがローターを挟み込むという仕組みです。
種類と選び方
ブレーキの仕組みとブレーキパッドがどのようなものか分かったら、どのようなものを選ぶべきなのかという疑問を解決していきましょう。それを決定するのは、普段どのように車を使用しているのかを考える必要があります。
ブレーキパッドは、用途に応じたものを選択する必要があるのです。ブレーキ系パーツに関しては無頓着な選び方をしているという人も多く見受けられます。しかし実はサーキットユースやストリートユースというように用途別に装着する方が好ましいものなのです。
高性能なスポーツ用ブレーキパッドは、高温になった時に安定した制動力が発揮できるように設計されています。市街地を走行するのみの車は、当然低速域での走行が多くなり、ブレーキがすぐに冷える状況では、性能を発揮することができません。
反対に、サーキット走行を行う車がストリート用のブレーキパッドを装着していると、設計された温度を超えた走行により、制動力が低下します。ローターの表面にガスの被膜が形成されブレーキが効かなくなるフェード現象を起こす危険もあるでしょう。
またブレーキの温度が高くなることで、ブレーキフルードに熱が伝わり沸点を超え、ブレーキホースに気泡が発生。それによってブレーキが効かなくなるペーパーロック現象が発生することも考えられ、非常に危険です。
ブレーキパッドは全温度域をカバーできる優れものではないので、使用する状況によって選択する必要があるといえるでしょう。その種類は以下のようになります。
ストリート
ストリート用や純正ブレーキパッドは、ブレーキをかけるとブレーキローターが削れることで生じる粉塵が少ないタイプです。またブレーキ鳴きなどのノイズが発生しにくく、ブレーキの効きが良いものが多くなっています。
スポーツ用
街乗りからワインディングまでの性能を考慮して作られたもの。そのため低温時でも高い性能を発揮してくれるでしょう。サーキット走行まではしないけれど、ある程度のスポーツ走行は楽しみたいというユーザー向けモデルです。
サーキット用
モータースポーツ専用のパッドになります。レースのカテゴリ別に専用設計されたモデルが多くパフォーマンスの向上が期待できるでしょう。低温時には制動が効きにくいため、ストリートで使用することは危険です。
その他にもジムカーナ用やダート用、ラリー用といったブレーキパッドが設定されています。どのような種類の走行をするかで必要な要素が異なるため、自分に合ったブレーキパッドを見つけることが大切になるでしょう。
ブレーキパッドの性能を左右する重要な要素には「摩擦係数」「耐フェード性」が挙げられます。これはどのようなものなのかを詳しく説明していきましょう。
摩擦係数
摩擦係数は2つの物体が接している面の摩擦度合いを表すものです。数字が高いほど摩擦が大きくなる(滑りにくい)ことになります。反対に数字が低いほど摩擦が少なくなる(滑りやすい)ことになるわけです。
純正やストリート用で0.3~0.4、サーキット用などのスポーツパッドで0.4~0.5が一般的となっています。摩擦係数が高いと軽い踏力でブレーキが効くことになりますが、摩擦係数が高すぎると扱いづらくなってしまうといえるでしょう。
摩擦係数で重要なことは、初期制動からどれだけ早く立ち上がることができるのかということ。つまりブレーキの効きが悪いということにつながってしまうのです。また高温時や低温時であっても、安定したブレーキングが行えることもポイントになります。
もうひとつにはスピードの変化が挙げられるでしょう。50㎞/hからのブレーキであっても、150㎞/hからのブレーキであっても一定の摩擦係数が得られなければ、非常に危険なことです。
耐フェード性
フェード現象が起こると、摩擦係数が低下します。一般的にノーマルのブレーキパッドでは、フェード現象が始まる温度を300℃~350℃に設定。対するスポーツパッドは400℃~700℃になっています。
耐フェード性というのはフェードが始まる温度が高い温度で設定されているかということ。また、フェード前後の摩擦係数の変化が少ないフェード率が、大きなポイントということになるでしょう。
一般的にノーマルパッドのフェード率は40~50%、スポーツパッドは60~80%に設定されているようです。摩擦係数も耐フェード性もノーマルパッドとスポーツパッドの設定値を基準にすると、分かりやすくなるのではないでしょうか。
次にブレーキパッドの使用される素材をご紹介しておきます。
ノンアスベスト材
一般的に白く使用されている素材です。ブレーキローターへの攻撃性が少なく、ブレーキ鳴きやブレーキダストの汚れなどが少ないことが特徴となっています。
セミメタリック
耐摩耗性にすぐれているためブレーキダストの汚れにくさやパッドが減りにくく寿命が長いことが大きな特徴。反面ブレーキの効きにくさがデメリットとなっています。
カーボンメタリック材
スポーツカーに採用されていることが多いものです。ブレーキがよく効き耐熱性が高くなっています。デメリットはブレーキ鳴きやブレーキダストの汚れが多くなること。またブレーキローターへの攻撃性も高くなっていることが挙げられます。
メタリック材
レーシングカーに採用されることが多いもので、耐熱性の高さが評価されています。ブレーキダストの汚れやブレーキ鳴き、ブレーキローターへの攻撃性などがデメリット。しかし、レースカーに使用するブレーキパッドは損傷が激しく一度の使用で取り換えられることがほとんどです。
ブレーキに必要なのはコントロール性能
純正が必要とするブレーキ性能とスポーツ走行で必要なブレーキ性能には、同じ制動力であっても意味が異なっていることに注意が必要です。幅広い世代や踏力の弱い人まで対応するブレーキは、軽く踏むだけで制動力を得られるように設計されています。
スポーツ走行で意味するブレーキ性能に必要なものは、ブレーキペダルの踏み込み量に対する分の制動力のみです。つまり車の荷重移動をコントロールするために必要な分だけ制動力が高まるものということになるでしょう。
摩耗と交換時期
ブレーキパッドはブレーキをかけることで少しずつ摩耗していきます。パッドの残量が少なくなってくると、ブレーキが効きづらくなったり、制動距離が今までと比較すると長くなったりという症状が出てくるものです。
あまり目視で確認するパーツではありませんが、残りが2mm程度になると交換の時期といわれています。走行距離の目安としては30,000㎞~50,000㎞走行です。
ブレーキパッドメーカー紹介
ブレーキパッドを扱っている有名メーカーを数社ご紹介していきます。
ENDLESS(エンドレス)
『エンドレスグループ』のチューニングカー用ブレーキ製品を扱うエンドレスは、1986年から開発、製造を始めました。設立後には、国内レースでブレーキパッドのシェア70%を誇った老舗メーカーです。
サーキット走行をメインにしたスポーツモデルからストリート用まで幅広く扱っており、初期制動の高さに定評があります。またブレーキングに重要なペダルタッチや、コントロール性も重視されているので、コーナー深くまで突っ込むことができる安定性も人気の理由です。
制動屋
細かなセッティングを行ったモデルを取り扱っているメーカーで、ストリートからサーキットモデルまで幅広くラインナップ。ハイブリッドのエコカーモデルでは低温から中温にかけて安定したブレーキングを発揮しています。
全体的にみるとサーキット走行を中心としたメーカーで、使用温度域が高いことが特徴のひとつといえるでしょう。そのためサーキット走行で細かなセッティングを行いたいユーザーにはおすすめです。
Project μ(プロジェクトミュー)
ブレーキ部品を取り扱うメーカーで、ブレーキパッドやブレーキキャリパーなど総合的に製造を行っています。『N1耐久レース』参戦など、レースで得た経験を製品にフィードバックされており、ハイパフォーマンスなブレーキパッドが人気です。
国産メーカーとして初となるカーボン系スポーツパッドを発売するなど、開発力の高さが特徴といえるでしょう。車種別に専用設計されたパッドを多数販売しており、全領域で安定した制動力とコントロール性能を発揮しています。
DIXCEL(ディクセル)
一般車からチューニングカー、レーシングカー用のブレーキパーツの製造、販売を手掛けるディクセル。『SUPER GT』でテクニカルサポートを行うメーカーとして認知されているのではないでしょうか。
ショップでも広く取り扱いがあり、価格帯が比較的安価でありながら高性能で人気のメーカーです。また消耗品であるにもかかわらず、摩耗保証がされていることは大きな魅力のひとつにもなっています。
まとめ
消耗パーツであるブレーキパッドは、比較的見落とされがちなパーツです。また走行スタイルによって使用すべきパッドは異なっています。種類も多く、また性能や特性をよく理解したうえで選択することが重要です。
自分に合ったブレーキパッドを装着すれば、ドライビングテクニックの向上にもつながるかもしれません。愛車に装着されているブレーキパッドを一度確認してみてはいかがでしょうか。