旧車・絶版車購入ガイド | 2021.05.11
海外で人気が再燃。値上がり必須のオープンクーペ 日産「フィガロ」
Posted by 菅野 直人
1990年前後の数年間のみ限定で何種類か販売され、いずれもヒット作となって各社がコンセプトをちょっと拝借した車を出したことで知られる日産パイクカーシリーズですが、中でも異色の存在だったのはその第3弾、1.0リッターターボのFF4人乗りオープンカーだった「フィガロ」です。元々この種の車はイタリアやイギリスでも数多く作られていたこともあり、海外でも大人気になりました。日本国内での中古車流通状況はどうでしょう?
以下の文中の買取査定額は、投稿日時点での目安になります。実際の査定額については相場状況や車両の状態によって大きく変動しますので、あくまで参考金額としてご覧ください
日産「フィガロ」とは
日産パイクカーシリーズといえば1万台限定の第1弾「Be-1」は、購入できなかった人向けに中古車へ新車以上のプレミアがついて関連グッズも飛ぶように売れた話や、3ヶ月限定で予約受注を受けた第2弾「パオ」が短期間で5万台を売り上げた話が有名です。
当時としてはあまりに特異で半ば手作業で作られていたデザイン、コストカットのための部品共用化が急速に進んだバブル崩壊以降では考えられない専用部品の数々等、贅沢な作りだったパイクカーでしたが、それでもパオまではデザインこそ華やかだったものの、形としてはオーソドックスな2BOXハッチバック車でした。
しかし、1992年2月に限定2万台で発売された第3弾「フィガロ」は、3BOXスタイルでしっかり独立トランクを持ち、当然キャビンは狭くなりますがちゃんと後席もあって2+2的な4人乗りでした。さらにボディとは別に白く塗り分けられ2トーンカラーとなっていたピラーやルーフは、ルーフとリヤウィンドウ部分を外し、フルオープンではないもののしっかりとオープンカーとして作られていました。
エンジンは「マーチターボ」用の1.0リッター直列4気筒ガソリンターボの「MA10ET」が搭載されていますが、あくまでオープンカー化による補強での重量増に対応したものであり、トランスミッションも3速ATのみのため「FFライトウェイトオープン」とはいきませんでしたが、当時各社で作られていた2ドアクーペや3ドアハッチバックベースのオープンモデルより優雅で楽しそうな車でした。
前2作の結果を踏まえたのと、実用車ではなかったので8,000台限定にしようとしたところ予約希望者多数のため2万台へ予約枠を拡大、それでも1992年2月の発表から8月まで3回に分けて抽選でオーナーを決定するなど、既にバブル崩壊による日本経済の転落が始まっていた中で、非常に明るく夢のある話だったことが伺えます。
生産終了後は日本のみならず、かつてMG「ミジェット」やBMC「ミニ」がベースのカスタムカーも多数作られていたイギリス車、フィガロがそのモチーフにしたとも思えそうなアウトビアンキ「ビアンキーノ・コンバーチブル」などを作っていたイタリア車的な雰囲気からヨーロッパなど海外でも人気が出て、特に同じ右ハンドル圏のイギリスでは多数のフィガロが輸出されました。
このように、実用車でもないのに世界中で愛される車を日本でも作れることを証明した存在として、フィガロは実に偉大な、歴史的名車として後世まで語り継がれるかもしれません。
日産「フィガロ」の中古車相場
大手中古車検索サイトによると2020年4月現在、フィガロの中古車相場は以下の通りです。
日産「フィガロ」(FK10):販売期間:1991年2月~1992年2月(予約受付期間1992年2月~8月)
【5速MT】(オリジナルには存在しないため、ミッションスワップ車と思われる)
(修復歴なし)168万円:1台
【3速AT】(新車価格:187万円)
(修復歴なし)35万円~172万円:35台・ASK:2台
(修復歴あり)49万円~168万円:13台
まさかと思いましたが、ターボエンジン車をMTで操りたいというユーザーはやはりいたようで、ミッションスワップ車が1台だけですが流通しており、おそらく同様のカスタマイズを受けた車が時々在庫として出てくるかもしれません。
標準は3速ATのモノグレード(単一グレード)ですが、前項で書いたように海外へ流出した車も多いことや、日本では他にも軽スポーツでホンダ「ビート」や「S660」、ダイハツ「コペン」といった、さらに小さなオープンスポーツがあるためか、中古車流通台数はかなり少なめです。
日産「フィガロ」のボディカラーの好みで選ぼう
モノグレードのフィガロにはオススメグレードという概念がそもそもないので各車の程度で判断していくしかありませんが、そこでモノをいうのはやはりボディカラーでしょう。
中にはどのみち古い車、購入してから全塗装を視野に入れてもいいと考える人もいるかと思いますが、最初から好みの色があれば、それを購入するのが手っ取り早いのは間違いありません。
あとはETCなど、現代の交通状況で便利なアイテムが最初からついているか、あるいは意外なところでタイヤホイールはオリジナルかどうかも判断材料となります。
日産「フィガロ」の中古車選びの注意点
フルオープンではないとはいえルーフとリアウィンドーは外してオープンエアーを楽しめる車ですから、それと引き換えに注意しないといけないのが雨漏りで、30年近く昔の車と考えればある程度の割り切りが必要とはいえ、雨漏りの形跡がないような車から選ぶのは定石で、次いで購入前に可能ならば屋根付きの保管場所確保、無理ならボディカバーの購入も検討しておきましょう。
また、外観ではわからなくとも内装で本革シートの経年劣化、あるいは下から覗き込むだけでなく、前席足元奥やグローブボックスを開けてその奥など、目に見えにくいところでのサビの進行がないかも、確認しておいた方がよいでしょう。
日産「フィガロ」の中古車維持費目安
古くともなかなか壊れにくく定期的なオーバーホールまでは要しないAT車のみだった車ですから、少なくとも中古車市場で流通している車で維持が困難なほど深刻なダメージを受けている車はそう多くないと思われ、エンジンもBe-1やパオと違って電子制御インジェクション(燃料噴射装置)ですから、エンジンヘッドからのオイル漏れ、オイル上がりなどはともかく、極端に気難しかったり、扱えるエンジニアが限られるわけでもありません。
そういう意味ではBe-1やフィガロのMT車よりは維持が楽そうですが、それを別とすれば全てが新規登録から13年以上で重加算税対象となるため、自動車税は総排気量1.0リッター以下の区分で3万3900円です。実燃費は10km/L前後で、2020年4月現在のレギュラーガソリン平均価格が約126円程度、仮に月1,000km走るならガソリン代は月額1万2600円、年間15万円程度で、自動車税を合わせると約18万円程度がフィガロにおける最低年間維持費の目安となりそうです。
海外でも人気のあるオープンカーということで盗難対策のセキュリティも含め保管場所の環境には気をつけつつ、その他ユーザーの環境次第で変わってくる購入後の駐車場代やタイヤ代、車検代や整備代、任意保険代などは各自計算してみてください。